したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

虐待・虐殺小説スレッドPART.4

439:2007/10/21(日) 19:25:22 ID:???
エピローグ
『表』



視界を阻む程降りしきる雨の中を、ひたすら走る。
灰色に染まった世界で、AAの気配は己以外に感じなかった。

殆ど同じような景色を縫い、駆けていく。
すると、不意に視界が開けた。

足を止めてみれば、そこは懐かしい場所だった。
一ヶ月前に、奴らの手から逃れてきた場所。
似たような景色の中でも、ここだけははっきりと覚えていた。




「・・・う、っ」

不意に、吐き気を催す。
吐こうとすると、胸元に鋭い痛みが走った。
構わず、胃の中にあるものを押し出す。
雨が降っているさなかで、別の液体が撒かれる音。

全てを吐き、二、三度咳き込む。
胸の痛みが取れないまま、出たものに目線を落としてみる。

「あ・・・」

そこには夥しい量の血が流れていた。
愕然として、握っていたナイフが指から滑るように落ちた。

堪らず、何度も咳き込む。
口を押さえている手に、更に血が付着していく。
止まったかと思えば、立て続けに目眩が襲ってきた。
成す術なく、その場に倒れ込む。

正直、よくここまで来れたなと思う。
ギコの恐ろしい暴力のせいで、ボロボロになった身体。
あの時に、暴れた肋骨が内臓を傷付けた事には気付いてはいた。
それが今になって、揺り返しのように一気に襲ってくるなんて。

喉が熱い。
身体は冷たくなっていく。
段々と、呼吸することすらきつくなってくる。




死ぬ。
その運命は、すぐそこまで来ていた。
眼も霞み、もう何も感じることができない。
指先一つ動かせない程麻痺してきた時、ふと眼前のナイフを見遣る。
銀色の刃に雨粒が落ちては消え、まるで宝石のように輝いている。

(・・・ああ)

『生き延びる』という願いが潰えそうな今になって、いいものが見れた気がした。
思えば、このナイフがなければ、自分は何も出来なかった。
身体の一部のように、当たり前のように扱ってきて、あまり向き合うこともなかった。
今更だけれど、このナイフに感謝をしなければ。

メイは心の中でありがとうと呟き、醒めることのない眠りへと落ちた。





―――被虐者であったメイは、被虐者の運命を拒んでここまで来た。
   そして、それに必死で抗ってもきた。
   だが、その時はあまりにも短すぎた。
   たった一ヶ月の間だけ、自分なりの冒険をした。
   雨に打たれ、横たわっている今、彼は何を想っているのか。
   それは、誰にもわからない。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板