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TWのシナリオについて考えてみる

108『der Wille』その11@28:2004/03/09(火) 13:18
 「ジケル!」
 呼ばれたジケルはミラの隣に立った。
 「何か用ですか?船長。」
 「船に乗ってる全員をここに集めて。」
 「は?」
 「急いで!」
 ミラに睨まれ、ジケルは手分けして船に乗っている全員をミラの前に集めた。
 「あそこに見える竜巻があるでしょ。」
 ミラは迫ってくる竜巻を指差した。
 「あの竜巻、ジュールを殺した化け物が中にいるの。」
 「え?あの化け物死んだんじゃなかったのか?」
 マキシミンの言葉にミラは首を振った。
 「死んでいたらこんな事にはなってないでしょ。つまり、あいつは死んだふりを
してたのよ。」
 「なんてこと……。」
 イスピンが愕然と呟いた。
 「それであたしにいい提案があるの。その為に皆に従ってもらうわ。」
 「何ですか?お姉さん。」
 「この船に乗ってる火薬を使って、船ごとあの竜巻を吹っ飛ばすのよ。」
 「ええっ?!」
 船員達はこの提案にざわめきだした。さすがに大切な船を犠牲にするなんて誰も
賛成する気になれなかった。
 「これしか方法はないのよ。このまま港に戻ったら、港で大勢の人が犠牲になる。
それに……。」
 ミラはそこで言葉を区切って俯いた。
 「あの化け物……あたしだけを狙っているのよ。」
 「!」
 「だから、あたしの手で最後の決着をつけさせて。」
 そう言って顔を上げたミラの表情には恐怖の欠片もなかった。
 「駄目です!そんな事賛成できるわけないでしょう。」
 「ジケル。あたしは誰?」
 「……紅い射手の船長です。」
 「なら、これは船長命令よ。皆を連れてボートで港に向かいなさい。」
 「…………。」
 ジケルは唇を噛み締めて俯いた。
 「どうにかならないのか?」
 マキシミンがそう言ったが、その表情からは諦めの色しか見えなかった。
 「あんな厚い水壁を壊すなんて、あんた達の魔法だって無理よ。それくらいあんたにも
解ってるでしょ。」
 「…………。」
 ずばり言われたマキシミンはもう何も言えなかった。
 「船で逃げ回るのは駄目なの?」
 泣きそうな顔でイスピンはミラの腕にしがみついた。
 「無理よ。船だってさっきの戦闘でボロボロなのよ。これで一生逃げ回る事は
不可能だわ。」
 「…………。」
 船だけの問題ではない。港にも入れないということは、水も食料も手に入らないのである。
これでは餓死か壊血病で死ぬのを待つだけだった。
 「さあ、もう時間がないの。さっさと行動してちょうだい。」
 「お姉さん。」
 今まで黙っていたティチエルがミラの手を掴んだ。
 「帰ってくるんですよね?」
 「……当たり前じゃない。ちょちょっとお仕置きしてくるだけなんだから。」
 ミラは笑顔で明るく返事をした。
 「本当ですよね?」
 「本当よ。じゃあ、約束の印にこれを渡しておくわ。」
 そう言うと、ミラは耳にしていたピアスの片方をティチエルの手に乗せた。それは、
ミラの瞳と同じ緑の石のだった。
 「それはあたしの一番のお気に入りなの。必ず返してもらうから、大切に持ってるのよ。」
 「はい。私、絶対になくしたりしません。」
 「じゃあ、皆と一緒に先に港に帰っていてね。すぐに戻るから。」
 ミラは優しく微笑むと、ティチエルの頭を優しく撫でた。


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