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己の妄想を思いのままにキーボードに叩きつけるスレ

23Akane</b><font color=#FF0000>(3KGYuvzA)</font><b>:2003/01/22(水) 02:21
これは浩平がみんなの記憶から消えてから半年程経った後の、ただ一人で、いないはずの人を待ちつづけていた少女のお話です。


今日も同じ道を歩く。学校から家までの道。
何も変わらない日常。何も変わらない思い。時間だけがすぎていく。
風が冷たい。冬がもうそこまで来ているのだと実感する。大切なあの人と別れてから、もう半年も経つのだということも。

空き地を抜けてうつむき加減で歩いていると、泣き声が聞こえた。前に垂れた長いおさげを払い顔をあげると、小さな女の子が一人、道端で泣いていた。
女の子の前にはアイスクリームが広がっていた。
ずっと前に見たことがある気がした。浩平と一緒に、七瀬さんと遊んでいた気がする。
私はその子に声をかけた。
「どうしましたか?」
「うああぁぁーーーーーんっ!」
「大丈夫です。私のワッフルでよかったら、一緒に食べましょう」
「うっ、うっ…。うくーー……」
「今度は落とさないようにね」
「みゅ〜……わっふる?」
「はい。甘くておいしいです。いただきましょう」
二人で食べるワッフルは何だか久しぶりで、ちょっと冷めたワッフルも出来たてと同じ暖かさがした。

「茜といいます」
唐突に切り出したからか、女の子は聞いてない様子で一生懸命ワッフルを食べていた。
「私は里村茜です。あなたの名前はなんというんですか?」
今度はこの子の目線までしゃがんでから訊きなおした。
「みゅ〜……繭…」
「繭…。素敵な名前です」
「みゅ〜♪」
本当に素敵だと思った。希望をいっぱい詰めてもらったような名前。
泣いていたとわかる真っ赤に腫らした目をいっぱいに開いて、繭は幸せそうにワッフルを食べ終えた。
「ごちそうさま」
「ごちそうさまみゅ〜♪」
「もう大丈夫なようですね。気をつけて帰ってください」
「みゅー」
くいくい。
繭が私のおさげを軽くひっぱっている。痛くはなかった。
「みゅー、お礼がしたい」
「お礼なんて…いいですよ」
「だから付いてきて」
繭はそう言って足早に歩き始めた。お礼を貰う気はなかったけれど、あの子のことがちょっとだけ不安になったので私は後をついていった。
あの子の心配をすることで、浩平のことで苦しんでいた私は楽になっていたのかもしれない…。


(つづく)


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