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犬走椛の暇つぶし 大将棋十九局目

143名前が無い程度の能力:2013/11/27(水) 02:51:31 ID:2camOYuU0
犬走椛はーー
ただ、遣る瀬無い気持ちだった。
目の前の男の、最期の願いを叶えてやった。男は悔いも後悔も無いと言いたげに、満ち足りた笑顔で逝った。
だが・・・犬走椛は、男の最期をどんな顔で看取ってやればいいか分からなかった。ぎこちない笑顔を浮かべてみた。引きつっていただろう。苦いものも混ざっていただろう。
幸い、男は犬走椛の形の整った美しい乳房を揉みしだくのに夢中になっていたから、きっと彼女の小さな気遣いには気が付いていなかっただろう。
それは犬走椛にとって、少しばかりの救いだった。
だが、胸にズシリと伸し掛かっているこの気持ちは少しも動こうとしない。
命懸けで犬走椛に会いに来たという、底知れぬ大馬鹿者のこの男の最期の願いを・・・本当に叶えてやれたのだろうか?
冷たくなっていく男が犬走椛に向けた最期の笑顔は・・・自身の幸福に向けたのではなく、ただ想い人に向けたものではなかったのだろうか。
今となっては知りようもないが、それが余計に犬走椛の心に刺さるのだ。
ふと、一陣の風が妖怪の山を吹き抜けて行った。
何の淀みも無い、爽やかな風が赤い赤い紅葉を一枚運んで来た。
ーーああ、もう、山が紅く色付く季節か
犬走椛は、自分の乳房を掴む手をそっと外すと、代わりに赤い紅葉を掴ませる。
手向けの花代わりとしては、お粗末なものだ。
犬走椛はゆっくりと立ち上がると、男の方を見ない様にした。
ほんの一時だけ、時間を共にしただけなのだ。これ以上は要らないだろう。
哨戒の任に戻るべく、犬走椛がその場を立ち去ろうとした瞬間。
ーー犬走椛は確かに聴いた。
聴こえる筈の無い、死者の声を。
あの男の、声を。

「もみじもみもみ」とーー


文「っていうのを新聞に載せようかと思っておりまして。どう思います?」
椛「無いな」


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