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霧雨魔理沙の一日

108名前が無い程度の能力:2013/03/25(月) 02:19:35 ID:w06E7T.U0
ええな

109名前が無い程度の能力:2013/03/25(月) 12:58:16 ID:Kr6AKlq20
10:13
博麗神社の境内にアリスがいた。人形に雪かきをさせている。
昨日家にいないと思ったら、こっちに遊びに来ていたのか。
「あら、魔理沙。そっちの子は……パチュリーの魔法で幼児化した咲夜を攫ってきたの?」
「惜しい。こいつは咲夜をモデルにパチュリーが作ったホムンクルスだぜ」
「攫ってきたって所は合っているのね……」
「で、今はうちのメイドだ」
「メイド服は着ていないようだけれど?」
確かにこいつの服は昨晩攫ってきた時のままのワンピース。
後で人里にでも行って何か探してやるか。
「服も大事だが、とりあえずは名前だ。こいつには名前がまだない。
 何か良いのは思いつかないか?」

110名前が無い程度の能力:2013/03/25(月) 21:20:55 ID:10uArLScO
10:15
「いきなり、な話ね!」
腰に手をし、アリスが苦笑する。
「おはよう魔理紗…あら?その子は」
縁側から霊夢が顔を出す。
霊夢は事情を知っていた。
「昨日咲夜が来たわ、レミリアから伝言を、って」
人造人間の事を異変あつかいされないようにとの根回しだったようだが、当の霊夢は関心なさそうだ。
「えっ?名前を?…そうね“ぽち”とか“たま”とかどうかしら?」
横でアリスがあきれる。
おいおい…いくら咲夜が“悪魔の犬”だからってそりゃないだろ。
真面目にやれ!。

111名前が無い程度の能力:2013/03/25(月) 22:50:36 ID:JrEs5vpU0
10:16
「『ぽち』意外にいいんじゃないですか?」突如早苗さんが現れて口をはさんだ。
そういえば守矢神社に行く約束すっぽかしてたぜ。まあいいや
だが、ぽちはないだろうぽちは

112名前が無い程度の能力:2013/03/25(月) 23:19:47 ID:10uArLScO
10:18
「『十六夜ぽち』…漫画家さんみたいで素敵です!」
早苗はいたく命名が気に入ったようだが…
「却下だ!」
「そうね、それはちょっと、ね」
アリスも援護に入ってくれる。
「じゃあどんな名前が良いのかしら?」
おーい、巫女のお前が言うなよ霊夢!
「そうだな、ほら自分の子供…娘ならどんな名前にするか?」
「私の子供の名前?」
霊夢が首をかしげた。
「………」
早苗は真剣な顔をしている…多分凄い命名だろう…。
アリスは…おや?なに顔を赤くしてるんだ?

113名前が無い程度の能力:2013/03/26(火) 10:42:53 ID:xvdiwEzs0
10:21
「今日は寒いし、こんな所で立ち話もなんだ。中で熱いお茶でも飲もうぜ」
「図々しいわね。でもいいわ、その代わりお茶を飲んだらあんたらも雪かきね」
「お前はやらないのか?」
さっきは中にいたみたいだったが。
「年末で忙しいのよ。仕事の依頼は多いし、大掃除だってやらなきゃいけないし」

114名前が無い程度の能力:2013/03/27(水) 01:12:30 ID:JLz335jI0
10:30
あんまモノはよくないがそのわりにはけっこううまい霊夢んとこの緑茶をすすってまったりしていると
おもてでドサリと音がした。
こりゃ屋根の雪がおっこちたな。
雪かきの手間がふえた。
いや、雪おろしの手間がはぶけたというべきか

ああ、茶うめえ!みかんうめえ!畳やすらぐぜ
こたつの中に熱源もない貧乏神社だがこれだけ密集すれば互いの体温が熱源だぜ

10:50
いつまでものんびりしてないでよと霊夢にせかされて、寒いおそとに追い出された。ちぇっ
おや?さっき落ちたとおぼしき雪の山から剣の鞘が2本生えているような気がするぜ
目の錯覚かな

115名前が無い程度の能力:2013/03/27(水) 17:04:22 ID:qyocS1cI0
10:51
「錯覚じゃないっ!」
雪の山を一息に跳ね飛ばして中から妖夢が出てきた。
こういうことができるようになっている辺り、こいつも成長しているんだなあ。
「人に雪下ろしをさせといて、何炬燵でお茶しているんですか!?」
「あー、忘れてたわ。後は魔理沙がやってくれるそうだから、
 あんたはしばらく炬燵で休むといいわ」
妖夢はくしゃみをしながら、神社の中に入っていった。
アリスと早苗と小咲夜はどこに行ったのかと見れば、もうざくざくと雪かきを進めている。
コートを着ている二人はともかく、小咲夜は私のマントを貸しているとはいえ、
あの恰好では寒いだろう。先に服を用立ててやればよかったかな……。
そんなことを思いつつ、私も作業に加わった。

116名前が無い程度の能力:2013/03/27(水) 22:59:51 ID:2dkFH5I.O
10:53
妖夢から受け取ったスコップを手に、アリスたちの所へ向かう。
そこで、ふと思った。
「…何の為に雪かきしてるんだ?」
「それは屋根に積もれば負担になるし」
と、アリス。
しかし屋根には元からたいして積っていない。
「もちろん参拝にこられる方々をお迎えするためですよ!」
と、早苗。
巫女なら満点らしい答えだが…
「いったい誰が参拝に来るんだ?」
「それは…」
「妖怪さん達くらいですかね?」
顔を見合せる二人。
「妖怪は来るが参拝にではないだろう。この作業は間違ってるぜ!」
「ではどうすれは?」
小咲夜に向かって私は言った。
「壁を造るんだ。神社を取り囲めるくらいの雪の壁を。妖怪連中が入り浸りない程度にな」
「…防壁。胸壁ですか?やりましょう!」
そういうとメモ帳を取り出して何やら書き始めたぜ?

117名前が無い程度の能力:2013/03/28(木) 03:50:02 ID:ZBld1AEw0
10:55
メモ帳をのぞきこんだりしているとなにやらあたりが騒がしくなってきた。
おいおいおい、ちょっとまて!レティやチルノをつれて来たのは誰だ?
積もった雪を有効利用するつもりで壁をつくろうといったのに
壁のために新たに雪を降らすんじゃ本末転倒だぜ

118名前が無い程度の能力:2013/03/28(木) 13:51:58 ID:nRaojP.c0
10:57
「そもそも壁なんて作るな」
後ろから陰陽玉が飛んでくる。私は慣れているので
ひらりと身を躱したが、小咲夜は直撃を喰らって雪の山の中に突っ込んだ。
「里の人だって来るときはあるのよ!それにそんな壁作って崩れてきたら危ないでしょ!!」
レティ達は霊夢に睨まれて、そそくさとその場を後にした。
「ああ、折角の博麗神社要塞化計画が……」
早苗が呟く。あいつらを呼んだのはお前か。

119名前が無い程度の能力:2013/03/28(木) 23:54:52 ID:.BiGtbvgO
11:02
「ねえ?魔理紗あの子ちょっと…」
アリスが不安げな声をあげる。
小咲夜は雪の中に倒れたままだ。
駆けつけた。
「おい!どうした?」
体に触れても返事がない。
いやな予感だ。そっと体を起こすと…。
「っ!?…」
雪の上、顔のあたり一面に血が!
吐血したのか?
アリスが両手を口にして たちすくむ。
「永遠亭に早く!」
早苗が声をはげまして叫んだ。素早く自分のコートを小咲夜にかけている。
冷静だ。私も頭を冷やす。
「いや、紅魔館が先だ」
私は振り向くと、青ざめて(多分)震えている霊夢に落ち着いて言った。
「紫を呼べないか?」

120名前が無い程度の能力:2013/03/29(金) 02:09:00 ID:dUk70Qs20
11:02
いい終わらないうちにノータイムで橙が出現した。
スキマが一瞬見えてたから紫の仕業だろう。
代理をよこすということは本人が来る気がないという意思表示か。

だが、藍をよこすならまだわかるが
橙とはどういうつもりだろう

121名前が無い程度の能力:2013/03/29(金) 15:49:07 ID:28Y26A.k0
13:16
「薄着で寒い中重労働をさせた挙句、弾幕ごっこの洗礼を受けさせるだなんて、
 あの子じゃなくても血を吐いて倒れるわ」
「そりゃお前だからだろ」
このもやしっ子め。
「で、あいつは大丈夫なのか?」
「身体の方はね」
「トラウマが残る……と?」
「精神の方はもっと簡単。作られたものだけに単純にできているわ」
「じゃあ何が問題なんだ?昨日あいつが短命だとか言っていなかったか?」
「もう一つ咲夜に似せて作った部分があるって言ったでしょ」
「……魂?」
「そう。魂が脆い。陰陽玉にぶつかった物理的ダメージより、
 博麗の力に触れたことによるダメージの方が深刻ね」
「治るのか?」
「別に寿命が縮むほどじゃないわ。製作者が優秀だし」
そう聞くと大丈夫な気がしてきた。
とはいえ寿命。魂の寿命。一年足らず。本人はそれを知っている。

122名前が無い程度の能力:2013/03/30(土) 07:10:11 ID:sqBsy5a20
13:20
私は紅魔館に来ていた。橙の案内でスキマを通ってだ。
途中で橙が迷っているように見えたこともあったが、多分気のせいだ。
気のせいであってほしい。藍は別の仕事で来られなかったと、橙は言っていた。
紫は面倒がって来なかっただけらしいが。霊夢たちは神社に残った。
まあ大勢で来ても特にできることはない。たま(結局パチュリーは、
霊夢の付けたこの猫のような名前を採用した)が倒れた時には、
動揺しているようにも見えたが、すぐに落ち着いたようだ。
ちょっと血を見たくらいでいつまでも動転していては、幻想郷の巫女は多分務まらない。
そして今、私は治療(本人は修復と言っていた)を終えたパチュリーと、
紅茶を飲みながら話しているのだった。

123名前が無い程度の能力:2013/03/30(土) 10:37:27 ID:j2Uq82sY0
話題は私のホムンクルスを作るかどうかだ。
私はついさっきまのたまのことで心乱されていたというのに、平気でこんな話にもっていくとは
さすが世間ずれしてない動かない大図書館だけあって、私とは感性が違うぜ。
パチュリーはさしあたって作る側作らない側どちらでもない中立のスタンスのようだが
とにかく私が小魔理沙の存在についてどういう感想を持つか、そうとう興味があるようだ。

124名前が無い程度の能力:2013/03/31(日) 02:49:44 ID:nzgtiL6c0
13:21 (何でパチュリーが決めるんだぜ?
決めたのは私だからな。そして「たま」は愛称で本名は珠江だぜ。)

125名前が無い程度の能力:2013/03/31(日) 07:16:38 ID:hj.T1Q2I0
13:24
「たまが小さいのは咲夜と区別しやすくするためよ。貴女より小さいと、
 何かと不便でしょ。だから貴女をモデルにホムンクルスを作るなら、
 貴女より背が高いように作ろうかしらね」
たまは咲夜と比べると小さく感じるが、私と同じくらいの身長はある。
「何か嫌だな」
自分と似た顔で体型の違う奴がいるというのは。
「あるいは他の特徴を付けてみるとか。髪が赤いとか、耳の形が違うとか」
「やっぱりやめておこうぜ」
「そうね。私としても貴女みたいな性格の人間にはあまり増えてほしくないし」
「というか、咲夜はよくたまを作るのを承知したな」
「『仕方がないですね』と言っていたわ」
嫌々だったのか。
「『作ってしまったものは』」
「事後承諾なのかよ」
「それはともかく、あまりホムンクルスを増やしたくないってのもあるわね」
「何か問題でもあるのか?」
「死神や閻魔がうるさいこと言ってきそうじゃない?不完全とはいえ魂の錬成なんてやっていると」
一人や二人なら目を瞑ってもらえる……なんてことは無い気はするが。

126名前が無い程度の能力:2013/03/31(日) 14:33:46 ID:EixFEZgsO
13:26
「失礼します」
小さなカートを押しながら“たま”が入ってきた。
「ご昼食です」
おや、もうそんな時間だったか。
「ありがとう」
そう言ってパチュリーは空いたカップを差し出した。
「似合うじゃないか!」
「ありがとうございます」
お茶をカップに注ぎながら照れくさそうに微笑む。
たまは今、メイド服を着ている。咲夜のとデザインが少し違うが、やはり小さい咲夜にしか見えない。
「その服、私のおみたてなんですよ〜」
書庫の奥から小悪魔が笑う。
「もっともそれを仕立てたのは美鈴さんですが…」
「ほう?」
美鈴の奴、案外器用だな。
「さ、お召し上がり下さい」
たまに勧められて少し遅い昼食を始めた。
私にはサンドイッチが、パチュリーにはスコーンにシロップ漬けの果物の小皿…まあ少食だからな…が並べられた。
あと、お茶…はまさしく咲夜が淹れたものと区別がつかない。
一杯目は濃いめにしてもらいミルクと砂糖で楽しんだ。

127名前が無い程度の能力:2013/04/01(月) 05:39:10 ID:592aqunI0
13:30
「それで、こいつの寿命は延ばせるのか?」
「延ばせるわよ」
…………延ばせるのかよ。延ばせるのかよ!
「方法については研究中だけれど、半年以内には何とかしましょう」
「深刻になって損した気分だぜ。で、もっと手っ取り早い方法は無いのか?」
「例えば吸血鬼化だけれど、さっき話した通り、この子は魂が脆いの。
 吸血鬼の強力な力には多分耐え切れないわ。最悪の場合、魂も精神も無く、
 本能的に血を求めて動き回る肉体だけが残るわね」
「確かにそれは最悪だ」
「割と何でもできるスキマとか、永遠を操る連中とか、魂を弄ぶ仙人とかの方が、
 こういった仕事はうまくできるのかもしれないけれど、できれば頼りたくないし」
「まあ、そうだな」
あまり借りを作りたくない相手ばかりだ。

128名前が無い程度の能力:2013/04/02(火) 05:15:28 ID:MOtBCSbw0
13:59
結局彼女は紅魔館に残ることになった。パチュリーは、
また今回のようなことがあっては困ると言い、私もそれに反論できなかった。
たまは笑って見送ってくれた。魔法もメイド業も紅魔館で学ぶそうだ。
橙がさっさとスキマで帰ってしまったので、帰りは箒だ。
その前に博麗神社にまた顔を出しておくか。

129名前が無い程度の能力:2013/04/03(水) 06:03:39 ID:thnuayiM0
14:08
少し飛ぶと、紅魔館は見えなくなった。朝に比べ、空が曇ってきている。
寒いな。また雪が降るかもしれない。
「何か私に相談したいことがあるんじゃない?」
突然話しかけられて驚いた。振り返ると、青い髪の仙人がすぐ近くにいた。
「無いぜ」
そんなに困った顔をしているように見えたのだろうか。
「ふーん。まあ何かあったら気軽に相談してね」

130名前が無い程度の能力:2013/04/03(水) 16:57:34 ID:m73R69Cs0
14:15
というわけで博麗神社にもどったぜ。

そこでは霊夢たちが私抜きで面白そうな珍騒動をくりひろげていた。
どれどれ、私もまぜてくれ

131名前が無い程度の能力:2013/04/03(水) 17:43:18 ID:ILYLb1S60
14:20
早苗「だからー!UNOって言ってないから上がれないんです!」
霊夢「いや初めてやるし、そんなの知らないわよ」

どうやらスペルカードの話みたいだ
手に何枚かカード持っている
新しい魔法の研究にでも使わせてもらおうか

132名前が無い程度の能力:2013/04/04(木) 04:30:13 ID:D.fGXasA0
16:15
霊夢たちがやっていたのは、トランプに類するカードゲームだった。
魔法の役には立たなかったが、なかなか面白かった。
「暗くなる前に帰った方がいいわよ。あんたの分の夕飯は出さないからね」
夜は妖怪も出るし、そろそろ出た方がいいか。早苗は泊まっていくようだ。
今から守矢神社まで帰るのは危険だし、仕方がないか。
「長居して悪かったわね。またいずれ」
そう言い残して、アリスは一足先に帰って行った。私も神社を後にする。

133名前が無い程度の能力:2013/04/04(木) 09:50:47 ID:JctOa7vI0
16:16
だが待てよ…
「あんたの分は」ということは
早苗の分は出すのか!?
霊夢あんにゃろう

神社に舞い戻ってこっそり様子をうががってみよう

134名前が無い程度の能力:2013/04/04(木) 15:27:00 ID:u/nP1BZEO
16:19
“忘れ物だぜ!”とか適当に言い訳して戻ってみればなんてことはない。
早苗は酒から何まで食材を持参していたのだ。
「あら?魔理紗さん!」
台所にいた早苗は歓迎してくれた。
霊夢は驚きも怒りもしない。いつもの居間で四合徳利を前にしてひとり飲みしていた。
「邪魔するぜ」
無言のあいつの横に腰を下ろす。
私は徳利を引き寄せるとふところから杯をとりだして注いだ。
「ん!旨いなこれ」
台所から声
「お燗にしますか?」
ありがたい!私は早苗に燗酒を頼み、小皿にきれいに盛られた漬物や焼き味噌をつまんだ(これもうまい!)。
霊夢はいつもの仏頂面で冷や酒を口につけているぜ。

135名前が無い程度の能力:2013/04/05(金) 07:12:49 ID:1pwWyMjQ0
18:31
「さて、お腹もいっぱいになったし、弾幕ごっこでもやるか」
「私はやらないわよ。冬の夜は寒すぎるわ」
確かに部屋の外に出てみると、ひどく冷える。と思ったら、また雪が降っていた。
「積もりそうだな」
「困ったわね。明日はあんたに雪かきを任せてもいい?」
「お前はやらないのか?」
「言ったでしょ。年末は神社も何かと忙しいのよ」
明日は仕事を押し付けられる前に退散するか。
「早苗はしないか、弾幕ごっこ?」
「私もこう寒いと遠慮したいですね」
「元気がないなあ」
そう言いながらも、私自身少しやる気を失いつつあった。
「なら私とする?」
神社の外、夜の闇の中から声が掛かった。

136名前が無い程度の能力:2013/04/06(土) 04:52:17 ID:StMc0YXw0
18:36
私は苦戦していた。真冬で、雪が降っていて、夜。その上酔っている。
有利な要素が何もない。不利な要素が多すぎる。
「何やってるの?押されてるわよー」
下から野次が飛ぶ。うるさいな。いま何とかしようとしているだろ。
――恋符「マスタースパーク」――
――怪符「テーブルターニング」――
渾身の魔砲も目標を見失って空を切る。反動で動けない所に飛んできた
雪の塊を受けて、バランスを崩す。二度目の被弾だ。もう後が無い。
この時期の雪女がこれほど厄介だとは思わなかった。
吹雪で視界は最悪だ。くそっ、レティはどこに行った?

137名前が無い程度の能力:2013/04/07(日) 06:00:08 ID:VtQEvYms0
18:37
死角から飛んできたレーザーが脇腹をかすめる。危ない所だった。
これ以上の長期戦は形勢の差を広げるだけになりそうだ。勝負に出るしかないか。
――彗星「ブレイジングスター」――
身に纏った魔力で周囲の雪と寒波を吹き飛ばす。レティは……あそこか。
「喰らえっ!」
「きゃあ!」
そのまま体当たりでレティを跳ね飛ばした。体勢を立て直し、もう一発!
「ぐ、くうっ……」
今度は躱される。とはいえここで畳みかけるしかない。
――冬符「ノーザンウイナー」――
向こうも次のスペルを宣言した。吹雪が強くなる。撒き散らす星屑が払われ、
身に纏った魔力ががりがりと削られる。急いで決めに行かなければ。
「勝利宣言には、まだ早いぜ!」
突進は避けられたものの、放った星の弾幕が相手をとらえた。
これで被弾数は並んだ。ブレイジングスターの効果が切れる前に、決着を……
次、の、一撃、を……あれ?力が、抜ける。加速、できない。意識が……
正面から大きな弾が……避けないと…避け……
「寒さで体力を奪われすぎたみたいね」
その言葉は、荒れ狂う吹雪の中だというのに不思議にはっきりと、落ちていく私の耳に届いた。

138名前が無い程度の能力:2013/04/07(日) 07:57:27 ID:OnCDfkBc0
19:10
気づいたら博麗神社の中にいた
隣に私よりケガが多いレティが寝ている
私はレティにほとんどダメージを与えていないから、私を倒した後、霊夢に挑んで返り討ちにされたんだろう

「気づいたみたいね」
霊夢がお茶を淹れてきた
レティの分もあるな。こいつは本当に博麗の巫女か?
まぁお茶もうまいし、レティにはまた今度再戦を申し込もう

139名前が無い程度の能力:2013/04/08(月) 00:30:08 ID:mEu98ARs0
19:15
ぐすっ…
どうやら風邪をひいちゃったみたいだぜ
ちょっとくらくらするな

140名前が無い程度の能力:2013/04/08(月) 03:14:45 ID:8V/i.wbo0
19:16
「雪の中飛び回ったりするからよ」
レティが横になったまま口を開いた。起きていたのか。
「いや、お前のせいだろ」
「今日雪が降っていたのは元々よ。だから調子は良かったんだけれど。
 二連戦は流石に無茶だったかしら」
「二戦目じゃなくても負けないわよ」
「風邪のときには葱で首を絞めるといいわ」
「少し違うぜ」
「鼻水は止まるわよ」
「呼吸もだろ。私は葱より卵酒が良いな」
「では、作ってきますね」
早苗がそう言って台所に向かう。
「私の分もお願い」
「霊夢さんも風邪気味ですか?」
「いや、単に飲みたくなっただけ」
「じゃあ私もー」
いや、お前は絶対風邪ひかないだろ。

141名前が無い程度の能力:2013/04/09(火) 03:23:12 ID:8X2TsMns0
21:32
「それじゃあ、私はもう一仕事したいし、行くわね」
レティはそう言って、席を立った。何の仕事なんだか。
「里の人間は襲っちゃ駄目よ」
「分かっているわよ」
出ていくとき、彼女の傷は既に無かった。ああいう回復の速さを見ると、
妖怪が羨ましく思われる。もう少し霊夢たちとのお喋りに興じていたかったが、
風邪はこじらせると厄介だ。少し早いけれど、布団を借りて床に就いた。

142名前が無い程度の能力:2013/04/09(火) 03:42:34 ID:VXzKnmXg0
21:55
目が覚めたというか、私としたことが寝る前にトイレにいっとくのを忘れてたぜ。
冷えないように霊夢が貸してくれたどてらを着て布団から起き出す。
けっこう急ぐんだが、霊夢んとこのトイレは夜一人でいくのは怖いんだよな。
霊夢か早苗はまだ起きてるかな?

143名前が無い程度の能力:2013/04/10(水) 03:31:23 ID:Ovowebm60
21:58
居間の明かりはまだ点いており、話し声が外に漏れていた。
二人ともまだ起きているらしい。……怖いから付いて来てくれとは、
言いにくいな。居間の前を通り過ぎ、一人で手洗いに向かおうとしたところ、
障子戸が開いて、霊夢が出てきた。
「あら、魔理沙。寝たんじゃなかったの?」
「ちょっと手洗いを借りるぜ」
「良いけど……ふーん。付いて行ってあげてもいいわよ」
「……なら、頼む」
「珍しく素直ね」
そうかもしれない。体調を崩して気が弱っているのだろうか。
「早苗。しばらく席を外すから、一人でやってて」
「はいはーい」
陽気な声が返ってきた。玉子酒だけでは飽き足らず、
二人で晩酌を続けていたようだ。

144名前が無い程度の能力:2013/04/11(木) 05:34:22 ID:J89Ce9Ew0
22:02
用を足して外に出ると、霊夢がいなかった。
一人で先に戻ってしまったのだろうか。薄情な奴だ。
……私も早く部屋に戻って寝よう。そう思ったところで、
後ろから肩を叩かれた。
「ひっ!?」
恐る恐る振り返ると、小傘が笑っていた。
「ごちそうさまー」
こっ、このっ……!近くの部屋の襖が開いて、霊夢が出てきた。
笑いを噛み殺している。巫女が妖怪と一緒になって人間を驚かせるなよ。
怯えるのも腹を立てるのも馬鹿馬鹿しくなった。私は二人を残してずんずんと歩いて、
部屋に戻ると、再び眠りに就いた。

145名前が無い程度の能力:2013/04/12(金) 00:36:43 ID:6WTF5xas0
9:00
目が覚めた。壁に掛かった早苗がぽうぽうと鳴いて遅い朝を告げている。
昨夜は風邪をひいてしまったから、こんな時間まで眠ってしまったのだろう。

146名前が無い程度の能力:2013/04/12(金) 00:46:31 ID:uThDIEl60
壁に掛かった早苗!?

147名前が無い程度の能力:2013/04/12(金) 00:59:42 ID:jitnt82s0
9:15

あ、霊夢型家事ロボットが朝食を持ってきたようだ
壁の早苗の鳴き声を止めて食べよう
そういえばレティは・・・

いつも通り四六時中ラジオ体操をする作業に戻ったみたいだ

それにしても何か違和感がある・・・
一体何だろう・・・?

148名前が無い程度の能力:2013/04/12(金) 04:26:24 ID:HPoepmQE0
19:18
庭一面に積もった屋根瓦に醤油を垂らし、囲炉裏で膝に注連縄を巻き付けると、少し落ち着いた。
高下駄の木目はそう悪くない。余計な鰹節が軒並みをそろえる前に、帰るとするか。
「家が心配だし、私は帰らせてもらうぜ」
壁の早苗は黙りこくっていたし、霊夢型ロボットは軽く小傘を傾けただけだった。
レティはラジオ体操第二に余念がない。私は水澄ましを蹴って、神社を後にした。

149名前が無い程度の能力:2013/04/13(土) 00:27:48 ID:0FJiVGT.0
9:20
なんか午後になったような気がしてたが
まだ風邪が治りきってないんだろうぜ。

今日は香霖に風邪でもうつしにいくか。

150名前が無い程度の能力:2013/04/13(土) 04:35:25 ID:vTujT2L60
9:37
香霖堂は怒涛の大八車で、普段よりなお提灯の寄り付かない感じだった。
栓を開けると、香霖が座って、豆腐を回しているのが見えた。
こちらに気付いた香霖は、驚いた表情で立ち上がると、ずかずかと歩いてきた。
奴は自分の額を私の市松模様に押し付けると、
「酷い熱だ……君は奥で寝ていろ。絶対安静だ」
と言った。顔が、近い。声が大きい。そんな大声を出さなくても分かるぜ。
ぜったいあんせい……って何だっけ。
「今薬を出す……だから、外に出ていこうとするな!」
そう言うと、香霖は私を担ぎ上げ、奥の部屋に引っ張り込んだ。
この部屋、寿老人だらけじゃないか。香霖の敷いた御神酒に身体を横たえると、
急に寿司桶が押し寄せてきて、私は夜の帳に飲み込まれた。

151名前が無い程度の能力:2013/04/14(日) 01:24:21 ID:biP5H8uw0
10:00
人里だぜ。
何か騒ぎがあるので香霖は見物しにいくんだそうだ。
私は店で寝てろと言われたが香霖が出て行くんじゃ説得力ないぜ。こっそり出てきた。

さて人里では珍しく永遠亭の連中やら妹紅、萃香や勇儀たちまで集まっているぜ。
いったいなにがはじまるんだろうな

152名前が無い程度の能力:2013/04/15(月) 04:54:40 ID:Uf8VBO2g0
10:02
「よお、永琳。何があるんだ?」
「新しい酒屋ができたらしくてね。記念の利き酒会よ……
 って、貴方大丈夫?酷い顔よ」
酷いことを言う。永琳は私の額に手を当てる。
「やっぱり熱があるわね。とりあえずこれを飲んで、今日はおとなしく家で寝ていなさい」
薬を手渡された。辺りを見渡すと結構な人だかりだ。角やハンチング帽まで見える。
「……その店一日で潰れるんじゃないか?」
「一人あたりが飲める量は決めてあるらしいから、大丈夫なはずよ。
 さあ、病人は帰った帰った。酒なんて飲んだら悪化するわよ」

153名前が無い程度の能力:2013/04/15(月) 13:54:24 ID:IAFgzpcMO
10:05
そう病人扱いされたら何だかダルくなってきたな…。
せめて品揃えだけでも見て帰ろうと店先に近づくと…
「おう?魔理沙!」
星熊勇儀の声だ。
いつもの薄着でなく、つば広の帽子をかぶり、やたら大きな毛皮を肩から羽織っている。
「よぉ…暖かそうだな?熊か?」
「いや、“ばっはろぅ”とかいう野生の牛の毛皮らしいね」
触ってみると羊の毛みたいにふかふかしていた。
帽子は革製で洒落ている。
「“てんがろん”だよ。桶がわりに水も汲めるらしいが…これじゃあなぁ」
角を出すための穴が空いているのだ。
「それは仕方ないだろう」
苦笑してる勇儀から渡されたやつを被ってみると、少しぶかぶかだった。
「貴女…顔が赤いわよ?風邪ね…」
行列から出てきた橋姫パルスィは顔をみるなり言ってきた。
「ん?たしかにそうだな」
「いや大したこと無いさ」
二人にそうごまかすが、パルスィは鋭い目付きで無言だ。
しかし、整った顔立ちに白い肌。金髪に緑の瞳…よく見りゃかなりの美人だぜ…。

154名前が無い程度の能力:2013/04/16(火) 00:28:40 ID:ovVDQ5r.0
10:10
というわけでパルスィに奥の部屋につれこまれ服をぬがされ、汗を手ぬぐいで拭かれ、寝巻を着せられた。
有無をいわせずだ。
もっと引っ込み思案な奴だと思っていたが見かけによらず強引なところがあるんだな。
今はむこうでお茶漬けだかおかゆだかを作ってくれてるところだ。
ここはパルスィの家でもないだろうに行動力あるなあ…

155名前が無い程度の能力:2013/04/16(火) 04:25:42 ID:WDE2TV/s0
10:38
パルスィが作ってくれた粥を一口含んだとたん、急に吐き気が押し寄せてきて、
私は今朝食べた朝食を戻してしまった。彼女が桶を用意していたので、
部屋と布団は無事だったが。あれ、思ったよりやばいか……
「別に、不味かった、わけじゃないぜ」
「分かっているわ。落ち着いたら少しだけ食べて寝なさい」
彼女の言に従う。……寝るには少し寒いな。
「ほらよ」
勇儀が着ていた毛皮を脱いで、布団の上からかけてくれた。
寒いような暖かいような、妙な気分になった。水をもらって、
永琳の薬を飲んでおく。飲み込むとすぐに、私は意識を失った。

156名前が無い程度の能力:2013/04/16(火) 20:12:36 ID:Y5Jqjx/6O
?:??
ふっ、と意識が戻る。
どのくらい時間がたったのだろう?
今何時だ?
悪寒は消え、体が妙に軽い。夕方なのか?周りは暗いようだ。
何気に薄目を開けると、そこに私が!?
すぐ横で眠っているのだ!。
と、私の体が突然浮かび上がる。ベットで…私の家のだ…横になる“私”を見下ろした。
これは、ユウタイ何とかという奴か?
まさか私はし…!恐ろしくなった。しかしもがいても体は戻らない。
やばいやばい、涙が出てくる!そこに
“しっかりしろ!”
の声と共に力強く手を引かれる。聞き覚えのある声…。
目が覚めた。明るいぜ。
「少々危なかったな、魔理沙」
「み、魅魔さま…」
数年ぶりに会う師匠はベットのすぐ隣でリンゴの皮を剥いていた。

157名前が無い程度の能力:2013/04/17(水) 00:20:04 ID:YMxhxErA0
11:00
夢だった。
リンゴをかじろうとしてたのにいいところで目が覚めた。

「ふえー。夢とはいえ魅魔様に会うのも久しぶりだよなあ…」
「あたしゃここにいるよ」
見れば勇儀の背中におぶさって何か命令している魅魔様だ。
夢だけど夢じゃなかったぜ。
ついでにリンゴも夢じゃなかったらよかったんだがな。

158名前が無い程度の能力:2013/04/17(水) 02:41:55 ID:kCCixgkE0
11:02
「今、何時だ?」
「11時よ」
襖を開けてパルスィが入ってきた。
「何だ。まだ30分も眠っていないのか」
「24時間と30分弱ね」
え。ええーっ!?丸一日も意識を失っていたのか。
「貴方が寝る直前に飲んだ薬にそういう効果があったみたいね」
酷いものを渡すなあ。身体を起こす。
「と、しかし体調は良くなってるな。流石は永遠亭の薬」
「薬で眠らせないとふらふらうろつきまわるバカな病人には、
 そういう効果も無いと駄目だったみたいね」
否定できない。
「まあ、しばらくは無理をしない方が良い。ぶり返すかもしれないからね」
勇儀はとりなすようにそう言った。
「で、どんな夢を見てたんだい」
身を乗り出した魅魔様に、
「さあ。もう忘れちゃったぜ」
そう答えると再び体を横たえ、布団を引っ被った。

159名前が無い程度の能力:2013/04/17(水) 21:27:21 ID:dCMkW02AO
11:05
(ところでここはどこだ?)
私が寝ていたのは勇儀たちが里で泊まっていた宿だった。
渋い色の、粋な男物の浴衣を羽織った勇儀が感心したように部屋を見回している。
「しかし、なかなか洒落た造りだな…」
「ここは以前、遊廓(ゆうかく)だったのさ」
魅魔様の答えにほう、とうなずいている。
しかしユーカクって何だろう?
パルスィが入ってきた。
宿の浴衣を着ている。
花をあしらった柄に、明るい色の帯が映える。
つい見とれていたら、ばかね、と軽く言われて
「さ、お上がりなさい」
お粥とお碗物が湯気を立てている。そういえば腹が減ったぜ…。
「!?、うまい!」
一口いれて思わず声が出た。お粥は鶏で出汁をとっていてショウガが利かせてある。
胃がすっきりするぜ。お碗はとろろと溶き卵をみそ汁でのばしたものだ。
優しい暖かみと塩味が疲れた体に染みた。
私が平らげるのを満足そうにみて
「お粗末様…でも今はこれで我慢なさい」
橋姫は腕を組み苦笑した。
私の体はまだ食べ物を受け付けない、という。美味いしお代わりしたかったけどなあ…。
と、ふすまの向こうから声がした。
「失礼ですが霧雨さまはこちらに?…」
宿の番頭さんだ。来客があるという。いったい誰だろう?

160名前が無い程度の能力:2013/04/18(木) 05:55:33 ID:195oPmfY0
11:07
「こんにちは」
「げっ、雪女……っ!」
「げっ、て……私との弾幕ごっこの後で風邪をひいたって聞いて、お見舞いに来たのよ。
 風邪の時にはビタミンCを摂るといいわ」
レティはそう言って蜜柑の入った籠を枕元に置いた。
「悪いな。胃が落ち着いたら食わせてもらうぜ」
「そう。じゃああまり長居して貴方の体調を損ねても悪いし、さっさと退散するわ」
レティは一陣の冷たい風を吹かせて立ち去った。彼女の置いていった蜜柑を手に取る。
冷凍蜜柑にはなっていないようだった。

161名前が無い程度の能力:2013/04/18(木) 06:01:15 ID:Dc/0CJok0
11:10
「こんにちは」
また来客だ。秋姉妹ではないか。
静葉はメイプルシロップを、穣子はさつまイモを置いていった。
秋姉妹とは特に親しくしてるわけでもなければ
自宅にいるわけでもなく宿に泊まってるのもなりゆきのたまたまなのに
差し入れだか見舞いだかを持ってきてもらえるのはどういうわけだろう。

162名前が無い程度の能力:2013/04/19(金) 03:03:18 ID:e.fE3vg20
11:15
「やあ盟友」
今度はにとりか。
風邪だから栄養をつけてくれと言って大量のきゅうりをくれたぜ。
大量のきゅうりを食ったらかえって風邪をひきそうな気がするが
気持ちはありがたい。
ちなみに昔パチュリーに聞いた話では
きゅうりはビタミンCを分解しちゃうんだそうだ。

163名前が無い程度の能力:2013/04/19(金) 04:23:49 ID:srogiijI0
16:39
それから私はまた眠り、目が覚めると夕方だった。
身を起こして背伸びをしてみる。本調子という感じはしないが、
熱っぽさは消えている。不調は眠りすぎたせいかもしれない。
パルスィ達は皆帰ってしまったようで、一人だった。宿の人に日付を尋ねる。
今度は丸一日以上眠っていたわけではなかった。
宿の人に作ってもらった芋粥を食べる。しばらくじっと座っていたが、
吐き気は催さない。もう概ね大丈夫なようだ。
とはいえ無理は良くない。宿代は今晩の分まで払われているそうだし、
大人しく過ごさせてもらおう。ただ、風呂には軽くで良いから入っておきたいと思った。

164名前が無い程度の能力:2013/04/19(金) 16:25:51 ID:tQzx2M9YO
17:12
さすがに宿の浴場は立派だった。
客は私ひとり。ぜいたくだぜ…。
「ん…くぅぅ…っ」
生き返るぜ!。
畳六畳はあるヒノキ造りの湯船に浸かれば、こわばった体がほぐされてゆく。
あがって体を流すと、汗で根詰まりした毛穴が息を吹き返した。
えもいわれぬ快感だ。
湯あみを存分に堪能し、部屋に戻ろうとしたら、大広間でなにやら大勢の気配がする。
「おや?…霧雨の…魔理沙さんで?」
振り向けば紺色のはっぴを着た男が笑っている。
しかし、私に見覚えはない。
よくみるとエリ元に“二ツ岩”と書いてある。
「ん?あんたは!…」
「はは、ほれ、これですよ」
男の頭の上に葉っぱが一枚。それを外すと…狸!。
なんだ、マミゾウの身内じゃないか…。
「今晩は“ご開帳”でしてね…あっ、親分もおいでですよ」
てなわけで私はバクチ場に案内されてしまうのだぜ。

165名前が無い程度の能力:2013/04/20(土) 07:56:20 ID:Z/B.ngFI0
17:21
「人里の地下にこんなもの作って大丈夫なのか?」
割と広い部屋だ。私たちが降りてきたもの以外にも、いくつか階段が見える。
「別にいつも賭場として使ってるわけじゃありません。作ったのは私達ですが、
 人間連中が稽古事に使うのに貸したりもしています」
しかし階段を降りて集まってくる連中には妖怪が多いようだ。
他には物好きな人間、魔術師の姿もちらほらと。
「おぬしがここに来るとはの。金は持っとるのか?」
後ろから声をかけられた。二ツ岩の狸だ。
「三日前に家を出た時から、財布の中身は使う機会が無かったからな」
とはいえ賭けに参加する気はあまり無かった。
いくらでもイカサマの使えそうな面子だし、運のみに支配されるゲームはそう好きじゃない。

166名前が無い程度の能力:2013/04/21(日) 08:38:53 ID:GxDMIr.s0
17:48
「あやつが中盆、そっちのがツボ振りじゃ」
マミゾウが二匹の狸を順に指さす。そろそろ始まりそうだ。
次の瞬間、空気が沸騰した。これは、雰囲気が変わっただけじゃないな。
「イカサマありかよ」
「賽・笊を狙ったのが三人、進行役の二人を狙ったのが二人、
 部屋全体に術を掛けようとしたのが一人、
 自分以外の参加者を狙ったのが二人、自分に術を掛けようとしたのが七人じゃな」
「よく分かるな」
「経験から適当に言っただけじゃ」
適当なのか。
「成功するものなのか?」
「さあの」
そこははぐらかされた。
「危なくないのか?」
「むろん危険じゃよ。見物しとるわし等を狙ってくるやつもおる。
 病み上がりで本調子じゃないんじゃろ?早めに帰った方が賢明だと思うぞ」

167名前が無い程度の能力:2013/04/22(月) 07:46:08 ID:FjCV3Og20
18:09
結局賭けが始まる前に宿に帰ってきてしまった。
魔術や妖術が飛び交うはそれなりに面白そうで、
実際それ目的で来ている奴もいるそうなのだが、
自分で使うとなるとそういう小細工はどうも苦手だ。
準備してからならともかく、何の用意もなしに参加したくはなかった。
マミゾウは賭場に残った。仕切っているのが狸連中だから仕方ない。
一人で大人しくしているのは暇かもなあと思いつつ、自室の襖を開けると、
勝手に部屋に上がり込んでいる見舞客がいた。

168名前が無い程度の能力:2013/04/23(火) 06:07:49 ID:agXOJo9M0
18:13
「何勝手に私の蜜柑食ってんだよ?」
「良いじゃない。ほら、代わりにこれあげるわ」
天子が放り投げた桃を受け取り、彼女の向かいに腰を下ろす。
「どういう風の吹き回しだ?」
「退屈している頃じゃないかと思って、来てあげただけよ」
退屈凌ぎに来たらしい。
「それより見舞いに来てみれば病人が留守ってどういうことよ?」
「もう病人じゃないからな。ちょっと人里の地下で妙なことをやってる連中がいて」
桃を食べながら、狸の賭場の話をする。
「面白そうね。ちょっと見てくる」
待てい。
「私の退屈を紛らわすために来てくれたんじゃないのか?」

169名前が無い程度の能力:2013/04/24(水) 01:42:44 ID:v1AtUZ9U0
21:23
昨日今日とあれだけ眠ったのに、天子と噂話に興じたり、
碁を打ったりしている内に眠くなった。
「今日はもう遅いし、私もここに泊めてもらおうかな」
「明日の朝、この近くにブン屋が現れる気がするぜ」
「やっぱり帰るわ。襲ってくる妖怪がいるようなら、それはそれで楽しみとしましょう」
天子が立ち去り、部屋の明かりを落とすと、すぐに眠りについた。

170名前が無い程度の能力:2013/04/24(水) 02:25:40 ID:dNhyPP7I0
9:00
目が覚めた。壁に掛かった時計の鳩がぽうぽうと鳴いて遅い朝を告げている。
病み上がりで体力が弱っていたから、こんな時間まで眠ってしまったのだろう。

宿の朝飯はまだ食えるかな?

171名前が無い程度の能力:2013/04/25(木) 00:26:57 ID:BZctwKFE0
9:16
朝が遅い客は意外と多いようで、朝食にも無事ありつけた。
ご飯、味噌汁、焼き魚、納豆、おひたし、漬物。贅沢な普通の献立が嬉しい。
お腹もいっぱいになったし、体調もほぼ全快。
ここ何日か空けている家の様子が心配なので、そろそろ帰るとするか。

172名前が無い程度の能力:2013/04/25(木) 05:00:40 ID:rkr134AM0
9:30
おい!どういうことだ
私の家がなくなってるぜ
どこのどいつのしわざだ!?

3択――一つだけ選ぶのぜ。
 答え① おっちょこちょいの魔理沙は家の場所を間違えた
 答え② 目の錯覚
 答え③ 本当になくなった。現実は非情である。

わたしがマルをつけたいのは答え②だが期待はできないぜ…
雪おろしの時、雪の山から突き出てた剣の鞘が目の錯覚かと思ってたら
そんなことはなかったからな。近くにうどんげもいないしな。

173名前が無い程度の能力:2013/04/26(金) 06:48:03 ID:mC4FYY3A0
9:31
一面に雪が積もっている。とはいえ、家一軒を埋め尽くすほどではない。
家のあった場所をざくざくと手で掘ってみると、土の地面が出てきた。
土台すら見えない。そして家の周りにあった柵や鉄屑の類も無くなっている。
残骸すら見つからない。これは根こそぎ破壊されたと見るよりは、
移動させられたと見るべきだろう。問題は移動させられたのが家なのか、私なのかだ。
家だとすれば、目的は家の中の魔道書やマジックアイテム、そして私の研究成果だろう。
紫は冬眠中だし、似たような能力を持つ妖怪にもこんな面倒なことをする動機はない。
私と同じ魔法使いが盗んだと考えた方が自然だ。しかしこの考えも、多分間違っている。
家ごと盗み出すなんて大がかりな術、リスクと効果が見合わない。
つまり、私が家の場所を間違えた、あるいは間違えさせられていると考えるのが最もありそうなことだ。
道に迷わせたり、幻を見せたりする能力をもつ者は、幻想郷には月の兎以外にも多い。
特に妖精に多い。だとすれば、多分近くで見ている犯人を探し出し、叩きのめせば、家には帰れる。
しかし面倒だな。とりあえず犯人を特定するところまでは、魔力を使わずやりたいが。

174名前が無い程度の能力:2013/04/26(金) 06:55:14 ID:DaAC2SIE0
9:31
なくなったもんは仕方ない。そのうち出てくるだろうぜ。
さてすることもなくなったし香霖のとこに行って煤払いでもするか。
なんだか面白いものが見つかりそうな気がする。

175名前が無い程度の能力:2013/04/26(金) 16:10:26 ID:fgI3U8IAO
9:40
「…う〜む!」
思わずうなったぜ。
面白いものがあるどころじゃなかった。
雪景色の森を飛ぶこと数分、香霖堂のすぐ横に私の家が建っていた…。
「これは君のいたずらなのかい?」
「んなわけない」
苦笑気味のこーりんに答えた。
「しかし、おかげで君が“借りた”ものが大分戻ってきたよ」
「おい!勝手に持ってくのかよ?」
いや私が言うセリフじゃないかな…
「いや見たところ埃を被っていたようだよ?必要ならまた“借り”ればいい」
あいつは平然と答えた。
「ところで何の用事だい?」
「ああ…煤払いでも…んん?」
と、私の家から煤払いの道具を持って出てきたのは
「お帰りなさいませ、魔理沙様!」
霖之助が目をまるくした。
“たま”こと珠江は咲夜そっくりの笑顔で私を迎えた。

176名前が無い程度の能力:2013/04/27(土) 10:57:20 ID:adoF1r4U0
9:42
「お前が私の家を動かしたのか?」
「いえ、術式を組まれたのはパチュリー様とアリス様です」
「何だってこんなことを?」
「年が明ける前に、貸した本をまとめて返していただこうということらしいです。
 今は香霖堂の近くに置かせていただいていますが、先ほどまでは紅魔館の近くに、
 その前はアリス様のお家の傍にと、家ごと動かしつつ中の物を整理させていただいております」
慌てて家の中に飛び込む。本棚がすかすかだった。床や机の上に散らばっていた本は一冊も無くなっている。
「ど、泥棒……」
「貴女が言わないでください」
そう言いながら奥から出てきたのは、小悪魔だった。三角巾を被って、エプロンを付けている。
「貴女、エレンさんの所や永遠亭からも、無断でいろいろ持ち出しているそうじゃないですか?
 この後、家ごと回って返しに行く予定ですからね」
それでこんな大がかりなことをしたのか。いや、納得している場合じゃない。
断固阻止。ミニ八卦炉を小悪魔に向ける。
「家の前で暴れないでくれ」
後ろから手が伸びてきて、私の手からミニ八卦炉を取り上げた。
「ふむ。年が明ける前にこれもメンテしておいてあげよう」
今このタイミングでしないでくれ。
「ああ、心配しなくても、お代はいらない。サービスにしておこう」
持ってかないでー。

177名前が無い程度の能力:2013/04/28(日) 06:04:43 ID:72Y6h0L.0
9:50
ふう、なんかどっとつかれたぜ。
いつもは元気が取り柄の私なんだけどな。

さて、こうなったらどっかに掘り出し物でも探しにいくかな。
ミニ八卦炉がないのは不安だがまあなんとかなるさ・
ど・こ・に・し・よ・う・か・な・・・っと
旧都にでもいってみるか

178名前が無い程度の能力:2013/04/28(日) 08:15:03 ID:8ZUQqQLU0
9:52
「どこかに出かけるのかい?」
「ん、ああ。この間は勇儀達の世話になったからな。ちょっとお礼をしに行くんだぜ」
「武器も持たずに?」
旧都に向かう道は妖怪が多い。
「心配してくれるのか?」
「まあ、折角ミニ八卦炉の調整が終わっても、受取人がいないんじゃ困るからね」
縁起でもないことを言うな。

179名前が無い程度の能力:2013/04/28(日) 14:10:20 ID:D0YvdrvIO
9:54
「魔理沙様これを」
たまが木製の平たい箱を持ってきた。
くすり、と周囲の笑い声。
いや“様”はよせって!恥ずかしい…
「それでこれは何かな?」
霖之助が興味深そうな顔をした。
「レミリアお嬢さまから預かってきたものです…お渡しするようにと」
手に取ると結構重い。鍵を外してふたを開けると
「何だこれは!」
「ウェブリー&スコット38口径拳銃…六連発式です」
「いや、なんでこんな物騒なものをな…」
紅いビロード敷きの箱の中に、銀色の武器が光っていた。六発撃てる予備の弾倉に弾のケース、メンテナンスの道具が入っている。弾を1つ手に取る。てのひらで転がしてみた。
「銀の弾ですよ」
いつのまにか小悪魔が立っていた。
「あっ、触らない方がいいですよ?弾頭に水銀を塗ってますから」
おい、早く言えよ!と、見ると小悪魔は左の腋に同じ拳銃を吊っているじゃないか?
えっ?操作を教えます、だって?…どうしよう

180名前が無い程度の能力:2013/04/29(月) 01:45:00 ID:tMcIM4Ds0
9:55
「折角だが、遠慮しておくぜ」
銃を箱に戻し、小悪魔に押し付ける。殺し合いの道具なんて持っていたら、
弾幕ごっこが普通に楽しめないじゃないか。扱い慣れない武器は持ちたくないしな。
ミニ八卦炉以外にも、私らしい装備はいろいろあるんだ。家の中から、適当に見繕う。
「私の持ち物まで持ち出すなよ。あと、家はちゃんと元の場所に戻しておけよ。じゃあな」
それだけ言って、香霖堂を後にした。

181名前が無い程度の能力:2013/04/29(月) 03:33:22 ID:lO/gVKEA0
10:03
用心のためにキノコのストックでも増やしとくか。
ちょうど風穴までの道に魔法向きの珍キノコの穴場がある。
寄っとこう

182名前が無い程度の能力:2013/04/29(月) 23:33:57 ID:tMcIM4Ds0
10:28
雪に覆われた地面からキノコを探して掘り出すのは骨なので、
枯れ木や倒木から出ている分だけを少し回収する。
里では世話になったし、パルスィ達に土産も用意しておくか。
神社にこっそり立ち寄ってお神酒をくすねる。霊夢に見つかることもなく、
無事風穴に入ることができた。

183名前が無い程度の能力:2013/04/30(火) 00:31:53 ID:uMsvlRNw0
10:30
しまった。わりとトイレに行きたい。
家がなくなったりでドタバタしてたせいでトイレにいっとくのを忘れてた。
それと冷えるせいもあるかな。神社で行っとくんだったぜ。

まだしばらくは大丈夫だが、できることなら外ですませたくない私としては
しばらくトイレがありそうにないこのあたりはちょっと不安だぜ。

まあキスメやヤマメだってこのあたりに住んでるんだろうから
トイレが全くないわけでもないだろう。会ったら貸してもらうか。

184名前が無い程度の能力:2013/04/30(火) 21:10:00 ID:1FVzhPmY0
10:33
「風邪の具合はもういいの?」
突然耳元で囁かれて驚いた。振り返ると、すぐ後ろにキスメがいた。
頭上からタイミングを計って降りてきたようだ。
「ああ。もうすっかり全開だぜ」
「……字が違う」
「パワーがな。今日はヤマメはいないのか?」
「寝てる。寒いのは苦手だって」
所詮は虫か。
「風邪、本当に治ったのか、試させて」
「良いぜ。私もちょうど試したかったところだ」

185名前が無い程度の能力:2013/05/01(水) 21:08:44 ID:bxsyr.5o0
10:34
「……まずは30秒、試させて」
そう言うと、キスメはびゅんっと上方の暗闇の中に姿を消し、見えなくなった。
――怪奇「鬼火釣瓶撃ち」――
ばらばらと何かが降ってくる。これは……人骨!?本物かどうかは分からない。
しかし人骨のようなその形が厄介だ。まっすぐには降ってこない。軌道が微妙に揺らぐ。
5秒経過……弾幕の密度がほぼ飽和状態になったところで、得意の鬼火弾を撃ってきた。
どうやって私の位置が分かるのか、こちらを正確に狙ってくる。
「どうした?これくらいなら風邪をひいていても躱せるぜ」
はったりではない。鬼火が撃たれる、避ける、撃たれる、避ける、撃たれる、避ける。
風穴の壁が近づいたところで加速し、切り返す。ばら撒き弾幕の軌道は少々読みにくいが、
密度自体は大したことない。15秒経過……ここまでは余裕だ。
撃たれる、避ける、撃たれる撃たれる、避ける、撃たれる撃たれる撃たれる、避ける……
鬼火の発射間隔が次第に短くなってきた。ここにきて釣瓶撃ちか。
追い詰められずに避け切れるか。あと10秒、9、8、7、6……
もう切り返せない。弾幕の流れに逆らい、壁に沿って上に向かう。5、4、3……
読み切ったと思った骨弾が、壁で跳ね返って飛んできた。危ねえっ……!
上体を反らしてどうにか避ける。2、1、0!よしっ、耐久成功だぜ。

186名前が無い程度の能力:2013/05/03(金) 00:54:54 ID:uWyIEE6.O
10:35
とかなんとかしている内にも『よおして』きたぜ!
おーい、キスメ!近くにトイレはないか?

187名前が無い程度の能力:2013/05/03(金) 00:56:16 ID:GfK3/4Ow0
10:40
ズズズ…
ふう。運動のあとの茶はうまいぜ。体もすっかり回復してるようで何よりだ。
どこに井戸があるのかは分からないが、この茶はいい井戸水を使ってるんだそうだ。
運動直後とはいえ、やっぱ冷える冬はあつあつのお茶はいいな。
さて、キスメに礼をいって深道にやってきた。
今日はパルスィは地下何階くらいのとこで会えるかな?

188名前が無い程度の能力:2013/05/03(金) 00:58:07 ID:GfK3/4Ow0
しまった、リロードしてなかった

10:41
しまった、そういえばトイレに行きたかったの忘れてたぜ。
このダンジョン下手すると時間かかるんだよな。少し急ぐか。

189名前が無い程度の能力:2013/05/05(日) 22:41:04 ID:IXmJZ8NY0
10:52
パルスィの家で手洗いを借りて出てくると、彼女は呆れた表情を見せた。
「こんな地の果てまで来て何をやっているのよ、貴女は」
地の果てというか、地の底というか。
「この間の礼に来たんだぜ。これが土産の酒だ」
博麗神社のお神酒。うまいはずだ。
「これから勇儀の所にも行くつもりなんだが」
「そう。あれも旧都に帰ってきているはずよ」
「それは良かった。世話になったな」
「待ちなさい。酒も良いけど、ちょうど退屈していた所なのよ。遊んでいきなさい」
弾幕ごっこか。ミニ八卦炉は無いが、まあ何とかなるだろう。

190名前が無い程度の能力:2013/05/06(月) 23:13:40 ID:7kdnBhqA0
10:54
――儀符「オーレリーズサン」――
こちらから仕掛ける。場所をパルスィがいつもいる橋の上に移しての弾幕ごっこ。
原色の球体を、彼女は舞うような動きで躱す。なかなかやる。しかしこれはあくまで小手調べ。
――魔空「アステロイドベルト」――
続けて次のスペルカードを宣言する。装備が不十分だからといって、防御に回るのは性に合わない。
キスメとの弾幕ごっこで、それは実感していた。高密度の星の弾幕を、パルスィは小刻みに動いて避ける。
避けながら、粒上の弾幕を放ってくる。だがその程度の反撃じゃ私には当たらないぜ。
――舌切雀「大きな葛籠と小さな葛籠」――
防戦一方が不利と見てか、彼女もスペルカードを宣言。分身して弾幕を放ってくる。
その弾幕は前に見たぜ。私は小さい弾を放ってくる方を、マジックミサイルで狙い撃った。

191名前が無い程度の能力:2013/05/07(火) 01:23:28 ID:8Cymlb6.0
10:55
大きい方がハズレだなんて妖精だって知っている。
でも大きな葛籠の方が私ごのみなんだけどな。
回り込んで巨大弾の隙間を捜し、分身のはずのパルスィに近づいてみた。

192名前が無い程度の能力:2013/05/08(水) 01:43:11 ID:yxDgAfxs0
10:56
「今日は――」
大弾を放つパルスィがこっちを見ていった。
「こっちが本物よ」
「――――っ!?」
分身の方が壊れ、横から細かい弾幕が大量に飛んできた。
「うおおっ!?」
辛くも躱す。
――怨み念法「積怨返し」――
その隙を突いて、次のスペルが宣言される。赤と青の二色の弾幕。
何を表現しているのだろう。避けながら、体勢を立て直す。
互いにまだポイントを上げてはいない。互いにスペルはあと一枚。
どの技で勝負に出るか……

193名前が無い程度の能力:2013/05/10(金) 17:07:42 ID:87/N85Zo0
10:57
私は三枚目の――最後のスペルカードを宣言する。同じタイミングで、
パルスィもスペルを宣言した。
――魔廃「ディープエコロジカルボム」――
――嫉妬「ジェラシーボンバー」――
「あ」
「げ」
……かくして、橋の上での弾幕ごっこは、勝敗の決まらぬまま、
爆発オチをもって幕を閉じたのだった。

194名前が無い程度の能力:2013/05/11(土) 14:00:58 ID:zpY8pN8Q0
11:31
「そいつは災難だったね」
勇儀は盃を傾けながら言った。
「ああ。どうも最近弾幕ごっこの調子が良くないぜ」
レティには負けるし、キスメには苦戦するし、パルスィとは引き分けるし。
「病み上がりだから仕方ないんじゃないか?今は例の武器も無いようだし」
「だがなあ……」
「よし、なら本当に弱っているのか、ちょっと見てやるよ」
勇儀はそう言って立ち上がった。
「お前とも弾幕ごっこをしろってか?」
「いやいや、パワーを見るだけさ。だから私は撃たないし、躱さない。
 そして酒を飲むのもやめない。あんたが一歩的に魔法を撃ってくれればいい」
「そういうのは私の趣味じゃないぜ」
「心配しなくても、今のお前さんの魔法じゃ、私には傷一つ付きゃしないよ」
安い挑発だった。しかし弾幕はパワーが信条の私が、そこまで言われては引き下がれないか。

195名前が無い程度の能力:2013/05/12(日) 00:56:39 ID:zQuq6xmk0
11:32
まあこんなときのためにとっておきの魔力を秘めたキノコをいくつか用意してきたからな。
弾幕にも影響が出るだろう
勇儀を退屈させずにはすむだろう

196名前が無い程度の能力:2013/05/14(火) 11:07:36 ID:Iu2qqm.U0
11:35
「いくぜ、マジックナパーム!」
私の放った魔法を勇儀は避けるでも防御するでもなく、素手で殴りつけた。
「!?」
マジックナパームはそこまで頑丈にできてはいない。
殴りつけることはできても、殴り飛ばすことなんてできるはずはなく、その場で爆発する。
派手な爆風が上がる。勇儀はその爆風を、片手で振り払った。
ダメージを受けているようには見えない。傷一つ付かないは、単にはったりで言ったわけではないようだ。
「どうした、魔法の火力ってのはそんなもんか?」
――閉符「ビッグクランチ」――
私は続けてスペルカードを宣言した。

197名前が無い程度の能力:2013/05/19(日) 00:27:10 ID:N036zIRI0
11:36
飛んできた大弾を、勇儀は片手で受け止める。もう片方の手で盃を口に運ぶ。
その体制では勇儀を囲むように飛んでくる星の弾幕を防ぐことは……
「うおおおおおっ!」
酒を一口飲み、勇儀が吠えた。空気がびりびりと震える。
思わず怯んだ私が体勢を立て直した時には、勇儀を取り囲んでいた弾幕はかき消されていた。
大声で魔法を吹き飛ばすなんて、無茶苦茶も良い所だぜ。
「ほら、次の魔法を撃って来いよ」
そう言ってまた酒を飲む。

198名前が無い程度の能力:2013/05/19(日) 21:48:52 ID:N036zIRI0
11:37
――光符「ルミネストライク」――
撃ちながら、私は何だか楽しくなってきていた。
私の魔法に対し、吹き飛ぶでも、避けるでも、搦め手で受けるでもなく、
正面からパワーで受け止めようとする奴なんて、そうはいない。
……というより、鬼くらいのものだろう。パワーに対しパワーで迎えうつのは、
効率が悪い。私でもはっきり愚策だと思う。しかし効率も策も関係ない、
不器用なくらい正々堂々とした戦いぶりを見ているうちに、
私は自分の中の弱気の虫が消えていくのを感じた。

199名前が無い程度の能力:2013/05/22(水) 01:04:25 ID:s4H2DEmw0
11:38
勇儀は片手の腕力だけで、私の放った星弾を受け止めているわけではない。
魔力をぶつけてみて分かる。彼女の体は妖気――いや、鬼気によって守られている。
それを打ち破るには……掌に魔力を集める。手に馴染む、八角形の武器の形に。
……撃てるっ!
――恋符「マスタースパーク」――
「喰らえっ!」
ミニ八卦炉無しでどこまで威力を高められるか。魔砲が勇儀の鬼気と、彼女の拳にぶつかる。
それだけじゃない。魔砲を食い止めんとしているのは、彼女の持つ得体の知れない力。
即ち――怪力乱神。
「貫けっ!!」
掌により一層の魔力を込める。しかし魔砲の軌道は勇儀の体幹から逸らされる。
逸れた魔砲は、逆の手に持っていた勇儀の盃を弾き飛ばし、虚空に消えた。

200名前が無い程度の能力:2013/05/22(水) 22:19:04 ID:s4H2DEmw0
11:39
「……ここまでだな」
「ああ、残念だがそのようだ」
もう魔力が無い。しかし勇儀は不思議そうな顔をした。
「何を言っているんだ。お前の勝ちだろう?」
そう言って拳を見せる。火傷の跡があった。
「盃を変えて飲みなおそう。付いて来いよ」
そう言って歩きだした勇儀の背中を見て、私はしばらく呆然としていたが、
我に返ると、めいっぱい胸を張って彼女の後に続いた。

201名前が無い程度の能力:2013/05/25(土) 13:19:48 ID:hcai3zJY0
11:42
幸い飛ぶ魔力くらいは無意識に残していたようだけれど、
攻撃に使える分はほぼ使い切ってしまった。帰りはどうしよう……
風穴で凶暴な妖怪に襲われたりしたら、ほぼアウトだ。
勇儀にでも送ってもらうしかないかな……などと考えながら歩いていたら、
妙な建物が目についた。いや、建物自体は古い大きな日本家屋で、
特に変わった構造をしているわけではないようだが、門が厳重に鎖で封印されている。
これじゃあ住人がいても外に出られないだろうに。
よく見るとお札まで貼られている。門だけでなく、屋敷全体が封印されているのかもしれない。

202名前が無い程度の能力:2013/05/26(日) 08:43:48 ID:p2CD1by.0
11:43
――妙な屋敷だな……
口に出していたらしい。勇儀が振り返って言う。
「それは、あー、まあ化け物屋敷だな」
はっきりしない表現だ。勇儀らしくない。
「ちょっと複雑なんだよ。その家は」
「妖怪が住んでいるのか?」
「そうとも言える。長い話は酒でも飲みながらだ」
そう答えて、また自分の家の方に歩き始める。私は彼女の後を追った。

203名前が無い程度の能力:2013/06/15(土) 21:22:06 ID:2PfQqFLcO
11:47
屋敷は品のいい調度品に囲まれていた。窓は地底でも珍しいガラス張り。
室内は整頓されていて、ちりひとつ落ちていないが、まるで気配がないのは不気味だな。

今度は庭に出た。
「いい庭だろ?」
勇儀は振り向いて笑う。
正直、枯れ木と岩しかない庭に初めは私も首をひねった。
しかし、眺めていると飽きがこない。大小の岩や枯れた枝の配置が絶妙なのだ。
しばらく二人立ち尽くしていたら、ふいに人の気配が?
「…気に入ったようですね」
古明地さとりがそこにいた。

204名前が無い程度の能力:2013/07/08(月) 09:36:01 ID:61XHB2Sk0
11:50
さとりと会話すると向こうに悪気はなくても気分を害されることが多いので
今回はひとつ、不躾ながらあえて無視してみた。
こういう反応は慣れっことはいえ、さとりは目に見えてへこんでいた。すまんな、さとり。
まあ私のこういう気持ちも読んでるんだろうけどな。

さとりと勇儀を残して熱い方に行ってみる。お燐やお空はいるかな

205名前が無い程度の能力:2013/09/07(土) 09:49:00 ID:eDFep0rIO
12:10
暗い闇の奥にある焔が夕焼けように岩肌をそめている。
肌をちりちりさせる熱風が吹いてきて、あわてて防御魔法を発動した。
「やあ、おねえさん!」
真っ赤な空間の先にお燐のシルエットが見えた。
「仕事中か?悪いな」
ツンとくる匂いに満ちたそこをのぞくと、はるか下にどろどろした溶岩が生き物の様にのたくっていた。
いつ来ても凄い風景だぜ、ここは。
お空は居なかった。ただもうひとりの影が…死神の小町だった。
「なんだサボりか?」
いつみても羨ましくなる胸元を見ながらぼやくと、相手は苦笑しながら
「ならいいんだけど…今日は映姫さまのお付きなんだ」
ほう…お燐の話によるとさとりと会談があるそうだ。
お説教食らわぬうちに戻ろうかな?

206名前が無い程度の能力:2013/09/22(日) 20:28:37 ID:LpAU/FKIO
12:15
挨拶がわりに小町のふくらんだそれを指先で弾いて、お燐の顎の下を撫でてゴロゴロ言わせたあと、
「あばよ」
尻に帆をかけて退散だ!
さて、加速しようと腹に力を入れたら…おっと?目の前に何かが飛んできた!?
(!っ、酒か?)
手で受けたのは五合入りのとっくりだった。
下を見れば旧都の屋根瓦。
その屋根と屋根の間に勇儀が手を振っていた。
隣にはパルスィ。腕を組んで、呆れたような笑顔をしていた。
私は二人に軽く帽子を傾けて、それから一気に上昇した。

207名前が無い程度の能力:2013/11/25(月) 11:28:11 ID:FdG3yDnk0
12:45
家はまだ片付いてないだろうし、とりあえず昼食にするか。
永遠亭に入ると虫女が給仕をしていた。
魔理沙「お前は夜行性ではないのか?」リグル「蛍じゃないんですがね・・・ご注文は?」
魔理沙「お勧めは何だい?」リグル「蒸しうどんなんてどうですかね?」
魔理沙「ハチノコとか入ってないだろうな?」リグル「嫌がる人もいますんでね、虫類は希望者にしか入れてませんよ」
魔理沙「具は何だい?」リグル「牡蠣、、芝海老、たけのこ椎茸、かまぼこ、ほうれん草に後乗せで、はらこを入れます」
魔理沙「美味しそうだな、じゃ、それ頼むわ」
リグルは一礼して下がって行った。

いきなり扉がバーンと開け放ち、「霊夢〜梅うどんね〜〜」
またあいつか、毎回同じ物ばかり食ってよく飽きねえな。
でも霊夢って何なんだ?あの物臭が給仕なんてする訳ないだろ。

「あいよ〜、いつもありがとね」
霊夢が勢い良く返事を返す。どうせ狸かなにかだろう。

蒸しうどんが運ばれてきた。

20812月10日6:00〜9:00掲示板利用できません。詳細は板トップへ。:2013/12/03(火) 15:21:40 ID:FWCpL2FM0
魔理沙「これは何ていうきのこだい?随分いい香りだね」
リグル「松茸というそうですよ。輝夜さんの好物だったそうで今の時期は安く
供給してもらえるんですよ」
魔理沙「へえ、私も茸には詳しいが、これは知らなかったな。
名前からして松に生えるものか?」
リグル「確か赤松の樹齢30年〜70年ぐらいだと思うのですが」
魔理沙「幻想郷(ここ)は赤松も結構あるが、みんな老木だからな
迷いの竹林には、若い木があるのか?」
リグル「さあ、私には何とも・・・」

にとり「あそこの一画には松茸専用の赤松が植えられていて、
培養にも成功しているそうですよ」
魔理沙「おお、にとりか、何食べてんだ?」
にとり「胡瓜うどんですよ、胡瓜だけじゃ栄養が足りないんで蚕のさなぎ
ならサービスだってそこの給仕に入れてもらったんですが、なかなか乙ですよ」
魔理沙「うは、また面妖なもの食ってんな、所で?・・・」

20912月10日6:00〜9:00掲示板利用できません。詳細は板トップへ。:2013/12/03(火) 21:07:18 ID:ec7sqqxUO
13:20
にとりの隣の席に移って聞いた話は驚くべきものだった。
「空とぶ機械、だと?」
「ああそうだ 」
にとりの眼に妖しい輝きが宿る。
空を飛ぶことは河童族の悲願だ。
「今回のプロジェクトは妖怪の山と八意先生、それに…」
なんと香霖が一枚噛んでいるらしい!
しかし、私は背後に八雲の、あいつの影を見た。
「サンプルと資材は神奈子様が提供してくれた。永遠亭につないでくれたのもね。図面を引くのは楽だったよ」
また守矢か!…ところで私に何の用事だ?
「表向きは秘密。でも人里とか話はつけてあるんだけどね…まあつまり異変扱いにしてほしくないんだよ…」
そりゃ構わないが。
しかし巫女のあいつがどう出るかね?

21012月10日6:00〜9:00掲示板利用できません。詳細は板トップへ。:2013/12/04(水) 00:25:15 ID:NgIm4wXU0
13:23
「ひゅい!?」
にとりが突然とびあがった。
それもそのはず、私がこっそり首筋に氷をつっこんだのだ。
「な、なにをするんでい盟友」

211名前が無い程度の能力:2014/01/14(火) 21:08:43 ID:QPxrxsL.0
13:24
「にとり!?おいにとり!!」
気づくとにとりは動かなくなっていた。
死因はショック死。
あまりに突然の出来事に魔理沙は冷静でいられなかった。
「お値段以上ォォォォォォォ!!!!!!!」

212名前が無い程度の能力:2014/01/20(月) 15:49:45 ID:V/0p5Ixw0
13:25
「・・理沙さん、魔理沙さん、何泣いてるんですか?」
リグルが訝しそうに顔を覗き込む。
「にとりが、にとりが・・・・死んじゃった!!!」
リグル「落ち着いてください。にとりさんなんてどこにもいませんよ
、今日は来てませんから」
にとりを見ると、そこには北白河ちゆりが居た。
ちゆり「よっ」


     l⌒Yl  lY⌒l   \アマゾンで売ってた!/
    { ´┴`} { ´┴`}        (^ν^)
    ( | ̄ ̄|   )       /( )\
     | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|       | |              挿絵

213名前が無い程度の能力:2014/01/20(月) 17:15:33 ID:Icc33Phc0
ttp://i.imgur.com/T6rJuDy.jpg

214名前が無い程度の能力:2014/02/13(木) 21:31:00 ID:Aks9sHv20
ttp://i.imgur.com/GtTh3Tf.jpg

215名前が無い程度の能力:2014/04/11(金) 17:38:41 ID:LK3K5UBw0
16:00 今日も色々あったな。家はもう片付いてるだろうか?
行ってみよう。

216名前が無い程度の能力:2014/04/12(土) 08:04:06 ID:iBAfnodw0
16:10
行ってる途中で霊夢とアリスにつかまった。こいつら酔ってるぜ
昼間っから酒盛りでもしたのかな

217名前が無い程度の能力:2014/06/29(日) 14:30:09 ID:g0LiR2YA0
15:00 あいつらはほっといて、まず家だ。
こーりんの隣にはなかった。

218名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/10/21(火) 10:18:51 ID:???0
17:00
魔法の森に戻ると、家はいつもと同じ場所に――
最初から動いてなどいなかったかのように建っていた。
中は綺麗に片付けられてしまっていた。
いろいろと組んであった魔法の術式もあったんだけどなぁ…。
考えるのは後にして、ベッドに横たわる。
冬の日差しが弱い時期にどうやったのか、布団はふかふかになっていた。
今日はいろいろなことがあって少し疲れた。
少しだけ休むつもりが、いつしか私は眠りに落ちていた。

219名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/10/22(水) 03:05:18 ID:???0
20:00
目が覚めた。外は真っ暗だ。家を掃除されてはいても、魔術師の家らしく、そう寒くはない。
寝汗が不快だったが、シャワーを浴びたら気分もすっきりした。
そういえばもうすぐ正月か……
年賀状を自動で書くための魔法はどうやるんだったかな、と本棚を探す。

220名前が無い程度の能力:2014/10/22(水) 07:29:13 ID:9iT79nUQ0
20:05
しかし探すまでもなく本棚は1つもなかった。
あいつら、すっかり人んちの中を片付けやがって。
本棚の中身はともかく本棚は拾い物とはいえ私物だったんだがな…

がらんと見通しのいい部屋ってのはなんだかおちつかないもんだな。
神奈子に手っ取り早く場所塞ぎになりそうなオンバシラと茅の輪でも”借りて”くるとするかな

221名前が無い程度の能力:2014/10/22(水) 20:11:47 ID:EE4IhgAgO
20:20
星明かりをたよりに夜の空を飛ぶ。
妖怪の山、守矢神社は勝手知ったる博麗神社の航路上の先にある。
里の灯りを横目に正面を見れば、夜目にも大きく黒い山の輪郭が浮かんできた。
「あやや?どうしたんですかこんな時間に?」
すっ、と頭上を風が過ぎたと思ったら最速天狗のお出迎えか!
私が事情を話すと
「あやぁ、魔理沙さん!今は神無月、山の御ニ柱(おふたり)はお留守にされてますよ」
と笑う。
「しかし、お部屋のスペースを埋めるものなら…私も協力できそうですよ?」
そんな訳で射命丸文の自宅に誘われたのだが…天狗の家は初めてだぜ?

222名前が無い程度の能力:2014/10/23(木) 03:16:36 ID:zt1f0bok0
20:25
「とりあえず晩御飯でも食べませんか」
文は味噌汁を温めなおし、私のぶんも持ってきてくれた。
一人暮らしの自炊なのかな。
しかし質素だ。麦飯に味噌汁に漬物少々か。
まあ私の好みではあるがな。

しかし天狗の麦飯ってなんかいわくがあったような気がするぜ

223名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/10/23(木) 03:36:51 ID:???0
21:00
今は師走なんだけどな……まあ適当なことを言ってでも、
何か押し付けたいものがあるんだろう。
「これです!」
文が示したのは、大きな箱型の機械――印刷機だ。
以前こいつが新聞社で使っているのを見たことがある。
「こいつはお前の商売道具じゃないのか?」
「無縁塚で拾ったものなんですが、河童に作らせたものに比べると性能がいま一つで。
 かといって捨てるには勿体ない。なら誰かに預けて、取材先で試し刷りをするのに活用した方が良いかと思いまして」
なるほど。プレゼントにしては気前が良すぎると思った。
妖怪の山以外にも新聞作りのための拠点が欲しいということなんだろう。
まあこちらとしても貰っておいて損はない。年賀状もこれを使えば労せずに書けそうだ。

224名前が無い程度の能力:2014/10/24(金) 09:50:28 ID:R8ZHvQcUO
21:08
さて、持ち帰ろうか…ってこんな大物どうやって運ぶんだ?
私自身ホウキに乗って吊り上げればかなりの物は運べるが…
「私が運んであげましょうか?」
「えっ?文、できるのか?」
「ええ、私がここに持ってきたのですから」
そう自信ありげな文をまじまじと見てしまう。
私より少し背が高いくらいの文にそんな強力があるのか…妖怪はやはり違うのかね?
「ただ…私ら鴉天狗は夜目があまり…運ぶのは明朝でかまいませんか?」
ああ、運んでくれるなら何時でも構わない。

かくして私は今夜、文の事務所で泊まることになったぜ。

225名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/10/24(金) 13:39:37 ID:???0
21:31
夕方から夜にかけて眠っていたので、あまり眠くはない。
とはいえミニ八卦炉も香霖に預けたままだし、
夜の妖怪の山はほっつき歩くには危険だ。
文は机に向かって記事の文章を練っているようだ。
暇だからって、邪魔しちゃ悪いか……と思っていたら、向こうから話しかけてきた。

226名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/10/25(土) 12:32:26 ID:???0
21:40
「ここに戻る前、夜雀の屋台で八目鍋をいただいたんですが」
「うまそうだな…やっぱり冬は鍋か」
「ええ、ですがあの味をどう表現したものか…と」
「お前そんなに表現にこだわる奴だったか?普段なら鍋の写真をでかでかと載せて、
 見出しにうまい!とでも書いておけば良しとしたもんだろ?」
「鳥鍋に対抗するためにも気合入れて記事を書いてね!と店主に念を押されまして」
「そりゃ他人事でもないのか。てっきりあの引きこもり記者の影響で文章に凝るようになったのかと」
「それだけは絶対に無いですね!」
言いながら、がしがしとペンを走らせる。もうすぐ仕上がりそうだ。

227名前が無い程度の能力:2014/10/25(土) 21:29:18 ID:zR4VZenkO
22:05
「一息いれましょう」
文はお茶を出してくれた。
干し柿をつまみ熱いほうじ茶をすすると、なかなか美味い!。いいもん食べてる。
それから文の書いたグルメ記事を読ませてもらったが、なんかこう要を得なかった。
そこで私も記者になったつもりであーだこーだ話合った結果、“鳥鍋より美味しい”という見出しと内容に落ち着いた。
「う〜ん、おかげさまでなかなかの記事に仕上がりましたよ!…さて、休みますか」
文は満足げにそう言うと机の下から大きな寝袋を取り出す。
「ではお先に」
ミノムシみたいな格好で床一面に積み上げた書類の山のスキマにごろり、と横たわった。
鴉天狗の習慣で部屋の灯りは落とさない。
こうこうと明るい中に響く文の静かな寝息。
私も何だか眠たくなってきたな…。

228名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/10/26(日) 11:52:10 ID:???0
6:02
目が覚めた。いつの間にか眠っていたらしい。
慣れない部屋で時計がどこにあるのか分からないが、
窓から入る日差しから普段より早く起きたのが分かる。
しかし既に文の姿はない。机の上に置手紙があった。
『朝刊を配りに行ってきます。ついでに印刷機は魔理沙さんの家に持っていっておきます』
私の用事はついでか…文がどうやってあの重い機械を運んだのか、見る機会を逸したらしい。

229名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/10/27(月) 08:20:08 ID:???0
6:31
流し台を借りて顔を洗い、朝食を食いに帰るかと事務所を出た所で、
写真に撮られた。はたてだ。何でこんな所に。
「まさか天狗の新聞社から人間の魔法使いが出てくるなんてね…これはスクープね!」
とっさにミニ八卦炉を取り出そうとしたが、持っていなかった。
「……消せ」
「嫌よ。私は今から、夜雀の屋台の新メニューを記事にするために取材に行くんだから」
「その記事なら今文が配りに行ってるぜ。お前は朝刊の配達に行かなくても良いのか?」
「配達ならとっくに終わったわよ。なら、なおさらこのスクープは逃せないわね。
 詳しいお話を聞かせてもらえないかしら?」

230名前が無い程度の能力:2014/10/27(月) 21:25:55 ID:VJUNjHGUO
06:52
仕方ない…別に隠すこともなかったから昨夜からのことを洗いざらい話した。
はたては“ケータイ”を片手にふんふん、と熱心に聞き入っている。
「しかし、こんなのがスクープになるのか?」
「文が山の外に拠点を作ることが分かっただけで収穫よ!」
「しかし、まだ稼動してない。しばらくしたら私の家に来るといい」
うん、そうね!とはたては上機嫌で朝食をおごるという。
「はい、これ」
紙袋を受けとると温かい!
中には紙皿に乗ったパンと紙コップに入ったコーヒーだ。
「意外にハイカラなんだな…山に店があるのか」
「ううん、人里から朝一番で運んでくるんだそうよ」
なんでも、若手の天狗が始めた新商売で人里からデリバリーをしてるらしい。
「里より少し割高だけど…山を下りることを考えたらね」
とかなり好評のようだ。
私はピンときて
「なあ、それを記事にしたらどうだ?。里の店も取材したら広告料が取れるかも知れないぞ」
「それいい!早速そうするわ!」
はたてはパンとコーヒーを両手に文字通り飛び上がった。
と、向こうから訪問者がやって来た。
椛と白狼天狗の一団だ。

231名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/10/28(火) 13:19:18 ID:???0
7:00
椛は厳しい表情でこちらを睨んでいる。
「ここは普通の人間が無闇に入っていい場所じゃないって、
 何度言ったら分かるんですか!」
「まあそう言うなって。今日は招かれて来てるんだから」
「……まったくこれだから烏天狗は」
小声でぶつぶつと何か言っている。
「私たちとしては、あまり長居しないでほしいのですが」
「ああ、そろそろ帰ろうかと思っていたところだぜ」
「分かりました。では私が人里まで送っていきましょう」
「……」
「知り合いのよしみで。本来なら妖怪の住処に人間が一人で来たら、
 捕って食われても文句は言えない立場かと思いますが」
「分かった。お願いするぜ」
文に無断で帰ってしまうことになるが、
あいつは神出鬼没な奴だしどうせまた後で会うことになるだろう。

232名前が無い程度の能力:2014/10/28(火) 22:04:35 ID:XwYSxW6UO
07:08
「小休止!」
椛は背後の白狼たちに号令する。
彼らは装備をがちゃつかせながらそれぞれ腰を下ろし始めた。
「15分したら出発します」
「悪いな」
私は事務所に戻るとできる範囲で片付けにとりかかる。
一宿一飯の仁義だからな。
貸してもらった毛布をたたみ、床の原稿の山を寄せて通路をつくる。
文の机の書類をなんとかまとめて仕事ができそうなスペースは作れた。
鍵が分からないので戸締まりはできないが、まあ盗まれる物はないだろう(と思う)。
表に出たら椛がさりげなく耳打ちする。
「文さんからの言付けです…河童の里で合流したいとか」
「河童の?」
「ええ、例の印刷機のことですけど、もう一度メンテナンスしてもらうとか」
「で、その里はどのあたりなんだ?」
すでに8名ばかしの白狼天狗が横一列に整列して待っていた。
「…今から案内します」
そういって手をあげると椛の小隊員たちが縦一列で進み出す。
私も彼らについて行く。

233名前が無い程度の能力:2014/10/29(水) 06:07:12 ID:feueX2gY0
★とOですね

234名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/10/29(水) 10:03:12 ID:???0
7:32
文は河原の岩に腰掛けて、所在無げにしていた。
「おう、文!おはようだぜ」
「ああ、魔理沙さん…と椛、おはようございます」
私は、他の白狼天狗達に哨戒を任せた椛と二人で河童の住処に来ていた。
「あの印刷機を河童がメンテしてくれるんだって?」
「そのつもりだったんですけどね…どうもメンテじゃ済まないようです」
「というと?」
「元々外の人間が作った機械ですからね。河童の技師としてはどうも気に入らない所もあるようで。
 だから保守管理というより、改造になりそうです」
そこに作業を中断したらしいにとりが、胡瓜を齧りながら現れた。
真冬だっていうのに、どこで作ってるんだろう……

235名前が無い程度の能力:2014/10/30(木) 14:51:45 ID:w3i.RVsQO
7:38
「おはよう盟友」
「ああ、おはよう」
にとりが手を上げてやってくる。
「お、おはよう文さん」
「……」
朝から待たされ続け、かなり不機嫌な文に向かい「いや〜工場長と設計主任が首を縦にふってくれなくて」
と、苦笑いで釈明をするが
「で、どうなんです?」
文は無表情だ。
「それを今から説明するそうだから一緒に…」
と、なだめるように促したものの、
「…ほう、そうですか」
文はがんと動こうとしない。
「い、いやこっちから説明に来るのが筋だとは思うけど二人とも工場を離れられなくてその…」
見た目にうろたえる盟友を見かねたのか椛が
「にとり、こないだ預かってもらった装備のことだけど…」
「えっと、それなら仕上げてあると思うよ?」
「なら私も行こうかな…」
そう言ってすたすた歩き出した。
「…行きますか」
文も観念したのかため息ひとつして腰を上げる。
私も続いた。

河童の里は川沿いにそった先にある。私はにとりと歩いていたが、気がつくと川面からなにやら大きな音が聞こえてきた。
聞き覚えのない、連続音だ。
「あれは何の音だ?」
にとりはにやりと
「ほら、あれ」
指差す先に大きな建物、河童自慢の工場たちだ。

236名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/10/31(金) 10:13:50 ID:???0
7:50
「キューカンバーミサイルとハイドロブレードどっちを付けるのが良いと思う?」
…………印刷機の話だよな?
「あと自爆スイッチは外せないよね?」
「やめてくれ…折角大掃除が終わったばかりだっていうのに」
私は何もしてないけどな。予想通りというか、期待外れというか、
どうも魔の付く改造を施そうと考えていたらしい。
「基本はできてて、後はオプションに何を付けるかって段階なんだけれど」
天狗にしろ河童にしろ、山の妖怪たちは仕事が早すぎる……

237名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/01(土) 21:41:44 ID:???0
8:03
基本のカスタマイズは既にできているという話だったので、私の家まで運んでもらうことにする。
危険なオプションは要らない。断固として。
文は梱包された印刷機を紐でぶら下げると、魔法の森に向かって飛び立った。
天狗って腕力もあるんだなぁ……
「後はあいつに送ってもらうから良いぜ」
「そうですか。では私は山の哨戒に戻りますね」
椛に手を振って、文の後を追う。にとりは少し残念そうな顔をしていた。

238名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/03(月) 01:51:45 ID:???0
8:09
「そいつを……」
文と二人並んで魔法の森へ向かっていたところ、
正面に立ちふさがった影がある。
「渡してもらおうかしら!」
正邪だ。文のぶら下げた印刷機を指さしている。
「貴女、これが何だか知っているんですか?」
「当然知ってるわよ!貴重な物なんでしょ?」
知らないようだ。
「こんな朝から妖怪に襲われるとは思わなかったぜ」
「私を普通の妖怪と思ってもらっちゃ困るわ!」
「普通の正義の味方としては、強盗を許すわけにはいかないな」

239名前が無い程度の能力:2014/11/03(月) 09:19:12 ID:dwNv/vxEO
8:11
「なら差し上げますよ」
えっ?とばかりに文はあっさりといってのけた。
「さあ、どうぞ」
「お、おう」
正邪は紐(針金のワイヤーだ) を受けとるとふらふら飛び始める。
「大丈夫か?」
「さあ?しかし魔理沙さんの所まで運んでもらいましょうか」
文は八ツ手の扇で軽く煽ると風が印刷機を正邪ごと引っ張って流れて行く。
「う、うう…」
露知らず正邪は汗だくになって進むが高度はどんどん下がっている。
打出の小槌を使って小さくすれば…と思うが両手がふさがって無理なようだ。
(このまま落ちるな…)
と思って下を見たら建物が見えた。
香霖堂だ。

240名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/04(火) 04:25:53 ID:???0
8:12
正邪は屋根を突き破って香霖堂の中に落ちた。
私達も後に続いて――屋根の穴から入る。
印刷機はちゃぶ台を押し潰して茶の間の中央に鎮座していた。
梱包が解けているが、本体には傷一つ無いようだ。
最初に見た時と明らかに別物のように見える。改造しすぎだろう……
正邪はそのすぐ近くにへたり込んでいた。まだ意識がはっきりしていないようだ。

241名前が無い程度の能力:2014/11/04(火) 23:04:22 ID:LO5pSx3gO
8:20
「うわっ!何ですか!」
飛び出してきたのは本読み妖怪。あまりの事態に仰天して固まっている。
「やれやれ、朝食中でないのが幸いだな…」
諦めとも付かない表情でこーりんが天井を仰ぐ。
畳2つくらいの空間から空が覗いている。
「まあ大体は状況がわかったよ」
「悪いなこーりん」
「すみません…こればかりは責任を取らせていただきますよ」
私と文の言葉に頷くと、正邪に声をかけた
「朱鷺子、水をもってきてくれ」
湯飲み一杯飲ませたあと部屋の角に横にさせた。それからめざとく印刷機に目をつけて、
「ほう…」
としばらく離れる気配はない。

242名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/06(木) 02:38:51 ID:???0
8:22
「屋根の弁償のことなんだが……」
やがて、呟くように言い出した。
「壊したのは正邪だぜ」
「この機械を譲ってもらえないだろうか?」
「これは私の」
「そうですね……私も魔理沙さんの家よりここにあった方が、
 拠点として利用しやすそうです。構いませんよね?」
「ああ、使い方を教えてくれるなら構わない」
私の言葉をさえぎって、香霖は文と交渉を始めた。
「魔理沙もここで使っていけば良いだろう。
 どうせきちんとした文章なんてたまにしか書かないんだろう?」
確かにそうなんだが、蒐集家として手に入れかけたものを易々と手放したくはないな……

243名前が無い程度の能力:2014/11/06(木) 10:18:21 ID:M0miuxK2O
8:30
「それは売り物かい?」
入口の方からの声に振り向くとナズーリンだ!
無縁塚の拾い物を売りに来たらしい。
「いえ、これは店主さんの所有になりまして…」
気まぐれだろうか文は“いくら支払うつもりでしたか?”などと聞く。
「そうだな私なら…」
と口にしたの金額にその場全員が驚いた。
文が目を丸くして
「お寺が買うのですか?」
「いや、私個人の出資だよ」
「金持ちなんだな」
「こつこつ小金を貯めてきたのさ…私にも大出費だよ」
と、肩をすくめるが
「しかし、元はとれる」
と自信ありげだ。
「出版業を始めるのでしょうか?」
「門徒(お寺の信者)向けに週報か月報を出そうと思ってね」
聞くところによれば催し物や門前市の知らせを載せるとか。
「しかし、意外だな。寺と距離を取ってるかと…」
「君たちは誤解してるようだが私のご主人はあの寺の本尊さ。離れられる訳がないよ」
と苦笑する。
「きみの主人、寅丸星は毘沙門天の代理だね。毘沙門天は商業神であってね…」
こーりんがなにやらうんちくを語り始めたが命蓮寺門徒には里の商家も多いと聞く。なるほどネズミの自信もうかがえるわけだ。

244名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/06(木) 21:14:34 ID:???0
8:33
「これはお寺に買っていただいた方が良いかもしれませんねー」
文が流し目で香霖の方を見る。香霖はついっと上に目をやる。
屋根の穴から冬曇りの空が見える。屋根に積もった雪がぽたぽたと落ちてくるが、
印刷機にはかからない。既にちゃぶ台があった場所からはどけられている。
「屋根の修理と後片付けはこいつにやらせることにして」
文がこっそり逃げ出そうとしていた正邪の襟首をがしっと掴む。
私は関係ないことを訊いてみた。
「そういえば河童はただでこいつをメンテしてくれたのか?」
「ええ……まあ、そうですね。ただ、インクは河童から買ったものじゃないと使えません」
ただの技術バカなのかと思ったら、案外ちゃっかりしている。
文は自分が使う分のインクも私に買わせるつもりだったんだろうか……

245名前が無い程度の能力:2014/11/06(木) 23:57:31 ID:M0miuxK2O
8:40
「ナズーリン、きみはここで印刷物を作ればいいんじゃないかな?」
「ほう?」
こーりんの提案にナズーリンは興味深げだ。
「天狗が新聞を刷る時間の合間にきみの分を印刷するのさ。ノウハウは彼女が…」
「ええ!もちろんです。機械の操作や紙面作りは任せて下さい。よければ配送だって…私の新聞と一緒にですが」
文が食いついてくる。
「なるほど…しかしタダではあるまいね?」
「聞くところによると資材費が発生するようだ。僕の敷地内の賃貸料、機械使用料もあるしね」
「なるほど運転資金か!で、いかほどかな?」
こーりんは金の取れない文より支払いの良さそうな相手に話を振っているようだ。文も渡りに舟、とばかりに乗っている。
「そうですね、当座の資金としては」
口にした金額はナズーリンの買い取り提示額の4分の1、しかし大金であるが。
「よし、乗った」
ナズーリンと文が握手する。それから尻尾の先に吊るしたバスケットから革袋を取り出す。
「では、これは使用料もろもろと資材費分で」
銀貨が数枚。手渡されたこーりんが真顔になる。
「なら、こちらで作業員もつけるよ」
そう言って正邪を横目で見る。

246名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/07(金) 23:44:56 ID:???0
8:41
立ち直ったらしい正邪は文の手を振り払って立ち上がると叫んだ。
「烏や鼠風情がこの正邪様をこき使おうだなんて畏れ多いっ!
 そこの半端な魔女と手羽先も恐れ戦け怯え竦めっ!
 くだらん機械も貧相な店も、まとめてひっくり返してやるっ!」
…………すげぇ、一瞬で全員に喧嘩を売りやがった。

247名前が無い程度の能力:2014/11/08(土) 01:26:47 ID:iiL8VW2k0
8:45
なんだかどんどん事態がややこしくなるが、私はそんなことよりおなかがへってきた。
和食派の私が今朝はパンをあわただしくちょこっと食べただけだからな。
よし、ちょっとおやつでも探すことにしよう

248名前が無い程度の能力:2014/11/08(土) 16:30:58 ID:8aKHyHJIO
8:48
店の方に出てみると朱鷺子がおかゆをすすっている。少し分けてもらいながらカウンターを見たら私のミニ八掛炉がある!
手にして見るとメンテナンスも済んでるようだ。
それから、おや?見覚えのある陰陽玉や人形が…
「天邪鬼の子から店主さんが預かったもので…」
正邪のマジックアイテムだ!…まだ持っていたのか。
こーりんの奴、介抱しながらえげつないことを…
しかしマジックアイテム、これは研究のチャンスだぞ…。
向こうからの正邪の声が急にうわずり、小声になった。事態を把握したのか?
「八雲紫に突きだすか、ここで働くか?」
こーりんの最後通知を聞きながら私は風呂敷にアイテムを叩き込む。
「ま、魔理沙さん!」
「心配するな、借りるだけさ」
そう笑って店を出た。

249名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/09(日) 14:53:15 ID:???0
9:01
家に帰りつき、お粥だけでは足りなかったので、
ありあわせの物を簡単に料理して食べる。
本棚があったスペースを見ながら、
ここに置くものを探しに出かけていたことを思い出す。
結局印刷機は手に入らなかったし、自分で何か用立てるか……
錬金術で作るか、召喚魔法で探そうか……などと考えながら、
正邪のマジックアイテムを指先で弄んでいた。

250名前が無い程度の能力:2014/11/10(月) 19:07:27 ID:VNZR8ESIO
11:15
やばい!つい寝てしまったよ…朝早かったからかな?
とりあえずお茶を飲もうか。
ミニ八掛炉で小降りのポットに湯をわかす。
そういえは“たま”…咲夜のコピー珠江はどうなったのかな?
砂糖を入れた濃いめのお茶を一息ですすると紅魔館に行ってみるかと決めたぜ。

251名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/11(火) 01:48:29 ID:???0
12:08
「よぉ、パチュリー!」
吸血鬼姉妹も門番も寝ていたので、すんなり中に入ってくることができた。
「あら、また来たの?本なら貸さないわよ」
「いや、例のホムンクルスを見に来ただけなんだがな」
「心配しなくてもちゃんと生きてるわ。上で咲夜と大掃除をしているはずよ」
「お前は大掃除は終わったのか」
「せっかく片付いたのに散らかしに来た黒いのを掃除したら終わりね」
「ずいぶんだな。ところで、年賀状を書く魔法について知りたいんだが」
ずい、と顔の前に本が突き出される。『自動筆記魔法』と表題がある。
「何だよ。本は貸さないんじゃなかったのか?」
「あげるわ。新年早々貴女の下手な字を受け取るのも興がそがれるしね」
ええと、著者は……パチュリー・ノーレッジ……こいつの本かよ。
やたら煩雑な表現や余計な記述が多くて読みにくいんだが……
貰えるものはありがたく貰っておこう。

252名前が無い程度の能力:2014/11/12(水) 21:36:45 ID:e5NkuBQwO
12:15
とりとめもなく雑談していたらドアが開き
「お待たせしました」
小悪魔がお茶を持ってきた。
「ありがとう」
パチュリーのカップに黒い液体が注がれる。
熱くて香り高いコーヒーだ。
押してきたカートの上にはパイや果物、焼き菓子の皿。量がけっこうあるけどもう昼時だったか。
「魔理沙さんもどーぞ」
カップにはコーヒー、ミートパイを一皿受けとる。
「悪いな」
「いえいえ〜別にお礼なんてしてくれなくていいんですよ〜」
私は苦笑して
「何をしてほしいのか?」
「館に入る前、門を見ましたか?ほら美鈴さんの詰所のとこ…」
小悪魔いわくそこに今年、門松を飾るらしい。
「悪魔の館に門松に注連縄?大丈夫なのか?」
「レミィが言って聞かないのよ。しかも門松は博麗神社に注文してるのね」
たしかに霊夢は毎年手作りにしていたがよく引き受けたもんだ。
「なるほど。で、いつ受けとる?」
「今日の午後。でも私も小悪魔も忙しいのよ」
「わかった」
私はコーヒーを一気のみしてカップを差し出す。
二杯目を注いでもらいながらまずは腹ごしらえといくか。

253名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/13(木) 10:24:11 ID:???0
13:06
食事を済ませて正門に向かうと、美鈴が石臼を洗っていた。
「……何やってるんだ?」
「昨晩お嬢様が石臼で挽いた年越し蕎麦が食べたいとおっしゃっていたので、
 準備をしているんです」
明日は大晦日か。里のそば屋は毎年満員になってしまうし、うちはどうしようかな……。
自分できのこ蕎麦を作るか、神社にでもたかりに行くか……

254名前が無い程度の能力:2014/11/13(木) 21:35:31 ID:yhsSzy02O
13:09
門松の件を話したら目を丸くして
「無理しないで下さいね」
かなり大きなものらしい。
まあ、なんとかなると博麗神社に飛ぶ。
鳥居のあたりで霊夢がいつものように掃除をしていた。
「門松を?ええ、できているわよ」
霊夢の住居の玄関、その土間にいくつか出来上がったのが置かれていた。
「いつから商売始めたんだ?」
「針妙丸と萃香がはりきっちゃってね…」
初めは博麗神社用だったのが評判で依頼が来たのだとか。
「代金は取ってないわ。縁起物って萃香たちはタダで作ってるんだもの」
霊夢は苦笑する。
しかし一寸法師の子孫と鬼が協同作業なんてまた変な話だぜ。
あ、針妙丸には正邪の件を一応伝えておくかな…。

255名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/14(金) 12:34:21 ID:???0
13:15
「正邪が道具屋に捕まってこき使われてるんですか?
 まああれには良い薬でしょう。しばらくこき使われさせておきなさい」
針妙丸は少し驚いたようだったが、何事も無かったかのようにに門松づくりに戻った。
正邪が悪さをしては懲らしめられるのは、見慣れているのかもしれない。
萃香は作業の手を止めると、傍らの門松を背負い上げて歩いてきた。
「もうこんな時間か。じゃあこれは私が届けてやるよ」
私が運ぼうかと思っていたんだが、萃香が更に三つもの門松をぶら下げて飛ぶのを見るに、
手伝いは要らないようだ。ついでに他の注文も片付けてしまうのだろう。

256名前が無い程度の能力:2014/11/15(土) 08:45:16 ID:jG361THwO
13:22
さて用件は片付いたしあとは年越しそばか。
霊夢に聞いたらまだ用意はしていないという。
「いつもは紫のいいつけで藍が持ってきてくれるし、最近は早苗もおすそわけしてくれるわ」
しかしまだ用意がないぜ…
「忙しいんでしょ?藍は紫が冬ごもり前だし、早苗は神社の仕事で手一杯じゃないかしら」
まあ、いつだって構わしない、なんて平然としている。
「年を越そうが越すまいがそばの味なんて変わらないじゃない…それより」
汚れた神社で年を越すなんて考えたくない、だと?
「だから、あんたも手伝いなさいよ」
おっと悪いな!私は突然“急用”を思い出して神社を逃げ出したぜ。

257名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/15(土) 16:57:29 ID:???0
14:20
人里に下りて、ぶらぶらと散策する。年の瀬とあって、
どこも慌ただしい雰囲気に包まれている。
荷物を背負って走り回る人、家の埃をはたくのに余念がない人、
怒鳴るような大声で話し合っている人達、
何の為に並んでいるのかよく分からない行列などの合間を縫って歩いていると、声をかけられた。
「おや?おやおや、珍しい御本をお持ちですね」
本居小鈴だ。パチュリーに貰った本を見出したらしい。
「魔法の御本でしょうか?」
「ああ、年賀状を書く魔法だぜ」
「それは面白い。良かったら使っているところを見せていただけませんか?」
鈴奈庵で紙と筆を借りて年賀状を書くことになった。

258名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/16(日) 17:07:18 ID:???0
16:202
筆が勝手にさらさらと年始の挨拶を綴っていくのを眺めながら、
温かいお茶と醤油煎餅をいただく。
難解なパチュリーの本を解読したり、デザインや文面を決めたり、
魔法陣の調整をしたりで、実際に動かすまでに2時間近くかかってしまった。
それでも小鈴は満足したようで、
「見事なものですね……」
と呟いて、筆の動きに見入っている。彼女の目から見ても、なかなかの達筆なようだ。
筆の動きに合わせて、結った髪がひょこひょこと揺れる。

259名前が無い程度の能力:2014/11/17(月) 12:48:46 ID:dDYXomq6O
16:34
「うわぁ、魔法ってすごいですね」
小鈴は眼を輝かせている。
まあそうだ、とうなづいてると
「私も魔法使いになれますか?」
私は言葉に詰まった。
魔法を使える使えないではなくこの幻想郷で“魔法使い”がどういう立場なのか…知らないのは無理もないか。
目の前の小鈴は昔の私だ。
「難しい…かなぁ…」
「ですよねー」
小鈴はからから笑うので私もつられて苦笑してしまった。
母親だろうか?奥から誰かが小鈴を呼んでいる。
「はーい、ちょっとまっててくださいね」
店の奥に駆けてゆく背中を見ながら私は思う。
家族と一緒にまっとうに生きること。
それは私には決してできない魔法なんだぜ?小鈴。

260名前が無い程度の能力:2014/11/17(月) 14:11:46 ID:2kF2STls0
16:40
「客が来たみたいだぜ」
奥に行った小鈴に声をかける。里の人間のようだ。
貸本屋は里が慌しいこの時期閑古鳥が鳴いてるのかと思っていたが
意外と里人の客も来るもんなんだな


って、げえっ、おと…親父!!

261名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/17(月) 14:32:55 ID:???0
16:42
「ごめんくださーい、誰かいませんかー」
私が固まっていると、親父は奥に向かって声を上げた。
「はいはーい」
小鈴が出てくる。
「本を返しに来たんだが」
言いながら風呂敷に包まれた本の束を下ろす。
「ええと、一、二ぃ……これでお貸ししていた本は全部ですね。
 料金はお貸しした際にいただいております。また何か借りていかれますか?」
「いや、今借りると年を越してしまうからな。三箇日が明けた頃にまた来るよ」
親父は小鈴に軽く頭を下げると、店を出ていった。
私の姿は最初から見えていたはずなのに、完全に無視されていた。
こいしにでもなった気分だった。
私の方も里に来る時は親父の家や姿を極力目に入れないようにしていたから、
不満に思うようなことでもないのだろう。
しかし不思議と気持ちがくさくさして、自分が動揺していること自体がまた不愉快だった。

262名前が無い程度の能力:2014/11/17(月) 20:41:41 ID:dDYXomq6O
16:50
「魔理沙さん?」
小鈴の声にはっ、とした。しばらく物思いにふけったようだ…らしくないぜ!。
「あっ、いやすまん」
「また、お茶を入れますね」
「悪いな…ところで今の客だが…よく来るのかい?」
「霧雨の旦那さまですか?ええ、とても本がお好きなんですよ」
本が好きすぎて蔵書で床が抜け今はもっぱら貸本専門になってる、と小鈴は笑った。
「そういえば、魔理沙さん。霧雨って名乗ってましたけどご親戚なんですか?」
思い出した。
魅魔さまに弟子入りした時、私の記憶は周囲から一切消されていたことに。

263名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/18(火) 14:20:41 ID:???0
17:48
小鈴と茶飲み話に興じていると、時たま客が現れては本を返していく。
「借りたままで年を越そうという人はほとんどいないようですね」
小鈴がちらとこちらを見る。私だって返したぜ。強引に回収されただけだが。
年賀状を書く筆はまだ止まらない。今は朱で年賀の挨拶を入れている。
墨が乾くのを待っていると、遅くなってしまいそうだな……
「夕飯も食べていかれます?」
「いや、そこまで世話になるわけにはいかないかな。
 悪いが仕上がった年賀状を一晩だけ預かってもらえないか?
 明日また取りに来るから」
この分だと六時過ぎには仕上がるだろう。
その後、使った魔法関係のアイテムだけ回収して帰ることにしよう。

264名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/19(水) 17:20:11 ID:???0
18:22
鈴奈庵から出ると雪が降っていた。
「傘をお貸ししましょうか?」
「いや、良いよ。大雪って程でもないし。
 飛んでいくからあまり関係ないからな」
箒にまたがり、魔法の森を目指す。
やがて、眼下に鬱蒼とした黒い森が姿を現す。
静かな夜だった。妖精一匹見当たらない。
しんしんと雪の降り積もる音だけが聞こえるようだった。

265名前が無い程度の能力:2014/11/20(木) 10:47:15 ID:bL9InK1MO
18:30
そろそろ家かな、と眼をこらして見たらおや?
下の方をふらふら飛んでいるのが…寉青娥だ。
「おい、どうした?」
弾幕戦でもやったのか、衣服は少しくたびれてすすけて見える。
「あら、魔理沙さん。こんな時間にどちらへ?」
「そりゃこっちの台詞だ。私は家に帰るが、ここから先には人家はないぜ?」
「それは幸いですわ。では…」
声に疲れを感じる。
誰かに追われているのか?いつもの雰囲気はない。
得体の知れない邪仙のことなど知った義理ではないが…
真下には家の屋根。
私は青娥に箒を寄せ
「なんだ、良ければ寄ってくか?」
相手は驚いた顔をし、救われたような笑顔でうなづいた。

266名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/20(木) 12:32:16 ID:???0
18:53
米を炊き、茸のスープを作り、大根を煮て、魚の干物を焼く。
漬物を添えれば、夕飯のできあがり……と。
「意外に器用なのですね」
「意外にとは心外だな」
魔法使いは器用でないとやってられないぜ。
青娥はまだ何があったのか話そうとせず、適当に話をはぐらかしていた。
こちらとしても、厄介事は夕食の後の方が助かる。
二人分の食事が卓上に並んだ。

267名前が無い程度の能力:2014/11/21(金) 05:42:33 ID:jITsiHa60
19:03
びっくりしたぜ。
自画自賛ってわけじゃないが、予想をはるかに上回るおいしさだ。
素材のほのかな風味を味わい分ける和食派の幸せだぜ。
粗食の霊夢にまで婆くさいと言われたりもするが、
当の私が満足で幸せなんだから気にならないぜ。
まさか比喩でなく本当にほっぺたが落っこちるとは思わなかったが
さてどうしたものか。

青娥はさいわい黙々と食ってて私のほっぺたには気づかなかったようだが
やけにおとなしいな、青娥の口には合ってるのかな

268名前が無い程度の能力:2014/11/21(金) 06:40:17 ID:SsDUfUa2O
19:10
「…生き返りました」
食事を終えた青娥は丁寧に頭を下げてきた。
「よせよ!…しかし仙人も飯は食べるんだな」
考えてみればそうだ。たしか食事はいらなかったはずだが…しかし青娥はよく食べた。小ぶりな食器だけど飯と汁をおかわりしてるし。
「別に霞(かすみ)を食べて生きている訳ではありませんのよ」
青娥は苦笑いして立ち上がった。
「お茶を入れますわね」
慣れた手付きでテーブルの食器を片付け、キッチンへ滑るような足取りで向かう。
かすかに香る、香水の残り香…声をかけ、制止するひまも与えない所作だった。
ポットに火をかけ、食器を洗い始めたが今度は私が客のような気持ちだぜ…。

269名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/21(金) 15:30:22 ID:???0
19:21
青娥の淹れたお茶は不思議な香りがしたが、うまかった。
茶菓子の落雁をつまみながら、
「それで、何があったんだ?」
と水を向ける。
「何かがあるのはこれからですわ」
そう言って袖で口元を隠し、目だけで笑う。
元気になったのは良いが、いつもの胡散臭さが戻っている。
「何か企んでるのか?」
「企んでいるのは私だけではありません」
企んでるのか。
「明日、正確には明晩ですわね。面白いものをご覧に入れましょう」
明日……大晦日か。何か派手なことをやろうとしているようだ。
「その準備に追われていましてね。芳香にも手伝わせてはいるのですが、
 正直に申しますとかなり疲れ気味です。他の連中の企み事も探らないといけませんし、
 今晩も休めそうにありませんわ」
「異変なら私は解決に行くつもりなんだが……」
「そう危険なものではありません。ご心配なさらぬよう。
 そうですね……人里にいらっしゃるのが、一番見やすいと思います」
人里か。里人を巻き込むような異変なら、霊夢だけでなく慧音も黙っていないだろうが……
「繰り返し申し上げておきますが、御心配には及びませんよ」
そう言って茶を啜る。それ以上具体的なことを教えるつもりはないようだった。

270名前が無い程度の能力:2014/11/22(土) 12:41:26 ID:JTit93/kO
20:40
そのあととりとめのない話をしてから風呂をすすめた。
家の風呂は地底から湯を引いてるんだぜ!
青娥が入浴してる間に浴衣を用意した。
私の寝間着じゃ小さすぎるし、これくらいしか着せるものがない。
ストーブに薪をくべて室温を上げる。
「いいお湯でしたわ」
「そりゃ結構だ」
下ろした長い髪を拭きながら浴衣を着た青娥はまるで別人の様に見えた。

さて、我が家に寝所はひとつしかない。
一応客人だからとベッドをすすめたが
「いけません。湯冷めしますし、女の子が…肌によくありませんわ」
「私は慣れてるから構わないんだが」
ソファーで寝ようとする私をさえぎって強引にベッドに引き込まれた…!
「寝相は悪い方だぜ?」
「おかまいなく。では」
おやすみなさい、と隣で横になってる。

…邪仙との一夜はちょっとどきどきだぜ。

271名前が無い程度の能力:2014/11/23(日) 12:55:26 ID:ieio6aUEO
23:50
案の定寝付けない…
別にナニをされるわけではないだろうがどうも落ち着かない。
当の青娥はすぐに寝息をたててしまった。邪仙め!。
窓から月明かり。外の雪は止んだようだ。
さて、もう何回めだか。眼をつむって眠ることを試みるが…。
「お休みになれませんの?」
「なっ!起きてたのかよ」
「いいえ、充分に休ませていただきましたのよ」
そういってこちらに顔を向ける。
窓辺の雪のせいか部屋は明るい。はっきり表情が分かるほどだ。
「魔理沙さんが眠くなるまでどうぞ、お相手いたしますわ」
なんて、くすくす笑われた。
まるで子供あつかいだな。
しかし…まあ、こちらもそうさせてもらおうかな。

272名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/24(月) 08:19:20 ID:???0
6:03
目が覚めた。いつの間にか寝入っていたようだ。
既に青娥の姿は無い。布団にもほとんど乱れた様子はない。
私が眠りに就くと、早々に出ていったようだ。何のつもりだったんだろう。
そういえば忙しいと言っていた。またどこかで暗躍しているのかもしれない。
ベッドを抜け出し、服を着替える。今日は大晦日。
青娥は何かが起こると言っていた。霊夢ほどには鋭くないが、私の勘もそう告げている。
いつもより少しフリルの多いスカートを履き、いつもと違う髪飾りを付ける。
帽子もいつもより華やかなものを。朝食の前に散歩に出ようかな。

273名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/25(火) 06:45:02 ID:???0
6:22
家の外は雪がうっすらと積もっていた。
寒いな。カーディガンを一枚羽織る。
鳥の足跡一つ無い雪を踏みしめて、まだ薄暗い森の中を歩く。
茸を見つけると、バスケットに放り込む。
森の中は静かで、私の足音以外には何も聞こえない。

274名前が無い程度の能力:2014/11/26(水) 12:45:17 ID:lwJQmVXkO
6:28
わき水の出てる泉に来た。
置きっぱなしにしてるブリキのコップで喉を潤そう。
起き抜けの水がうまい!
ここはまだ凍っていない。
正月を越して、大雪が降る前にくみ置きをしておくか…。
さて、踏みあとをたどりながらもと来た道を戻る。
家の前にきて気がついた。
正月飾りがまだだった!
いろいろあったからなぁ…一夜飾りでは仕方ないし今年は良しとするか。

275名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/26(水) 16:05:31 ID:???0
7:01
ご飯、味噌汁、だし巻き玉子、漬物を作って食べる。
食後に熱くて渋いお茶を飲むと、元気が出てきた。
散歩で回収してきた茸を大鍋に放り込み、魔法の素材を作っておく。
その合間に回収されていなかった本を読んでいると、
外が明るくなってきているのに気が付いた。

276名前が無い程度の能力:2014/11/27(木) 09:57:20 ID:p3IRmu86O
8:20
小鈴の店に年賀状を取りに行きたいが少し早すぎるな…。
二杯めのお茶をすすってベッドに仰向けになる。
気が付いたんだが部屋の中がいつの間に整頓されていた。
青娥のしわざのようだが足跡すら残さず(例の壁抜けの術だろうか)消えてしまった。
そういや今日、人里で何かやらかすらしいが、私としては年越しそばをいかに手に入れるかが問題なんだな。

277名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/28(金) 04:35:29 ID:???0
9:02
暖かい家の中でゆっくり過ごすのも悪くはないが、出かけることにする。
適当に寄り道しながら行けば、鈴奈庵にも常識的な時間に着くだろう。
弾幕ごっこになっても大丈夫なように装備を整え、
マントを羽織って箒にまたがる。薄手で動きやすいマントだが、
魔法で寒さを防ぐので冬空を飛んでも大丈夫だ。
天気も良いし大晦日で浮かれているのか、魔法の森の上空にいつもより妖精が多い。
昨晩が嘘のような賑やかさだった。

278名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/28(金) 23:54:21 ID:???0
9:16
血の気が多い妖精が弾幕で襲ってくるのを、
イリュージョンレーザーで撃墜しながら飛ぶ。
ぼろぼろの姿のままで年を越すことにならなきゃ良いがなぁ……と少し同情する。
たまに貫通したレーザーが関係ない妖精まで撃ち落としてしまう。
……気の毒だが仕方ないぜ。
森を抜けた辺りで、ミスティアが屋台を引いているのが見えた。
弾幕ごっこを切り上げて、近くに降り立つ。
「よぉ、店主。八つ目蕎麦はあるかい?」

279名前が無い程度の能力:2014/11/29(土) 09:18:33 ID:W.sMHjVwO
9:24
「ごめんなさい、今日はもうカンバンなの」
和服に割烹着のおかみさんは食材は品切れだし釜の火も落としてしまって料理もできないという。
仕方ない、営業は夜だけだものな。
ところで今年の仕事は今日で終わりか?
「ええ、今夜里の近くまで出ればお客さんたくさん来られるけど…」
まあ、ゆっくり過ごすのもいいよな。
「あ、でも今晩年越しそばを作るの、妹紅さんのところで」
年末夜回りする自警団にふるまうというのだ。
「そりゃいい。私もご相伴にあずかりたいね」
「なら夜警を手伝ってね。慧音先生も喜ぶわ」
「はは、分かった。1名予約な」
これから一眠りするおかみさんと別れて人里へ飛ぶ。
青娥の言ってた件、妹紅たちに伝えておくか…。

280名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/29(土) 18:44:41 ID:???0
9:45
香霖堂まで来ると、正邪がぶつくさ言いながら雪かきをしていた。
「意外に真面目にやってるみたいだな」
「あ、元凶が来た」
「それはお前だ」
「で、今日はまた弾幕ごっこ?」
「いや、年越し蕎麦をいただきに来た」
「あんたの分は無いわ」
「お前の分があるだろ」
「酷い奴だ。盗み食いに来たのか?」
「実のところ単に暇つぶしに来ただけだぜ。ちょっと邪魔するよ」
「ここを通りたくば私を倒してからにしろ」
「お前と遊んでる暇はない」
「何をつぶしに来たのよ」

281名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/11/30(日) 20:51:16 ID:???0
9:48
店内に入ると、響子が来ていた。
店番をしている朱鷺色の羽の妖怪に何か話している。
こちらに気付いたのか、振り返って叫ぶ。
「あ、いらっしゃーい!」
「……声が大きい。あと、何であんたが言うのよ」
店番が顔をしかめる。
「おう、いらっしゃったぜ。お前は買い物か?」
「いえいえ、実は今晩お寺で鳥獣伎楽の年越しライブをやるので、
 ここの妖怪さんとか店主さんにも来てほしいなって。あなたも来てね!」
「パンクでしょ……私はうるさいのは苦手」
店番の妖怪は手元の本に目を落としたままで言う。
「鳥獣伎楽って二人組だったよな?
 鳥の方なら今夜は自警団に年越し蕎麦を作るって言ってたぞ」
「…………あの鳥頭、また忘れてるなっ!どっちに行った!?」
だいたいの場所を説明してやると、響子は「ぎゃーてーっ!」と
謎の叫びを残して店を飛び出していった。
「うるさいのが一人いなくなった。で、もう一人のうるさいのは何の用?」
蕎麦をたかるのは正邪に話した軽口だったが、この分だと夜になってもありつけるか分からないな。
「店長!かけそば一つ!」
「帰れ」

282名前が無い程度の能力:2014/11/30(日) 22:50:59 ID:wuYBvOKk0
>「お前と遊んでる暇はない」
>「何をつぶしに来たのよ」
こう言う掛け合い好きだw

283名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/01(月) 18:43:52 ID:???0
9:51
香霖が店の奥から出てきた。
「魔理沙か、おはよう」
「お、おう、おはよう」
「君のミニ八卦炉のことだが」
「それならこの間回収させてもらったぜ」
「なら良いんだ。うまく使えているかな」
「今朝早速試し撃ちしてみたが、悪くない感じだぜ。例の印刷機の方はどうだ?」
「ナズーリン君が今晩お寺でやるライブや法会の宣伝を刷っていったよ。
 これなんだが、一部持っていくかい?」
なかなか綺麗に印刷してある。温かい蕎麦や甘酒も振る舞われるようだ。
「守矢神社が初詣の集客を考えているらしくてね。それに対抗してのイベントみたいだよ」
青娥が話していたのはそのことか。つまり道教側も何か対抗策を用意しているんだろう。
初詣参拝客争奪戦か…………面白くなってきそうだぜ。

284名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/02(火) 16:53:43 ID:???0
10:02
香霖堂を出て、鈴奈庵に向かう。
今日は営業していないようだったので、裏に回って戸を叩く。
「ごめんくださーい」
程なく、小鈴が顔を出した。
「おはようございます、魔理沙さん」
「おはようだぜ」
年賀状はもう乾いていた。
折れ曲がらないよう気を付けて、しまっておく。
「じゃあここにもまた明日、改めて一通持ってくるからな」
そう言うと、小鈴はおかしそうに笑った。

285名前が無い程度の能力:2014/12/02(火) 23:01:55 ID:1b7ZGuS2O
10:15
ほうきを片手に人里の大通りを歩く。
道はきれいに掃かれていて、門松やら注連飾りやらすっかり大晦日な雰囲気だ。
さすがに店を開けているところはないが、まだ行商の人達が走り回っていて、それなりに買い物する客も多いな。
と、向こうから風呂敷包みを手に小走りで駆けてくるのが…上白沢慧音だ。
向こうも私に気が付いたようだ…挨拶がてら青娥の一件も伝えておくかな。

286名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/03(水) 11:49:33 ID:???0
10:17
「何だ?今は忙しいんだが」
「教師も走る月だからか。実は青娥が……」
「ああ、その話なら聞いている。今晩何か催し物をするそうだな。あと走るのは僧侶だ」
「耳が早いな」
「本人から聞いたんだ。一応危険が無いように、
 私が監督役として見にいくことになっている」
慧音が対応するなら私が気を張る必要も無さそうだな……
「守矢神社や命蓮寺でも何かやるそうだが」
「それもあの仙人から聞いた。妖怪の山や妖怪寺に、
 里人が不用意に近づいては危険だと言っていたが……
 胡散臭さでは似たようなものだしなぁ」
「大丈夫だと思うか?」
「命蓮寺には妹紅に行ってもらうことにした。
 守矢神社の方は博麗の巫女に眼を光らせておいてもらいたかったが、
 博麗神社も新年の参拝客を迎える準備で忙しいらしい。
 まあ、あっちにも巫女はいるし、多分大丈夫だろう」
普段の閑散とした神社の様子を思うに、大した準備は要らないと思うのだが。
夜までにはまだ時間があるし、私もいったん帰って、明日の初マスパの準備でもしておくか。
小走りに去っていく慧音の背中を見送りながら、そんなことを思った。

287名前が無い程度の能力:2014/12/03(水) 22:51:49 ID:Ssq80Oh.O
10:21
しまった!。
年越しそばのこと忘れてた…

話を聞けばミスティアの方も妹紅たちの方もたぶん難しいだろう。今さら小鈴にたのむのも悪いしな…と頭に紅魔館が浮かんだ。
美鈴がそばを打つなんていってたな。あそこは大所帯だし少しは分けてもらえるかな?…と高度を下げた。
おや?いつもの門に美鈴の姿はなく、代わりに長い棒切れを持ったメイド妖精が数人固まっている。
今日は強行突破は置いといてまずはお取り次ぎ願うとするかな。

288名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/05(金) 06:43:36 ID:???0
11:08
「ああ、魔理沙さんですか?いらっしゃい」
エプロン姿の美鈴が出てきた。
「門番をさぼって何やってるんだ?」
「さぼってるわけじゃないですよ。
 咲夜さんがおせち料理の仕込みをするので、手伝っていたんです」
「蕎麦はもう食べ終わったのか?」
「いいえ、お昼にお出しする予定です。魔理沙さんも召し上がっていかれますか?」
「お、良いのか?」
「代わりに妹様と遊んであげてください。
 お嬢様とパチュリー様が大図書館で何か相談事をされているので、
 退屈しておいでです」
退屈したフランの相手か……昼飯前には少しきついかもしれない。

289名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/06(土) 02:39:32 ID:???0
11:12
紅魔館の地下、自分の部屋にフランはいた。
周りには色鮮やかな正月遊びの玩具が散らばっている。
独楽、羽子板、やっこだこ、福笑い……
力加減を誤ったのか、いくつか粉々に砕けてしまっているものもある。
「あ、魔理沙。かるたやろー」
「まだ早いんじゃないか?」
「へへ、明日に備えていろいろ準備してたらつい夢中になっちゃって」
まあ弾幕ごっこよりは安全かな。
近くでサボっていたメイド妖精を捕まえて、札を読ませる。
「ひ、ひゃくやふるきけんのしのぶにもー」
…………何だ?
「って読めるところだけ読むなっ!」
「はぁいっ!」
取り札が床ごとはじけ飛んだ。これは危ないぜ。

290名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/07(日) 10:49:58 ID:???0
11:32
「あはは、魔理沙と遊ぶのが楽しくてちょっと本気になっちゃた」
フランが笑う。言ってることはかわいいが、やってることはかわいくない。
と、そこに突然咲夜が現れた。
「妹様、お蕎麦ができましたよ」
「私の分もあるか?」
「残念ながらあるわ」
「ありがたい、いただくぜ」
咲夜に続いて、私とフランは地下室を後にし、食堂へ向かう。

291名前が無い程度の能力:2014/12/08(月) 15:51:25 ID:PusXCcNMO
11:42
紅魔館での昼食!
咲夜の案内で正装した妖精メイドたちが並ぶ廊下を進む。
一足早い年越しそばを食す訳だか案内された食堂は…
大きな洋式のテーブルに真紅のクロス。銀の燭台に花瓶。まあ、これは分かる。
しかし、席に置かれているのがナイフとフォークとはどういう事だ?
「お嬢様はこちらの方が馴れてますから…」
咲夜はそういうがなんか趣きがないぜ。
そうこう言ううちに料理が運ばれてきた。
前菜の鱒の燻製や揚げたての天ぷらは申し分なく旨い。
グラスに注がれた白ワインを飲みながら塩でなくてんつゆで食べたいと思ったが。

292名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/09(火) 02:18:08 ID:???0
11:45
蕎麦は温かい月見蕎麦と冷たいおろしそばの二種類だった。
コシがあって旨い。ずぞぞっと音を立てて啜る。
「私の手打ちそばですから」
そう言って美鈴がずるずるっと音を立てて啜る。
彼女だけ箸を持っている。自前なのだろう。
レミリアが露骨に顔をしかめる。
「レミィ、去年も言ったけど、あれが蕎麦を食べる場合には正しいマナーなのよ」
そう言いながらも、パチュリーは静かに蕎麦を口に運んでいる。
「分かってるわよ」
レミリアもそう答えると、蕎麦を食べ始めた。
フランがずずっと音を立てて蕎麦を食べるのを見て、時折複雑な表情になる。

293名前が無い程度の能力:2014/12/09(火) 22:31:25 ID:KodjiEZ.O
12:03
おろしそばは大きなざるに盛られていて好きなだけ取り分けることができた。
レミリアもフランもよく食べる。ホントに和食派なんだな…あのパチュリーもお代わりしたが、たしかにそうしたくなる味わいだった。
そばの山はどんどん減ってゆく。無くなればメイド妖精がすかさず持ってきた(咲夜がゆで時間をいじってるようだ)。
月見そばは木製の小ぶりなどんぶりに入って出てきた。
熱い汁をすすれば、食事の〆にはぴったりだった。
最後にお茶がわりにそば湯をもらえば、なんとも優雅な昼食会は終了した。

294名前が無い程度の能力:2014/12/10(水) 02:28:17 ID:SYuDyQe60
12:10
さて、食後にお茶か果物でも出るのかな
年越しに借りてく本でも見つくろってこようかな

295名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/10(水) 08:22:45 ID:???0
12:15
「魔理沙、お腹もいっぱいになったし、弾幕ごっこしよ!」
「では、地下室を広げておきますね」
「しばらくフランをお願いね」
あー……そうなるのか。普段より待遇が良いと思ったら、こういう展開か。
にこやかなレミリアたちの笑顔を恨めし気に見ながら、
フランに引きずられるようにして地下室に戻った。

296名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/11(木) 20:00:37 ID:???0
14:31
「ちょ、ちょっと待った……休憩だ」
「えー、もう疲れちゃったの?」
2時間近くぶっ通しでフランと弾幕ごっこをして、もう体力も魔力も限界だった。
初めて弾幕ごっこをした時より、フランの持久力が増している気がする。
あるいはペース配分が上手くなったのかもしれない。
「もう煙も出せないぜ……夜までには回復しておきたいし、
 今日はここまでで勘弁してくれ」
「夜に何かあるの?」
人里周辺では大晦日のお祭り騒ぎが割と知られているようだったが、
紅魔館ではそうでもないのか。

297名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/15(月) 09:09:42 ID:???0
14:33
「お茶にしましょうか?」
「突然後ろに立つなよ」
咲夜が良いタイミングで現れた。
こいつがタイミングを外すことなんて無いのだろうが。
咲夜に導かれて図書館に入ると、
先に紅茶を飲んでいたパチュリーがちらっとこっちを見た。
「随分派手にやっていたようね。できれば建物は壊さないでくれるかしら」
そういえば最近一回倒壊したところだったか。
「そこは咲夜が何とかしてくれるから大丈夫」
フランはしれっとそう答えて席につく。私もパチュリーの向かいの席についた。

298名前が無い程度の能力:2014/12/15(月) 20:49:50 ID:WMBXi4iUO
14:40
「だいぶやり合ったようね?」
パチュリーは呆れたような顔で笑い、ハンカチを差し出した。
顔にススが付いていたようだ。
「すまんな」
顔を拭くのを見ながらまだにやついている。
困った子供を見るような顔だが…なぜか悪い気はしなかった。
「…おせちに作ったのだけれど」
咲夜が重箱を出したとき、お茶を吹きこぼしかけた。
「大丈夫よ、これは只の味見。見返りなんか要求しないわよ」
レミリアは苦笑して咲夜にふたを開けさせる。
中身は…おっ!栗きんとんか!
早速口に入れるが、むむ…普通のきんとんの味では…。
「お嬢様の口に合わせましたの」
なるほど、これは洋菓子の味だ。しかし
「うまいな、これ!」
紅茶によく合う。
これで金が取れるぜ、なんて言いながらぱくついているのをレミリアたちが満足げに見ていた。

299名前が無い程度の能力:2014/12/17(水) 23:25:11 ID:MjDhJNdoO
14:51
「良かった、人間の口に合って」
レミリアの奴、変なことを言うなと思ってたら咲夜が重箱を持ってやって来た。
「博麗神社に届けて欲しいの」
「ああ、お安いご用さ」
咲夜はきれいな赤い風呂敷で重箱を包む。
立派な蒔絵の入った三段の入れ物は、あきらかに私と待遇の差を表していて苦笑いしてしまう。
まあ、霊夢が一目置かれているのは仕方がないか…。
博麗神社毎年恒例の忘年会は今年はやらなかった。
酉の市とかで一般の参拝客が増えたとかで妖怪連中が遠慮したようだ。気にしすぎな気もするが、ここが大物らしい配慮ということかな…。
美味いお茶を二杯ほど引っかけると席を立つ。
「ごちそうさん、よい年を」
レミリア達に礼を言って今日は門から館を出た。さて、明るいうちに出かけようか。

300名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/18(木) 00:22:35 ID:???0
15:26
博麗神社はいつもより小奇麗になっていた。
霊夢が気合を入れて掃除をしたのだろう。
境内に下りると、ルーミアが社の縁に腰掛けているのが見えた。
「あ、おいしそうなのが来た」
おせちのことだよな。
「お、来てたのか。霊夢はいるか?」
「いるわよ」
返事をしたのはルーミアではアなく、霊夢本人だった。
何か作業をしていたらしく、割烹着姿で裏手の方から姿を現した。
「紅魔館のおせちを持ってきてやったぜ」
「奪ってきたの?」
「人聞きの悪い。頼まれて届けに来たんだよ」
「何か最近配達屋みたいね」
そう言いながら、霊夢は重箱を受け取った。
「うちでも作ったのに」
「随分早いな」
「今夜頃から参拝客がひっきりなしに訪れて忙しくなるから」
それはないと思う。

301名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/19(金) 05:25:48 ID:???0
16:31
「そろそろ―――出た方が良いわよ」
…………んっと、居間に上がり込んで茶を飲んでいたつもりが、
いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
「出るって、どこへ?」
「人里に行くんでしょ?私は参拝客を出迎える準備があるから行かないけど」
こいつが動かないってことは異変というほどの事態でもないのか。
「ああ、起こしてくれたのか。さんきゅ。じゃあ、行ってくるぜ」
「お土産はお餅でいいわ」
「いってらっしゃーい」
ルーミアも蕎麦をずるずると啜りながら見送ってくれた。
里に向かって飛びながら、あれも霊夢が作ったのだろうかと考えていた。

302名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/20(土) 13:38:10 ID:???0
17:00
冬の陽は落ちるのが早い。人里に着いた頃にはもう辺りは暗くなっていた。
と、その闇を裂くように妖怪の山の上から光の筋が降りてくるのが見える。
麓あたりまで降りてきたところで、それが筋と呼ぶには余りに巨大な、
階段になっていることが分かった。白玉楼に続く石段を思わせるような光の階段が、
妖怪の山の上の方まで伸びている。さらに麓の方から人里まで、
光の道がずんずんと伸びてくる。その先頭にいるのは早苗だった。
里までたどり着くと、早苗は声を張り上げた。
「これは八坂神奈子様のお力で作られた、守矢神社まで続く一日限りの大参道です!
 神奈子様の加護により悪しき妖怪どもの手からは、盤石に守られています!
 この道を登り切り真の信仰を示してくださった方には、
 今年一年の家内安全商売繁盛豊作豊漁大願成就に至るまで、
 幅広い御利益をお約束しましょう!」
…………常識に捉われない真似をするなぁ。
御利益に釣られたのか、参道に向かって歩み始める人たちの姿が見える。

303名前が無い程度の能力:2014/12/20(土) 15:23:10 ID:lysHFLwYO
17:03
私も興味本意で参道に近づいてみた。
と、前の方から歓声があがる。
見ればなんと!参道の階段が動いている!
参拝者(妖怪も混ざってる)は歩かずして神社へ行ける訳だ。
そうと知ってか、かなりの人数が参道に向かって流れ始める。
…しかし、帰りはどうするんだろう?、なんて思いながら私も動く階段に乗ってみようかな。
おそらく河童の技術だな、なんて考えながら並んでいると
「皆のもの、聞けーい!」
振り向けば物部布都だ負けずに大声を張り上げていた…。

304名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/21(日) 09:49:09 ID:???0
17:04
霊廟の方だ……何だ、あれ?
巨大な、城と見紛うほど巨大な霊廟が、天を突くようにそびえ立っていた。
ぼんやりとした燐光がその威容を照らし出す。
壁の周りををぐるりと回って飛ぶ木の船、その上に布都の姿があった。
「はーはっはっは、見たか者ども!大陸から伝わりし道教の秘術!
 この廟に馳せ参じし者には、長き封印から解き放たれた聖人が、
 さらなる奇跡をご覧に入れよう!」
う、胡散くせぇ……近くにいた里の人々も、一歩退いている。
逃げ出しそうな姿勢の奴までいる。
すると、霊廟の中から現れた人影が二つ。青娥と屠自古か。
近くにいた年配の男にすっと近寄り、耳元で二言三言囁くと、
男は誘い込まれるように廟の中へと入っていった。
その後も周囲にいた若い女、少年、老婆と次々に近寄って何事か話しかけているようだ。
話しかけられた者は皆廟に向かって歩み始めている。
それに釣られたのか、話しかけられていない者たちまで、開かれた扉へと歩きだしていた。

305名前が無い程度の能力:2014/12/22(月) 02:19:48 ID:6glZbicIO
17:10
うーむ
腕を組んで空を仰ぐ。
最早異変レベルな気もするが、さりとて関わるにはあまりにバカバカしくもあるな。
「魔理沙さ〜ん!」
振り向くと小鈴が手を振っている。
「なんか凄いですね!先にどっちへ行きますか?」
顔を上気させ、相変わらすテンション高いな…
いつものエプロン姿でなくえんじ色のケープを身に付けたよそ行きの格好はなかなか可愛らしいが。
その後ろには稗田阿求。
いつもの和装に毛織りの肩かけを巻いた彼女は、小鈴や周囲の興奮とは対照的にえらく醒めた雰囲気だ。
「なあ、一体何なんだこれは」
「私が聞きたいくらいですよ」
記憶者は苦笑すらしないで答えた。
両陣営から阿求には事前に知らされていたらしいが、ここまでとは思っていなかったようだ。

306名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/22(月) 14:04:08 ID:???0
17:11
その会話を遮るように爆音が響いた。寺の方だ。
「鳥獣伎楽の年越しライヴ、はっじまーるよーっ!!!!」
「私たちの歌で煩悩も浮世の憂さも忘れるのよーっ!!!!」
あいつらか……無事に合流できたようだ。
程なく、ノリの良い音楽がここまで届いてきた。
「激しいですね……」
小鈴は少し怯えたような表情で呟いた。

307名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/23(火) 14:00:02 ID:???0
17:14
箒に跨り、すっと早苗の所まで飛んでいき、訊いてみた。
「よぉ、早苗。この階段を登っていくと、守矢神社までどれくらいかかるんだ?」
「こんばんは、魔理沙さん。足腰の弱い方でも明日の朝には着きますよ」
「ずいぶんとゆっくりだな」
「あまり速く動かすとかえって危険ですし、
 できるだけ自分の足で登って信仰を示していただきたいのです」
他の宗教施設に行かせないよう囲い込む意味もあるのだろう。
「私は箒で山の上までひとっ飛びだけどな」
「今晩はやめた方が良いと思いますよ。
 一応山の妖怪たちに話は通してありますが、
 人間が大勢山に入るので、飢えた妖怪たちが襲ってくるかもしれません。
 参道は神奈子様のお力で守られていますが、
 それ以外の安全までは保障しかねます」
ふむ……守矢神社に行くとなると他の所は諦めないといけないかもな。
「ご利益は間違いなしですので、魔理沙さんも是非大参道をお登りください」

308名前が無い程度の能力:2014/12/23(火) 15:59:23 ID:O4fn3sc6O
17:18
最近運動不足だし、ご利益も捨てがたい…が明日の朝までならいろいろ見て回りたいこともあるからな。
ということで今度は布都の隣に箒を寄せた。
「よう!」
「む!魔理沙どのか?」
集客中だったので一瞬いやな顔をしたが、
「おお、わが霊廟に参りたいとな!よい心がけであるな!」
なんて上機嫌で袖から一枚紙切れを出してきた。
「整理券だ、これをもって向こうに並ぶがよいぞ」
このちび仙人もどきが得意気に指差したのは延々と並ぶ行列。その整理券をみると番号がふってある。
数字が四けた…。
「なあ、裏口とかないのか?」
「何を申すか!太子の延命長寿の秘技を受けたくば順番に並べい!」
やれやれ、秘術には興味深々だがまたの機会になりそ…と、おや?向こうで青娥が私を手招きしているぞ。

309名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/24(水) 15:39:16 ID:???0
17:20
「こっそり先に入れてあげても宜しいですわよ」
「話が分かるな」
「あちらのお嬢さん方も一緒に」
阿求と小鈴の方に目をやりながら話す。
話がうまいと思ったらそういう魂胆か。
阿求は里の名士だし、小鈴も知識人と言っていいだろう。
あの二人が来れば、釣られてやって来る人間は多いに違いない。
「そういえば慧音はどうしたんだ?」
「危険が無いか建物の中で見てくださっていますわ」
なるほど……慧音に監督してもらうと言いつつ、
彼女のことも客寄せに利用しているようだ。

310名前が無い程度の能力:2014/12/24(水) 22:51:26 ID:ajCnr9CEO
17:23
「私たちを?」
私の説明に阿求は首をひねった。
青娥とは初対面ではないらしいが、少し警戒しているようだ。
そんな事を知ってか知らずか向こうで青娥はにこやかに手を振っている。
「行きましょう!」
逆に小鈴が食いついてくる。“不老長寿の秘術”に反応したようだ。
「あんたの若さで不老ってねぇ」
阿求は呆れたそぶりだが、やがて折れた。
「ようこそ霊廟へ!さあ、これを」
阿求と小鈴に青娥の渡したのは「取材」と書かれた腕章。なるほどこれなら無理なく入れるわけだ。
「魔理沙さんには…」
おっ!なんだ?…と手渡されたのはデッキブラシと紙袋!
さらに箒を手にしている私は清掃係に仕立てられたようだ。
「ではこちらからご案内〜」
青娥に導かれ、私たちは裏の出入口から中に入った。

311名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/25(木) 10:27:41 ID:???0
17:27
建物の廊下はすらりと並んだ蝋燭に照らされてはいるものの、やや薄暗い。
「広いですね」
「短期間にこんな巨大なもの、よく建てられたな」
青娥はふふっと声を出して笑う。
「いや、実は見た目ほど広くも巨大でもない」
廊下の先から声がした。
「困りますね、先生。そんなに早くネタばらしされては」
「他の里の者には言ってないよ」
慧音の姿が見える。
「幻術か」
そういえばあるものを無いように見せたり、
無いものをあるように見せたりするのは慧音の十八番だった。
「ああ。そう大きくもない人里からすぐに4桁もの人が集まるわけないだろう。
 実際の収容人数がそう多くないから、ああやって外に行列ができる」
「慧音が巨大な建物や膨大な人数の幻を見せているのか?」
「まさか。私はただ幻術に気付いただけだよ。見せているのは邪仙様たちだ」
「邪な思惑なんてありませんわ。あくまでただのデモンストレーションですよ」
青娥は苦笑して、そう応じた。

312名前が無い程度の能力:2014/12/26(金) 22:59:54 ID:FGF/6FKwO
17:32
「さて、ここからは本当の舞台裏をお見せしますわ」
指を口に当て、片眼をつむってみせた青娥はいきなり廊下の壁をめくった。
建物は布張りだったのか!
青娥を先頭に小鈴、阿求、慧音そして私…と思ったら
「おー、どーしたー?」
ひょい、と宮古芳香が飛び付いてきた。
…おばけ屋敷じゃないよな?ここは
「あらあら芳香ちゃん」
なんて小声で制してからこちらをご覧あれ、と手招きする。
幕の向こうからざわついた人の声が聞こえてきた。
そのスキマをのぞくと…
マントを羽織った、あの独特の髪型の後ろ姿。
その手が頭上にかかげるのは…なんと、あの毘沙門天代理の持ってる宝塔だ!

313名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/27(土) 13:32:31 ID:???0
17:34
「……と、このように物寄せの術をお見せした。
 失せ物でお困りの者は試すがよい。
 他に悩み事を抱えた者はおるか?」
そこで聴衆が口々に喋るのを片手で制して、
「なるほど。屠自古、薬棚の三十一番の中身を。
 そこの方には時節を掴む術をお教えしよう。
 そちらの方には心を鎮める術を教えてやろう。試すがよい……」
聴衆の悩みに応じた道具や術を授けているようだ。
「あんなにほいほい教えちまっていいのか?」
小声で青娥に訊く。
「問題ないだろう。半分以上は暗示のようなもののようだ」
やはり小声で、慧音が答えた。そういう知識もあるらしい。
「あの宝塔は寺から術で盗んだものじゃないのか?」
「あの術はあくまで失せ物が見つかりやすくなるだけですよ」
今度は青娥が答える。ということは――また失くしたのか、あそこのご本尊は。

314名前が無い程度の能力:2014/12/28(日) 01:18:17 ID:DbFw.rRIO
17:45
30人以上はいる霊廟参りの人々の質問…というか悩みを一人づつてきぱきさばいてゆくのは見ものだった。
「では、これまで」
頃合いをみて屠自古が出口に誘導してゆく。
基本謝礼なしだというが出口付近にあつらえた箱からは小銭が入れられる景気よい音が響いていた。
「さて、ようこそ我が霊廟へ」
豊聡耳神子はこちらに振り向いて微笑んだ。
「ああ、この宝塔…これは正式に寅丸星どのからお借りしたものですよ」
意外だったが毘沙門天と神子は縁があるらしい(これは慧音も認めていた)。
「きみ…」
マントをゆらして、神子は小鈴の方に近づいた。
「不老長寿の秘術って…うそなんですか?」
ぐっ、とにらみつける小鈴に神子は静かに頭を下げた。

315名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2014/12/28(日) 11:53:30 ID:???0
17:48
「そう、不老の術は長寿の術ではない」
「年老いないだけで死ぬってことですか?」
「いや、そうではない。年老いず、死なない術はある。
 しかしそうして生き永らえても、それは言祝ぐべきことではない。
 ゆえに不老の術は長寿の術ではない。
 老いて死ぬのは苦しいことだが、その中に見出される慶びにこそ祝うべき価値がある」
「じゃあ長寿の術とは?」
「即ち、生き、長じ、老い、そして天寿を全うするための術。
 日々の心がけ次第で貴女にも使える」
話を聞いた小鈴は少しがっかりしたようだが、もう怒ってはいないようだった。

316名前が無い程度の能力:2014/12/28(日) 12:56:16 ID:DbFw.rRIO
17:53
「友人が失礼を…」
あらたまって前に出た阿求を神子は立てた人指し指を笑顔で振ってみせた。
「…きみたちの友情には敬意を表したい」
小鈴がびっくりして顔を赤くした。
「申し訳ない…そう聞こえてね」
片眼をつむり、耳当てを指で叩く。そうだこいつは心の声が聴こえる、って言ってたな。
小鈴は阿礼乙女の為に不老の術を聞きたかったのか。
阿求が呆れた口調で小鈴に何か言ってるが何故か眼が少しうるんでた。
「うむ、さすが正徳王…含蓄のある言葉だ…」
腕を組んで聞いていた慧音が深くうなづいた。
屠自古がちらりと神子を見ながら
「太子、次の面談が…」
「ああ、分かった」
神子はもう一度こちらを向いて
「短い時間ですまないね。また何かあれば霊廟に来なさい、少しは役にたてるといいけどね」
そしてマントをふわり、となびかせ腰の剣を鳴らすと
「では、次の方々。入られよ!」
万人の悩みを受け止める横顔を見ながら私たちはまた幕の内側に戻った。

317名前が無い程度の能力:2015/01/01(木) 11:08:38 ID:KFtMgh8QO
08:50
新年だぜ、正月だぜ。
あのあと町中をぶらぶらして慧音の寺子屋で仮眠させてもらい、今博麗神社に来たぜ、来たぜ…。
って、誰もいない。
霊夢は寝ているようだが昨日の張り切りは無駄に終わったようだな。
参拝者が誰もいない拝殿はそのまま朽ち果てているようだ。
ニ礼ニ拍手をしたあと私はその空っぽの賽銭箱に(なぜそうしたか分からんが)マスタースパークをぶちこんだ。
賽銭箱は紙くずのようにバラバラに吹き飛んでしまった。

318名前が無い程度の能力:2015/01/01(木) 18:52:04 ID:Sa32.jPQ0
08:55
さて、元日の朝から一仕事したし、帰ろうと神社に背をむけると
背後から怒涛の足音が迫ってきた。
霊夢だな。
新年のあいさつでもしようかと振り向く前に何かがすごい勢いでぶつかってきて
私の帽子やほうきや服は紙くずのようにバラバラに吹き飛んでしまった。
陰陽玉かな

319名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2015/01/03(土) 16:58:22 ID:???0
8:57
吹き飛ばされた先に大きな大根のようなものが横たわっていた。
「新年早々師弟揃ってどうして余計なことばっかりしてくれるのよ!」
師弟って――魅魔様!?
魅魔様は抜かれた大根のように横たわって動かない。
霊夢の方を見れば、服こそ普段通りだが、あちこちに絆創膏が貼られていて、
激しい戦いの後のようだった。
「何があったんだ?」
「折角針妙丸と萃香のおかげで参拝客が集まっていたのに、
 何を勘違いしたのかそいつが悪霊オーラ全開で現れたものだから、
 皆逃げちゃったのよ!」
「それで大喧嘩していたと……」
「参拝客を迎えるために着ていた新しい巫女服も破かれちゃうし、本当に災難だわ」
その後普段の巫女服に着替えたようだ。
「それで、あんたはどうしてうちの賽銭箱をぶっ壊してくれたのかしら?」
黙って逃げようとしたが、動けない。気が付くと周囲にお札が貼られている。
結界か。箒もミニ八卦炉も――離れた位置に飛んで行ってしまっている。
霊夢は周りに陰陽玉を飛ばしながら、お祓い棒とお札の束を構えた完全武装だ。
魅魔様は徹底的に叩きのめされたらしく、目を覚ましそうにない。
このままだと私も同じ運命をたどることになるだろう――絶体絶命だぜ。

320名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2015/01/04(日) 11:29:20 ID:???0
8:58
「つい魔が差してな」
「ならその魔、祓ってあげるわ!」
返答が気に入らなかったのか、どうあっても攻撃するつもりだったのか、
霊夢の完全武装からの攻撃が飛んできた。
私は魅魔様の足(尻尾?)をつかむと、手首のスナップを効かせて霊夢の方へと投げつけた。
魅魔様が私の身代わりになってくれている隙に、結界をふりほどいて飛ぶ。
箒無しで飛ぶのは好みじゃないが、そんなことは言っていられない。
霊夢が攻撃に全力を傾注していたためか、どうにか結界からは逃れられた。
振り返る暇も惜しんで、使い魔を展開する。ミニ八卦炉も回収したいが、間に合わないだろう。
――『スプレッドスター』――
使い魔を4つ展開し、ようやく霊夢の方を確認する。
と、眼前にパスウェイジョンニードルが迫っていた。
スプレッドスターで叩き落とす。危ない所だったぜ。

321名前が無い程度の能力:2015/01/05(月) 00:48:09 ID:NBPAYOQQO
9:03
「霊夢、正直に言うがな」
やばい、勝ち目がない…と本能的に悟ったとき私の口が勝手に動き始めた。
「その賽銭箱には金(きん)が隠されているんだぜ」
「どこにあるってのよ!」
「箱の周りの板の中にさ。よく見ろ!」
こんなとっさのでたらめに騙される霊夢じゃないが
「あっ、あれかしら!?」
偶然、ガレキの中に光るものがある。それは賽銭箱の金具だが。
「そうだ、ほらそこにもあるぞ」
霊夢は背を向けて前屈した。
そのチャンスを逃さない。
閃光の速さで手を組み人差し指を合わすと一気に目標に突きだした。
必殺のカンチョー。
第二関節までぶちかませ!
のぞけり、あぐぅ、と巫女らしかぬ声を上げる尻にひと蹴りかますと、泥の中に沈んだ。
私は悠々と道具を拾い、神社をあとにしたぜ。

322名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2015/01/05(月) 10:09:42 ID:???0
9:36
魔法の森に帰るついでに、アリスの所にでも寄っていくか。

アリスは留守だった。玄関の前にいた人形に訊いてみる。
「アリスはどこに行ってるのか知ってるか?」
「魔理沙カ。アリスナラ里帰リシテイル」
肩透かしを食らったような気分だ。あいつのいない隙に、
魔道書の一冊も借りていこうかと思ったが、鍵が掛かっている。
「まあ空き巣なんてケチな真似は趣味じゃないからな。
 帰ってきた後で堂々と借りていくことにするぜ」

323名前が無い程度の能力:2015/01/06(火) 00:58:22 ID:YseI2kK60
9:40
ついでにトイレも借りていこうかな

324名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2015/01/06(火) 15:11:33 ID:???0
9:45
自分の家もすぐそこだったので、帰ってから済ます。
シャワーを浴びて着替えると、昨日のごたごたの疲れがどっと押し寄せて、
眠くなってきた。寝正月っていうのも悪くないか……

325名前が無い程度の能力:2015/01/06(火) 21:42:50 ID:7xwWZziMO
14:25
“おい起きろ!”
のど元の冷たい感触で目が覚めた。ベッドの時計が目にはいる。やべえ、寝すぎた。正月なのに損した気分…。
「おい、聞いてるのか?」
聞き覚えのある声、目の前には例の天の邪鬼がいる?。
「私のアイテムを返せ、さもないと…」
香霖堂から逃げてきたのか?あそこの庭に転がってる切れ味の悪いナタをくすねてきたようだ。
まあ、あまりいい気分ではないな。
私は答えた。
「そこの机の引き出しの中だ」
「開けろ!」
「…引き出しも開けられないのか?」
そう言いつつ私は思い出した。あの机にはちょっとした防御魔法で鍵をかけてた事を。

326名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2015/01/07(水) 10:51:16 ID:???0
14:26
ちらと玄関の方を見る。自動で発動する防衛システムがいくつかあったのだが、
すべて突破されてしまったようだ。私が目を覚まさないほど静かに、
かつ鉈一つで突破したのだから大したものだ。防犯システムの強化を考えないとな。
幸い建物自体はさほど壊れていない。この季節に家を壊されては、凍死してしまうだろう。
机に向かいながら考える。こうなってしまっては、アイテムを返してやること自体は仕方がない。
とはいえ、魔法使いが最も実力を発揮できるはずの自分の拠点であっさり敗れたとあっては、
"普通の魔法使い"の名が廃る。名が廃るだけならまだしも、次はどんな妖怪の襲撃を受けるか分からない。
したがって、こいつを――正邪をこのまま無事に帰してやるという選択肢は無い。
「早くしろ」
促されて、魔法の鍵を解除しにかかる。
「拠点防衛は得意じゃないんだけどな」
小声で呟く。私の魔法は良くも悪くもパワーがありすぎて、下手に使えば結局家が壊れてしまうのだ。
更に正邪の"何でもひっくり返す程度の能力"が厄介だ。家をひっくり返されてはかなわない。

327名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2015/01/08(木) 11:59:51 ID:???0
14:27
引き出しから正邪のアイテムを取り出し、手渡す。
正邪の視線が受け取った品々に行った瞬間、手動で罠を発動する。
勢いよく正邪の頭めがけて落下する大きなたらい。
奴に何かされる前に一撃で気絶させてしまおうという作戦だ。
死角からの攻撃を、正邪は後ろに――玄関の方へと跳んで避けた。
――逃がすか!――
次いで発動した罠、レーザーが正邪の眼前を横切る。
更に十数本のレーザーが四方八方から放たれ、正邪の動きを拘束した。
発射装置と入射装置をセットで設置してあるので、家を傷つける心配はない。
「おっと、動くなよ。下手に動いたら真っ二つだぜ」
嘘である。そんな危険な物を自室に置いたりはしない。
「くそっ、ずるい奴だ。かくなる上は家ごとひっくり返して――」
「そんな事をしたら床に仕込まれた罠を、その身に浴びることになるぜ」
これは本当。やはり自室に仕込んだ罠なので威力は大したことがないのだが、
もちろんそんなことは言わない。必殺の罠が仕込まれているフリをする。
「おとなしくそれを置いて出ていくなら、見逃してやっても良いぜ」
念のためミニ八卦炉を手に取りながら、交渉を持ちかける。
家の中でどんぱちやるつもりはない。
ブラフでこの場を収める作戦に切り替えたのだった。

328名前が無い程度の能力:2015/01/09(金) 14:41:26 ID:MFAGvLd2O
14:32
いきなりだった。

轟音とともに白煙が立ちこめ、爆風で正邪が私の方に転がってきた。
戸口に仕掛けた防犯システムが作動したようだが…ああ、硝煙にかすんで入口の扉がぶらぶらゆれていた。まあ、窓のガラスが無事でよかったが。
膝の上に顔を突っ込んでいる正邪をどかし、八掛炉をつきだしながら入り口に走った。
目の前の地べたにはアリスから分けてもらった仕掛地雷が6ヶ所、全て炸裂して数だけ穴ぼこが空いている。
森の方を見れば負傷したのか腰が抜けたのかはいずるように逃げ込む影がいくつか見えた。
妖怪か?見馴れない奴等だな。
私は足下の割れた陶器を蹴ってから振り向いた。
「追っ手か?」
正邪はだまってうなづいた。

329名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2015/01/09(金) 17:49:55 ID:???0
14:36
なぜ正邪に追手が掛かっていたのか――――
考えながら森の中を飛ぶ。人影を追っていたのだが、姿を見失ってしまった。
雪の地面にあった足跡も途中で途切れてしまっている。
飛んで逃げたか、樹上の雪などで足跡を隠しながら逃げたのだろう。
「香霖堂の鉈を盗んだから……じゃないんだろうな」

330名前が無い程度の能力:2015/01/10(土) 12:51:01 ID:QAj.eT72O
15:03
香霖堂まで足を伸ばしてもよかったが、とりあえず一回りして自宅に戻る(もちろん行きとコースは替えた)。
入り口は急ごしらえのバリケードにしてあり、それをよけて中に入る。
ドアを直さにゃならんな。
「正邪」
奴はベットの下から顔を出した。
「こないだの異変はもう済んだはずだ。今度は何をやらかした?」
「何もしちゃいないさ」
「何?」
話を聞くに今、正邪は妖怪連中(中か下の上くらいのレベル、野良だな)につけ狙われているらしい。それは何故か?
「こないだの異変で面子を潰されたってね」
「それで、奴等はどうしたいんだ?」
正邪は薄笑いを浮かべ、手のひらで首を切るマネをした。
たしか紫の話では妖怪同士の私刑は禁じられてるはずだ。しかし私にはどうすることもできないな。
正邪は香霖堂に迫る気配を感じて逃げてきたそうだ。わざわざ盗みまでしてきたのは罪を負わないためか?。
案外律儀なやつだ。
とりあえず今は急ぐことがあった。
「手を貸せ、ドアを取り付けるから」

331名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2015/01/10(土) 12:51:35 ID:???0
14:38
魔法の森は隠れる場所には事欠かない。
このまま捜索を続けても、逃げた妖怪たちを発見できる望みは薄いだろう。
正邪を家に一人で残しておくのも気がかりなので、いったん帰ることにした。
アイテムはともかく、私の魔法道具まで盗み出したりしていないだろうな。

332名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2015/01/11(日) 11:27:44 ID:???0
>>331は無視してください

15:08
ドアを直して、とりあえずは熱いお茶を淹れる。
――おかしいな――
お茶の味が、ではない。
まず先の異変とは、こいつが指名手配された事件のことだろう。
私も褒賞目当てにこいつを追っかけていたこともある。
だが、あの事件で並みいる強者から逃げおおせたこいつが、
今更そこらの野良妖怪ごときに追いつめられるだろうか?
確かこいつはチートアイテムを駆使して……ああ、それは今私の手元にあるんだった。
指名手配のせいで、スペルカードルールの中では例外的に不可能弾幕に命を狙われる
立場のこいつじゃ、アイテム無しの連戦は厳しいか。
「…………」
む、ということは、あの指名手配が活きているなら、
こいつを藍の所に届ければ褒賞がもらえるわけか。
私の眼に危険なものを感じたのか、眼前の湯呑に手を伸ばした正邪の手が止まる。

333名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2015/01/12(月) 10:14:09 ID:???0
15:10
「天邪鬼とその仲間の魔女!ここは完全に包囲したわ!
 無駄な抵抗をやめて出てきなさい!」
戸口の外から声がした。冗談じゃない。
こいつの仲間にされたら、私までお尋ね者になってしまう。
「正邪、私が借りてた道具は全部持ったか?」
「え、ああ。奪われた道具なら全部持ったけど」
「よし、ここから逃がしてやる。そっちの窓の方へ行け」
窓から脱出すると思ったのか、正邪はおとなしく従う。
その背中に向けて、ミニ八卦炉を構えた。
――ナロースパーク!――
「ごふっ!?」
魔砲の一撃を受けた正邪の身体は窓を突き破って家から飛び出し、
遥か彼方まで飛んでいく。
「奴が飛ばされたぞ!」
「交渉は決裂したようだな!」
家の外の声が、正邪を追って遠ざかっていく。
これで私は狙われずに済むし、正邪は遥か彼方まで逃げられたわけだ。
魔砲は加減して撃ったし、妖怪の耐久力なら問題なく態勢を整えられるだろう。

334名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2015/01/13(火) 10:39:02 ID:???0
15:13
店の方のベルがカランと鳴った。
「ごめんくださーい」
魔法店は正月休みなんだがなぁ……今日は千客万来だぜ。
店に顔を出すと、正邪を追って立ち去ったはずの妖怪の一人だった。
真っ赤な髪をざんぎりにした、黒い和服の少女である。
「まだ何か用があるのか?」
「客に対してそう邪険にしないでよ、おねーさん。
 天邪鬼のアイテム、ある?」
おねーさんと言うが、私より少し背が高い。
見た目では分からないが、年齢は少しどころではなく上なんだろう。
「残念ながら全部奪われちまったぜ」
「ありゃ、そっかー。じゃあ今から追っかけても捕まえられないなぁ。
 追ってった連中は大丈夫かな」
あまり心配している様子はない。薄情と言うより、物事に拘らない奴のようだ。
「今日は当店は正月休みだぜ」
「営業努力が足りないねー。そんなんじゃあの道具屋にも売上で負けちゃうよ」
「放っとけ」
「じゃあ出直すとするよ。またねー」
振り返った時に、背中に背負った赤いお盆が見えた。
結局名乗らずに出て行ってしまったが、朱の盆だったようだ。

335名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2015/01/14(水) 12:03:27 ID:???0
15:16
何はともあれ一件落着……と。
さて、正月だし派手に魔法の実験でもやってみようかな。
床に紙を敷き、魔法陣を書く。大鍋を運んできてその上に置き、
茸を放り込む。鉄くずの中で手頃な大きさのものもついでに放り込む。
呪文を唱えながらミニ八卦炉で加熱すれば……

336名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2015/01/15(木) 09:58:03 ID:???0
15:49
鍋が割れて黒い杖が姿を現した。成功か……?
と、その時杖の先端から緑色の煙が噴き出した。
げっ……慌てて窓を開け放ち、家の外に飛び出す。
少し眼と喉が痛い。毒だったようだ。
やがて煙は収まった。恐る恐る家の中に戻る。
杖は粉々に砕けてしまっていた。失敗のようだ。

337名前が無い程度の能力:2015/01/16(金) 22:10:54 ID:dNkfkBswO
16:01
やれやれ…
正月そうそう幸先が良いやら悪いやらだが、陽も落ちてきたので急いで換気する。
鼻につーんとする匂いは直ぐには消えないが、あまり外気を入れると部屋が凍りつくぜ!
実験に使った鍋を片づけホウキで掃きおわるとようやく落ち着いた。
ベットに仰向けに寝転ぶ。今日はいろいろあったな…天井の板を眺めているうちにうつらうつらしてきた。少し早いけど初夢を見るとするかな?

338名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2015/01/16(金) 22:59:11 ID:???0
16:24
微睡み始めた時、ノックの音がした。
「魔理沙―、博麗神社の新年会に行くぞーっ」
この声は―――氷精だな。
今は眠いし、博麗神社には顔を出しづらい。居留守を使うか。
「中にいることは分かってるんだぞ!とぼけるつもりなら」
――氷塊「グレートクラッシ
「待て待て待て!家を壊すな」
「やはりいたな。さあ!酒を飲みに行くぞ」
いなかったらどうするつもりだったのだろう。

339名前が無い程度の能力:2015/01/18(日) 22:17:09 ID:rcUKoByQO
16:32
「おーそーい!」
身支度を整えて出てきた私に仏頂面がつっかかってくる。
「お前ひとりなのか?大妖精はどうした?」
「大ちゃん…寒いの苦手だから…」
ちょっとしょんぼりする氷精に同情する。
妖精は寒さが苦手だものな。大妖精はかなり無理をしてるかもしれぬ…ちょっと待ってろ。
「おい、これ」
「ん、なんだ?」
「お年玉って訳じゃないが…寒いの苦手な友達がいたらな、と」
なんとなく手に入れてから使ってない防寒ケープだった。
少し小さくてまあ惜しくはないし。
「おー、ありがとー!」
「お前が着てどうする?」
「落っことしちゃうとまずいから、あたいこうする!」
「なるほど。じゃ、神社へ行くか」
「あたい、寄ってくとこあるから先に行っててよ」
「分かった。私もどこかへ寄るかもな」
夕暮れ空に飛んで行く姿を見送りながら考える。危機は回避したが、さてどこへ行くか。

340名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2015/01/19(月) 01:59:32 ID:???0
17:58
眼が冴えてしまっていたので、正邪がぶち破った窓と実験で割れてしまった大鍋の修理をしていたら、
外はすっかり暗くなってしまった。チルノ達は博麗神社で飲んでいる頃だろう。
私も夕飯の準備をしないとな。

341名前が無い程度の能力:2015/01/19(月) 13:35:57 ID:RjO843NQO
18:02
いざ台所に立てば食材がほとんど無いことに気づく。
霊夢のとこのおこぼれをアテに年末の買いだめを怠ったせいだ。やれやれ!
じゃがいもの芽が出てるやつをいくつか、鍋でゆでる。バターも切らせてるから、塩でもふって食べれば腹もふくらむだろ。
ぜいたくは敵だぜ。
「あらあら、それはないんじゃないかしら?」
含み笑いに振りかえればいつの間に!?
咲夜が立っていた。

342名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2015/01/19(月) 23:36:36 ID:???0
18:06
「今紅魔館でニューイヤーパーティーをやっているのよ」
「なら何でこんな所にいるんだよ!」
「私としても他の者に給仕を任せてくるのは心配だったのだけれど、
 貴女に来てほしいという方が二人ほどいてね」
「それで直々に招きに来てくれたわけか」
「私が行くのが一番早いですからね。先に博麗神社の方に行ってみたのだけれど、
 巫女は朝に受けた攻撃が元でまだ寝込んでいるみたいで、来られないようだったし」
「……鬼の霍乱だな」
「そうね。あの小さい子は、犯人を見つけたらただじゃおかないって息巻いてたわ」
「新年会をやってるって話も聞いたが」
「耳が早いわね。でも鬼が人を萃めて飲んでいるだけよ。
 そういえば神だか悪霊だか分からない奴もいたわね。
 暗い目をして、何かぶつぶつ呟きながら飲んでいたわよ」
博麗神社には当分近づけそうにないな。

343名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2015/01/21(水) 05:11:07 ID:???0
18:17
何にせよ、夕食の心配が要らなくなったのは、願ったり叶ったりだ。
手早く準備を済ませると、咲夜の後に続いて外に出る。
こうして咲夜と並んで飛ぶというのも、なかなかに珍しいな。
そんな事を思いながら、紅魔館に向かう。

344名前が無い程度の能力:2015/01/21(水) 21:57:17 ID:EBZm0U72O
18:21
周囲はすっかり暗くなり、空には星が瞬いている。
さて、そろそろ館だ…と、何が前方にちかちか光が見える。
「何だ!あれは?」
「行けば分かるわ」
咲夜は速度を上げた。

さて、驚いた。
館を囲む壁沿いがぴかぴか輝いている。
「あれは電飾よ、イルミネーションなの」
無数の小さな電球が点滅しているのだ。
なんでもこーりんの店で購入したとか。
他の連中が、バカにして相手にしなかったのを紅魔館が買ったのか…。
さらに門の前はでかい門松。横に立っている美鈴の背より高い。
一体ここはどこなんだ?

「明けましておめでとう、魔理沙さん。さあ、どうぞ」
美鈴が丁寧に扉を開く。
さて、タダ飯は食いたし、されど対価は怖し…ま今はとりあえずは飯だ。

345名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2015/01/23(金) 18:37:52 ID:???0
18:27
普段より少し装飾の多いドレスを身に纏ったレミリアが姿を現す。
「いらっしゃい。そろそろ来る頃だと思っていたわ」
「あけましておめでとうだぜ。ほら、年賀状」
「おめでとう。わざわざ持ってきてくれたのね。
 霊夢は体調が悪いみたいで、来られなくて残念だったわ」
「…………ああ、そうだな」
「パーティはもう始まっているわ。広間で好きなだけ食べていってちょうだい」
「感謝するぜ」
「あとフランがお年魂を―――お年玉を欲しがっているわよ」
「なぜ言い直した?」
「パチェに手伝ってもらっても良いから、何か用意しておくことを勧めるわ」
あいつの方が圧倒的に年上なんだが……何も渡さないわけにはいかないんだろうな。

346名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2015/01/25(日) 05:46:12 ID:???0
18:34
紅魔館のニューイヤーパーティは立食形式だった。
広間には意外と多くの人妖がいた。そこここで談笑の花が咲いている。
忌避される吸血鬼の館とは思えない。
私も皿を取って、食べられそうな料理を選んで盛っていく。
旨いな。働き者で料理上手なメイドがいるからだろう。
空腹が少し癒えて、辺りを観察する余裕が出てきた。
人妖といっても人の占める割合はかなり少ない。
私のような魔法使いや、半妖、あるいはその身内くらいのようだ。
見知った顔も見えたが、他の誰かと話が弾んでいるようで、話しかけ辛い。

347名前が無い程度の能力:2015/01/27(火) 13:20:38 ID:wSrCVaikO
18:36
じゃ〜ん!ポン!
突然銅鑼(ドラ)の音が会場に響きわたる。
思わず飲み物を吹く。
さらに無数の炸裂音、爆竹か?
もうもうとたちこめる硝煙に包まれ、参加者たちは仰天し、右往左往する始末。
と、入口の扉が開き、笛やらラッパやら銅鑼やらを鳴らしながら東洋風な格好のメイド妖精たちが入場してきた。
その音色に誘われて、紅色に金のタテガミの四足のなにか…こりゃ、獅子か?…が飛び込んできた。
演奏しながら踊るメイド妖精たち。それに合わせ踊る獅子。会場からたちまち歓声と拍手が上がる。
口をパクパクさせ、観客にはウィンクする。
これが紅魔館流の獅子舞いか…派手だな。
獅子が後味で立ち上がると、布をめくって頭からフラン、胴体から美鈴が顔を出す。
二人とも汗だくだ。
会場はまた拍手に包まれた。

348名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2015/01/28(水) 04:07:27 ID:???0
18:39
「魔理沙、あけましておめでとう」
フランが寄ってきた。
「ああ、おめでとうだぜ」
「お年玉ちょうだい!」
いきなりか…………
「よし、今からお年玉を作ってやる。ちょっと来い」

パーティ会場を抜け出して、図書館に向かう。
「パチュリー!ちょっと場所と鍋を貸してくれ」
「来る頃だと思っていたわ。対価は後で貰うわよ」
仕方ないか。鍋は既に出してあった。随分古ぼけた鍋だ。
自分の家で来る前にやった実験と同じように、魔法陣を書き、ミニ八卦炉を鍋にセットする。
鍋に茸を放り込む。しかし手持ちの分だけだと素材が足りないな……
「はい、魔理沙さん」
小悪魔から何か手渡された。見れば、美しい光沢をもった金属だった。
「それは別料金よ」
ううむ、後が怖い。

349名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2015/01/29(木) 16:42:31 ID:???0
18:56
「そこ、間違えてるわよ」
「おお、確かに。サンキュな」
パチュリーが、私の書いた魔法陣を手直ししてくれる。
私の家で実験に失敗したのは、そこのミスのせいだったのかもしれない。
「失敗して図書館を壊されても困るのよ」
そう言うと、また手元の本に顔を伏せてしまった。
「魔理沙ー、こここんなにややこしいの書かなくても、詠唱でどうにかなるんじゃない?」
フランも口出ししてくる。
「お前やパチュリーならできるのかもしれんが、
 そこは人間には事前に書いておかないと制御しきれん」
「魔理沙さん、この薬使った方が良いんじゃないでしょうか?」
「小悪魔、そのやり方は古いぜ。今は素材の比率を変えて―――」
周りに三人も魔法使いがいる状態だとやりにくい面もあるなぁ。
どうにか準備を終える。後はミニ八卦炉を起動するだけだぜ。

350名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2015/01/30(金) 19:30:52 ID:???0
19:23
鍋は壊れていない。中からは薄く白煙が出ている。
「成功か…………?」
恐る恐る覗き込むと、青白く光る一本の杖が見えた。
まだ熱を持っていて、触れない。フランも鍋を覗き込んだ。
「これ、何なの?」
「何だ、分からないで口出ししてたのか。これは魔法の杖だぜ」
「それくらいは見れば分かるわ。で、普通の杖じゃないんでしょ」
「ああ、まあな」
これはある特定の魔法を使うための杖だ。基本的にそれ以外の用途には使えない。

351名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2015/02/01(日) 02:17:43 ID:???0
19:32
冷めたので、杖を手に取りフランに渡す。
槍のような鋭利なフォルムの、青白い光沢をもった杖。
「ほらよ、お年玉だ」
「これ、どう使うの?」
「軽く魔力を流し、地面に突き刺す」
フランは言われたとおりにする。図書館の高級そうな絨毯にぐっさりと。
パチュリーと小悪魔が目をむくが、彼女は気にしていないようだ。
杖に見入っている。と、その杖の先、少し上方から膨れ上がるように、
黄色いのっぺりした球体が出現した。人の頭ほどの大きさまで膨らんだそれは、
鈍い光を放ちながら空中に浮かんでいる。
「まあ……成功かな」
「これがお年玉?」
「これは――月ですか?」
小悪魔の問いに、軽くうなづく。永夜の異変で永琳が見せた偽の月、
その更にレプリカのミニチュアといったところだ。
地下から魔力の供給を受け、本物の月に近い形で放つ。
まあ偽者の模造品の試作品だけあって、その力は相当以上に劣化してしまっているが、
魔法使いや妖怪には若干の恩恵があるアイテムに仕上がっている……はずだ。

352名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2015/02/01(日) 23:36:09 ID:???0
19:46
フランが杖を引き抜くと、光球も消えた。
「魔理沙、ありがとう!大切にするね」
その笑顔を見ていると、多少無理をしてでも作って良かったと思えた。
「さて、私への対価の件なんだけど」
さっきまで本に目を落として黙っていたパチュリーが突然口を開き、少し驚く。
「やっぱり払わないと駄目か?」
「当然でしょ。少し仕事をお願いするわ。貴女になら簡単なことよ」
まあ仕方ないか。無理そうなことなら逃げさせてもらうにしても、
話くらいは聞いておくべきだろう。

353名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2015/02/02(月) 20:22:00 ID:???0
19:50
「ややこしい話は―――」
小悪魔がポットを持ってきた。
「お茶でも飲みながらにしませんか?」
私は一も二もなく賛成する。
「ちょっと洗面所を借りるぜ」
魔法の準備で手や顔が汚れてしまった。
温かい湯で軽く漱がせてもらう。
その間に小悪魔と数人のメイド妖精たちが図書館にケーキを持ち込み、
お茶会の準備を整えていた。小さなケーキはパーティ会場で供されていたのと
同じもののようだった。

354名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2015/02/04(水) 08:53:22 ID:???0
20:01
「仕事はこれよ」
パチュリーは紅茶を一口飲むと、どこからか取り出した小瓶を三つ渡してくる。
中身は少量の鉱物の粒のようだ。黒っぽいもの、赤い透き通ったもの、
緑色のものの三種類が、それぞれの瓶に入っている。
「それと同じ種類のものを各1kgずつ、見つけて持ってきてちょうだい」
「見つけてって言われても、どこにあるのか分からないんだが」
「地下よ。どれもある程度深い所にしか、ほとんどないものなの。
 地上の妖怪が地底に行くのは好ましくないから、貴女にお願いしようと思ってね」
地下と言われても漠然としすぎているな。
「私も地底についてはよく分からないからね。後は旧都のお友達にでも聞いてみて」
ふむ、まあすんなり教えてくれるかは分からないが、年賀状を届けがてら、また行ってみるのも悪くないか。

355名前が無い程度の能力(zaq.ne.jp)★:2015/02/05(木) 10:25:51 ID:???0
20:31
結局、紅魔館に一晩泊まっていくことになった。
夜に家まで帰るのは、妖怪が多くて危険だろう。
まあ妖怪の数で言うなら、館の中も外と似たり寄ったりな感じではあるのだけれど。
眠るにもまだ早いので、図書館で本でも読みながら過ごすことにする。
パチュリーとフランも静かに本を読んでいる。ここは正月でもあまり変わらないな。

356掲示板の凍結準備に入ります。詳細は板トップに。:2015/02/06(金) 05:32:12 ID:uuJGwjx20
20:34
さて、何の本がいいかな?どれどれ、「ブック・オブ・キー・ディテクト」?
鍵を見つけることができるようになる本か。よからぬことに使えそうだな。誰が読むんだろうな。
やっぱパチュリーんとこにはいろんな本があるもんだな
来るたびに新しい発見があるぜ。

357掲示板の凍結準備に入ります。詳細は板トップに。:2015/02/06(金) 22:29:37 ID:SyAIO816O
22:03
読書に没頭する。
いろいろ読みふけっているうちに…おや!もうこんな時間か。
「お夜食お持ちしましたわ、お客さま」
咲夜がおどけたポーズで声をかけてきた。
片手のトレーにはスープが湯気を立てている。
「至れり尽くせりだな」
「食べ盛りなんだから遠慮はなしよ?」
例の図書室のテーブルに案内されるとパチュリーたちは先に席に着いていた。
焼きたての小さめのパンにポタージュは小腹にはなかなかだ。
その後、咲夜から紅茶をもらう。
「ところで魔理沙」
パチュリーは鬼は何を好むか、と聞いてきた。
「突然、どうした?」
「まさか手ぶらで地底へ行かすと思って?」
結局地下で理由を問われた時、ヴァル図書室の依頼として手土産がないと紅魔館の面子にかかわるという。
なるほど…と、私は腕を組んだ。

358掲示板の凍結準備に入ります。詳細は板トップに。:2015/02/08(日) 09:12:27 ID:m9LizFWoO
22:07
勇儀たち鬼が好むもの、と思い付くのは
まず酒だ…
「うちの年代物のワインはどうかしら?」
いや、洋酒は好むかな?あと鬼たちが醸す酒は正直かなり旨い。
霊夢のとこで紫や神奈子、永琳でさえ誉めていたもの。
で、次は宝物…金銀財宝だ。
「英国金貨ならいくらでもあるけど…」
しかし、鬼たちは金の鉱脈ごと持ってるからなぁ
「じゃ、後は何かしら」
「強いやつ、だな」
これが一番の好物かもしれない。常に強い相手を探しているんだ。
「難しいわね…」
パチュリーは首をひねった。
「まあ、魔理沙に頑張ってもらうしかないわね」
「あいにく私も満足させられるほどの相手じゃないけどな」
「…私じゃ、だめ?」
フランの言葉に小悪魔が眼をむいた。
「妹様!それはまずいですよ」
「いや」
パチュリーの発言は意外だった。
「それもありかもしれないわね…」


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