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練習スレ

108世にも名無しさん:2006/03/19(日) 19:43:56
どういうことだ。もはや彼女の理解の域を超えていた。徹というのは恐らく先刻納屋で二階から顔を見せた幼い少年、しいてはこの老父の娘夫婦の孫の事であろう。しかし、今確かにこの老父は、この目の前に立ちはだかる異形の化け物を「徹」と呼んだのだ。拳銃を叩き落とされた永瀬の目の前で、更に忌まわしい出来事が展開した。その「貝」の下に空いた穴から、泡立つような音がし、そこから粘液の光沢をおびた円筒形の極めて有機的なホースのようなものが飛び出したのだ。彼女は嫌悪感を覚え後ずさった。そして、そのホースがびちゃびちゃと気色の悪い音を立てながら鎌首をもたげ、その先端が此方に見えた。そしてその先端に形作られていたものを目の当たりにした瞬間、激しい震えが彼女を襲った。あの、二階から覗いていた少年の顔がそこにあったのだ。

------オ・・・ジィ・・・チャァ・・・ン・・・・。

腰を抜かした永瀬が木造の床に座り込み、足をばたばたさせながらその異形から身を遠ざけようとしていた。しかし、老父は目の前で小銃を下ろし、床にそのまま力なく落とした。

------徹・・・ごめんよ。おじいちゃんが悪かった。こっちへおいで・・・。

彼女は横から、老父の顔を覗き込んだ。感極って潤った目に、老いた身体を震わせながら一歩一歩その異形に近づいていった。そして、その異形の少年の頭を自らの懐に抱きこんだ。すると、間髪居れずに何かを刃物で抉るような鈍い音が響いた。生暖かいものが永瀬の顔に飛び散った。永瀬はそれを手に取ると、それが血である事を即座に理解し、目の前で起きている事を把握するために顔を上げた。

異形の少年を胸に抱きこんだ老父の腹を、巨大な「銛」が貫通していたのだ。

白目をむいた老父が足を宙で痙攣させ、口から血を流しつつ、異形の少年が頭を一振りした瞬間に地面に叩きつけられた。その異形の少年は、その忌々しい顔面を老父の血で真っ赤に染め口からは先刻老父の身体を貫いた銛、いや、正確にはエナメル質で出来たような大きい棘、がのぞいていた。そして、その「死」をそのまま具象化させたような「顔」が永瀬を視線に捕らえた瞬間、永瀬の身体は自由を取り戻していた。ただ分かる事は一つであった。

殺される。

彼女は死に物狂いで老父の落とした小銃をとりあげ、その異形の少年の「貝」へ向け、即座に引き金を引いた。肩に与えられた衝撃(リコイル)が永瀬に生きる意志を取り戻させた。銃声とともに、その異形の少年は、頭の「貝」に弾丸を受け、ヒットバックしたものの、またすぐに体勢を取り戻し、永瀬に向かってきた。弾丸の命中した箇所は、少々傷がついただけで殺傷には至らなかった。直感から、永瀬は小銃のボルトを引き、再装填した。その瞬間、異形の少年が奇声を上げながら駆け寄ってきた。永瀬は悲鳴を上げながらも、飛びついてきた貝の化け物の顔が収納されている「穴」に小銃を突っ込んだ。相手の勢いで床に押し倒されてしまったが、小銃が「穴」を塞いでいるせいで、銛を出す事が出来なくなってるようだ。異形の少年の幼い手が永瀬の肩をつかんだ。一際大きな悲鳴が上がった。

彼女は引き金を引いた。


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