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スタンドスレ小説スレッド

443N2:2003/12/25(木) 17:47

 モ蔵が眼を覚ますと、時計は6時前を指していた。
 部屋の中には、青年の姿は無い。
 (例の『日課』とやらにでも出掛けたのか…)
 そう思うとモ蔵は起き上がり、寝間着から作務衣に着替えると、部屋のラジオを付けた。
 そして周波数をNHKに合わせると、ニュースを聴きながら静かに6時半を待った。


 昨晩のことだ。
 初代モナーが作った夕食はご飯・味噌汁・アジの開き・梅干と質素なものであった。
 だが、モ蔵にはむしろその方が良かった。
 碗に盛られた飯が半分ほど減った頃、突然初代モナーがモ蔵に話し掛けた。
 「ああ、そうだ、おっさんに言っておくことがあった。明日から朝オレがいなくても、別に心配しなくていいから」
 「…どういうことだ?」
 「オレ、毎朝5時頃からランニングしてるんだ」
 「ランニングに?お主が?」
 卓上に並ぶ料理に伸ばした箸を戻して、モ蔵は初代モナーに聞いた。
 「何だよ、その信じられないって言いたそうな顔はー。オレが毎朝そうして何が悪い?」
 少々不機嫌そうな顔をしながら、初代モナーは言い返した。
 「すまぬが…決してそういうことが似合うとは思えなかった」
 率直な感想を述べると、初代モナーはばつの悪そうな笑みを浮かべた。
 「ああ…まあ確かにそりゃそうだ。今までにもオレの習慣を聞いてびっくりしなかった奴の方がまれだ。
 そりゃ普段の素行だけを見てればそう考えられても仕方ないけど。
 …でもなおっさん、おっさんだって、オレのこの習慣が無かったら今頃どうなっていたか分かんねえぞ?」
 「…それは一体どういうことだ?」
 「昨日オレがおっさんを見つけたのも、あそこがオレの町内一周ランニングのルートだったからさ。
 びっくりしたぞ、ホントあの時は。今まで何年も毎日欠かさず走ってたけど、こんなことは初めてだったんだから」
 「…それもそうだな、無礼なことを言って済まなかった」
 「ん、いいよ。別に気にしてないから。それと、朝飯は部屋にあるもので適当に済ませてくれ。
 オレは行った先で食っちまうから、何か自分で勝手に作っても構わないから」
 
 
 「皆さん、おはようございまーす!!」
 (おはようございまーす!!)
 ラジオから、若い男と群集の声が響く。
 8月14日、木曜日。
 この町にやって来て今日で2日目。
 初めからそうなることは予想していたが、やはりすぐに『矢の男』と決着を付けることは出来なかった。
 では果たして、今度まみえる時には彼を討ち取ることは本当に出来るのだろうか?
 昨日戦ったとき、「暗・剣・殺」は確かに当たったはずであった。
 しかし、実際にはかわされ、結果はあのザマだ。
 それでは何故男は自分の攻撃を瞬間的に避けることが出来たのだろうか。
 自分の記憶が正しければ、以前の彼にはそんな能力は無かったはずだ。
 と言うことは成長したのか?
 …分からない。
 何度考えても頭の中では疑問が渦巻くばかりだ。
 それよりも、彼の能力を暴く前に、剣を避けられた自分の腕を恥じるべきである。
 …精進せねば。
 と、ラジオからはピアノの音が鳴り始めた。
 モ蔵は男の声に合わせて、背伸びを始めた。


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