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第2回東方最萌トーナメント 26本目
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蓮子と私が毎度のように喫茶店で打ち合わせをしていると、知らぬ間に日が沈んでいる。
時が経つのも忘れるほど楽しい、という訳ではなく、ただ集中しているからそう感じるだけなのだろう、とメリーは思った。
空はちょうど藍と橙を分け合い、遠くの山々には薄い陰も見える。
ティーカップを手に添えたまま、蓮子はその様相を呆然と眺めていた。
「……綺麗ねー」
口から零れたのはそんな言葉。もっとマシな台詞は言えないものかと心の中で呟くが、彼女がそういうからには本当に綺麗なんだろう。
蓮子の表情に当てられたのか、私も彼女に同意する。ティーカップはちゃんと置いたが。
「全くね。時が経つのも忘れてしまいそうだわ」
「……そうかも」
ぽけーと開いた口が面白いので、不意にある方角を指差してみる。
「あ、一番星」
「16時32分25秒」
「忘れてないじゃない」
「……」
つっこみを入れても無反応。私は蓮子いじりを諦め、冷める前に紅茶を味わうことにした。
夜空を見上げるのが趣味である蓮子は、よく日常の隙間に飛び込んでくる情景に目を奪われてしまうことがある。
非日常イコール神秘という訳ではない。科学者である以上、神秘を解き明かすのが先で、感情を優先するのは間違いなのかもしれない。
ただ。
「……綺麗ねー」
さっきと同じ言葉を繰り返す蓮子の顔はとても晴れやかで、科学者としての自分が、探求者としての自分がうんぬんと悩んでいるようには全く見えない。
美しいものを、ただ美しいままに受け入れる。
宇佐見蓮子という科学者にとって、感動こそが最も優先されるべき事項なのだろう。
紅茶も無くなってしまったし、これから注文するのも蓮子に悪い気がする。
仕方ないので、いつまでもティーカップを中途半端に持ったまま、景色に魅入っている蓮子の観察を続行する。
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