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練習スレ
105
:
世にも名無しさん
:2006/03/19(日) 19:42:26
老父の家と裏の納屋が見えた。相変わらず、送り火がほの暗い納屋の周辺を照らし続けていた。それを目の当たりにした永瀬は安心感に満たされた。とりあえず自分は生きているんだ。今日にでも市街地に出て、本土へ有線電話で連絡を取るのが最善の策だ。永瀬は自らそう思い込んだ。そして、拳銃をホルスターに戻し、懐中電灯を片手に納屋の前を通りがかった。ふと、目を閉じた瞬間、また奇妙な映像が頭の中に滑り込んできた。しかし、先程ほど彼女は驚く事も無く、視線から見える景色を探ってみていた。やはりお世辞にもあまり見やすいものではない。一体どんな理屈なのだろうか。詮索すればするほど混乱しそうな状況であるが、この現象を科学的に調査してみる価値があるのかも知れない。もしかして柘植の狙っているものと何か関係があるのだろうか。そんな事を考えているうちに、瞼の裏で展開されている映像が次第に鮮明になってきた。
------私?
その視線の持ち主は、立っている自分の自分の姿を、横の少し高い位置から見ているようだ。永瀬は目を開け、左手を見ると、二階建てのほとんど廃屋化した納屋があった。たしかあの老父の娘夫婦の孫が寝ていると聞いた。此方を見ているということは、もしかして起こしてしまったのだろうか? 同じく子持ちである彼女は、我が子に接するかのように其方に問いかけた。
------起こしちゃった? ごめんね・・・。
永瀬は何も無い暗闇に問いかけると、丁度二階の窓から何かが顔を覗かせた。みるとそれは、五歳ぐらいの少年の顔であった。暗闇なのであまり容貌までは判別できないが、まだあどけない表情をした子供の顔が無邪気に納屋の二階から此方をみているのだ。彼の両親はじき迎えに来るとあの老父が言っていたのを思い出し、永瀬は別れ際に手を振って母屋へと入っていった。
------戻ったわ・・・雨はやんだみたいね。
いきなり開け放たれた扉の音に一瞬驚いた表情を見せたが、老父は玄関口に駆け寄ってきた。手には先程の小銃が握られていた。
------大丈夫だったかね?
そう聞くと、永瀬が何か言う前に今しがた彼女が入ってきた戸口に駆け寄り、外を見回した後にいそいで閉めた。永瀬を心配するというより、他の何かを恐れているように見て取れる。
------搭載されていた無線機も駄目だったみたいね。連れも居なかったわ。あとで町に出て外部に連絡を取ることにするわ。車を借りても・・・
------この島はもう終わりだ・・・。
永瀬の言葉を遮るように、老父が言い放った。二人の間に沈黙が流れた。永瀬には老父のいう事が理解出来ていなかった。この島はもう終わり? 一体どういうことだ?
------え・・・?
老父は小銃を肩から下ろし、項垂れる(うなだれる)ように続けた。その表情からは先刻の少々品に欠けるほどの活力は全く想像かつかず、まるで別人のようであった。
------神の怒りに触れたんじゃ。どうあがこうが、この呪いからは逃れられない。いつか起こるとは思っていたが、まさかこんな形で・・・。
老父がそこまで言いかけた時、今度は彼自身の言葉が遮られた。しかしそれは永瀬ではなく、家屋の奥から突然した物音によってであった。老父は暫し永瀬と目を合わせながら、小銃を手に家の奥へ走り出した。それに反応して、永瀬も土足のまま老父の後を追った。
------待って!
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