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その17
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地雷職人の朝は早い。なぜなら、スタルカー達が通りすぎる前に
信管の仕込みを行う必要があるからだ。
「春と秋はいいんだけどね・・・。夏は暑すぎて朝でも金属が膨張する時があるし、
冬は寒すぎて逆に縮むのでよくなかったりしてね・・・。」
仕込みを終えたシドロヴィッチさんは我々との話を切り上げ、ドライバーを握った。
ドライバーを鋼鉄製の薬缶に ガリガリと押し込む、 速い。まるで料理人のようだ。
またたく間に5つの地雷が設置されていた。
息をつく間もなく次の山にとりかかる。またすぐに地雷原ができ上がっていく。
「どれ、今朝の調子はどうかな。」
シロドヴィッチさんは車の下に巧妙に設置された地雷を眺める。目でカモフラーシュを
鋭い目で見つめミクロン単位のゆがみをその熟練した目で見つけるのだ。
これこそ機械よりも正確な職人の目。
「ここは駄目。ほら、ちょっとここが歪んでるでしょ。3箇所も出るとは、
もう冬が近いね。これくらいのゆがみならたまに愚かな新人が爆発するだけで
すむけれどベテランなら見抜いちゃうからね。」
この仕事は、時間との勝負。
本来一人で設置するものではない地雷を、ここまで手作業で設置できる職人は、シドロヴィッチさんを
含めてもZoneに10人しかいない。
こうした職人にプリピャチの伝統が 支えられているのだ。帰り道、おみやげに頂いた
バウンティーベティーを見ながら同行していた元ウクライナ軍の兵士がため息を漏らした。
「本当に地雷ですよ。普通は一個分隊で設置するはずなのに、手作業で・・・。
それにこのカモフラ・・・もうなんともいえない芸術です。」
冬の足音の聞こえる秋の空は暗くなっていたが、シドロヴィッチさんの数々の地雷は
それよりも深い闇を湛えていた。
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