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第2回東方最萌トーナメント 38本目
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見渡す限りの辺り一面が、朱に染まっていた。
それは、夥しい数の死体とそこから流れ出た血である。
そこは戦場の痕。人間、妖怪問わず、折り重なるようにして亡骸が打ち捨てられていた。
その折り重なった死体の頂に、一人の女が佇んでいた。
女の名は八雲紫。幻想郷に住む妖怪である。
紫は物鬱げに辺りを見下ろしていた。
「愚かなものね…」
人間とはかくも愚かな生き物である。
自らこの地と決別しておきながら、再び幻想を欲し、攻め入ってきた。
その結果がこれだ。
力無き者が境を越えようとすれば一体どうなるか、それすらも理解できないのである。
「これは…、ちょっと酷いわね…」
別の声が聞こえ、紫は視線を移す。
いつからそこに居たのか、紫から数歩の所に一人の巫女が居た。
全く気配を察知できなかった…。一体何者だろうか?
「この惨劇は、あなたの仕業かしら?」
巫女は紫に問い掛ける。
「だとしたら…、どうするのかしら?」
「そうね…、今ここで調伏しておいたほうが良さそうね」
懐から呪符を取り出し、流れるような捌きで紫に投げつける。
呪符は四方に展開し、陣を形成する。
「これは、結界…!? 人間が私と同じ力を使うの?」
紫は危険を察知し咄嗟に後方へ跳ぶ。
一足で十数歩という距離を空けた。
「ふぅん…、貴女、人間にしては強いのね。甘く見てたら本当に調伏されるかも」
そう言って紫は虚空から日傘を取り出し構えた。
その眼にはもう、いつもの人を食った表情は無かった。
「当主様。準備が整いました!」
すると突然、新たな巫女がやって来て、当主と呼んだ目の前の相手に何かを告げている。
「そう…、わかったわ。急用が出来たわ。あなたの相手はまた今度ね」
「…いったいどういう事かしら?」
「もともとこっちが本当の用事だったのよ。ただ妖怪がここに居たからちょっと追い払おうとしただけ。
この惨劇があなたの仕業じゃないって事は最初から知ってたわ」
そう言って巫女は紫に背を向ける。
「待ちなさい。ここまで馬鹿にされたのは初めてよ。責任は取ってくれるんでしょうね?」
紫の周りの空間に幾筋もの亀裂が走る。
どうやら怒りに任せて、様々な境を掻き乱してるようだ。
「う〜ん…、御免なさいって言っても許してくれないわよね…」
巫女はぽりぽりと頬を掻いている。
暫くして、ぽんっ、と手をついた。
その表情はいかにも名案が浮かんだとばかりに晴れ渡っていた。
「そうだ! あなたのその力、ちょっと貸してくれない?」
「……は?」
呆然とする紫に構わず、とてとてと紫に向かって駆け出す巫女。
「ね、ね、ぜひ協力して欲しいんだけど、ダメかな?」
紫の手を両手で握り締める巫女。
無論、周りの空間には亀裂が入ったまま。
「え、ちょっ!?」
この巫女は何を考えているのだろう?
乱れた空間に生身で触れたらどうなるか、この巫女が判らない筈は無かろうに。
と言うかさっきから会話が微妙に繋がっていない。
そんな目を白黒させている紫をよそに、満面の笑顔を振りまいている巫女。
その表情を見ていると腹を立てていた自分が馬鹿らしく思えてくる。
「…判ったわ。何をしようというの?」
何を言っても無駄な気がしたので、仕方なく折れる紫。
「良かった、ありがとう! それじゃあ説明するね――」
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