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2
:
みやこ
:2017/02/05(日) 21:53:06
「ふ……ッ! ふふふっ、“不健全”よォーーーッ!」
登校してくる生徒達の服装を指導するため、
校門を傍に立っていた風紀員が声を荒げた。
「不健全! 不健全! ほんッッと不健全ッ!!
ああっ、もうっ! どんな神経してればそんな全身破廉恥になれるの……!?
公衆の面前なのに……ッ! ほんっとに! もーー! いい加減にしなさいッッ!」
「まずあなたッ!」
赤面の少女がビシリと人差し指を立てる。
「がう?」
刺された野性味溢れる生徒――「くま」が小首をかしげる。
「獣性があふれ出し過ぎよッ!
ワイルドなんてかわいいもんじゃない、ほとんど野生じゃない!
野生ならなにやってもいいと思ってるんでしょう!?
あっ、あんなことや、こっ……こんなこと……!
全部ぜーんぶっ本能のせいにしてっ……!
滾る熱いものを暴力的に!昂ぶるままに!愛のままに!わがままに!
ぶっ、ぶつけてくるつもりなんでしょうッ……!?
サイテー!あなた、最低よ!!
それに……ッ! まえ! 隠しなさいよ!
なんで全裸なの!? どうしてそうなったの!?
どーしてそれが許されると思ったの!
もーー!! なんかドロドロした潤滑性のいい液体も持ってるしィーーー!
もうッ! いいわ!! あなたはそこで反省してなさい!!」
「がう……」
かわいそうなくまは、校門前にできた長蛇の正座列のはじにちょこんと座らされた。
サーカス出身だけあって、器用に正座をこなしている。
一難去ってまた一難。
風紀員の摘発はすぐさま次のターゲットを捕らえた!
「ちょっとォーーーーーーーー!!!?
そこの男子!止まりなさいッ!!」
「えっ?ボク」
重厚な鎧甲冑に包まれた少年が、ビクッと背筋を正し、静止した。
「あっ! ああああ、あなたァ!?
その太くて長いものはなに!?
どうしてそんなものを持ち歩いているのッ!!?
(中略)
破廉恥よォーーーッ!! そこに正座しなさい!」
警官を振り切ることのできるフルアームド少年の弁解を一切聞き入れず、
風紀委員の少女は正座を言い渡した。
かわいそうな伝説剣術の担い手は、くまの横に正座した。
「生徒会長!? どうせ権力を利用して『部費を減らされたくなかったら』なんて言って……ッ!
わ、わわわわわいせつな行為を……!!」
(中略)
「はぁああああああッ!!!?
どうしてそんないっぱい妹がいるの!?
わかったわ!血の繋がって子達なんでしょう!?
それでっ! むりやり「お兄ちゃん」って呼ばせてッ……!
へっ、変態!!
どうせ私にも『俺の妹にしてやろう、いや、“なれ”』なんて言うつもりなんでしょッ!」
(中略)
「バンドォ〜〜〜? イヤッ! 不潔ッ!!
もう破廉恥の権化じゃない!? 破廉恥大王といっても過言ではないわッ!
なに、決めつけるなって……?
じゃあ貴方のバンド名を言ってごらんなさいよッ!
どうせ!えっちな言葉を使ってるんでしょう?
例えば、せっく!……せっ!……せ……ッ!
ああああああああああもうーーーッ!
何言わせようとしてんのよッ!! 変態! 最低!」
(中略)
「変態!」
(中略)
「変態!」
(中継)
「変態タイレン!」
(中略)
■
「よーしそれじゃあ出欠とるぞ〜」
7:50
渋い爽やかな声色で挨拶をし、逆光を纏いながら教室に入った教師は少しぎょっとし、
数瞬考えた後、納得したように言った。
「ああ、今日は“あの日”か」
その教室には“男子生徒が一人もいなかった”
■
希望崎学園名物。
≪試しの門≫
普段は、単なる生徒を迎え入れるための校舎の一部は
“とある風紀員”が立つ“その日”だけは、
強大な試練場へとその姿を変える。
――ずらりと九十九折りにならぶ正座列。
本日の男子通過率もゼロパーセントであったという。
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