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【新企画案】東方リレーSS企画スレⅡ【募集中】

63 ◆Ii/3o0rEtg:2012/03/13(火) 01:18:15 ID:Rr0r67Kk0

大妖精には、いざとなったら川を越えて逃げろ、と伝えてある。短い付き合いだったが彼女との時間は楽しかった。
最初に出会った時を思い出して、ふっ、と笑い、逃げ出す前にせめて一矢報いようと、天子は矢をつがえて立ち上がった。
二手に分かれたアリスとレミリアが、それを合図のように疾走する。
天子はレミリアに、牽制の矢を発射した。レミリアは身を翻して回避し、アリスがM39を向ける。
無防備な天子の背中を、M39の銃口が狙う。
と、その時、アリスの行く手を阻むように突然小柄な人影が歪んで現れ、弾幕を放った。アリスはそれを横手に飛んで回避する。
驚愕する天子が、その小さな背中に戸惑いの声を投げかける。

「な、なんで来たのよ……危なくなったら逃げなさいって、あれほど……」
「何言ってるのてんこちゃん! 友達を置いて逃げられる訳ないでしょ!」

テレポーテーションで現れ、振り返った大妖精が天子に向かって力強く言った。
本当は怖いのだろう。大妖精の瞳には、不安と恐れのいろがありありと浮かんでいる。それでも彼女は来た。

(ああ――……この子は、本当に、友達思いなのね)

知り合って間もないというのに、何時の間にか自分は大妖精の友人の輪に組み込まれてしまったらしい。
妖精らしい無垢な単純さ。
不思議とそれが、天子にはとても眩しいものに思えた。面映く、くすぐったくなるような、しかしそれでいて快い気持ちが胸の奥からこみ上げてくる。

「ふふっ、そうよね、ごめんなさい」

それを聞いた天子は、自然と笑顔を浮かべた。大妖精もそれに笑って応えた。
親の七光り、と他の天人に疎まれ、久しく友人などいなかった。いつしか友人などいらないと思い始めた。
しかし今、大妖精の言葉によって天子は言葉に出来ない熱い情感に満たされていた。

「なんか、私達悪者みたいじゃない?」
「吸血鬼とそのお仲間なんてダークヒーローでいいのよ。悪役上等! ワルモノ見参!」

急に大妖精が現れたので、しばらく静観していたレミリアとアリス。
しかし彼女らそっちのけで楽しそうに会話する天子と大妖精を見て、苛立ちが募りたまらなくなったレミリアは、高々と宣言して吶喊した。
肩を竦め、やれやれ、という風に曖昧に笑んでアリスも飛び出し、土塁を乗り越え、M39を発砲する。

「大妖精、危ない!」
「わ、わわ!」

天子が大妖精を引っ張りながら銃弾を回避し、ボウガンを捨てて開いた手に要石を出現させると、踵を返して背後から迫っていたレミリアの鋭い手刀を受け止めた。
しかし吸血鬼の力は強く、要石に稲光のような皹が走り、割れてしまう。
その隙を逃さず、レミリアが追撃を入れようとするが、大妖精が至近から弾幕を放って阻止した。レミリアが後退して距離を取る。

「茶番は終わりよ!」

力強く言い放ち、レミリアが鞘をはらってレーヴァテインを構える。それを見てアリスも追撃の手を緩め、拳銃を持ったまま土塁の後に下がる。
その禍々しい紅い刀身と、込められた気迫に、天子と大妖精も強烈な一撃を予感した。
レミリアは小さな体を深く沈め、傘を捨て、風のように疾走した。そして目にもとまらぬ早業で、レーヴァテインを一閃した。
業火が迸り、大気が陽炎となって歪む。

「あち、あちちち!」

何とも格好がつかないが、レーヴァテインを薙いだレミリアは、刺すような日差しの痛みにたまらず背を向けた。
傘の所まで戻るレミリアと入れ替わるように、アリスが慎重に天子と大妖精の様子を伺いに行く。
業火の残滓が燻る中、天子と大妖精がいた場所に目を凝らすと、そこには穴があった。
すぐさまアリスが、レミリア、と鋭い声を飛ばしたが遅かった。言い終わる前に天子と大妖精が穴から飛び出し、アリスを尻目に逃げ出した。
逃がすまいとM39が火を噴くが、弾丸は天子の横を飛びぬけ、何処かに消えた。追いかける気力もなく、ただ呆然と見送る。


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