長編、長文支援スレ

74：月は東に　日は西に：2003/09/28(日) 20:14: 熱風は高く、わたしの髪を巻き上げながら吹き抜けていく。

じりじりと焼け付くような太陽の光が、顔を射す。
やや西に傾きかけた太陽に向かって歩く以上、しかたのないことだけれど。

ムーンブルク西の平野にまたがる砂漠。
かつてはいくつものキャラバンが行き交い、港町ルプガナとの交易の盛んさを物語っていたここも、今はわたしたち以外に人影がない。

あの日から――
ハーゴンの配下によって城が炎に包まれた、あのときから。
王族不在の国がどれほど乱れるものか、この目で理解したつもりだった。
犬となったわたしの前に突きつけられた現実。
残存したわずかな兵士や難民たちは。東のムーンペタへと流れついていた。
けれど、犬であるわたしには彼らをどうすることもできない。
「屈辱の生」とわたしを犬にした魔物は言った。
その通りだった。
苦しむ民衆を前にしてなにも出来ず、ただ見ていることしかできない王女。
屈辱に耐え、きっとやってくる彼らを待って生き続けることがわたしの日課だった。

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