Good Samaritan law(よきサマリア人法) https://www.med.or.jp/doctor/rinri/i_rinri/b10.html
よきサマリア人の挿話はルカによる福音書第10章にあり、欧米では誰もが知っている話である。
強盗に襲われて半死半生の人が倒れていた。
通りかかった祭司もレビ人も通り過ぎ、あるサマリア人だけが彼を助けて介抱し、宿屋に運んでその宿代まで負担したという。
キリストは、この寓話を紹介した後、当時の律法学者に問う。
「この3人のうちで誰がこの倒れた人の隣人であるか」と。
では、医師は、このような行き倒れや乗り物内で救急患者に出会った場合、どうすべきか。
解答は明白なようだが、実際には、たとえば国際線の航空機内で救急患者が出て(しかもそれは日常茶飯事的に起こる)、乗務員が「お医者様はいらっしゃいませんか」と尋ねたときに、すぐに立ち上がるのをためらう医師もいるであろう。
それにはいくつかの理由がある。
① 医師も専門分化が甚だしく、自分が救急の専門家ではない場合、実際には役に立たない可能性がある。
② たとえ救急の場面に立ち会った経験のある医師でも、眼前に現れるのは、診たこともない患者であり、通常はこれまでの医療記録や経過も一切わからない。
しかも航空機内に一定の医療器具があるといってもそれには限界がある。
助けてくれる他の医療職もいない。
③ これらの要素の結果、最善の措置が取れなかった場合、何らかの法的責任を問われるおそれがある。
アメリカのすべての州やカナダでは Good Samaritan law(よきサマリア人法)という法律が制定されており、最後の③の心配に対処している。
要するに、故意やそれに準ずるような重過失がない限り、医師の責任を問うことはできないと明記する。