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東方キャラの声を夢想してみるス3.0〜Whisper of the Heart〜
213
:
名前が無い程度の能力
:2014/04/03(木) 01:48:10 ID:a8gbdDN60
十二
霧野代の南東には樹々山(ききやま)を隣郷へと抜ける隧道(ずいどう、トンネル)が通っている。
誰が掘ったのか、いつ掘られたのか、記録には残っていない。
どれほど続いているのか、隣郷とはどんな名であるか、どういった場所なのか、それすらも判らない。
隧道は遠く昔から封鎖されており、唯、そういった口伝のみが残っているという。
霧野代の某という男が、何に憑かれたのかある時この隧道
に入り込んだ。
肌着にしとしとと染み入る程の、いつにも増して深い霧の日であった。
「ちょいと様子を見てみるだけだ。それ程長い穴でもないだろう、なぁにすぐ帰る」
伴侶にそう言い残した男は、簡素だった封をよいせと解くと、その後、碌な備えもせずに隧道へと入っていった。
それからというもの、ニ日待てど三日待てど、男は隧道から出て来ない。
そして、終ぞ帰ってこなかった。
神郷(かみごう)の自警団がこの男の捜索に動いたのは一週が巡った後であった。
当時の自警団長とその部下、数四名程が男の救命の為に編隊を組み、隧道へと入り込んだのだが、それもみな帰ってこなかった。
この日もまた、深い霧の日であった。
そしてこれらを皮切りにして、失踪者は猶々に増した。
翌々日に、戻ってこない自警団に耐えかねた村の若者が一人、最初の失踪者の親類が二人。
数日後に今度は六人で編成された自警団の副長とその部下。その一週後に犬をニ匹連れた洪霖寺の男が一人。
自警団の副長とその部下らは、長く頑丈な綱を腰に巻き、綱のもう一方を入口付近の樹に括り付け、穴へと入って行った。
所謂命綱である。
翌日、入り口から綱を手繰ってみると、六人全ての綱に故も知らぬ古い布が巻いてあったという。
これの意図するところは不明である。
また、それら隧道での事件と時を同じくして、霧野代では失踪事件が多発した。
正確な数は明らかでは無い。
昼夜を問わずに、老幼男女。ふと居なくなったと思えばもう帰っては来ない。
そんな失踪が二十では済まない程起きた。
村に残った者の考えはみな同じであったという。
あの隧道に――。
吸い込まれているのではないか。
霧野代の村長と残った自警団は協議の末、隧道の封鎖を決断。
翌日には鼠も入れぬほどの厳重な封が為(な)され、それを境に、失踪者はぷつりと出なくなったのだという。
すべての失踪に共通していたのは、深い霧の日であったという事で、
その後、霧の濃い日には外出を控える者も頻出した。
そして今でも霧の濃い日が来ると。
こんな日は――。
誰かが隧道に吸い込まれている。
そう思ってしまって仕方がないのだと、村の者は口を揃えて云うのである。
今からニ十四年前の出来事であった。
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