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たれこみスレ
2
:
名無しタン(*´Д`*)萌え〜
:2005/03/05(土) 20:10:18
御堂岡物語
未魅 [ID:Cj3A7DQLZs.] 2000/03/30(木) 04:50
次の日の夜、黒揚羽の働いているバーに行ったら、予想通りというか、黒揚羽はいなくて。
「あ。御堂岡。黒揚羽だけどねえ、忙しくなる時間の前に来るっていってたよ」
最近、たまに話すようになった、もうひとりのバーテン、安東清がそういいながら、セックスオンザビー
チをオレの前に置く。そのナマエが好きでよく、頼むのだけれど、オレはあいかわらず甘いカクテルが
好きで、よく、黒揚羽はオンナみたいだと笑う。
ぼんやりとそれをすすりながら、黒揚羽が来るのを待つ。この店が一番混み始めるのは、午前2時くら
いから。店のドアがあくたんびに、そちらが気になって。かかっている音楽は、なんだろうこれ。なんか
60年代の音楽。オールディーズ。タイトルはよくわからない。そして、午前1時半。黒揚羽が、来た。オレ
の姿を見つけて、すこし困ったように笑う。その笑みが嫌なカンジ。カウンターに入ってきて、それか
ら、もう安東清のところ。ほんの少しだけ、オレのことを気にしてるのがわかる。
「調子、悪いの?」
黒揚羽に囁く安東清の声が聞こえて、黒揚羽が困ったように笑う。
「悪いというか、風邪。バカがひく夏風邪です」
「熱は下がったの?」
「昨日よりは下がりました。今38度くらい?」
「帰った方がいいんじゃない?」
「ガキじゃあるまいし」
答えながら髪をしばって、黒揚羽はひとつ伸びをする。そんなこと言って、オレとの約束は反故にしたく
せに。
「そりゃそうだけど、仕事より大事でしょ」
「あ〜、ま、大丈夫でしょう。あと3時間だし。あ、いらっしゃいませ」
入ってきた客に挨拶をして、それからシェイカーを手にたまっていたらしきオーダーをこなしはじめる。
シェイカーを振るときの黒揚羽の顔は、結構好きだ。じっとオレが見つめていたのに気がついたのか、す
こしだけ、こちらを見て、わらう。別に、カウンターに座っていて、相手されないのは、結構いつものこと
で、でも、今日は、避けられてるみたいで、気になる。
曲の雰囲気が変わった。去年大ヒットした洋画の主題歌。
「やあ」
黒揚羽の声。
「昨日は、悪かったですね」
「いいよ、別に。まだ、その人、調子悪いの?」
「ええ。熱が下がらなくて」
うしろでしばった髪が気になるのか、それを直しながら、黒揚羽が答えて。なんだか、胸の奥にモノが
つまっているみたいなカンジ。
「そっか。じゃあ、オレ帰るね ワラ」
「え―――ああ。ごめん」
「いいよ、仕方ないじゃん」
席を立つ。ケツポケットから財布を出して、そしたら黒揚羽がひとこと。
「私のオゴリでいいですよ、御堂岡さん」
「いいよ、払う」
「御堂岡さん」
「払うってば」
ああ、なんかよくわかんないけど、イライラする。
「じゃあね」
なんだかコドモみたいだ。っていうか、こんなのコドモのすることだ。わかってるけどどうしようもない。
黒揚羽にお金をおしつけて、店を出る。すぐのところにあるエレベーターを待っているのもなんだかイライ
ラして、階段を駆け下りる。
「御堂岡さん!」
背から呼ぶ声。黒揚羽の声。振り返るな、そう思って、でも肩をつかまれる。
「ごめんなさい」
「別に、あやまってもらわなくていいよ ワラ」
「本当にごめんなさい。この埋め合わせは絶対しますから」
「だから、別に―――」
言葉をくちづけで塞がれる。それも、下から、触れるだけの、まだ、知らない種類のくちづけ。
「ごめん」
やさしい、唇の、感触。うれしいんだか哀しいんだか悔しいんだか、よくわからない。
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