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【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 七冊目【SS】

1ルイーダ★:2008/05/03(土) 01:08:47 ID:???0
【重要】以下の項目を読み、しっかり頭に入れておきましょう。
※このスレッドはsage進行です。
※下げ方:E-mail欄に半角英数で「sage」と入れて本文を書き込む。
※上げる際には時間帯等を考慮のこと。むやみに上げるのは荒れの原因となります。
※激しくSな鞭叩きは厳禁!
※煽り・荒らしはもの凄い勢いで放置!
※煽り・荒らしを放置できない人は同類!
※職人さんたちを直接的に急かすような書き込みはなるべく控えること。
※どうしてもageなければならないようなときには、時間帯などを考えてageること。
※sageの方法が分からない初心者の方は↓へ。
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1117795323.html#562


【職人の皆さんへ】
※当スレはあくまで赤石好きの作者・読者が楽しむ場です。
 「自分の下手な文章なんか……」と躊躇している方もどしどし投稿してください。
 ここでは技術よりも「書きたい!」という気持ちを尊重します。
※短編/長編/ジャンルは問いません。改編やRS内で本当に起こったネタ話なども可。
※マジなエロ・グロは自重のこと。そっち系は別スレをご利用ください。(過去ログ参照)


【読者の皆さんへ】
※激しくSな鞭叩きは厳禁です。
※煽りや荒らしは徹底放置のこと。反応した時点で同類と見なされます。
※職人さんたちを直接的に急かすような書き込みはなるべく控えること。


【過去のスレッド】
一冊目 【ノベール】REDSTONE小説うpスレッド【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1117795323.html

二冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 二冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1127802779.html

三冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 三冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/game/19634/storage/1139745351.html

四冊目 【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 四冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1170256068/

五冊目【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 五冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1182873433/

六冊目【ノベール】RED STONE 小説upスレッド 六冊目【SS】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/19634/1200393277/

【小説まとめサイト】
RED STONE 小説upスレッド まとめ
ttp://www27.atwiki.jp/rsnovel/

2ルイーダ★:2008/05/03(土) 01:09:44 ID:???0
【付録】
●BBSの基本仕様
 ※投稿すると以下の書式が反映されます。投稿前の推敲・書式整形にご利用ください。
 フォント:MS Pゴシック/スタイル:標準/サイズ:12
 投稿制限:1レス50行以内(空行含む) ※これを越える文は投稿できません。



●フランデル大陸史 ※三冊目139氏の投稿より(一部表現は改編)
 ※ほぼゲーム内設定に忠実なはずです。そのまま使うなり参考にするなりお好みでどうぞ。
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
4423年…「赤き空の日」※RED STONE降臨。
4556年…追放天使がRED STONEの噂を広める。
      噂の真相を調査していたエリプト帝国が悪魔の襲撃により滅亡。
4658年…エリプト滅亡後、同帝国の生き残り(傭兵等)をブルン王室が雇い入れ、王室の直轄機関
      となる『レッドアイ』を設立。
4805年…『レッドアイ』会長失踪。ロムストグバイルの書記にて詳細判明。※資料1
      同年――ブルン国王アラドン失踪。
4807年…『レッドアイ』がRED STONEを発見。
      同年――バルヘリ・シュトラディヴァディの暴挙によりブルン王国が崩壊。
      ※『シュトラディヴァディ家の反乱』
4828年…共和国主義を唱えるバルヘリに対し、自らの地位を危惧した貴族らがバルヘリの母方で
      あるストラウムを持ち上げクーデターを企てるも失敗。貴族たちはビガプールに亡命し、
      トラウザーを王に立てナクリエマ王国を建国。混乱のまま戦争は終結。
      古都ブルンネンシュティグに残ったバルヘリはゴドム共和国を起こす。議会政治開始。
4850年…ナクリエマ王権を息子バルンロプトへ移しバルヘリ隠居、後年死亡。
4854年…バルンロプトは貴族の政治介入を疎んじ、貴族に対し『絶対的弾圧』を行う。
4856年…王の圧政に耐えかねた貴族たちはバルンロプトの息子を新王に即位させる企てを密か
      に推し進めるが、現王を恐れる一部の貴族による寝返りで計画は破綻。首謀者たちは
      反乱罪で処刑され、王の息子は王権を剥奪されたうえ幽閉される。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
4931年…現代――レッドアイ狂信者によるスマグ襲撃事件発生。狂信者はスマグ地下道を占拠。
      現ナクリエマ国王タートクラフト・カイザー・ストラウスがビックアイに傭兵を展開。謎の警
      戒態勢に入る。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
※資料1)レッドアイ会長の失踪直前に記された『補佐官スロムトグバイルの手記』より抜粋。



     「汝らの求めるREDSTONEは汝らが思うような至高の宝ではない。
     天空から複数略奪された盗品のひとつに過ぎないのだ。
     汝らが目的を果たしたとき、宝はなにがしかの富と名誉をもたらすやも知れぬ。
     だが忘るな……それは至高の宝にあらず。必ずや汝らを破滅へと導くだろう。
     ――あのブルン終末期の王と■■■■■■■」



     ブルン暦4805年12月8日 王室直轄機関『レッドアイ』会長 アイノ・ガスピル
     頭筆記 会長補佐官スロムトグバイル



〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
※註釈――同資料は2006/03/18投稿時点で139氏がゲーム内から抽出したデータです。
 その後のアップデートによる新NPC、クエストによる設定追加分は含まれていません。

3名無しさん:2008/05/03(土) 02:18:42 ID:WMGDEhYE0
高速で2ゲット!ひゃーはー!悔しいだろ!ふはははは
速度では負けたことは無い。>>3ざまぁwww我こそが世界最速の2ゲッターである!
3度の飯より2ゲットなんてね。今まで何度2をとっただろうか。神スレ、糞スレ、数え切れないであろう…
ゲットするだけではつまらない。入念かつ、緻密に、そして長文で、これが我が道。
ッ…!?しかしそろそろ書き込まないと速度的にまずい。さぁ、我のこの華麗な2ゲットを
とくと、見るがいい!ははははははは!!

4名無しさん:2008/05/03(土) 04:13:59 ID:cU2daHmE0

 / //   /|   r'7\ ,.ヘ‐'"´iヾ、/\ニ''ー- 、.,   /    /
  /   / |  |::|ァ'⌒',ヽ:::ヽrヘ_,,.!-‐-'、二7-ァ'´|、__
`'ー-‐''"   ヽ、_'´  `| |:::::|'"       二.,_> ,.へ_
         /  //__// / / /      `ヽ7::/
 か っ も  |  / // メ,/_,,. /./ /|   i   Y   //
 ァ  て う.  |'´/ ∠. -‐'ァ'"´'`iヽ.// メ、,_ハ  ,  |〉
  |  約 ク  ヽ! O .|/。〈ハ、 rリ '´   ,ァ=;、`| ,ハ |、  /
  |  束 ソ   >  o  ゜,,´ ̄   .  ト i 〉.レ'i iヽ|ヽ、.,____
  |  し  ス  /   ハ | u   ,.--- 、  `' ゜o O/、.,___,,..-‐'"´
  |  た  レ  |  /  ハ,   /    〉 "从  ヽ!  /
  |  じ  は  |,.イ,.!-‐'-'、,ヘ. !、_   _,/ ,.イヘ. `  ヽ.
 ッ .ゃ .立   |/     ヽ!7>rァ''7´| / ',  〉`ヽ〉
 ! ! な  て   .',      `Y_,/、レ'ヘ/レ'  レ'
   い  .な    ヽ、_     !:::::ハiヽ.   //   /
   で   い   ./‐r'、.,_,.イ\/_」ヽ ',       /  /
   す      /    `/:::::::/ /,」:::iン、 /    /
          〈  ,,..-‐''"´ ̄ ̄77ー--、_\.,__  /
      ,.:'⌒ヽ ´         | |  , i |ノ   `ヾr-、

5白猫:2008/05/03(土) 11:59:41 ID:5qAuGV/w0
Puppet―歌姫と絡繰人形―


第一章〜第五章及び番外編もくじ 5冊目>>992
第六章〜第十八章もくじ 6冊目>>924


第十九章 愛しき君への言葉 迫り来るもう一つの敵





 「ネルくん、早く行こー?」
雲一つない快晴の下、ブリッジヘッドの一角に陽気な声が上がった。
既に太陽も暖かい五月。ルフィエとネルの姿はブリッジヘッドにあった。
フワリとしたワンピースを纏うルフィエに急かされ、未だに眠気の覚めない頭でネルは言う。
 「……まだ八時半ですよ? 市場は十時からです……」
 「早いに越したことないよ。いいから行こう?」
にっこりと微笑むルフィエを見、ネルは溜息を吐いて立ち上がった。

ラグナロク発動まで残り250日を切った。ルヴィラィの言葉通り、あれ以来襲撃はピタリと止まっている。
古都で起きた[ラグナロクの実験]、アトム起爆により古都は壊滅した。
古都の外れに建っていたヴァリオルド邸は難を逃れたものの、既に「ブルンネンシュティング」という町は消え去ってしまっている。
あの日――カタパルトを破壊しアンドレを退けサイカスを撃滅、ハーピーを殲滅し一時は勝利が見えていた。
だが結局[アトム起爆の阻止]は叶わず――自分たちはまたしても、敗北した。
今度こそ負けるわけにはいかなかったというのに。

そしてあの事件により、政府高官たちはほぼ全員死亡。ゴドムの政権は一気に崩れ落ちた。
フランテルの周囲の国に顔が利くネルが数週間走り回った結果、なんとか外交面では平常を保っている。が、そのままならばいつ内乱が起こってもおかしくない状態だった。
一部の――というより大半の議員が、ネリエル=ヴァリオルドを議事会へ招き入れることを主張した。
が、ネルははっきりと[議事会へ出るつもりはない]と拒否の意向を示し、外交面での均衡を図り議事会へ助言を行う、の二点で留まっていた。
それでも[ヴァリオルド家当主]の助言を求める者は多い。一部のシーフ達は[ネリエル=ヴァリオルドが国会議員になる日も遠くない]などと仄めかしているらしい。
だが現政府とネルの間には[呪術師・リトルウィッチ殲滅大号令]という大きな大きな歪がある。
少数派のリトルウィッチ擁護派であるネルはルフィエのこともあり、ネルは五月に入ったらすぐに休暇を取ってしまった。
家でゆっくりするつもりなのか、と聞いたルフィエの首根っこを掴み、
目覚めたアーティに事情を説明してから一礼し、
武器庫で唸っていたカリンに手入れをするよう促し、
鏡を拭いていたセバスから大きなキャリーバッグを受け取り、
泣いて足にしがみつくメアリーと唸るセシェアを振り切り、
どういうわけか、テレポーターを使いブリッジヘッドへと向かった。

6白猫:2008/05/03(土) 12:00:08 ID:5qAuGV/w0
理由を何度聞いてもネルは答えてくれなかった。
古都で"ああいうこと"もあったため、ルフィエはいま一つ強気に聞くことができなかった。
 (――今は、そう。今だけは)
椅子にかかっていたジーンズに足を通し、シャツを羽織る。
机の引き出しから革財布を取り出し、ルフィエの横に歩み寄る。
 「その革財布……700万円くらいしそうだね……」
 「そうですか? 最近このブランドの値打ちは下がってきていますよ? まぁ購入額は870万ほどでしたが」
 「世界一高い財布じゃないの……?」
ルフィエの言葉にクスリと笑い、その頭をクシャクシャと撫でる。
せっかくセットしたのに、と口を尖らせるルフィエに微笑みかけ、思う。
 (少しの時間だけ……今あるこの時間を、大切にしたい)
自分の手を握って歩き出したルフィエと並び、ネルはブリッジヘッドの市場へと向かった。







二か月前、古都ブルンネンシュティング。
余も更けた古都の各地で、激しい戦闘が行われていた。
古都東口前、街道付近。
 「ッヒュ!」
 【っぐ!?】
カリアスの手刀を咄嗟に避け、プリファーはバック転でカリアスとの距離を取る。
それを見やったカリアスが目を細める、
途端。
 【!?】
ビシ、とその足が瞬時に凍りつく。
給らずバランスを崩したプリファーを見、カリアスは天高く跳躍した。
数分前、ゆるりと前進を続けていた魔物たちの大群。
その中心を突如ぶち抜き、無数の"蒼いウィンディ"が出現したのだ。
そう、[陣風隊]――強大な力を持つウィンディの大軍が、魔物たちの中に出現したのだった。
それを見やり剣を取り出したベルモンド……その体を、上空から来襲したカリアスが、まさに神速の一撃で打ち倒した。
己が能力、[ダブル=アクセル]で瞬時に反応しカリアスの奇襲を避けたプリファーは、しかし内心混乱しきっていた。
それもそのはず。長い時間をかけ集めた魔物たちをようやく出撃させ、古都も間近……というところで、突如[陣風隊]とカリアスが現れたのだから。
しかもカリアスの戦闘力は、先日ブレンティルで戦った時よりも格段に強くなっている。
[ダブル=アクセル]ですら応戦が精一杯――そして俊足の自分を、しかも足というピンポイントを氷結させたその的確な魔術。
ただ装備が違う。それだけであるはずなのに、カリアスの強さは以前とは比べ物にならないレベルに達していた。
信じられなかった。これまで数百年間、ルヴィラィに逢う以前から放浪してきたプリファーですら、これほどの実力者に遭ったことがなかった。
遥か古代の民ですら、これほどの力を持っていただろうか? と疑ってしまうほどに。
認めるしかない。彼は――カリアス=ハイロームは、フランテル最速の冒険者。
今の自分では――精々"あの一撃"を与えることしかできまい。
 〈いずれ――全力の私で再び相見え様、カリアス=ハイローム!〉
不安定な脚で立ち上がり、プリファーは体中の魔力を瞬時に巻き上げる。
"今の自分"では、一撃しか使うことはできない。
だがあと300日。この時間があれば、実戦で使えるレベルにまで回復するはずである。
 【アクセル――第三段階。『 トリプル=アクセル 』】
その、一言。
この言葉がカリアスの耳に入ったとき。
既にプリファーは、カリアスの目の前に躍り出ていた。
 【我が音速の[アクセル]――お気に召したか?】
その言葉が紡がれたとき、
既にプリファーの渾身の一撃が、カリアスを吹き飛ばしていた。

 【っぐ――】
ビキビキと亀裂の入る自分の右腕を見やり、プリファーは顔をしかめる。
やはり実戦でこんな術は使えない。
一撃、この術を使っただけで、体が悲鳴を上げている。
 【いずれまた拳を交える時もあるだろう――それまでさらばだ、カリアス=ハイローム】

7白猫:2008/05/03(土) 12:00:33 ID:5qAuGV/w0


 (カリアスは、何とか傀儡を退けた)
大きな港をはしゃいで駆けるルフィエの後ろ姿を見、ネルは思う。
プリファーは吹っ飛ばされたカリアスに追撃せず、時計のようなもので瞬間移動してしまったらしい。
ベルモンドの姿もなく、カリアスは仕方なく残った魔物の殲滅に当たった。
恐らくは[ギルドホールの時計]と同じような能力だろう。ビガプールでも、それを目撃している。
と、
何かを見つけたのか、ルフィエが突如しゃがみ込む。
そのルフィエに駆け寄り、顔を覗き込む。
 「どうしました?」
 「へっ? な、なに!?」
慌てて手を背中に隠したルフィエに目を細め、手を差し出す。
 「手の中のもの、見せて?」
 「な、何も持ってないよ?」
ふうん、とルフィエの言葉に、ネルは面白くなさそうに言う。
そこで、ふと気付いた。
ルフィエが両の手を隠して背中に回しているなら――?
突然悪戯をしたくなったネルは、ゆっくりと手をルフィエの頬に添える。隠そうとしてるルフィエが悪い、と言い訳しながら。
 「ネルくん!?」
真っ赤になって離れようとしたルフィエの腰を抱き、逃がさない。
それでも手を使わないことにクスリと笑い、ネルは逆の手でルフィエの体を抱き締める。
 「ネル、く――「好きです、ルフィエ」
 「!? ――ん」
目を向いたルフィエの唇に、そっと優しくキスをする。
初めはもがいたルフィエも、やがて大人しく目を閉じて身を任せてくる。
そこになって、ネルはルフィエの手から"それ"をそっと抜き出し、ルフィエから離れた。
 「…小鳥?」
 「あ、う、え、……ネルくん、返してよぅ」
 「返しましょうか? 同じやり方で?」
真っ赤になって手を伸ばしてくるルフィエから逃げ、ネルは笑う。
 「取って食べたりしませんよ」
 「うー、そういう問題じゃないよ……」
なおも手を伸ばしてくるルフィエを見やり、ネルは小鳥に衝撃がいかないように気をつけつつ、その体を抱き止めた。

本当に、可愛い。
自分の一挙手一投足に反応してくるその姿が、あまりにも可愛くて。
自分の想いに、言葉ではなく行動で応えてくれることがあまりにも愛しくて。
彼女以外に、これほど強く想いをぶつけることなどできないだろう。
それほど彼女の存在は、自分の中で大きくなりすぎていた。
 「ルフィエ――あなたが、好きです」







 「…………チッ」
体中に傷の走った体で、ネルはグングニルを構え直す。
既に辺りのカタパルトは大半が全壊し、残っているものも使い物にならない程破壊されていた。
が、肝心の目の前の敵――アンドレが、全く倒れない。
槍でぶち抜こうとも、爆破しようとも、連続で爆発を叩きこんでも。
砂粒一つ一つの大きさが小さすぎ、構成がやわすぎるのだ。爆破しても、砂粒を破壊するどころか文字通り"吹き飛ばす"だけ。
どうやって破壊できるか――いや、答えは分かっていた。"破壊などできない"と。
幸い、アンドレの攻撃力は大したことがない。砂の位置さえ把握してれば対処は容易だった。
 【いい加減、諦めてグングニルを渡してくだされ】
 (相手は砂――考えろ。手はある。砂の弱点は何だ)
アンドレの言葉を完全に無視し、ネルは心中で考えを巡らせる。
 (火――はない。さっきから[爆風]を行い続けてる。
 水――っぽいですが、僕は水魔法が使えないですし――。
 風――もない。火と同じ理由で土も無いとすると……。
 光――闇――闇、闇?)
そこまで考え、ネルはふと気付いた。
"闇属性元素攻撃"。
呪いによる攻撃なら――通用するのではないか?
やるしかない――やれなければ、負ける。
グングニルを繰り、呪文を紡ぐ。
 「CAlok7I5Sm-ViLANctitcFariENT――」
闇魔術の呪文は、ただの呪文ではない。
術者の命を蝕む、危険なもの。
だが使わねば、ここで命の灯が消えることとなる。
 「ALokfsaFSDsddsSD-FSDjidSAefekFeo――」
ようやくネルの詠唱に気付いたアンドレは、しかし何もしない。
ただ身構え、水魔法にのみ警戒する。
 〈水魔法以外に、私を倒す魔法はありませんぞ――〉
だが、アンドレのその認識は甘かった。
もう一つあったのだ。
彼を倒す、方法が。
 「MediUSMediUS,UfshoeFsSAjARAmmeDiuS――『 メディアス 』」

8白猫:2008/05/03(土) 12:01:03 ID:5qAuGV/w0
瞬間、

   ビシ

その音に、アンドレは目を細め、

ようとした。

一瞬遅れて理解し、声を上げ、

ようとした。

"身体が、動かない"。

   〈しまった――[石化]!!〉

そう。ネルの使った術は[石化]。相手を硬直させ、動きを止める術。
これならばアンドレは攻撃を受けるしかない。いわば、砂が固まった岩になってしまったのだから。
 〈甘く見過ぎていましたな……長く戦いに参加していなかった私の甘さが、敗因となるとは〉
長々と考えるアンドレの眼前で、
ネルは、グングニルとアンドレに向けて投擲した。






 「……」
ルリマ・ウルトラノヴァを放ち、ルフィエは目を閉じて夜風に吹かれていた。
あの傀儡がどうなったかは分からない。というより、興味がなかった。
気にかかっていたのは、ネルのこと。
自分のウルトラノヴァで、怪我をしなかっただろうか。
あの謎の光線で、傷を負わなかっただろうか。
会ったら、どうするべきだろう?
泣く? 笑う? 抱き付く? 距離を置く?
分からない。
ネルのこととなると、頭がまるで回らない。
 (……これが――好き、なの?)

気づいたら、ルフィエは駆け出していた。
一秒でも早く、伝えたい。そう思ってしまった。
結果がどうなろうとも、とにかく伝えたかったのだ。
 (ネルくん――君は、私にどう答えてくれるの)






地面からグングニルを引き抜き、ネルは目を閉じて思う。
ルフィエのことを。
アリアンで不意打ちにキスをして以来、彼女は自分に対して距離を置いているように感じる。
会って、ちゃんと謝るべきだろうか。
だが、言えない。
彼女を想う気持ちがあまりに大きすぎて、頭がちゃんと働かない。
そう――好きなのだ、彼女が。
強く、強く想っていた。
もしかすると、最初に出逢った時から。
 (君に会ったら、ちゃんと伝える――ちゃんと、伝えるよ)

   「ネルくんっっっっっ!!!!!」

ネルの思考の合間、
突如空から、甲高い声が上がる。
その声に振り向いたネルは、ものすごい勢いで突っ込んでくるルフィエに目を見開く。
 「ちょ、ルフィエストッ――」

   ガシャ―――――――――――――ン!!!!!

ネルが止める甲斐なく、
鉄の骨組みに腰かけていたネルに、ルフィエが思い切り突っ込んだ。
 「〜〜〜〜〜……」
痛みに顔をしかめ、ルフィエに恨めしそうな顔をしながら立ち上がった。
と、
 (――!)
感じる。
遥か遠方から、巨大な魔力が近づいてくる。
この魔力は間違いなく――ルヴィラィ=レゼリアスのもの。
脇のグングニルを引き抜き、ルフィエの方を見る。
自分の意思が通じたのか、ルフィエもクリーム色のシルクローブを纏った姿――[神の母]を発動する。
淡い光に包まれ、フワリと栗色の髪が夜風に靡くのを見、
 (――綺麗だ)
そう、素直に思った。
今まで何十回と舞踏会やパーティに参加してきたネルは、着飾った美しさに興味は湧かなかった。
だがルフィエの美しさは違う――言うならば、"飾らない美しさ"。
ゆっくりと口を開き、言う。
 「……後ろを、任せます」
自分の想いを伝えるときは、今ではない。
その言葉の裏に込められた思いを感じてか感じずか、ルフィエは
 「うん」
とだけ答えた。

9白猫:2008/05/03(土) 12:01:24 ID:5qAuGV/w0


 「――先日ぶりね」
南口から飛び出した紅と黄金の光に、ルヴィラィは目を細める。
頭に被ったリトルサンシャインを放り捨て、夜風に紅の髪を晒す。
その前に、グングニルを持ったネルがゆっくりと舞い上がった。
 「ええ。そうですね」
その隣、ネルの背を護るように立つルフィエはルヴィラィを見、少しだけ表情を曇らせる。
間違いなく、自分の母の顔。
――"いや。"
姿形が似ていようとも。
仮に本当にそうだとしても。
自分の中の母は、揺るがない。
自分の中の母はあの日、亡くしたのだから。
 「……ルヴィラィ。私はあなたを――許さない」
父を亡くし、友を傷つけられ、いとしい人の目覚めない暗い悪夢を彷徨っていたリレッタ。
彼女を思って、腸が煮えくりかえりそうになる。
槍を両手で構え直し、ルフィエの言葉を継ぐ。
 「目的は何です。まさか300日間このように何度も何度も襲撃を繰り返すつもりですか」
 「フフ――まさか。襲撃は今日が最初で最後――だってこれ以上襲撃を繰り返しても無意味だもの」
その言葉に目を細めたネルは、首を傾げる。
 「どういう意味です」
 「言葉通りの意味よ――それより知りたいんじゃないかしら。エリクシルに何が起こったか――」
 「自分なら答えられる、とでも言いたいんですか?」
ネルの言葉にますます笑みを深めたルヴィラィは、小さく口を開く。
 「私が答えられるのはエリクシルについてじゃない――その、槍についてよ」
ルヴィラィの指した槍――グングニルを見やり、ネルは目を細める。
 「グングニル――それを造り出したのは遥か古代の民。その槍は古代のありとあらゆる秘術が組み込まれ、それを手にした者は世界を治めることも滅ぼすことも容易い……。
[開闢神話]の"名も無き最高神"がこの槍を繰り、億万の敵を薙ぎ払ったとされている――」
 「……僕が訊きたいのはそういうことじゃない。何故これが"エリクシルから出てきた"のですか」
 「完成したエリクシルは今も昔もそれ一つきり――私に聞かれても困るわ」
と、その言葉の合間、
ルヴィラィの両の手に、紅と黒の混ざった炎が燃え上がった。
攻撃か、と半歩下がった二人に微笑みかけ、ルヴィラィは呟いた。
 「起動なさい、アトム」





古都、学問の家前。
その屋根に巨体を陣取らせていたデュレンゼルは、

   《起動なさい》

その言葉に、突如ぬっと立ち上がり両の手を空へと翳す。
 【 ―――――――― 】
デュレンゼルの口から紡がれる、奇妙な呪文。
その言葉が紡がれる度に、何処からともなく黒い靄がその上空に集まってゆく。
それらの靄はデュレンゼルの手の間に集まり、その体積を見る間に膨らませ――やがて、数メートルもの大きさになる。
その光景を、眺める者はいない。
いたところで、どうしようもなかった。
 【アトム――起動】
その言葉と同時、
数メートルもの靄が突如凝縮し、

球状に――まるで風船が膨らむように、

   凄まじい速度で、浸食を開始した。





 「!?」
古都の西方で発生した物凄い量の魔力に、ネルは目を見開く。
慌ててその方向を見ると、球状に"夜の色ではない黒"が膨張している。とてつもないスピードで。
まさか、とルヴィラィに向き直る、が。
 「っいない!?」
ルフィエの言葉に、ネルは唇を引き絞る。

ルヴィラィの目的は、これだ。
奴は自分たちと戦いに来たわけではない。
ダラダラと時間をつぶさせ、この攻撃を行うためだったのだ。
 「ッルフィエ!! 退きますよ!!」
 「え――でも、あれは」
 「感じれば分るでしょう!? "あれ"は止められない!!」
 「……ッ」
ネルの言葉に、ルフィエは顔を伏せる。
市場の人々や、近所に住んでいた子供たち、
そして何より、ヴァリオルド邸で親しくしてくれたたくさんの人たち、子供たち、レイゼルを思い出し、
そこまで思ったところで、ネルに抱き締められた。
 
 「……ッ嫌……」
 「……堪えなければならないんです、ルフィエ」
泣きじゃくるルフィエを抱き抱えたまま、ネルはひたすら南へと飛んだ。

10白猫:2008/05/03(土) 12:01:47 ID:5qAuGV/w0


 (ラグナロク。あの黒い靄を、それでこそ世界単位で引き起こす計画)
小鳥に包帯を巻くルフィエを見ながら、ネルは外を見やる。
流石に、この港街は賑やかである。戦の混乱も四月中に大分落ち着いたらしい。
最も、古都は文字通り"壊滅"したため、混乱は政治、外交、交易の三つの面においてのみ起こったのだが。
難民の数がゼロ、という結果が長期にわたる混乱を回避した、というのはなんとも皮肉なことである。
アーティたちは今頃多忙の中に埋もれているだろう。なんともご愁傷様である。
 「ルフィエ、終わりましたか?」
 「ん? あ、あうん。終わったよ」
 「そうですか、では行きましょう」
口を開きかけたルフィエから顔を逸らし、ネルはゆっくりと歩き出した。








 (どうしよう、どうしよう、どうしよう)
市場につき、リンゴをかじるネルの横で、ルフィエは買い物袋を持ったまま慌てふためく。
"ネルが自分のことを好き"。
そうあれば、と願い、しかしそんなはずはない、と思っていたこと。
リトルウィッチと人間――決して相容れないもの。そう諦めていたこと。
 (それなのに――それでも、好きになってくれた)
ネルのたった一言。

   《あなたが、好きです》

その一言で、全てが伝わった。
 「――私も、好き」
隣のネルにすら聞こえないほど小さな声で、そう呟く。
リンゴの芯をゴミ箱に投げ捨て、ネルは言う。
 「馴染みのウィッチが近くに住んでいるんです。行きませんか?」
 「ウィッチ――ウィッチ!?」
そのネルの言葉に、ルフィエは持っていた買い物袋を取り落とした。
ウィッチ――通称、"魔女"。
自分たちリトルウィッチとは違う、正真正銘、魔術に精通し不老長寿の力を得た、魔術師。
だが数百年前に起こった"魔女狩り"と称される迫害によって、魔女の姿はこの世から消え去った、
――はずである。
[魔術を扱うのは男]というエゴが存在する時代である、女の魔術師はそれこそ、一部の――ほんの一握りの実力者だけ。
 「何度も何度もリトルウィッチとして捕まっているのですが、その度に逃げおおせているのです。
 [脱走者]なんていう通り名まであるくらいですから」

11白猫:2008/05/03(土) 12:02:22 ID:5qAuGV/w0

ブリッジヘッドの片隅、小さな掘立小屋。
そこにズカズカと入っていくネルについて行きながら、ルフィエは目を白黒させる。
 「勝手に入っていいの……?」
自分たちの背後、ネルが瞬く間に解除してしまった無駄に多い施錠を見やりながらルフィエは問う。
が、ネルは特に悪びれた様子もなく
 「良いんですよ」
とだけ答えた。
そう断言されては、ルフィエも流石に何も言えない。
 「マイ! いないんですか!? マイ!!」
部屋を見回すや否や叫ぶネルに、ルフィエはキョトンとしてしまう。
辺りには黄ばんだいつのものか分からない羊皮紙、
最後に使ったのか分からないほどボロボロの羽ペン、
中の液体が変色してしまっているマグカップ、
もう何が書いているかも分からないがかろうじて五年前の年号が読み取れるカレンダー、
凄まじく汚れてしまっている無数の皿やフォーク、スプーン、
埃が雪のように積もってしまっているキッチン――と、
要するに、人が住んでいた形跡はあるが人が住めない状況になっていた。
 「埃っぽくてすみません。何度も何度も片付けるよう言っているのですが――その辺に座っていてください」
口と鼻にハンカチを抑えてそう言うネルに指された肘掛椅子を見る――が、やっぱりそこも、お世辞にも座れる状況ではなかった。
しばらくマイという人物の名前を叫んでいたネルは、しかし返事がないのを見ると、声を落してルフィエでも聞き取れるか、という小さな声で呟いた。

   「さて、どうしましょうかこの御土産……」

 「土産ッ!?」
そのネルの言葉に、ルフィエが「うわっ」と後ずさりしてしまうほどのスピードで、天井の板が抜け人が降ってきた。
栗色の長髪に、ボロボロの布切れのような白衣を着た、眼鏡をかけた少女。
その女性――マイに、ネルは小さく溜息を吐く。
 「相変わらず奇想天外な場所から出てきますね」
 「土産は何だ? チョコレートケーキか?」
 「今日は紹介する人がいたので来たんです。ルフィエ=ライアット。あなたと同じリトルウィッチです」
 「まさかヨーグルトじゃないだろうな? いくらお前の好物と言っても、私はもう飽きたぞ」
 「あなたは[唄]をルヴィラィよりも知っていると仄めかしていたでしょう。ルフィエにそれを教えて欲しいのです」
 「小娘の持っているのはアップルパイか? 残念だ、昨日だったら喜んでいたが今日の朝食った」
会話が見事にかみ合っていない。
どうしよう、と首を傾げるルフィエは、ふとマイの姿を見やる。
自分のことを羽虫のように眺めるその目。
上からものを言うお世辞にも礼儀正しいとは言えない態度。
そして――白衣の下から覗く、ボロボロで薄汚れた"囚人服"。
 「――あっ!!」
思い出した。
あのとき――古都で初めてネルと逢った時、留置所にいたリトルウィッチだ。
 (ネルくんの、友達だったんだ)
 「友達? コイツが?」
 「!」
マイの言葉にもう一つ思い出した。
彼女は[Mind Reading]――読心術が使えるリトルウィッチなのだ。
こうして考えていることも、マイには筒抜けなのである。
 「えーっと…お久しぶりです」
 「ん。逃げ切れたのか、おまえ」
その二人のやり取りに、ネルは目を白黒させる。
 「なんだ、知り合いだったんですか」
驚いた様子で二人を見るネルに、マイは頭をガリガリと掻く。
 「古都で一度。――というか聞いた。古都が壊滅したらしいな」
 「ええ。ルヴィラィにやられました……それより、今日はルフィエのことで来たんです。正確には"唄"で」
ネルの言葉にルフィエに向き直ったマイは、全身を舐め回すように見た後、唐突に訊く。
 「おまえ、[混声合唱]はできるのか」
 「――っえ?」
 「[二人唱(デュエット)]でも[三人唱(トリオ)]でもいい。流石に[合唱(コーラス)]は無理だろうが」
 「……?」
何を言っているか全く分からない。
その反応に目を見張ったマイは、ルフィエに詰め寄る。
 「お前、今まで[独唱(ソロ)]で歌ってきたのか!?」
 「え? えっ??」
何が何だか訳が分からず混乱したルフィエに、ネルは小さく呟いた。
 「……先に帰ってます」
もっとも、ルフィエを助ける言葉ではなかったが。
 「ネル公」
家から出ようとしたネルに、マイは小さな紙切れを投げる。
それを掴んだネルは、マイに一礼をした後家を出た。

12白猫:2008/05/03(土) 12:02:57 ID:5qAuGV/w0


 「……さて」
マイの家から出たネルは、体中の埃を落とし、呟く。
手の中の紙切れを手早く開き、即座に暗記した途端、握り潰し口の中に突っ込む。
いつの間にか太陽は傾きつつある。今から行かねば間に合わないだろう。
 「ブリッジヘッドに来たことですし――顔を出さないと拙いですね、頼みごともするわけですし」
その言葉を呟き終えた途端、ネルの身体が見る間に当たりの景色と同化してゆく。
数秒も経たないうちにネルの姿は、一般人からは完全に見えないほど薄くなってしまっていた。
と、
そのネルに目がけ、凄まじい速度で数本のダートが飛んだ。
それをフワリと避け、ネルは軽快なステップで突如

街の外へと駆け出した。






その後ろ姿を見やり、木の上で寝転んでいた男は脇の覆面男に言う。
 「逃がすなよ。必ずひっ捕らえろ」
 「アイサー」
男の言葉に、覆面男は木から飛び降り、駆け出す。
 「今更奴はブリッジヘッドに何の用だ――? クレリアに喧嘩でも売りに来たのか?」
そう呟いた男は、そこでようやく寝転んでいた体を起こし、立ち上がる。
先ほどネルが出てきた掘立小屋――あそこには、クレリアの育ての母がいたはず。
まさかクレリアとネリエルが繋がっているのか、と思い、男は木から飛び降り短剣を引き抜く。
 ([疑わしきは罰せよ]――クレリア、おまえの持論だったな)
そう心中で蔑んでから、男は掘立小屋へ走った。







 「――!」
 〈ルフィエ、気をつけて〉
マイの演説中にガタンと立ち上がったルフィエは、目を細めたマイに頷きかけ、胸の十字架――マペットを握る。
途端、その体が白い光に包まれ――[神の母]が発動される。
 「良く気づいたな。欠片も気配を感じなかった」
白衣を脱ぎ棄てたマイの笑みに微笑み返し、ルフィエは胸のパペットを見やる。
これを手に入れてから、何となくだがそういう気配を感じるようになっていたのだ。
ネルの[先制攻撃]ほどではないが、人の体温や呼吸等を察知し、"気配"などではない本能レベルで感じ取ってしまう。
最も、そこに"いる"ということが分かるだけで相手の情報は全く分からないのだが。
 「マイさんはここにいてください」
 「戦えないと思ってる? 舐めないで頂戴」
 「違います」
マイの言葉を遮り、ルフィエは首を振る。
目を細めたマイに笑いかけ、さらりと言った。
 「ウィッチが街中で戦って、どうなるか分かったものじゃないですから」
 「プッ」
そのルフィエの言葉に噴出したマイは、笑いをこらえながら言う。
 「いいぞ、好きにしてくれて」
マイの言葉を聞いてか聞かずか、
既にルフィエは、ドアを蹴破り小屋の外へと躍り出ていた。
が、小屋の外へと躍り出たルフィエの前に、数個の、奇妙な機械が転がる。
 (なに――?)
目を細めたルフィエの眼前、

それらの機械――小型の炸裂弾が、ルフィエを大爆発の中に呑み込んだ。

13白猫:2008/05/03(土) 12:03:21 ID:5qAuGV/w0


 (誰だ、奴は?)
てっきりマイが出てくると踏んで炸裂弾を放り投げた男は、小屋から出てきた奇妙な女に首を傾げる。
しかもパッと見の容姿が酷く美しいのを思い出し、男はいい女を失ったと勝手に悲しむ。
が。
 (む)
炸裂弾の爆発をモロに受けたはずの女の気配が、消えていない。
一体、どういうことなのか。
 「あなた、何者ですか」
 「!?」
甲高い声に振り向いた男の先、
煤で少し汚れてしまったドレスローブを纏ったルフィエが、男に手を突き付けていた。
 (こいつ――俺の察知速度を上回る速度で)
男はルフィエの姿を見、しかし反撃しない。
指一本分でも体を動かせば、問答無用の攻撃が炸裂することは目に見えていた。
 「お前、何者だ――どうやって俺の後ろに回った?」
 「質問しているのはこちらです」
その手に光が灯るのを見、男は驚愕の表情を押し殺して笑う。
 「フフ――シーフが己の情報を吐くのは死ぬときだけだ。残念だがな」
 「そう、ですか」
そのルフィエの言葉と同時、
ルフィエの手から放たれた閃光が、男の顔面を直撃した。

地面に突っ伏し気絶した男に歩み寄り、マイはその腹を蹴る。
 「参ったな。こいつ――クレリアの回し者か?」
 「クレリア……って誰ですか?」
[神の母]を展開したままの姿で、ルフィエは首を傾げる。
知らないのか、と目を細め、しかし「仕方ないか」と呟いた。
 「クレリアはブリッジヘッドのシーフギルド団長。このフランテル極東の地で、不穏分子だったシーフ達をまとめ上げた男さ。
 そしてカナリア=アラスター=ヴァリオルドⅢ世の子であり、ヴァリオルド家を追放された没落貴族でもある」
 「――没落貴族、ヴァリオルド家から追放、って――」
ルフィエの言葉に頷き、男を縄で縛りつけてから、マイは小さく言った。

 「そ。ネル公の兄貴。……元、ね」







クレリア=アラスター=ヴァリオルドは、ヴァリオルド家の長子としてこの世に生を受けた。
生れながらの戦の才能、一を聴き十を知る、まさに百年の一度の大天才と呼ばれた少年。
だがその心の内の邪な欲望に無謀な野心。次の当主に関するカナリアとの衝突の末、ヴァリオルドを追放された没落貴族。
勝手に家を飛び出し自由気ままに生きるアネットとは違い、クレリアは父を、母を――ヴァリオルドを憎んだ。
そして何より、自分の後に生を受けヴァリオルドを継いだ弟を、心の底から憎んだ。
直接会ったことはない。遠方から二、三度見たことがあるだけ。
アルバムで見た幼い父と瓜二つの姿。それがクレリアの憎悪をさらに掻き立てた。
連日連日酒に溺れ、向かってくる盗賊やゴロツキは殺すか、二度と太陽を見れない体にしてきた。
そしていつの間にか、クレリアはブリッジヘッドの影の長となっていた。
それでも、クレリアの心は満たされなかった。
父の生き写し――ネリエルを殺す。
それだけを考え、生きてきた。
そしてある日、唐突に弟が――ブリッジヘッドに、現れた。
これを好機と捉えず何と捉える?
自分を引き取り、育てたマイとも面識があるらしいが、そんなことは関係がない。
 「――ネリエル=アラスター=ヴァリオルドⅣ世」
薄暗い、小さな肘掛椅子一つが置かれた部屋の中。
膝の上に置かれた短剣を弄びつつ、男――クレリアが小さく呟いた。
 「お前を許しはしない――愚かな父の愛を受けた痴れ者め」
先ほど、斥候に向かわせた一人のシーフから連絡があった。
ネリエルは、ブリッジヘッドを飛び出しトワイライトの方へ向かったらしい。
しかし、それよりも。
もう一人の斥候――バイラが、一人の女にいとも簡単に倒されたという。
その女は、ブリッジヘッドに入ってから監視を続けていたネリエルの傍に常にいたという女と酷似していたという。
つまり、
 (ネリエルの女、か――面白い)
短剣を腰に差し、ゆっくりと立ち上がる。
自分の背後――ヴァリオルドの紋章を真っ逆様に、真っ二つに裂かれたその紋章を見やり、クレリアは不敵な笑みを浮かべた。
 「自分の女をムチャクチャにされたとき、おまえはどんな顔をするのか楽しみだ――」
そう呟き、クレリアは部屋の扉を乱暴に閉めた。

14白猫:2008/05/03(土) 12:03:41 ID:5qAuGV/w0

ブリッジヘッドの東口を出るとそこにあるのは、ただっ広い平原と巨大な川、そしてどこまでも続く海のみ。
ゴドムの南の果て、ルルリバー河口。
トワイライト滝やスバインへと向かうただ一つのこの場所には、当然多くの冒険者が行き来していた。

そのルルリバー河口の一角、


 「っぐ!?」
ガギン、という音と共に、覆面男の手から短刀が弾け飛ぶ。
男の手から短刀を弾いた少年――ネルは、つまらなさそうに男へと飛び掛かった。
ネルの姿を捉えた男はその右足が上がるのを見、咄嗟に体制を右へと倒す。
が、ネルは足を上げず膝を上げるだけに留まり、廻し蹴りで生じた体の回転を利用――左足の飛び廻し蹴りを男の頬へと繰り出した。
 (フェイント!?)
右の上段蹴りと見せかけ、体をクルリと一回転しての左飛び廻し蹴り。
堪らず地面に倒れ込んだ男は、目を細めるだけのネルに戦慄く。
まるでダンスを踊るかのように、ネルは空中を自在に舞い、攻撃を繰り出してくる。
その武術ならぬ舞術に、男はふと思う。
 (何故、本気の攻撃を叩き込んでこない?)
今の一撃。
通常なら自分は失神しても不思議ではない。あの一撃はそれほどまでに見事だった。
だが自分は、失神するどころか今こうして思案するだけの余裕すらある。
 (いったい、いったい、何を考えている)

 (この男に致命傷を与えず、僕の技能を見せつける)
男の思惑を察し、しかしネルは男に"ギリギリ失神しないが恐怖に慄くレベルの攻撃"を加え続ける。
そうすることで、男に焼きつけるのだ。
自分の絶対的な強さ。
そうすれば男の、クレリアへの忠誠心を揺るがすことができる。
そもそもシーフギルドは下剋上の世界である。"自分より強き者に媚び、その者を引きずり降ろそうとする"のがシーフ。
元よりクレリアは貴族の出。彼をよく思わない男は少なくないはず。
 (そう、戦いをタラタラと続け、男を精神面で嬲り続ける)
地面に突っ伏した男の体を蹴り上げ、空中で反回転――その脇腹を手加減した力で蹴り飛ばした。
叫び声すら上がらない男の反応。
それに僅かな手応えを感じ始めたネルは、そろそろか。と身体の構えを解く。
ゆっくりと立ち上がった男に見せつけるように、誇るように、腕を掲げる。

瞬間、

眩い光と共に、その手に巨大な槍が握られた。
真白の美しい槍――グングニルを払い、ネルは男へと微笑む。
 「頑張って避けて下さい。さもないと、死にますので」
 「――――」
男は返事をしない。
グングニルを呆気にとられた表情で眺めたまま、石像のように固まっている。
それを見たネルは、しかしこの一撃は手加減しない。
左足を思い切り踏み込み、全身のバネを駆使し、右腕に全神経を注ぐ。
そして、放った。

男の頬を掠り、
邪魔な木々を薙ぎ払い、
物凄い速度で海の彼方へと消え、

   大爆発を起こした。


 「――――な、に……」
何が起こったのか分からないまま放心する男は、ただ振り返り、背後の海上で上がった大爆発を見やっていた。
数秒後、海岸から数十メートルは離れているはずの自分に、大粒の、海水の雨が降り注ぐ。

15白猫:2008/05/03(土) 12:04:07 ID:5qAuGV/w0

感じた。
感じさせられた。
絶対的な力の差。
どう抗っても、敵う筈のない力。
彼は――ネリエルは、"本物"だ。
本物の強者……自分の命を助けたカナリアと同じ――或いはそれ以上の。

シーフ達の世界では、強き者には従わねばならない。
そして現在の強き者――それが、クレリア。
ならば従うしかない。例え自分の命の恩人を憎んでいる男だとしても。
それが、シーフの勤めなのだから。
その信条が――今、砕け散った。
ネルというたった一人の少年に。
槍という、たった一度の投擲に。
震える体を抑え、張り裂ける鼓動を留め、低い声で呟いた。
 「――来い、ネリエル=ヴァリオルド。主の元へ案内しよう」
 「ええ」
ネルの言葉に振り向いた男は、再び目を見開いた。

いつの間にか、ネルの手には先の槍が握られている。
海の彼方へと投擲したのにも関わらず。
 (いったい、何だというのだ……)






 「ッハァアアアァアアッ!!!」
 「っく――『 ノヴァ! 』」
先から絶えることのない盗賊たちの襲撃に、ルフィエは唇を引き絞る。
体の周りに数個のノヴァを生み出し、それを瞬時に襲い来る男たちへと放つ。
それらが全て違わず命中し――また地面に突っ伏す男の数が、増えた。
既にその数数十を超える。いったい、どこからこれほど沸いてくるのか。
 「さ、流石にめんどくさくなってきた……」
 「我慢なさいな。私だってネル公との関係バレちゃって大変なんだからさ」
ルフィエの背後でノヴァを放っていたマイは、ルフィエに向けてそう苦笑する。
 「しかし意外だな。チンピラがこんな正攻法で襲ってくるなんて」
 「意外なんですか?」
自分の射程内へ入ってきた男に光弾を放ち、ルフィエは首を傾げる。
彼女はマイのように悪友と親しいわけではない。チンピラの攻め方など知るわけがない。
それを知ってか知らずか、マイは淡々と話しだす。
 「確かにもう太陽も暮れてきたが、普通日の出てる間にこいつらは動かない。警備兵とのイザコザは極力避けるようにしてるからだ。
 仮に今が夜だとしても、何の考えなしに私たちを襲撃なんて――有り得ない」
すぐ近くまで迫っていた男に咄嗟に光弾を打ちつけ、マイは息を継ぐ。
 「クレリアのやつめ、私たちに魔力を浪費させるつもりか」
 「この程度じゃ浪費もへったくれもないですよ……」
このままのペースで盗賊たちに襲ってこられても、恐らくあと二時間はぶっ続けで戦える。
マペットとの契約以降、彼女の魔力は膨大に――例えるならば、御猪口からビールジョッキほどに変化していた。
セミボス級の魔物が複数けしかけられると流石に辛い。が、ここは片隅とはいえ街中である。
 「……また来ましたよ。二十人くらい」
 「私もいい加減飽きてきたな――吹っ飛ばすか……。
 小娘、少し見ていろ。唄がどういうものか教えてやる」
その言葉と共に、ルフィエはマイの眼鏡をかけさせられる。
何の変化もない視界に目を細め、しかしルフィエはマイの邪魔にならないよう、少々離れた位置で応戦を再開する。

   「『 ――――…… 』」

 「!?」
マイの紡ぐ歌声に、ルフィエは目を見開いた。
信じられなかった。
こんなことができるのか、と耳を疑いたくなった。
"マイの口から、二つの声が紡がれている"。
 「これが、[二人唱]――?」
呆然と立ち尽くしていたルフィエに目もくれず、マイはゆっくりと腕を開いた。

 「『 ――ウルトラノヴァ 』」

16白猫:2008/05/03(土) 12:04:43 ID:5qAuGV/w0

 「……なにやってんですかルフィエ」
 「あ」
 「なんだ、遅かったじゃないか」
まるでゴミのように積まれた男たちを見やり、ネルは溜息を吐く。
怪我してない? と駆け寄ってくるルフィエの頭を撫で、小さく頷いた。
頬を染めて微笑んだルフィエに笑いかけ、ネルは自分の背後に立つ男に向き直った。
 「さて――あなたたちの計画は、どうやら失敗したようですね」
 「………………………そのようだ」
男たちの山を呆気にとられたまま見やり、覆面男は小さく頷いた。
 「全く。[神の母]サンタ=マリアが暴力ですか」
 「なっ! 失礼だよネルくん! ほとんどマイさんが吹き飛ばしちゃったんだからっ!!」
 「何だと? 私が吹き飛ばしたのは最後の集団だけだろう。それまではほとんどお前が――」
ネルとルフィエ、マイの言い合いを聞きながら、男は小さく溜息を吐く。
一体彼らは凄いのか、凄くないのか。
 「ある意味は凄いんだけどな、こいつらは」
男の心中を察し、マイは苦笑しながら呟いた。




FIN...
---
中途半端に終わりました、白猫です。早々に初っ端見づらい小説をすみませんです。
今回は伸ばしに伸ばす予定でしたが、伸ばしすぎて[何の話かわかんねぇな]と思いなおし修正。
明日から旅行です。楽しみたいものですが渋滞が……orz
それよりも前スレ用に作った999文字小説どうしようかしらorz

コメ返し


>◇68hJrjtYさん
本当は臨場感を出して描きたかった古都壊滅編。
ですがなんか色々大人の事情があって無理やりこじつけました(コラ
RPGやアクションの設定でもよくありますが、やはり強い人であればあるほど、集団戦闘には向かないのでしょうか。
物語も終盤に差し掛かってます、後2〜3章でPuppet編はおそらく完結するでしょう。
それまでどうかお付き合いくださいませ。
---
楽しかったです、チャットイベ。
また機会があれば行いたいものですね。私ができるのは場所提供のみですが…


>黒頭巾さん
前回いいことがなかったカリアス。今回も見せ場が少ないという。ハッハ(コラ
カリアス強く設定してるはずなのにな……プリファーが強すぎるのかしら……。
ふと思ったら、カリアスやその他のメンツはもう最終章まで出ないんだよなぁ…適当にしすぎたッorz


では今回はこの辺で失礼します。
白猫の提供でお送りしました。

17之神:2008/05/03(土) 12:14:42 ID:AKbHe9aQ0
ちょっと見た瞬間吹いたので、コメ返し…

>>3 WMGDEhYE0
ドンマイです。高速2get頑張って…

>>白猫さん

早速うpするとは、流石ですw
ちょっと気になったのが、700万円…

RMT! とか浮かんでしまいました…
そして999文字小説、機会があればお願いします…('ー`

18名無しさん:2008/05/03(土) 16:49:24 ID:hlgFgQ9g0
なんと、もう七冊目立っていたのかッ!

>>1さん
スレ立て、ありがとうございます!お早い仕事感謝。

>黒頭巾さん(前スレ990、993〜994)
いやいや、奇妙な視点っていうのは違和感とかそういうのではなくて…うーん、言葉ではなかなか言い表せないorz
でもホラーでもあり世にも奇妙なRSというか、最後の最後で恐ろしい事実が露見したというか(((( ´・ω・))
某曲…私には分かりませんでしたが(泣)、音楽にインスピレーションをもらった小説というのも面白いですね。
替え歌とか改変ソングは良く作る私ですが完全に小説ネタとして利用するのはなるほど、こんな風になるのですね。でもやっぱり後引く怖さです(怖)
「私が同じ理由で貴方を“削除”しても〜」の一文は夢に出てきそうorz
---
NGワード判明、お疲れ様です(´;ω;`)
NGワードというからには管理人が公開したら意味ないのかもしれませんが、小説スレにとっては大問題ですよね。
しかしRSのNGワード同様、なんでNGなのか分からない文字列だ(笑) 日本語の問題ではなさそうな気もしてきますね。

>之神さん(前スレ996〜1000)
まずはラストアタック(笑)、おめでとうございます!
ライトルート…惰眠というあたりまでは何となく(ほんとに何となく)分かったものの、96なんて数字は全然出てきませんでしたorz
思えば昔、電車のキップに書いてある数字を足したり引いたりする遊びも苦手だったなぁ(やるな&関係なし)。
徹よ、ウィンディーと会話できるのはシルヴィーだけだから安心してね(笑)
そしてエトナはリトル(姫)だとは予想ついてましたが、アルシェがアチャだったとは…!イラストだけでは分からなかったです。カコイイ。
廃人撃破なるか。そしてライトと徹たちの見つけた道とは。続きお待ちしています!

>白猫さん
新スレトップバッター、おめでとうございます(笑)
突然のネルとルフィエののほほん日和に驚きましたが、古都編がその後少しずつ語られていくという手法。
それぞれの傀儡とルヴィラィ本人の襲撃、そして「アトム」起動…二ヶ月という間がそこにあるとはいえ、色々起こりすぎましたね。
ラグナロク発動まで後250日を切ったところですが、兄がいたということに驚く暇もなく新たなアクションを起こすネル。
これもまたラグナロクへ対する布石ということでしょうか。それにしてもマイ&ルフィエのコンビは強ぇぇ…。
ネルのルフィエへの告白がとっても純粋で素敵でした。なんか、萌えとかそういう次元を超えてます(*´д`*)
続きの方お待ちしていますね。
---
GWお出かけでしょうか…私も実は結局間際になって旅行決定してしまい、今夜出奔しますorz
もうGW中盤らしいですがしかし、渋滞はイヤンですね。順番待ちとか大混雑ってのもイヤンですが…。
999文字小説、折角完成させているのなら気にせずUPして下さいな。本編あわせて楽しみにしています!

19◇68hJrjtY:2008/05/03(土) 16:50:16 ID:hlgFgQ9g0
はぁ…新スレになるといつも名前を忘れますorz
↑もコレも68hの提供でした。。

20ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/05/04(日) 10:56:00 ID:BnQc0o7w0
やったね7冊目ができたぜヤッホゥ!!前回からの続きですよ〜

Chapter2:Episode.06-Be My Firend.〜はじめての親友〜

・・・この世に生まれて17年,私はトップに輝くための英才教育を難なくこなしてきた天才少女のはず。
勉学や魔法学,占星術も比肩する者がいないほどの実力,そしてフランデル一の美貌を持つはずの私がっ・・・!!
何故っ,どうしてあんな富裕層でもない普通の女に劣らなければなりませんの!?認めませんわ,そんなの・・・

 ――――誰一人,私の前を行く者はこの世にいてはならないんですのよ!!!―――――

「引っ掛かりましたわね,おバカさんっ!!あなたなんか,私を侮辱した女なんかっ!!消えてしまえばいいのですわーっ!!!」
怒りのあまり目元に涙を浮かべながら,エレナは魔力を最大限に開放し,ウィザードのメテオシャワーにも勝る流星群を
ラティナに向けて浴びせた!!!足元に配置されたウサギに見とれている彼女に,容赦なく黄金の星々が襲い掛かった。
派手な爆発音と分厚い雲のような煙が辺りを包んでいた・・・煙が晴れると,目の前にはクレーターができている。
そしてそこには,頭から血を流して地面に伏しているラティナの姿が。ピクリと動きそうにもないほどダメージを負っていた。
「フフ・・・ホホホホホ,オーホホホホホ!!!やはりっ,あんな女が私に勝てるわけがありませんわ!!ざまァ見なさ・・・」
「もう,お嬢様がそんな汚い言葉遣いしちゃァ元も子もないわね・・・それで?あれがあなたの最大限の力なの?」
いつの間にかエレナの背後に立っていたのは・・・ラティナだった。少しばかり爽やかな微笑みを浮かべてはいるが
その瞳には未だ闘志の炎が燃え滾っている。全く予想だにしていなかった事態に,エレナは振り向くと同時に青ざめた。
「な…なっ,何でっ,あなたはあそこのクレーターで倒れていたは…ず?」焦りの表情しか残っていない彼女が
クレーターに目を向けると・・・そこで倒れていたはずのラティナの体が半透明になり,徐々に消えていくのが映った。
「お嬢様とはいえ,槍使いの回避技術に関しては勉強不足だったみたいね。今のはダミーステップ,わたしの故郷では
 『空蝉(うつせみ)』と呼んでいるわ・・・ま,変わり身みたいなものよ。さ〜て,決着を着けるわよっ!!!」

エレナには理解できなかった・・・今,自分がひどく憎んでいる女が,にこやかに微笑んでいるのだ。
自分は彼女に憎悪だとか怒りとか,そういう感情しかぶつけていないのに・・・なのに彼女は何かを楽しんでいる。
いや違う,あの微笑みはそういうものじゃない・・・ひとつの憶測がエレナの脳裏をよぎった。
「(あの笑みは・・・純粋に闘うことしか楽しんでいないことの顕れ!?)…フフ,私としたことが・・・はしたない。」
「…?どうしたの,早く構えなさいよぅ!」「いいえ…こんなケンカぐらいで高揚するなんて,私ってば。」

瞳を閉じて,何かを回想するように俯くエレナ・・・彼女は理解せざるを得なかった。
屋敷を出るその日まで,彼女はその立ち振る舞いから何までを自由にすることは許されなかった・・・
常に礼儀作法に則った動作をしなければならない窮屈さ,常にトップに君臨し続けることへの重圧・・・
それとは違い,自由に遊び自由に喋り,自分の生きたいように人生を謳歌する一般層の民。
気付けば彼女は,そういった何気ないことに憧れと嫉妬を抱いていたのかもしれない。

だけども,今こうして感情を剥き出しにできる相手が目の前にいる・・・彼女はそれがこの上なく嬉しかった。

「ラティナ・・・いいえ,あやねさん。さっきはあなたやその彼氏を侮辱してごめんなさいね。心から謝らせてもらいますわ。
 そしてありがとう・・・あなたは,私を鎖から解き放ってくれた。そんな気がしますの・・・。」
「どうしたのよ,急にしんみりしちゃって!?それにわたし,ただあなたと闘っているだけなのに・・・・ま,いっか♪
 エレナさん・・・だったかな?一度始めたケンカは決着が着くまでやめられないのはわかるわよね!?行くわよォっ!!!」
「お言葉に甘えて,こちらも行かせてもらいますわよ!!エレナ・クレモンティーネ・・・参りますわっ―――――!!!」

21ESCADA a.k.a. DIWALI:2008/05/04(日) 11:01:15 ID:BnQc0o7w0
あとがき

管理人様,スレ立てありがとうございます。
そして執筆者やコメンテーターの皆様も引き続きよろしくお願い致します^^

いよいよ女同士のタイマン勝負も大詰め,そして戦いから生まれる友情フラグ。
トレスヴァントは追いつけるのか,そしてラティナ(あやね)の親父がついに動く!?
乞う御期待っ!!!

GWは親もいるので人目を気にせずに書ける時間があまりないという・・・orz
それにランサーのイラストも描いている最中なのでして(ry
GW明けには充電しまくって,いっきに放電(?)しようと思います。

22名無しさん:2008/05/04(日) 20:06:20 ID:8FGrmTmo0
待ち望んだ新鯖とうとうオープンですね
無課金でも十分遊べるこのゲームですが、
課金だとストレスなく遊べるんですよね。
月々2500円ポタは欲しい。けど、もったいないなぁって方におすすめです。
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赤点占いもバカにできませんよ!
↑と同時に癖をつけて定期的にやるように心がければ収益アップです
お互いあまりお金を使わずにゲームできるよう頑張りましょう!


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