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TWのシナリオについて考えてみる

124『das Bild』その3@28:2004/03/10(水) 17:17
 「ナヤ。ギルドから呼び出しがあったんだが、何か用事はあるか?」
 次の日。短剣の手入れをしていたナヤトレイは、部屋に入ってきたシベリンに声を
かけられた。
 「ううん。今あるのはこの短剣の手入れだけ。」
 「じゃあ、それが終わってからだな。」
 そう言ってナヤトレイの向かい側に座ったシベリンは、机の上の水差しからコップに水を
入れた。
 「でも、ギルドから呼び出しって珍しいね。」
 「ルベリエから直々の呼び出しだからな。何かあったんだろ。」
 「……黒衣の剣士の話だったらいいね。」
 自分の全てを失わせた相手を探すシベリンの執念も努力も苦悩も見てきたナヤトレイに
とって、一時も早くその日が訪れる事を望むのは当然だった。人前では明るく振舞っていても、
一人になるとシベリンは立ち直れないかと思うほど落ち込む事もあった。
 「そうだな。」
 胸につけられた傷の場所に手をあてながらシベリンは少しだけ俯いた。
 「…………。」
 ナヤトレイは手入れしていた短剣を二、三度軽く振って具合を確かめると、腰のベルトに
ある鞘にしまった。
 「シベリン。短剣の手入れが終わったよ。」
 「そうか。じゃあ、ギルドに行きますか。」
 ナヤトレイに声をかけられたシベリンは、両手でひじ掛けを叩くと椅子から立ち上がった。
ナヤトレイも立ち上がるとシベリンの後について歩き出した。
 二人がギルドまであと半分という所まできた時だった。シベリンが立ち止まってから
ギルドと反対の方向に歩きだした。
 「……?」
 その行動を疑問に思ったナヤトレイがシベリンの視線の先を追うと、そこには可愛い服を
着た赤毛の女性が歩いていた。
 「…………。」
 ナヤトレイは大きな溜息をつくと、仕方なくシベリンの行った方向に歩き出した。
 「そこの綺麗なお嬢さん。俺と一緒に食事でもしませんか?」
 シベリンは女性をナンパしようと並んで歩きながら喋っていた。
 ナヤトレイはシベリンのこの性格だけは嫌いであった。その理由は嫉妬ではなく、純粋に
時間の無駄という事からだった。
 これのせいで何時間も人込みの中を歩かされた事もあるし、余計な出費が増えるのも
問題だった。ギルドの報酬はかなり良い方なのだが、金がなくならないかぎり働かないのでは、
その出費は余計に時間の無駄を作るようなものであった。
 「……私、先に行ってる。」
 なんとか十分ほど後をついていたが、さすがにこれ以上つきあっていられないので、
ナヤトレイはそうシベリンに声をかけてからギルドに向かって歩き出した。
 「ま、待てよ!おい、ナヤ!」
 シベリンはナンパしていた女性に別れを告げると、慌ててナヤトレイの隣まで走ってきた。
 「ナヤ!……ったく、少しくらいいいじゃないか。」
 「……十分はつきあった。」
 シベリンが前に立って話しかけてきたが、ナヤトレイは目もくれずギルドに向かって
歩き続けた。慌ててシベリンはまたナヤトレイの前に立った。
 「三十分くらいは許してくれよ。」
 「……私には関係ない。やりたいなら、シベリンだけしていればいい。」
 少しだけ立ち止まってそう言うと、ナヤトレイはまた歩き出した。
 「そりゃそうだけどさ……。」
 ここまで不機嫌になってしまったナヤトレイをなだめる事は困難なので、シベリンは大きく
溜息をつくとナヤトレイの後について歩き出した。


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