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【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 七冊目【SS】

813蟻人形:2009/07/11(土) 21:43:07 ID:MpOwosug0
 部屋中が事の行く末を見守る中、レナンがシベルの傍にそっと寄り添ったときだった。三人の耳にしっかりとした声が届いた。
「大丈夫」
 全員の視線がシベルに注がれた。
 直後シベルは決起し、仲間たちに向き直る。彼女の表情には強い覚悟が表れていた。
 それを見たレナンの顔がパッと明るくなった。
「そうよ! あたしのせいでこうなったんだから、あたしが一番頑張らないと!」
「ちがう、ちがう」
 レナンがシベルの肩に腕を回しながら楽しげに訂正する。
「これはみんなのせい、だからみんなでガンバらないとねっ♪」
「そうだぜ、おい」
 鼻の下を腕で擦りながら、エニサが同意を示した。
 そうなると、自然と皆の視線は一人に集まる。オウバもテーブルから腰を下ろした。
「あぁ、正論だ」
 オウバの一言を聞いて、遂にシベルも笑顔になった。
「よっしゃ! オウバァ! 表出ろよ!」
 突然エニサはそう叫ぶと、テーブルの上に放置されていた弓と矢筒を引っ掴む。
 オウバもニヤッと口元を持ち上げ、エニサの行動に応じて杖を手に持った。
「……オッケェ!」
「ちょ、ちょっと!」
 予測していなかった二人の行動に、シベルが慌てて間に割って入ろうとした。
 一方、まだ暗かった部屋で何度もそうしたように、レナンはニッコリ微笑んだ。
 その後――言葉は切れ、悲鳴が残る。
 残った一つのテーブルと二つの椅子、そして幾つかの蝋燭が巻き添えとなり、それは決着することとなった。


 怪我人に対して無力であるシベルは、先の結果も相まって、レナンが働く様子を横で黙って見ている他なかった。
 じめっとした雰囲気を醸し出す男二人。彼らの傷を看るレナンは不自然なほど生き生きとしている。
 原因に心当たりのあるシベルは、それを聞かずにはいられなかった。
『レナン』
 エニサの鼻を治療するレナンに耳打ちで呼びかけると、彼女は目線だけをシベルに向けた。
『なに?』
『もしかして、なんだけど。あたしが二階から下りてくる前に、またやった?』
 そう尋ねた途端、レナンの指がはたと止まった。
レナンは首を斜めに傾げて髪を顔の前に流し、エニサの視線を経ったことを確認してから、さっきと同じようにニッコリと微笑んだ。
 訝しむエニサとレナンを交互に見ながら、シベルは短い髪の上から頭を掻いた。
『あのさ、いい加減二人の喧嘩を煽るのはやめにしたら? 性格悪く見えるよ』
『うぅん……分かってるけど、一度味を占めたら止められなくって。シベルもやってみない?』
 レナンが更に首を傾け、シベルに向けて軽くウィンクした。シベルは柔らかく微笑み返した。
『んー、考えとく』
 つれない返事に少し残念そうな面持ちで姿勢を正すレナンを確認してから、シベルは小さく溜息を吐いた。
 彼女の横顔に映った不安に気付いた者は一人もいない。
 空は灰色から黒色の雲に支配を譲り渡し、雪は風と共に夜の街を駆け抜けていった。


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