したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

【新企画案】東方リレーSS企画スレⅡ【募集中】

56 ◆Ii/3o0rEtg:2012/03/13(火) 01:09:53 ID:Rr0r67Kk0
掠れる音を立てて襖が開き、和風の屋敷の雰囲気に似つかわしくない、金髪の少女がこっそりと顔を出した。
きょろきょろと部屋の隅々まで目を配り、忍び足で部屋に入ると、襖に手をかけて、隙間から覗き見る。
先程からずっとその繰り返しだった。
永遠亭に到着したアリス・マーガトロイドは、広大な屋敷の内部を、一人で散策していた。
その足運びは慎重そのもので、細い手には常にコルト・ガバメントが握られている。
もちろん、それは何時どこから襲い掛かってくるかもしれない他の参加者に備えてのことである。

「……しかし、広いわね」

元々永遠亭は広々とした屋敷である。ミニ幻想郷でもそれは変わらず、巨大な屋敷を誇示していた。
しかし妖怪兎達もおらず、静まり返った今の無人の永遠亭は、その広さもあわさって不気味で、まるでお化け屋敷のようである。
アリスは慎重に、幾つもの襖を開き、板張りの廊下を歩いていると、今までと雰囲気の違う場所に出た。

「ここはあの薬師の部屋ね」

と、アリスが言って、部屋の中をぐるりと見回した。
大きな薬味箪笥が壁に置かれ、机の上には薬研やすり鉢といった道具類が無造作に並べられている。
永遠亭の薬師、八意永琳の部屋だということは一目見てわかった。
そしてアリスの視線は、一際異彩を放つ、部屋の中心の満月を象った巨大な置物に向けられた。
ただのオブジェではなく、大きなレバーに投入口がある。なるほどこれがガチャガチャね、とアリスは思った。

「でも、手持ちのオーブは四個。中吉アイテムは手に入らないわね」

中吉に拘らずとも、オーブを一個だけ残して小吉アイテムを一挙に三個入手する方法もある。
リリカとの戦いで味わったが、コルト・ガバメントは反動が大きく、負担の強い拳銃だった。扱いやすい武器を手に入れたいという思いはある。
悩みながら、アリスがディパックを開き、四個のオーブとしばしの間見つめあう。
その時、微かに板張りの廊下を踏み鳴らす、靴音が聞こえた。
耳ざとく音を拾ったアリスはディパックを閉じ、コルト・ガバメントを握ってスライドを後退させると、壁に耳を寄せて様子を伺うことにした。

「誰かいるのかしら? ……数は二人、か」

よくよく聞いてみると、二種類の靴音が重なっており、二人の参加者の存在を示していた。
他の参加者に遭遇したのなら、まずは交渉して、そして仲間を得たいところだったが、二対一の状況では決裂した時に不利となる。
ここは息を潜めてやり過ごすのが懸命か、と思った時、不意に靴音がアリスの部屋の近くでぴたりと止んだ。
アリスの顔に焦燥が浮かぶ。
再び靴音が聞こえた時、その足取りは真っ直ぐにアリスに向かってきた。心臓が早鐘のように動悸する。

「来る……!?」

襖から離れ、月型のガチャガチャを盾にしながら部屋の入り口に向けてコルト・ガバメントの銃口を構える。
人の気配が襖の向こうで濃くなった。
もしも敵意のある者に存在を悟られてしまったのなら、迎え撃つしかない。アリスの細い指が引き金にかかる。
目線の高さまでコルト・ガバメントを持ち上げ、襖ごしに警告する。

「そこで止まりなさい。聞き入れない場合は撃つわよ」

制止の声に気配が止まったかと思うと、互いに無言のまま、数秒の沈黙が訪れた。
しかし緊張がもたらす錯覚は、沈黙の間を何倍にも感じさせる。
すると静寂を破って、襖ごしにゆっくりと宥めるような女性の声が聞こえてきた。

「大丈夫ですよ。私達に敵意はありません」

落ち着きある声で、襖の向こう側の女性は言った。まるで教師が生徒を諭す様な声音だった。
その柔らかな言葉に僅かに毒気を抜かれたような気がしたが、アリスは油断なく、銃口の狙いを外さずに構えていた。
襖ごしにいる女性は、どうやって自分の感情を読んだのか。深まる警戒心を見抜いたように女性が続ける。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板