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157『der Tod』その10@28:2004/03/14(日) 07:40
 (……くそっ。痛みが……止まらない。)
 微笑んでいるマキシミンだったが、先程血を吐いてからずっと身体は痛みに悲鳴をあげていた。
動く度に激痛が走り、本当なら喋ることさえ辛くなっていた。だが、イスピンに心配を
かけたくない一心で、マキシミンは演技を続けていた。
 (頼む……。もってくれ。)
 「そうだよね。回復したらマキシミンも手伝ってくれるんだから、これからの事を
考えなきゃ駄目だよね。」
 マキシミンの必死な心が元気そうに見える演技を支えていた。そのおかげで、イスピンは
不安から抜け出せたようだった。
 「ああ、イスピンは希望を持って前を見ていくんだ。そうすれば、皆が後ろを支えてくれる。」
 そう言っている間もどんどん視界がぼやけてきた。マキシミンは布団の中で手を握りしめた。
 (頼む……。後少しなんだ……皆が幸せになるまで……もう少しなんだ。)
 「うん。じゃあ、マキシミンが元気になったら、弟妹さんと一緒に引っ越す新しい家を
探そうよ。ボクが町の空き家の中から候補をあげておくから。」
 「そう……だな……。」
 明るく話すイスピンとは対照的に、マキシミンの顔はどんどんと青ざめていった。
 「……どうしたの?何だか……顔色が悪いみたいだけど。」
 それに気付いたイスピンが顔を覗き込んできた。
 「あ……、いや。そろそろ部屋が陰ってきたからそのせいだろ。」
 「その割には……ちょっと悪すぎるような気が……。」
 「ったく、少しはパートナーを信じろ。少し酒でも飲んで寝れば、明日は元気になるさ。」
 いつも通りを演じたマキシミンは、枕に深く寄りかかった。
 「イスピン。悪いが、そこにある酒を飲ませてくれ。」
 そう言ってマキシミンは棚の上に置いてある酒瓶を指した。
 「もう。お酒は駄目だよ。」
 「少しくらいいいだろ。俺は飲まないと良く寝られないんだよ。」
 イスピンは呆れたように肩をあげると、グラスに注いで持ってきた。
 「はい。今日はこれだけで我慢して。生命力が回復したら、もう少し飲んでいいから。」
 マキシミンは受け取ると、酒を一気に流し込んだ。
 「ん……。やっぱり酒は美味いな。」
 飲み干したグラスをイスピンに手渡すと、マキシミンは大きく息を吐いてそう言った。
 「ありがとう、イスピン。……俺はお前みたいなパートナーに出会えて幸せだったぜ。」
 「な、何言ってるの。そんな最後みたいな言葉……。」
 イスピンはそう言ってマキシミンの手を取った。
 「幸せになれよ、俺の……お姫様……。」
 目を閉じてそう言ったマキシミンの手から力が抜け、イスピンの手から滑り落ちた。
 「や……、やだ。何ふざけているの?」
 イスピンはマキシミンが意地悪をしていると思って身体を揺すった。
 「ね、ねえ。お願いだから、そんな意地悪しないで。お願い、目を開けて、ねえったら!」
 いくら揺すってもマキシミンは反応をしなかった。イスピンの顔色がみるまに
青くなっていった。
 「マキシミン、目を開けて!ボクの事を手伝ってくれるんじゃなかったの?皆で一緒に家を
探すんじゃなかったの?約束したじゃない!元気になるって言ったじゃない!」
 マキシミンを揺らし続けるイスピンの身体は震えが止まらなかった。そして、イスピンが
どんなに呼んでも、どんなに揺すっても、マキシミンの鼓動は止まっていた。
 「嘘……でしょ?嘘よ……ね?嘘……。」
 イスピンは信じられないのか、信じたくないのか、首を振りながらそう呟きつづけた。
 「い……、いやぁぁぁぁぁぁぁぁ…………!!!」
 イスピンの絶望の叫び声が、暗くなりはじめた部屋の中に響いた。


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