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おちゃめくらぶ掲示板
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モバイルノートに通常版CPUを搭載するワケ
先日発表されたLet'snote J9はあのサイズで超低電圧版(ULV)のCPUではなく通常版の
CPUが搭載ということがすごいと感じたけど従来は日本のモバイルノートは超低電圧版の
CPUが主流だったけどここ最近は通常版CPUを搭載するのがトレンドになっているという
ことを考えるとそれほど驚くことでもないにょ。
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/20101005_397497.html
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/20100929_396599.html
dynabook R730、LIFEBOOK PHいずれも通常版CPUが採用されているにょ。(R730はその前身
となった今年の夏モデル「RX3」ですでに通常版CPUを搭載していたけど)
12.1インチクラスというのは日本では超低電圧版CPUが高い勢力を持っていたのだけど
Let'snoteも昨年登場のN8、S8で通常版CPUを搭載機種にモデルチェンジをしたにょ。
ThinkPadをはじめとする海外メーカーでは古くから通常版CPUを採用しており超低電圧版
CPUを搭載機種は一部に止まっていたけど日本では多くの機種に採用されていた背景には
日本のモバイルノートは「薄型」「軽量」「長時間駆動」というのが武器になっていた
からにょ。
それなのに通常版CPU搭載機種がここ最近急増している背景には下記の3つの理由がある
と思われるにょ。
(1)通常版CPU搭載でも長時間駆動が可能になった
(2)超低電圧版CPUのプレミアム性が無くなった
(3)CULVノートなどとの棲み分けのため
(1)超低電圧版CPUというのは文字通り駆動電圧を低くすることで消費電力が低くなって
いるにょ。
同じアーキテクチャであれば計算上の消費電力はクロックに比例し、駆動電圧の2乗に比例
するからね。
消費電力がほぼ熱へと変わるCPUはその消費電力がTDPに与える影響が大きいにょ。
つまり、消費電力が大きなCPUほど熱設計電力(TDP)も大きくなるというわけにょ。
もっともこれはCPUの場合はグループ毎に設定してあることが多いため超低電圧版、
通常版という枠の最上位クロックのものがそのTDPの上限近くの消費電力に達するものの
下位クロックのものはTDPよりも低めの消費電力となっているにょ。(これはCPUの
クロックによってPCの設計を変えなくても良いという配慮のため)
超低電圧版CPUはクロックが低い故にシングルコアCPU時代は通常版CPUのTDPが25〜27W
だったのに対してTDP5Wだったにょ。
これならば5倍消費電力の差があるかというと必ずしもそうではないにょ。
それは「CPUの消費電力ががシステム全体に占める割合はそれほど大きな物ではない」と
いうことに加えて「通常の使用時においてCPUはアイドル時の時間が長い」ということが
理由となっているにょ。
単体GPUを搭載していないモバイルノートにおいてはCPU以外の消費電力は5W〜10W程度
あるためCPUがフルスピードで動作している場合(フルロード時)であれば通常版CPUは
超低電圧版CPUに比べて大幅に駆動時間が短くなるもののCPUの消費電力に比例して短く
なるというわけではないにょ。
さらにCore2からは消費電力を抑えるためにCPUの動作クロックだけではなく駆動電圧も
動的に変化させる仕組みが取り入れられたにょ。
このためアイドル時の消費電力は超低電圧版CPUとほとんど変わらなくなったにょ。
つまり、動作時の消費電力さえ何とかできれば駆動時間において超低電圧版CPUよりも
短くなるという心配は要らなくなるにょ。
この辺は各社が長年培ったパワーマネジメントのノウハウが重要になるにょ。
それに通常版CPUの場合は動作クロックが高いから2倍の消費電力でも半分の時間で処理が
完了すればトータルの消費電力は変わらないからね。(CPU以外の消費電力を考えると
「2倍のクロック」で「2倍の消費電力」であるならば逆にトータルの消費電力量を減らせる
可能性さえある)
(2)超低電圧CPUは低電圧駆動を実現するためにかつては選別品が使われていたにょ。
実際、ULV PenM 900MHzは電圧を通常版CPUと同じに設定すれば通常版CPUよりも高クロック
動作が可能になるという良質のコアが採用されていたわけだしね。
超低電圧CPUは駆動電圧を下げることで低消費電力を実現しているわけだけど駆動電圧を
高めれば高クロック動作は可能になるにょ。
これは通常版CPUでもデフォ設定よりもよりも高い動作電圧を与えることでよりデフォより
高いクロックで安定動作させることも可能になるにょ。(要するに活入れによるオーバー
クロック動作をさせるということ)
つまり、超低電圧版は低電圧耐性を持っていると同時にすぐれたオーバークロックの
マージンを持ち合わせているという素晴らしいCPUといえるにょ。
そんな選別品CPUであるが故に超低電圧版CPUは割高な価格設定となっていたにょ。
これは通常版CPUとして販売すれば高クロックのハイエンドCPUとして販売可能な製品で
あったためそういう観点から考えるとやむを得ないことにょ。
しかし、超低電圧版CPUも10月19日に書いたように最近はプレミアム性がかなり失われて
来ているにょ。
各世代ごとに最高クロックのCPUの動作クロックとTDPを下記にまとめてみたにょ。
超低電圧版CPU 通常版CPU クロック比(TDP当たり)
130nm PenM(Banias) 1.1GHz TDP5W 1.7GHz TDP25W 1.55倍(0.31倍)
90nm PenM(Dothan) 1.3GHz TDP5W 2.26GHz TDP27W 1.74倍(0.32倍)
65nm CoreDuo 1.2GHz TDP9W 2.33GHz TDP31W 1.94倍(0.56倍)
45nm Core2Duo 1.6GHz TDP10W 3.06GHz TDP35W 1.91倍(0.55倍)
32nm Core i7 1.33GHz TDP18W 2.8GHz TDP35W 2.11倍(1.08倍)
これを見ての通り最上位クロック同士の比較だと世代ごとに超低電圧版CPUと通常版CPUの
クロック差はどんどん開いていっているにょ。
こうなったのはクロックを高くするのは容易だけど大幅な低電圧駆動させるのは難しい
ためにょ。
製造プロセスの微細化によってトランジスタのスイッチング速度を上げることは可能に
なるもののトランジスタでスイッチング動作を行うには一般的には0.6〜0.7Vの電位差が
必要になるからね。
そのため超低電圧版CPUは動作電圧が1Vを切ってからはその駆動電圧の低下の度合いは
極めて緩くなったにょ。
微細化によってリーク電流が顕著化しているけどリーク電流には大きく分けてゲートリーク
とサブスレッショルドリークの2種類があるにょ。
低電圧駆動の場合はサブスレッショルドリークが特に顕著化してくるにょ。
そのため微細化によって低電圧で駆動するCPUを作ることは簡単になったけどTDPの枠内に
抑えるためには通常版CPUとのクロック差はどんどん広がる一方となっているわけにょ。
要するに今の超低電圧版CPUはプレミアム品でも何でもなく通常版CPUの動作速度制限版
でしかないということにょ。(上記のように通常版CPUであってもアイドル時には動作
電圧を下げているため低電圧版駆動によって消費電力を低減している超低電圧版CPUの
メリットはほとんどなくなっている)
性能面のアドバンテージであった電力当たりの性能(ワットパフォーマンス)においても
上記のTDP当たりのクロック比(「TDP=消費電力」ではないけど各世代の最高クロックに
おいて考えるならば両者の値は近いものになるためここでは「TDP=消費電力」として
考える)を見ての通りPenMの頃は通常版CPUは超低電圧版CPUの0.3倍程度の性能だったにょ。
これは言い換えると超低電圧版CPUのワットパフォーマンスは通常版CPUの3倍あったと
いうことになるけどこれは世代毎に低くなりCore i7ではワットパフォーマンスはついに
逆転してしまっているにょ。
これはCPUにGPUが内蔵された影響で単純計算ができなくなったためだけどそれを差し引いて
考えても超低電圧版CPUの性能面におけるメリットはほぼ無くなってしまったにょ。
ちなみにワットパフォーマンスで考えるならばAtom NはCore2Duoの4分の1の消費電力で
3分の1の性能を実現できているためCore2Duoの1.3倍程度のワットパフォーマンスがあり
IntelのCPUの中では過去最高レベルとなっているにょ。(Atom Nよりクロックが高い
Atom Z550は頂点のワットパフォーマンスとなる)
しかし、それによって「Atomの性能が高い」と感じる人はいるとは思えず、PCにおいては
ワットパフォーマンスではなく絶対パフォーマンスの方が重視されるといえそうにょ。
(3)「低電圧で駆動するCPUは簡単に作れるようになった」でも「高クロック動作をさせる
のはTDPの関係で難しい」ということを(2)で書いたけど問題は十分な供給ができても
需要が無ければ意味がないということにょ。
しかし、本来はMIDや小型端末で使用することを考慮していたAtomがネットブックで爆発的
ヒットをし「安い」ということが大きな需要を喚起することが分かったにょ。
そこで動作クロックの低い超低電圧版CPUをAtomの上位として一定基準を満たすことで
安価に販売することにしたにょ。
それがCULV(コンシューマ向けの超低電圧CPU)にょ。
これによって「Atomでは性能的に物足りないけどモバイルノートは高価で買えない」と
いう人には非常に有用なCULVノートが誕生したにょ。
CULVノートは国内メーカー製だと10万前後と高価だけどASUSやACERのような海外メーカー
だと安価に販売しており安い機種だと5〜6万円で入手可能になるにょ。
ACER 1410は発売当初にセレロンSU2300(1.2GHz)搭載で49800円という破格値であった
ために大ブレイクを起こしたにょ。
CPU性能はAtomの2倍以上なのに加えてチップセットに内蔵のGPUはAtomで広く用いられて
いた945GSEに内蔵のGMA950とは異なりHD動画の再生支援機能も有しているということが
やはりネットブックとの差別化において有用になったにょ。
あとは、ネットブックは10インチWSVGA液晶が主流だけどCULVノートは11.6〜13.3インチ
WXGA液晶が主流であるため使い勝手もネットブックよりも格段に良くなったからね。
そうなると最もダメージを受けるのはネットブック・・・ではなくモバイルノートの方
だといえるにょ。
というのも搭載しているCPUはAtomのように完全な格下CPUではなくモバイルノートに
使われているものと何ら変わらないCPUだからね。
本体が軽いというアドバンテージが依然としてモバイルノートにあるものの軽いという
要素に対して2倍も3倍もの金額を出してくれる人はごくわずかしかいないにょ。
したがって、性能で差を付ける必要があったにょ。
それが通常版CPUの採用の大きな理由だと思われるにょ。
幸いにして(1)で書いたように通常版CPUでも消費電力低減によってちゃんとパワー
マネジメントを行えば超低電圧版とほとんど変わらないレベルになっているにょ。
実際通常版CPUを搭載のLet'snote J9は超低電圧版CPUを搭載のR9と比べて電力当たりの
駆動時間はほぼ同レベルだしね。
問題は熱設計だけにょ。
逆にいえばそれさえ克服できれば性能面で大きな差が付いており、プレミアム性も失われて
きている超低電圧版CPUを搭載する必要もなくなるわけだしね。(ULVのCore i7はCPU単体で
3万円を超える高価なCPUだけど通常版CPUのローエンドにも劣る性能でしかない)
つまり、以上の「通常版CPUで長時間駆動可能になった」「超低電圧版には価格に似合う
価値が無くなった」「CULVとの差別化が必要になった」という(1)〜(3)の理由によって
昨今は国内のモバイルノートにおいて通常版CPUを採用機種が増えていると考えられるにょ。
超低電圧版CPUはCULVノートにおいて大きな需要があるだけではなくAtomでは厳しいので
もう少しパフォーマンスが欲しいという用途で熱設計が難しい小型、薄型のPCにおいては
有用になるものの12インチクラスであれば熱設計技術の進化によってTDP35WのCPUを載せる
ことは容易になったにょ。
しかも、これは従来と異なりCPU+ノースブリッジでTDP35WであるためCPU単体でTDP35W
であったCore2Duoと比べて熱設計の面では有利になっているにょ。
逆に超低電圧版はCore2DuoがTDP10Wなのに対してCore i7は一気に18Wへと増加している
ため熱設計の見直しが必要になったにょ。
もしも、超低電圧版CPUがCPU+ノースブリッジで従来と同じTDP10Wであれば採用する
メーカーも多かっただろうけど熱設計を変更を迫られてしまったことも通常版CPUを搭載
するきっかけに繋がったのではないかと思われるにょ。
したがって、単に(3)のCULVとの差別化という安易な考えによってモバイルノートに通常版
CPUを搭載するようになったのではなく各要素が絡み合うことで必然的に通常版CPU搭載へと
繋がったと考えられるにょ。
もしも、(1)で通常版CPUのアイドル時の消費電力が高かったり、(2)で超低電圧版CPUが
順調に進化していきTDP10Wで2.4GHzというTDPを維持して通常版の3倍のワット
パフォーマンスが実現出来ていたら超低電圧版CPUは高値で十分通用しただろうけど実際は
そうならなかったわけだからね。(3倍は無理でも価格を考えると2倍以上はないと厳しい
と思う)
確かに薄型、軽量を実現するためには超低電圧版CPUは有利だけどそのために安価なCULV
ノートと性能は大差がなく2倍のコスト(国内メーカー製だとCULVノートが10万円前後
なのに対してモバイルノートは20万円前後)となるとさすがにユーザーを選んでしまう
からね。
ユーザーが限られるため開発コストをペイするためには安価にはできないということで
さらにユーザーを選ぶという結果になっているにょ。
これは量産化によって安価が実現できそれによってユーザーが拡大したネットブックとは
逆のものといえるにょ。
通常版CPU搭載のモバイルノートは高価であっても軽量かつ高性能であるためコスト
パフォーマンスという観点からするとCULVノートには負けないものになっているにょ。
これならばCULVノートと棲み分けは十分に行えそうにょ。
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