長編、長文支援スレ

72：台詞屋</b><font color=#FF0000>（kAB9DQ7c）</font><b>：2003/08/30(土) 03:18: 　～どうか笑顔を～

　そのひとは、美しい巻髪を風になびかせて、厳しい表情をしていた。
　彼女が見つめていた先に美しい城があった事を、僕はよく知っている。
　きっと城に知人がいたのだろう。あの城に住んでいた人は皆、とても
むごい殺され方をしたと聞いている。生き残りであるはずがない。
　でも……。何故か、彼女の顔に見覚えがあると思った。
　もしかして、春祭りの妖精役をしておられた、あの城の王女ではないだろうか？
　生きているはずが、ない。でも、生きていて欲しい。
　呼びかけるべきだろうか？　いや、呼びかけて幻だったら？
　結局、僕には、だまって彼女を見つめている事しかできなった。　

　彼女は堅い表情を崩さずにいた。ずっとずっと。
　やはり、あの城の王女なのだろうと思う。そうでなかったら、こんなに長い間、じっとこうしているはずがない。
　あんなに厳しい顔で、見つめ続けているはずがない。

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