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長編、長文支援スレ

895主支援</b><font color=#FF0000>(xlSWAKKA)</font><b>:2003/09/29(月) 02:39
『行くぞ、リュカ』
『うんっ!』

父さんの腕は、いつも逞しくて、傷だらけだった。
何年も冒険をしつづけたその腕を見て、僕はそれに憧れていた。
その強そうな腕に、いつかはそうなりたいと思っていた。
僕の視線に気付いたのか、父さんは僕のほうを向くと、
一瞬微笑の中に何か意味があるような目をして、また踵を返して歩き出した。
僕は父さんから離れない様に、必死に追いかけた。
細かった僕の腕は、ただ走りながら振ることしか出来なかった。

父さんの腕は、最後まで逞しかった。
強い炎に焼かれて、やがてその火の勢いの中に消えてしまうまでその腕は憧れていたそれだった。
僕は燃えて消えていってしまう父さんをただ見ることしか出来なかった。
細かった僕の腕は、弱り果てて動かすことも出来なかった。

それから10数年…それ以上の時間が過ぎて、僕は大人になった。
何年もの地獄の中で傷つき、そして冒険し続けたこの腕は、
まるであの時の父さんのように傷つき、逞しかったあの父さんの腕に似ている。
そんな僕の腕を見てくる少年がいる。その子は自分の血が繋がった、運命の渦の中で生きている子供。
その子供の目は、かつての僕と同じ羨望の目。子供の細い腕は、弱かったころの自分自身を見ているようだ。
…この子もいつか、僕と同じように運命に傷つくのだろうか?
…そして僕は、あの時の父さんのように、身を呈してまで子を思いつづけられるのだろうか?
僕はそれを隠すように微笑む、少年も微笑み返す。きっと僕の表情は、あの時の父さんの表情。
父さんのあの表情の意味を、僕は理解することができる。

でも、あの時とは違う。少年には力がある。背中に重たげな、運命の剣を背負っている。
そして少年の後ろには双子の姉が、そして何人も…何匹もの仲間がいる。
僕はこの子達と、仲間達と一緒に父さんが出来なかったことを遂げよう。きっと僕は、僕達は出来るはず。

「行こう、父さん」
「…ああ」

僕達は歩き出す、運命に立ち向かうために。運命を断ち切るために。


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