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250(編集人):2002/11/01(金) 14:38
【夏祭り】後編1/4

 一瞬耳を疑った。その声は確かに俺の知っている、懐かしい声だった。
 ゆっくり後ろを振り返ると。
「こんばんは、遠野君」
 弓塚の姿が俺の目にうつっていた。
 これは夢だろうか、それとも幻だろうか。もしそうならば消えないで欲しい、いつまでも。
「ゆ、弓塚……さん?」
「ありがとう、私のために来てくれたんだよね。嬉しいなぁ、私、ずっと遠野君に会いたかった」
 くるん、とふりかえってツインテールを揺らしながら俺に笑いかけてくれる弓塚。
「夢や幻……じゃないよね」
 違う、そんな事を聞いてどうするんだ。
「うん。遠野君は聞いた事無いかな? 死んだ人はお盆にだけこっちに帰ってくるって。私もなんだ。でも遠野君にここで会えるなんて思わなかった」
 そうか、じゃあここにいる弓塚は……幽霊みたいなものなのか……。
「ゆ、弓塚さん。俺は君に謝らないといけない事がたくさんあるんだ! 俺はどんな理由があれ君を」
 君を殺してしまった。そう言おうとした俺の言葉を弓塚は遮った。
「遠野君、謝らないで。そうだなぁ……今日1日だけ私に付き合って欲しいな、ね? せっかく会えたんだもん。私、ずっと遠野君と一緒に行きたいと思っていた所があるんだ」
 そう言って微笑みかけてくれる弓塚を見ていると、俺は何も言えなくなった。
 そうだ。俺がいくら彼女に謝ったところで、到底許されるものじゃない。だったらせめて彼女がしたい事があるなら、その為に一緒にいてあげよう。
「……こんな俺で良ければ、喜んで」
「ううん、遠野君じゃないと駄目なんだよ。ありがとう、それじゃあ行こう遠野君!」
 そう言って、弓塚は俺の側に寄り添ってくる。
 夕陽に照らされて俺と一緒に歩く弓塚の表情を見ていて……俺は、あの時一緒に学校から帰った時の表情と今の顔がダブって見えた。
 そして気が付くと、俺は弓塚の顔を見ていて涙が流れて止まらなかった。
「ど、どうしたの遠野君!?」
 そんな俺の姿を見て、弓塚が驚いたように俺のほうを見た。
 何やってるんだ俺は。
 俺が泣いてどうするんだ。俺なんかより、弓塚はあの時もっと泣きたかっただろうに。


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