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234(編集人):2002/11/01(金) 14:17
弓塚さつき 支援SS  「夏祭り」(前編)


「あ、秋葉。ちょっと今日は用事があるから出かけてくる」
 いつも通りの朝食の後に、秋葉と一緒にお茶を飲みながら俺はそう切り出した。
「え? 兄さん、用事って乾さんとどちらかへ?」
 ティーカップをテーブルの上に置いて、秋葉が俺に尋ねる。
「いや、有彦は旅行中でね。そうじゃなくてちょっと野暮用さ」
 俺が遠野の屋敷に戻ってきてから秋葉と再開するまで色々とあったけれども、今ではかなり秋葉は素直になった。色々と口やかましいのは健在だが、俺の側にいる時は、本当に笑顔が多くなった。
 まあ寝るときの挨拶が、『兄さん、愛してます』なのは恥ずかしい事この上ないが。
「危険な事……ではありませんよね?」
 俺がはっきりと目的を口にしないせいか、秋葉が心配そうな顔をする。
「そういうのとは全然違うさ。ただ、さ。大抵の所なら秋葉やみんなと一緒でもいいんだけど、今日行く所は一人で行きたいんだ」
 今、俺は幸せだと思う。でも、そんな俺が唯一にして一番気にしている事。
 この一年、忘れた事は一度としてなかった事。
「そうですか……。わかりました、でも門限を過ぎて遅くなるようでしたら必ず連絡して下さい。兄さんは少しでも目を離すとどこか行ってしまいそうで怖いんです」
 そう言う秋葉の目を見ていると、例えどんなに危険な場所でも絶対に帰ってこなきゃいけないという気になる。でも、今日の目的は全然そんなんじゃ無いんだ。 
 俺は秋葉の髪をくしゃくしゃとなでた。
「大丈夫だって、心配しないで翡翠や琥珀さん達とゆっくり待っててくれよ。そんなに遅くもならないさ。じゃあ行って来るから」
 軽く秋葉へ笑いかけて、俺は翡翠の見送りで屋敷を出た。


 ジー、ジーと。
 外は、蝉の大合唱でかなりうるさかった。
 そして、屋敷の中は涼しいものの一度外に出れば、もの凄い暑さと熱気で嫌気がさす。 
「暑いな……」


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