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長編、長文支援スレ

77</b><font color=#FF0000>(cwYYpqtk)</font><b>:2003/08/30(土) 08:54
「そ、そやな〜、ともちゃん〜そりゃ男のひとのほうがええもんな〜
あはは、ごめんな、迷惑かけたみたいや。そのチョコ捨ててもうて、ええで…… 」
 大阪は、途切れ途切れになりながらも何とか、全ての言葉を紡ぎ終えると、
黒髪を激しく揺らしながら、背を向けた。
 そして、上履きが床を叩く音と、嗚咽の声を混じり合わせながら、出口に向かって
駆け出した。
 智は、ドアを叩き付ける様に閉める音が、彼女の耳朶を鋭く弾くまで、一歩も
その場を動けなかった。
 窓の外からは、無数の純白の結晶が、夜の領域に足を踏み入れ始めた鉛色の
空から静かに舞い降りはじめていた。

「ほらよ」
 暦は綺麗に包装された小箱を、ショートヘアの少女にむかって投げ渡した。
「ああ」
 手作りチョコは、暦のベッドの上で微かに弾んだ後に着地した。智は、物憂げな
表情でそれを見つめている。
「どうした? 元気ないな」
「なんでもねーよ」
 ベッドに寝転んでいる智は、ややぶっきらぼうに答え、脇に置かれた箱を
手にして、ゆっくりとリボンを解いていく。
 それから、中に入っていた厚みのあるチョコの一片を切り取り、口の中へと
放り込んだ。
 甘くてほろ苦い味がゆっくりと広がり、瞳から溢れ出た一筋の涙が、
彼女の頬を静かに濡らした。


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