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いつかの願望

1猫又:2013/11/29(金) 21:55:03
この板では初めて小説を書かせていただきます。お手柔らかにはとは言わないので
感想バシバシ言ってもらえると助かります。

2猫又:2013/11/29(金) 22:22:35
 二千四十二年九月三日。ある噂が肌を撫でる夜の風と共に町に流れていく。
瞬く間に外部と完全に隔離されたこの都市で一つの噂が昼夜に踊るようになっていた。
「人が都市の外で蘇り、人を襲いに都市へとやってくる。」
 大衆はたわいもない噂に耳を傾ける程度だったが、大河と海が
隔てて出来上がったこの独立都市を不気味がった小心者が事件を起こす事もあってか
蘇りの噂は世間へ着実に浸透していく。
人から人へと伝染する蘇りの噂は誰もが不気味にならないほど身近に感じるほどになっていた。
 今日もまた夕闇の静寂が幾多のサイレンの反響と共に切り裂かれていくー。

3猫又:2013/11/29(金) 22:59:35
大河は沈んだ夕日によって鈍い黒がかった鈍い赤色に染められ、
唯一ある検問付きの橋はいつも通りなら無人の場だが政府の車が何台も駐車され、
野次馬と現場検証人で騒がしく、人混みができていた。
「また事件ですね、こう何度も交番ほったらかして駆けつけるとなると
 交番勤務の人間増やした方がいいと思いませんー?」
 新米警官が独り言をぼやくようにバリケードを作りながら、
同僚の中年警官の顔を見る。対し中年警官は呆れた様子で
嘆息を漏らし、老成した手付きで交通整理を行う。
 そんな中、野次馬がバリケードの中に入り込まんとばかりに
荒い波のように押し寄せるが、新米警官はちょっと圧迫感のある物言いで
沈ませ、やつれた表情で救いを求めるように再度、中年警官の顔を覗き、
耐えかねた中年警官は表情一つ変えずに淡々と話す。
「こちとらガタきてる体で現場に来てるんだからそういう手は食わんよ。
 そういうのは犯人かもっと偉い上司に頼んだ方が効果的と思うがね。」
 ガックリして横を見ると、刑事を始めとしたエリート警官が
次々と検証を目的としてバリケードをくぐって抜けていく。

4猫又:2013/11/30(土) 08:19:50
とても談笑できるような穏やかな雰囲気ではなく、糸が無数に
張られたような張りつめた空気が首筋を撫でて寒気を引き出す。
当然と言えば当然であるが、連続殺人犯の犯行の可能性が高いからである。
警察の見立てでは殺人鬼の暗躍した犯行は既に三回目に突入しており、
腹部から潜り込むように殺害する様から潜り込む大刃[ダイバー]という
呼び名で噂になっている。
 噂を思い出して新米警官が顔を青くしていると、
現場検証中の緊迫した場で一般人と見られる人物が紛れている事に気づく。
中年警官に助けを乞いても頭を叩かれて追い出すように促されるだけなので、
現場に気後れしている同僚に場を預け、注意をしにバリケードを抜ける。
とは言っても被害者の関係者かも知れないので無駄足の可能性があるが、
遠くから見つめていてもその者が悲しんでいたり、
感傷に浸っている様子は見られず、感情を写さないその瞳は
まるで計算機のように出された問いに答えを紡ぎ続けるような、
機械的な印象を受けたのだ。

5猫又:2013/11/30(土) 15:36:00
その人物は細身ながら肩幅が広い二十代後半の男性、清楚な顔立ちであるが
額から左頬に刻まれた傷跡が一昔前の軍人のような近寄りがたい屈強さを見せる。
 新米警官は戸惑いながらも事情を聞きに声をかけようとすると、男の隣にいた
生真面目そうな女刑事が眼鏡の位置を整えながら間に立つ。
端から見れば三角関係にある男女の中のようだ。
慌てて新米警官は敬礼をする。警官としての立場上、
上司に当たる人物であるはずだからだ。しかし女刑事は笑みは
見せないものの柔らかな物腰で話を切り出す。
「ご苦労様、私は都市第四地区管理署の刑事、西原火奈です。
 彼はこの事件に関して関係者です。詳しくはこの事件を統括している
 羽叉刑事部長が後に連絡を回すと思うので
 ここでの勤務に戻ってもらって結構ですよ。」
「や、とんだ勘違いをしましたすみません。では失礼します。」
 羞恥心で頭から蒸気が立ちそうになり、帽子を深く被って赤面した顔を隠す。
女刑事の毅然とした誠意ある対応に鼻の下がうっかり伸びるのに気づき、
首を振って平常心を取り戻す。
しかし心残りがあってか情けなく振り返ってしまう自分がいた。

6猫又:2013/11/30(土) 16:42:08
新米警官は愕然とした、
女刑事を一目見ようと衝動的に偶然その方角を見定めただけであったのに。
 それは巨人が人の身長ほどあるナタで強引に裂いたような、
怪物が暴れて爪痕を残した、そんな抉った跡が橋下に刻まれている。
一言で表すなら異形としか言いようがなく、何故誰も気づかないのかと
異様に周りがおかしく思えてきて、まず疑いの目を辺りに振りまいてしまう。
知らない世界に放り出されたようなショックだった。
「最初はあれ、おかしく思うよな。」
 自分に差し出された問いだと気づくのに数秒のロスを覚える。
目が覚めたように辺りを伺うと真横には同じように傷跡をみる傷有りの男がいた。
男は目線を自分に向けない、自らの態度より答えだけが
気になっているのだろうか。その者は恐ろしく安定していた、
言葉としても態度としても全くブレてなどはいなかった。到底同じ世界で
生きていたとは思えないような機械的行動原理が彼には働いていた。
「君は驚かないのか?」
「あまり覚えてないんだ、もしかしたら今の貴方みたいに最初は
 恐怖してたかも知れないしそうじゃないかも知れない」

7猫又:2013/12/02(月) 17:59:41
傷有りの男は彼方を見ているような虚ろな目をする。傷は隣で確認すると
頭部にまで届いていた。答えは一つしか無い、彼には記憶が・・・・。
 巨大な翼が羽ばたかれたかのような烈風が橋の下を低い轟音と共に通る。
目を開けるともうそこには傷有りの男の遠い背も見えなかった。

 暫くして、被害者の情報と犯人の目星が書かれている紙が渡された。
本来数年前までは捜査本部の人間以外は情報を与えられなかったが、
情報を知らない警官の辞職や無差別に対象にされた一般人が
あまりに多かった為にこうした警官や一般人が巻き込まれる可能性がある
事件は明かしてよい情報のみ公開する。しかし遺族が拒否した場合、
被害者の情報は非公開にされるのが常である。
 被害者は井神 鳴真。性別男、年齢三十二歳、第三地区地下街の
某飲食店の従業員。地下街という所を除けば一般人である。
紙には遺族の名前は白紙、親戚はいるのだろうが
被害者は親戚とは完全に絶縁関係にあるのだと記されている。
 犯人とは何かしらのもめ事が発生し被害者は目標にされたのだと推察される。


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