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【テンプレ】東方クロススレ 8【必読!!】
172
:
名前が無い程度の能力
:2010/05/19(水) 02:03:52 ID:5su2kZg60
>>171
>>169
はこれから続き物にするやつの予告編みたいなもんか?
これから続きも書いていくなら、
>>170
の板で改めて始めるのもいいんじゃないか?
少なくとも、予告はこのスレで本編は向こうの板、みたいな不親切やるよりはいいと思う。
173
:
169
:2010/05/21(金) 10:24:21 ID:M2xXo9/k0
>>172
そうか・・・じゃあ続きが固まったらあっちに
改めて投下するわ
174
:
東方唯一士
:2010/06/23(水) 22:19:25 ID:ggiMCntI0
某所で間違って書いちゃったものを転載だよ!
快晴であった。
天候はもとより、世界にとっての危機が去った今、ある一人の青年も、その母も心を晴れ晴れとしたものにしていたのである。彼は軽い足取りで玄関に向かうと、母に外出の旨を伝えた。
「母さん、俺街を見回りに行ってきます」
彼の外出の理由の中には、ろくな食料のないこの時勢に、少しでも保存できるものを探すこともあった。しかし何よりも彼が気にかけていたことは、先の脅威に連なる存在が来ているかということであり、そのための見回りであるのだった。この見回りはそれほど時間を食わない。彼は空を飛ぶことができるからであった。
ひとしきりパトロールした後、運良く限定配給が行われているのを見つけた彼は流動食を入手してそのまま帰路に就こうとした。だが兄妹のように見える子供二人がパンの耳を奪い合っているのを目にし、まず食料を母の分と自分の分に分けてから自分のそれを少し分けてやった。兄弟はこのあたりだ花を知られている少年に感謝し、家に帰って行った。青年はそれを目にし、復興が進んでいるのを感じた。以前ならばしょっちゅう暴動が起き配給などは行っている余裕がなかったので、子供が外を出歩くなどあり得ないことだったのだ。
175
:
東方唯一士
:2010/06/23(水) 22:21:54 ID:ggiMCntI0
自宅に着き、テーブルの上の母の書置きを見つけた彼は、その内容を見て「そうか、やっとか!」と喜びをあらわにし、さっそくそこに書いてある通りに作業を始めた。
日の落ちる頃帰宅した母は、九割がた終わっている作業に驚いた。
「さすがは私の息子!じゃ、仕上げにかかるとしようかしら」
母が加わって作業は完了し、青年はいよいよか、と意気込んだ。
「もう使っても大丈夫かな?」
「OKだけど、少しゆっくりしてから言ったら?あっちに行ったら当分戻らないんでしょう?」
「いや、今回は報告だけだけど…じゃあとりあえずお茶してから行くよ」
コーヒーを淹れて、二人は甲板でブレイクをとった。母は彼の父には似ていない顔を見て、今は亡き夫のことを思った。
「さて…行くかな」
しばらくして彼は呟き、準備した宇宙船のような物のコックピットに座った。
「行ってきます、母さん!」
「無いとは思うけど、怪我なんかしないでよ!」
息子は心配する母にサムズアップし、目的地を設定して旅立った。その精悍な顔つきは、父がいない今でも、この子も私も大丈夫という希望を、母に持たせた。
176
:
東方唯一士
:2010/06/23(水) 22:25:31 ID:ggiMCntI0
機器が目的地への到着を告げるかと思った瞬間、非常事態発生というアナウンスが流れた。
「な、何だ?」
それを確かめる暇もなく、青年は不時着した《その地》の地面に身を投げ出された。見上げた視線の先には…見たこともないような自然、幻想的、牧歌的な風景と、一人の少女の姿があった。
「ここは…どこなんですか!?いや、今はいつなんですか!?」
彼は今の状況を不思議がっているようだが、彼の質問もまた、少女に疑問を抱かせた。
「ここは幻想郷で、イマは今だけど…どういう意味?」
「ああそうか、すいません。気が動転してまして。おれはタイムトラベルしてここに誤って来てしまったんです。」
「たいむ…?」
「時間を移動する、俺の時代の機械です。信じてもらえないかもしれませんが…」
「ふーん、珍しいことでもないかも」
あっさりとした答えに、青年は面食らった。
「そうなんですか!?良かった、話がややこしくならずに済む。すいませんが、『幻想郷』とはどのような所か教えていただけませんか?」
「うーん、簡潔に言うのは難しいんだけれど…まあ、外の世界にいられない人や妖怪、場合によっては神様が住む場所ね。逆にこれを信じてくれないかもしれないけど…」
「そういうことなら理解できます。慣れているので。」
177
:
東方唯一士
:2010/06/23(水) 22:29:04 ID:ggiMCntI0
「うそ!?じゃあ普通の人ってわけでもなさそうね」
「ええ、まあ。それでは、いろいろありがとうございました!」
言うが早いか、彼は飛び去ってしまおうとしたが、少女が呼び止めた。
「ああ、ちょっと待ってよ!あなた帰り方わかるわけ!?」
「わかりませんけど、忙しいかと思いまして」
「私たちは基本暇だから大丈夫よ。方法を探してあげるって」
「本当ですか?ありがとうございます!」
彼女はこの真摯な青年に少し当惑したが、やがて名を名乗った。
「わたしはリグル。リグル=ナイトバグ。貴方は?」
「俺ですか?おれは―」
青年は背にかけた剣のズレを直し、少女のほうに向きなおって言った。
「トランクスと言います。」
山の間から、朝日が顔をのぞかせていた。
178
:
名前が無い程度の能力
:2010/06/24(木) 00:04:39 ID:QbyNAhbM0
投下乙です。
今のところ悪くないと思いますが、長文はある程度の字数で改行したほうがいいと思います。
この手の掲示板上だと、横いっぱいにに長く続く文章は見にくくなりますので。
上に投下されてる方々の文章を参考にすると良いと思います。
179
:
名前が無い程度の能力
:2010/06/24(木) 10:19:29 ID:6zHyCB6gO
>178
解りました
180
:
名前が無い程度の能力
:2010/06/26(土) 17:27:26 ID:IVURewng0
『鬼に逢うては鬼を受け入れ、 仏に逢うては仏を受け入る。 幻想の理ここに在り。』
一つの平和を受け入れたなら、一つの殺戮も受け入れなくてはならない
一つの繁栄を受け入れたなら、一つの終末も受け入れなくてはならない
一つの誕生を受け入れたなら、一つの滅びも受け入れなくてはならない
一つの非常識を受け入れたなら、一つの常識も受け入れなくてはならない
一つの愛を受け入れたなら、一つの憎悪も受け入れなくてはならない
一つの勝利を受け入れたなら、一つの敗北も受け入れなくてはならない
それ即ち、全てを受け入れることなり
181
:
名前が無い程度の能力
:2010/06/27(日) 07:42:32 ID:cvDj4pco0
八八式妖精兵
種類 数打
陰儀 無し
仕様 汎用
攻撃力3
防御力2
速度2
運動性1
182
:
名前が無い程度の能力
:2010/06/27(日) 10:07:07 ID:cvDj4pco0
チルノ
種類 ブラッドクルス
陰儀 熱量吸収
仕様 汎用
攻撃力3
防御力3
速度2
運動性2
183
:
名前が無い程度の能力
:2010/06/27(日) 17:29:25 ID:cvDj4pco0
フランドール
種類 ブラッドクルス
陰儀 物質破壊
仕様 特殊/白兵戦
攻撃力5
防御力0
速度0
運動性0
184
:
名前が無い程度の能力
:2010/06/27(日) 19:57:21 ID:Ho0r96gI0
【劔冑】
超能の鎧。
字が示す通り甲冑であるが、太刀などの武装も含んで云う。
単なる鎧と異なるのは、劔冑には魂が宿り、着用者に超常能力を授ける点である。運動能力の増幅、強靭な回復能力などが標準的だが、
劔冑の中でも特に業物と呼ばれる逸品はそれらに加えて更なる特殊性能をも備えることが稀ではない。
製法によって大きく二通りに分けられ、旧型を『真打』、新型を『数打』と呼ぶ。西洋では、前者を『ブラッドクルス』、後者を『レッドクルス』と呼ぶ。
【数打劔冑】
近代に入って発明された、劔冑の能力の統制を妖精などの低レベルな魂で行うタイプの劔冑。
貴重な黄金時代の魂を消費しないで量産が可能である。
その能力は真打に劣るものの、あらゆる兵器、妖怪を圧倒するには十分であり、現在はこちらが幻想郷での劔冑の主流となっている。
【真打劔冑】
古来の製法によって造られた劔冑。
幻想郷黄金時代に存在した者の魂を最後の素材として打ち込むことで完成する極めて貴重で高価な品である。
つまり、生産量に絶対的な限界が存在する。
現在では、その製法を伝えてる鍛冶も少ない。
185
:
名前が無い程度の能力
:2010/06/30(水) 17:29:43 ID:LGc.Bs0g0
幾ら人格の宿る真打劔冑と言っても劔冑はあくまで武器であるため
その力を引き出して操るのは仕手自身である。
劔冑の燃料は使い手の体温であり特に異能の力である陰儀は大量に仕手の体温を消費する事になる。
陰儀を使った場合主に、生身の相手<自分<<<<<<劔冑を装備した相手、の順に効果が出るための体温消費が激しくなる。
186
:
名前が無い程度の能力
:2010/07/11(日) 17:50:19 ID:EGzb1xHc0
長くなったのでこっちに投下。一発ネタなので続きは無いです。
あのアーティストたちが幻想入り。
(元ネタわかる人少ないだろうなー。最終回の後、巻末四コマより前の話ね)
スバル「人を……探してるんだ」
霊夢「人探し? 外から来たのに変わってるわね。迷い込んだってわけじゃないの?」
スバル「ああ。オレたちの世界に、入り口が残されてた……アーティストの作品だ、間違いない。
その扉がこの世界に繋がってた。だから、オレたちが探してるアーティストもこの世界にいる」
霊夢「アーティスト? 絵を描いたりする人?」
スバル「絵を……いや、確かに絵に『なる』んだが……話に聞く限りでは、そいつは画家じゃなくて詩人なんだ」
霊夢「ふーん? よくわかんないわね」
スバル「話を伝え聞いただけだから、詳しいことはオレも知らない、会ってみないとわからない。名前は、パプル・ヘイズ」
霊夢「聞いたことないわねー」
スバル「そうか。だが、この世界にいるのは間違い無いんだ」
霊夢「幻想郷」
スバル「?」
霊夢「この場所の名前よ。この世界、なんて言い難いでしょ?
それはともかく、あんたの目的は人探しなのね。じゃあ勝手にやってくれるといいわ」
スバル「あ、いや、待ってくれ。探してるのはそいつだけじゃない。
この世界には、一緒にやってきた仲間がいるんだが……扉を抜けた時にばらばらになったみたいなんだ」
霊夢「ふーん? 聞いてもわからないと思うけど、どんなやつ?」
スバル「とんがり頭の騒がしいやつとバンダナ巻いたアクシデントに弱そうなやつと意地っ張りのたくましい女」
霊夢「見てないわねー。まあ気長に探してみたら? 変なやつらっぽいし、生きてればすぐ会えるでしょ」
スバル「い、いやそうしたいのはやまやまだが……右も左もわからないんだ、せめてこの辺の地図とか」
霊夢「地図なんて持ってないわよ。道に迷ったことなんて無いもの」
スバル「せ、せめて街の場所! 人が集まる場所を教えてくれないか?」
霊夢「あっちのほうまっすぐ」
スバル「あっち……森しか見えないぞ!?」
霊夢「森を飛び越えればすぐだって」
スバル「そんな、森を抜ける装備なんて持ってない! コンパスも何も無いのにまっすぐなんて」
霊夢「あーもうめんどくさいわねー。じゃあもうちょっと待ってなさい。
あちこち飛び回る白黒いやつがそろそろお茶をせがみに来るはずだから、そいつに頼めばいいわ」
スバル「そうか……助かる」
霊夢「……まあ、今日はちょっと遅いみたいだけどね。もしかしたら気まぐれで、今日は来ない日かも」
スバル「ええ!? 結局どうしろって言うんだ!」
霊夢「私が知るわけないでしょ、うちは神社であって探偵事務所じゃないんだから。
だいたいあんたも、自分で何とかしようって気は無いの? 森を抜けたら人里には着くって言ってるでしょ?」
スバル「いやだから、あんな広そうな森、普通抜けられないだろ!?」
霊夢「ああ……あんた見るからにもやしっ子っぽいもんね。そりゃ無理か」
スバル「ぐぅっ!? お、お前……もうちょっと気遣いとか……さっきから本音丸出しなのが言霊で丸分かり……」
霊夢「言霊? あんたおかしなものが見えるのね。こりゃ他に迷い込んだやつってのも、相当変なやつばっかりなんでしょうね」
187
:
名前が無い程度の能力
:2010/07/11(日) 17:50:51 ID:EGzb1xHc0
魔理沙「恋符『マスタースパーク』!」
チルノ「みぎゃー!?(ピチューン) おーぼーえーてーろー……」(フェードアウト)
魔理沙「ふう、ちょうどいい運動になったぜ……さて、そろそろ霊夢んとこにでも」
アクロ「スパイシーだ!」(突然空中に現れて)
魔理沙「うわっ!? な、なんだお前、下から飛んできたのか?」
アクロ「なんだ今の、お前の技巧(スキル)か? 光がぐわーっと、とんでもなく力強くてさ!
あんなにまっすぐな技巧初めて見た! お前もアーティストなのか?
この世界にもアーティストっているのか? もっと他にもたくさん?」
魔理沙「待て、質問は一つずつにしろ。そして出来れば私にも質問させろ」
アクロ「あ、オレはアクロっていうんだ、よろしく」
魔理沙「私は魔理沙だぜ。よし自己紹介終わり。で、お前は何だ? 新手の妖怪か?」
アクロ「え? いや、オレは人間だぞ」
魔理沙「何? 空を飛べる幻想郷の人間で私が知らないやつなんて――
……? 待て、お前、飛んでない……?」
アクロ「って、妖怪? この世界には妖怪なんているのか? なんだそれ、もしかして妖精とか神様とかもいたりするのか?
うわあ凄いな、世界中がスパイシーだ、何かオレすごいテンション上がってきた!」
魔理沙「とっくに振り切れてた気がするが……いやそれよりちょっと待て。
お前のその……飛び方、でいいのか? なんでそんな、『まるで普通に地面に立ってる』みたいな……?」
アクロ「あ、これ? これはオレの技巧。
今は、空気を粘土化して固めて土台を作って、その土台を登ってきたんだ。オレはその上に立ってるだけ」
魔理沙「また面白い能力だなー。粘土にして固める程度の能力?
……しかしその口ぶりからすると、どうもお前、外の世界か……いやそれとも、全く別の世界から来た、とか?」
アクロ「ああ、そうそう。パプル・ヘイズが残したらしい扉をくぐったら気がついたら森の中に……
そうだ、オレ、そのパプル・ヘイズを探してたんだ。七大アーティストで最年長の爺さんなんだけど、何か知らないか?
あと、一緒にオレの仲間もこの世界に――」
デコ「カリント!」
(デコが筆を走らせると、空中に描かれたモンスターが実体化する)
デコ「これがボクの『エア・モンスター』です。こういう技巧を持つ人間をアーティスト、って……」
紫「あなたの、技巧」
デコ「は、はい」
紫「絵画の基本も何もなっていないし、描写も荒い。芸術としては、足りないものだらけよ。
それに、この形状、属性……戦わせることを前提の一つに置いているわね。
戦いの技術として見るなら、妖力を弾や光線などにしたほうがずっと効率的だし、
『描く』という過程を経なければならないから発動も遅い……今のだって、初動から実体化まで1.5秒かかった」
デコ「う、うう……(言い返したいのに頭がついてこない)」
紫「でも、とても魅力的だわ」
デコ「え?」
紫「私たちが弾幕に心象を反映させるように、いえ、それよりももっと直接的に、
あなたは筆に思いを乗せ、形にすることができる。
感情を、魂を込めて描く――だから稚拙な絵画でも、こんなに力強くなる。
たった1.5秒で、あなたは私にこれほどまでの感動を与えた。これはとても素晴らしいことだわ」
デコ「あ、ありがとうござ」
紫「でも稚拙」
デコ「ええ!?」
紫「ねえ。仲間や探し人を探すのもいいけど……それと並行して、面白いことやってみない?」
デコ「お、面白いこと……?」
紫「ええ。『芸術を形にする異能を芸術と呼ぶ』なんてまっすぐなバカをやってる貴方たちのことだもの。
たとえ少女じゃなくても、あなたたちは『真剣に遊ぶことの素晴らしさ』を理解できるはず……
あなたはこれから、ちょっとこの世界――幻想郷で、勉強してみるといいわ」
デコ「勉強、ですか? でも、何の?」
紫「絵の勉強。そして、弾幕の修行よ」
188
:
名前が無い程度の能力
:2010/07/11(日) 17:52:52 ID:EGzb1xHc0
ネネ「みんな、準備いいかなー? さん、はい」
寺子屋の生徒たち「かーえーるーのーうーたーがー」
ネネ「うん、上手上手。えーっと、そこの子はもうちょっと腹筋に力入れて歌って。そっちの子は背筋伸ばして……」
生徒A「ええーめんどくさいー」
生徒B「それよりお姉ちゃん歌ってー」
生徒C「なんで祭りでもないのに歌なんか……」
生徒D「おねーちゃんミスティアとどっちが歌上手いのー?」
ネネ「え、ちょ、うわ、待って待って」
慧音「こらお前たち! 音楽の先生の言うことだぞ、ちゃんと聞きなさい!」
生徒A「えーだってー」
生徒B「お姉ちゃんお歌上手いもの、また聞きたいー」
生徒C「今まで音楽の授業なんて無かったのに、なんでいきなり……」
生徒D「でも音楽楽しいよー。慧音先生よりお歌上手いしー」
生徒A「ていうか慧音先生が音痴……」
慧音「そうかお前たち。よし、一列に並べ。順番に一撃ずつお見舞いしていくぞ」
生徒全員『音楽の先生の言うことちゃんと聞きます!』
放課後
ネネ「つ、疲れた……」
慧音「いやいや、初めての授業としてはこんなものだろう。生徒たちにも随分気に入られている」
ネネ「そうかしら? 全然わかんないけど」
慧音「いやいや、あいつらは気に入らないやつには容赦無いからな。悪戯されたり教室から脱走されたりはしなかっただろ」
ネネ「え、えーと、腕白なのね」
慧音「いや本当に助かる……私だけでは教えられないことというのはどうしてもあるからな。
それに幻想郷では、音楽と言えば妖怪や騒霊、という印象が強いせいで、人間で音楽を教えられる者はほとんどいない。
こうやって、教えてくれる人が来てくれるというのは、子供たちにとって良い刺激になる
……利用してるみたいで申し訳ないが」
ネネ「そんなことない、私が自分で選んだことだもの!
この幻想郷でのお金を持ってない以上は、働いて稼がないと不自由する、
いつまでも慧音先生のお世話にばかりなってられないから……」
慧音「そうだな……それに、恩に着せるわけじゃないんだが。
教師というのは、生徒に教えるだけではなく、生徒からも教わるものがあると私は思っている。
この仕事をやれば、それは必ずネネにとって良い経験になる……人生的な意味でもそうだが、
もしかすると、ネネの歌――技巧にとっても、プラスになるかも知れない」
ネネ「私の技巧にとって……?」
慧音「いやまあ、私も君たちの技巧のことをちゃんとわかってるわけじゃない、話半分に聞いておいてくれ。
それと、話は変わるが……ネネの仲間たちと、探し人のことだが」
ネネ「何か情報が!?」
慧音「いや、まだ何も。だが、確実に情報が手に入る機会がある」
ネネ「?」
慧音「満月の晩に、私は幻想郷の全ての歴史を閲覧することができるんだ。
だからその時に、どちらの情報もきっと手に入る」
ネネ「本当!?」
慧音「本当だ。勿論それまでに仲間と再会できればそれに越したことはないが」
ネネ「それでも、合流できる希望は少しでも多いほうがいい……!
それにパプル・ヘイズに会うっていう当初の目的も忘れちゃいけないもの!」
慧音「(……だが、全く異なる世界から渡ってきたアーティスト……
七年もの間、私に知られることの無かった人間の情報が、歴史の中にあるだろうか?
全ては、満月の晩にならないとわからないが……八雲の大妖や山の天狗にも助力を仰いだほうがいいかも知れない)」
189
:
名前が無い程度の能力
:2010/07/11(日) 17:53:32 ID:EGzb1xHc0
幽々子「妖夢ー。ご飯まだー?」
妖夢「はいはい、あと15分ほどお待ちください」
幽々子「あらそう。聞いたークラウン? あと15分だそうだから、それまでに部屋の掃除終わらせておいてねー」
クラウン「…………」
幽々子「あら? 返事は?」
クラウン「どうしてオレがこんなところでお前の小間使いなんか――」
幽々子「ダメよクラウン。『私の言うことは聞かなきゃいけない』でしょ?」
クラウン「ぐぅっ!?」
幽々子「私は死を操る亡霊。あなたが死霊である限り、私には逆らえないわ」
クラウン「だって……オレは死んだんだ! もうやることも何も無いはずなのに、なんでこんなところでこんなこと!」
幽々子「嘘ね。迷いの無い者は亡霊にはならないわ」
クラウン「え……?」
幽々子「あなたは何か、やり残したことが残ってるのよ。だから亡霊になって、私のところに来たの」
クラウン「う……嘘だ、嘘だ。オレはやりたいことをやって死んだんだ、やり残したことなんか……」
幽々子「未練があるのにその未練を認めたがらないなんて厄介な子ねぇ。まあいいわ、今はお昼ご飯までに掃除やっちゃってね」
クラウン「くそ……(しぶしぶ掃除を続ける)」
幽々子「それに、放っておいてもじきに、心当たりくらい見つかるはずよ」
クラウン「何?」
幽々子「気付かなかった? ここは、あなたの世界のあの世とは違う世界のあの世なの。
だから、あなたがこっちの世界に来た理由があるはずなのよ。
例えば……あなたをよく知ってる誰かがこっちの世界に来て、あなたはそれに引きずられた、とか」
クラウン「まさか、あいつらが……」
幽々子「まあ心当たりについてはゆっくり考えればいいわ。言ったとおり、放っておいてもじきに会えるでしょうし。
それよりそろそろ時間よ。お昼にしましょう」
オチも何も無いですが以上です。
190
:
名前が無い程度の能力
:2010/07/11(日) 23:54:47 ID:sJ1AX3bk0
原作見かけたら読んでみるか
191
:
186
:2010/07/12(月) 10:08:56 ID:4eLp4mYI0
しまった、七大の最後の一人はパプル・スペルだった、ヘイズじゃない。読んでくれた人、すんませんでした。
原作見ながら書いたのになんで間違えたんだろう。つかヘイズってどこから出てきたんだ。
192
:
名前が無い程度の能力
:2010/07/12(月) 11:05:45 ID:/RkLx.fA0
パープルヘイズか
193
:
名前が無い程度の能力
:2010/07/22(木) 17:17:57 ID:yHX1cJtc0
ムラサにメイド服を着せられてこき使われる小傘
それとカナヤマ様をさとり(サードアイ)+小傘+非想天則で召喚
194
:
名前が無い程度の能力
:2010/07/31(土) 19:32:16 ID:UcE.sf1c0
時期的に怪談レストランとクロス・・・
案外幽々子と知り合いだったりしてなギャルソン
195
:
名前が無い程度の能力
:2010/08/06(金) 21:03:22 ID:ocsoIzck0
伊吹萃香の行動原理(アルゴリズム)
* 自身の存在する場所に「宴会」を呼び込むべし(宴会を呼び込むことによって自らより優れた「対抗者」を萃めることが目的)
* 宴会に対抗する存在に対して「挑戦」するべし(対抗者の手順を学び、自身に「成長」を促すことが目的)
* 挑戦した者に対して勝利し、その者を「攫う」べし(対抗者に関して自身が学び損ねた事を補完し更なる高度な思考を得ることが目的)
* そして攫った者を持って、さらに高度な「挑戦者」を萃めるべし(以降、上記行動原理の手順をループ)
196
:
名前が無い程度の能力
:2010/08/08(日) 16:47:23 ID:EckKWr7A0
それは数学が得意なゆかりんに負けるフラグなんじゃ……
197
:
名前が無い程度の能力
:2010/08/14(土) 14:32:52 ID:JAU5aVzYO
ナイトウィザードのクロスとかありそうでないな
198
:
名前が無い程度の能力
:2010/08/18(水) 14:55:39 ID:2TBU6dpYO
あげ
199
:
名前が無い程度の能力
:2010/09/05(日) 11:59:22 ID:hRd8JcnA0
スカーレット姉妹スレより転載
????「ここに来るのも久しぶりだな・・・」
咲夜「お嬢さま!お嬢様!」
レミィ「どうしたのよ咲夜、そんなに血相変えて。またあの腋巫女が乗り込んできたというの?!」
咲夜「いえ、そっちならまだ良いほうです。あ、あの方が・・・」
????「って、あの方扱いは無いだろう、従者はもうちょっと教育した方が良いな、レミィ。」
レミィ「お、お?お、スレイヤー小父様?!」
スレイヤー「久しぶり。息災かな?」
レミィ「わ、私は別に何とも・・・」
スレイヤー「ははは、そりゃそうだよな、あのスカーレット家をその年で継いだんだ、
そうでなくっちゃとても当主なんてつとまらないだろうよ。」
レミィ「そ、それはそうですが・・・、小父様、今日は何用なのです?」
スレイヤー「鬼の世に 意味無き事も 楽しけれ」
レミィ「相変わらずHAIKUが好きなのですね。」
スレイヤー「まあ私は風変わりな吸血鬼で通しているからな。
おっと、ちょっと一服したいのだが構わないかね?」
レミィ「・・・・咲夜、灰皿を持ってきて頂戴。」
咲夜「御意。」
スレイヤー「しかし、この幻想郷というのは良いところだ。無駄に戦わずに済む。」
レミィ「しかし、小父様、小父様は外の世界の方、なぜそうやって行き来できるというのです?」
フラン「あ、スレイヤー小父様だぁ!!」
スレイヤー「おやおや、これはとんだ可愛いサプライズだ。フラン、久しぶりだね。」
フラン「小父様こそ500年振り!」
スレイヤー「あの時は本当に可愛い娘だったのが、さらに可愛くなったねフラン。」
フラン「え、えへへへ・・・」
レミィ「・・・小父様、余りフランをたらし込まないで下さいまし。せっかくようやく普通の生活に
戻ったばっかりなのですから。」
スレイヤー「いや、私は素直な言葉を述べただけだよ。フランは可愛いからうちのシャロンが会いたがっていたし、
今度はシャロンも連れてこようとするかね。」
フラン「え?本当?シャロン小母様も?会いたい会いたい〜」
スレイヤー「それはうれしいなフラン。シャロンにも今度伝えておくよ。」
フラン「小父様!本当!?約束してよ?」
スレイヤー「私が約束を破ったことがあるかい?」
フラン「うん、待っているから!」
咲夜「灰皿をお持ちしました・・・」
スレイヤー「ああ、悪いねぇ。このパイプは最近目詰まりが多くてね、紙巻きタバコ並みに灰を出さないと。
それじゃ失礼して。」
ふうー
レミィ「私には今一理解できませんわ、そのパイプ、いやタバコを吸うって。」
スレイヤー「まあレミリヤ嬢ちゃんには無縁だろうな、タバコ、いやパイプには世の中の思いが凝縮されているのだよ。」
レミィ「しかし小父様、まさか紅魔館に来てタバコだけを吸いに来たっていうことではないでしょうね?」
スレイヤー「ん?ああ、そうだよ。特にレミリヤ嬢ちゃんに話すこともないし、まあシャロンへの土産話に
嬢ちゃん達の顔を見に来た、という理由ではだめかね?」
レミィ「・・・・・相変わらずですね、小父様・・・・」
スレイヤー「嬢ちゃんも次第に分かるよ、この煙の一時が年よりも貴重になる事が」
レミィ「また謎かけですか・・・小父様は相変わらず。」
スレイヤー「深く意味を考える必要もないんだよ、嬢ちゃん。ここ幻想郷に来てからだいぶ物の見方が変わっただろ?」
レミィ「それもそうですが・・・」
ふうー
スレイヤー「おっと、葉が切れてしまったか。嬢ちゃん、こんな老いぼれの話に付き合ってくれてすまないね、
私もお暇するとしよう。」
レミィ「・・・・咲夜、お客様がお帰りなさるとの事よ、門まで案内してあげて・・」
咲夜「かしこまりました」
咲夜「美鈴、お客様がお帰りになるわ?」
美鈴「っがrbはrばrが、は、はい、お見送り致しますデス!」
咲夜「(今確実に寝ていたわね・・・)」
スレイヤー「さて、メイドのお嬢ちゃんも門番のお嬢ちゃんもここまででいいよ、お嬢ちゃんと妹ちゃんによろしくな」
美鈴「あ、あのう、ま、またおいで下さいましまし。」
咲夜「お嬢様、妹様には私から伝えておきますわ。お気をつけの程」
スレイヤー「ああ、それではな。」
スレイヤー「さて、この老いぼれの最後の一花をさかせに参りますか。
花散りて 後に残るは 煙かな。」
パチュ「・・・・スレイヤー様って、最後まで本当に何を考えているのか・・・」
レミィ「HAIKUだけは拘っていたようだけどね。」
200
:
名前が無い程度の能力
:2010/11/21(日) 15:57:33 ID:EnPkiurE0
ageてみる
201
:
<激写されました>
:<激写されました>
<激写されました>
202
:
名前が無い程度の能力
:2011/02/12(土) 16:30:04 ID:aQ6lYKBY0
八雲紫…戦闘A・MH制御3A・演算3A・耐久A・精神B2・クリアランスF
魅魔…戦闘A・MH制御B1・演算B2・耐久B1・精神B1・クリアランスVVS2
神綺…戦闘B1・MH制御2A(VA)・演算2A(VA)・耐久A2・精神A・クリアランスVVS1(F)
魂魄妖忌…戦闘2A・MH制御C・演算C・耐久B2・精神2A・クリアランスVS1
八坂神奈子…戦闘3A・MH制御A・演算A・耐久A・精神A・クリアランスVVS1
洩矢諏訪子…戦闘2A・MH制御2A・演算A・耐久A・精神A・クリアランスVVS1
八意永琳…戦闘2A・MH制御3A・演算3A・耐久VA・精神C・クリアランスVVS1
203
:
<激写されました>
:<激写されました>
<激写されました>
204
:
◆cedHmDsvEg
:2011/03/24(木) 22:03:43 ID:IfDfZDkY0
誰もいない……復活するならいまのうち
流れ的には七話後編ですが、長いです。
後編−1、後編−2と区切らせていただきますのでご了承くださいませ。
「東方俺参上」これまでの3つの出来事!
1つ! 電王、野上良太郎が幻想郷の大木から落ちてきた!
2つ! 良太郎を追ってきたモモタロス、宴会で小さな百鬼夜行・伊吹萃香と大乱闘!
そして3つ! 平和な幻想郷に、悪事を働くイマジンの影!
それは、博麗神社にも現れた!
205
:
俺参上第七話後編−1(1/10)
◆cedHmDsvEg
:2011/03/24(木) 22:19:37 ID:IfDfZDkY0
・この作品は「東方Project」と「仮面ライダー電王」の二次創作作品です。
・この作品には二次設定・独自設定が含まれております。
・この作品には戦闘シーンや暴力的なシーンが含まれております。
・この作品は「東方Project」及び「仮面ライダー電王」の原作及び他の二次創作作品とは一切関係ありません。
2008年10月6日(第百二十三季九)の朝、人里・寺子屋前。
中では上白沢慧音が里の子供達に授業を行っているが、その外は騒々しい。
見たことも無い妖怪が現れ。見境無く暴れているという情報が入ってきたのだ。
「すみません、その妖怪が出たという方角に案内してもらえませんか?」
「し、しかし桜井先生! 相手は危険な妖怪ですよ!? 何とかしたいというお気持ちはわかりますが
里の妖怪退治のできる者か博麗の巫女の管轄ですよ!?」
「我々としてはあなたに妖怪に殺されてほしくない、どうかご自愛を!」
幻想郷にとって未知の怪物と戦おうとする外来人、桜井を必死に制止する里の男衆だったが
桜井の決意は変わらず、さらに悪い報せがそこに飛び込んでくる。
「大変だ! あのモグラの妖怪、博麗神社にも現れて暴れているそうだ!
しかも複数、巫女は外出中と来ている!!」
「な……奴らめ正気か!? 博麗神社に悪さをすれば、自分達もただでは済まないというのにか!?」
そこに飛び込んだ悪い報せ。それは幻想郷の常識を真っ向から崩すものであった。
妖怪にとっても博麗神社は重要な場所なのだが、イマジンはそれをまったく理解していない。
古くからいる里人にとっては到底信じられないものであったが、イマジンの正体を知る桜井は違っていた。
里の男衆の制止を振り切り、外へと向かって走り出す。
その手には緑のラインの入った黒い札を持っている。
「あっ、桜井先生!」
「事態は一刻を争います! 慧音先生には話をつけておいてください!!」
言い残して走り去っていった男は、既に遠く走り去りその姿は小さくなっていた。
その直後、人里とその外とを隔てる区域の近辺で、緑色の光を目撃したという証言が
妖精の間でまことしやかに囁かれ。
その後には緑色の二頭の牛を象った仮面を付け、緑色の鎧に黒いスーツを纏い
緑色の「A」の文字が象られたバックルのベルトを付けた何物かが
金色の角を生やした白い乗り物に跨り博麗神社の方角へと向かって行ったそうだ。
206
:
俺参上第七話後編−1(2/10)
◆cedHmDsvEg
:2011/03/24(木) 22:24:21 ID:IfDfZDkY0
2008年10月5日(第百二十三季九)、朝。
朝靄も取れ、陽も徐々に高くなっていく頃の博麗神社。境内には神社の主である霊夢と
人里に住む上白沢慧音、そして現代的な服を着た男が立っている。
霊夢は鳥居の内側から階段を見下ろすように立ち
大幣を振りかざしながら何かを念じている。
「これで、俺は家に帰れるんですかねぇ……?」
(しっ、儀式の最中です。静かにしてください)
幻想郷に迷い込んだ者が生きて帰るほぼ唯一の手段。
それがこの博麗神社から出るということなのだが、博麗神社自体は幻想郷にも存在している。
そのため、神社の巫女である霊夢が外の世界に神社の出口を繋げる事で
帰る道を用意しているのだ。今はその儀式の真っ最中。
慧音はともかく、男のほうは半信半疑といった様子で状況を眺めていた。
霊夢の大幣を動かす手が止まり、一息つく。儀式が終わったのだ。
これで鳥居をくぐって外へ出れば幻想郷を後にできる。
外の世界の生活に慣れた者にとっては、幻想郷はとても住み辛い場所である。
百年以上の隔たりは生活様式や価値観を一変させるには十分すぎる時間であった。
幻想郷が結界で隔離されるさらに昔、日本が海外諸国との交流を禁じ鎖国した時のように。
「さ、鳥居をくぐって階段を下りてください。これで帰ることができるはずです」
「本当か!? やった、これで家に帰れるぞ!!」
鳥居をくぐり外へ出るように促す霊夢を尻目に、礼も言わずに一目散に駆け出す男。
よほど幻想郷の環境が男にとって耐え難いものだったのだろうか。
後にする世界への未練などと言ったものは微塵も存在していない。
そんな様子に、幻想郷の住人はやや呆れ顔である。
「全く、帰る手伝いをしたんだから礼の一言ぐらい言いなさいよね……」
「礼だけでいいとは案外謙虚だな。法外な額の賽銭を要求するものだと思っていたが。
まあ礼も言わずに……というのは、私も引っかかるな。
気持ちは分からんでもないが、やれやれだ……」
二言目には賽銭の話題が出てくる霊夢にしては珍しく、男に対し賽銭についてそれほど触れていない。
曰く「あんなのから賽銭もらってもどうせ信仰心のかけらも無いただの銭。そんなの別に興味ない」との事。
お賽銭には、神様に対する信仰心が少なからず込められて然るべき物。
信仰心の欠片も無いお賽銭は、もはや賽銭ではない。ただの銭である。
そのただの銭も、普通にお茶を飲み昼寝をし
境内の掃除をするだけの日常を送る霊夢にはあまり意味が無い。
207
:
俺参上第七話後編−1(3/10)
◆cedHmDsvEg
:2011/03/24(木) 22:27:21 ID:IfDfZDkY0
「なるほど、思ったよりまじめに仕事してるじゃないか。噂は所詮噂に過ぎないって事か。
ところで、今日来たのは別の用事もあるんだ。護身用の霊札を何枚か用意してくれないか?」
「里の新しい先生用でしょ。夜中に里の外に出るなんて、どうしてこう外の世界の人は
やることが無茶なのかしら」
妖怪の時間である夜中に外を歩く外の世界出身の先生。
星を見るためとはいえあまりにもリスクが大きすぎる。
そんな彼の行動を、霊夢は話に聞き、呆れていた。
それでも、護身用に霊札を慧音を通じて渡している。
「まぁ、私からも注意はしておくがあまり悪く言ってくれるな」
「わかってるわよ。よく魔理沙経由で噂を聞くけど悪い人じゃなさそうだし
この間椎茸のおすそ分けも貰ったし……はい、どうぞ。侑斗さんによろしく伝えといて」
霊夢も外の世界から来た寺子屋の新しい先生――桜井侑斗とはそこそこの面識があるようだ。
桜井は幻想郷で生きるために霊札を霊夢から、桜井はその謝礼に食料などを、互いに渡している。
こうして、それらの行為を桜井の職場仲間とも言える慧音が仲介することもある。
「すまないな。ではまた必要になったら邪魔させてもらうよ」
札の入った袋をしまい、用を終えた慧音は博麗神社を後にする。
霊夢はそれを見送るなりさっさと縁側でお茶を飲む用意を始める。
迷い込んだ外の世界の人間を返し、ごく稀な巫女の仕事をこなし、後はお茶を飲むだけ。
霊夢にとって何一つ変わりの無い幻想郷の日常。これが数時間の後どころか
即座に壊れようとは彼女の類稀なる勘をもってしても気づかないものであった……。
その証拠に、博麗神社の上空をデンライナーが通過する。その音で気付きそうなものなのに
霊夢はまた妖精が騒いでいるだけか、と気にも留めなかった。よくも悪くも暢気だったのだ。
博麗神社へと続く階段の麓。喜び勇んで鳥居をくぐり、階段を駆け下りた男は
無様に地面に突っ伏していた。それはまるで、階段から転げ落ちたかのようであった。
だが、それが階段から転げ落ちたものではない事を示すように
男の周りには赤い血ではなく白い砂がぶちまけられていた。
その傍らには、男が砂をぶちまける原因を作ったオウルイマジン。
気を失い倒れている契約者を蹴飛ばすと、博麗神社へと続く石段を見上げる。
208
:
俺参上第七話後編−1(4/10)
◆cedHmDsvEg
:2011/03/24(木) 22:32:47 ID:IfDfZDkY0
――……の紅白の……も……魔……から……せよ……
「またあの声か……少しうるさいぞ。何だろうと潰せばいいのだろうが!
もう、奴を追う必要など無いのだからな!」
オウルイマジンの頭に響く声。それが何なのかは彼にもわからない。
だが、聞けば聞くほど不快感を煽られる声。イマジンは、元々破壊衝動の大きい存在である。
それはモモタロスら良太郎の仲間のイマジンとて例外ではない。
モモタロスらには良太郎やハナという制御があるのに対し、オウルイマジンにはそれが無い。
耳障りな声と一方的な命令。オウルイマジンの破壊衝動が外へ漏れ出すのに
時間は全くかからなかった。
周囲の木、石段、果ては神社の鳥居。オウルイマジンの今立っている場所から
目に付くもの全てを攻撃している。幸い、石段の距離が長かったために
博麗神社の本殿には被害は及んでいない。だが、攻撃の手が伸びるのは時間の問題であった。
博麗神社は、妖怪にとっても重要な場所である。力の弱い妖怪にとっては
神社の巫女は恐ろしい存在であるが、神社そのものは重要な場所である。
それより何より、神社が破壊されて巫女が機嫌を損ね、周囲の妖怪に
八つ当たりまがいの勝負を仕掛けられてはたまったものではない。
故に、神社の近辺で暴れるオウルイマジンを止めようとするものも、中にはいた。
だが、イマジンは妖怪以上に力の掟を崇拝していた。結界の影響で遥か昔妖怪の時代だった頃に
比べ、力の衰えた妖怪に、イマジンを止める術は無かった。
しかし、だからといってイマジンの非道が許されるはずは無い。悪事には相応の制裁がついて回る。
オウルイマジンが破壊衝動の矛先を神社に向けようとした時、それは現れた。
時を越える列車、デンライナー。
デンライナーはオウルイマジンの視界を遮る様に横切り、再び空のかなたへと消えていった。
デンライナーの代わりにオウルイマジンの前に立ちはだかるのは3人の影。
一人はひらひらした紅白の巫女装束を纏い、赤いリボンで黒髪を束ねた少女。
一人は気弱そうな、けれどその眼には明らかな意思の光が輝いている青年。
そしてもう一人は、禍々しい外見ながらも悪事を許さぬ心を持った、赤鬼のようなイマジン。
「よう、また会ったなフクロウ野郎。そんな罰当たりな事やるより俺と遊ばねぇか?」
「電王。そんなに遊びたければ、そこら辺にいる変なガキどもとでも遊んでいろ。
……やつ等が生きていれば、の話だがな!」
モモタロスの挑発も意に介さず、破壊活動を行うオウルイマジン。
矢羽が木々に突き刺さり、爆発を起こす。そこから蜘蛛の子を散らしたように妖精が飛び出す。
もはや災難というより他に無い。イマジンが活動を開始してからというもの
妖精にとっては優しくない事件が次々と起こっている。その様は、か弱い妖精だろうと
容赦しない霊夢がドン引きする程酷いものであった。
良太郎とモモタロスに至っては言わずもがな。厳しい表情をイマジンに向けている。
209
:
俺参上第七話後編−1(5/10)
◆cedHmDsvEg
:2011/03/24(木) 22:35:22 ID:IfDfZDkY0
「ちょっと。いい加減弱いものいじめはやめたらどうなの?
見てる分にも気分のいいものじゃないわ」
「全くだ、気にいらねぇな。せっかくナオミに酔い覚まし貰ったのに
違う意味で気分が悪くなってきたぜ」
「む? 電王の後ろにいるのは……巫女か。貴様も時間を越えているのは本当だったようだな。
馬鹿な巫女だ、こんな所にのこのこ来さえしなければ楽に死ねたものを」
イマジンは、明確に霊夢に対し殺意を向けていた。それはイマジンが電王に向ける殺意と等しく
良太郎やモモタロスにしてみればいつもの事だった。慣れる慣れないの問題はさておいて。
霊夢も、妖怪から殺意を向けられる事はある。しかし、今向けられている殺意には
普段向けられているそれと、ただ唯一にして決定的な違いがあった。
――振りであるか否か。
霊夢――博麗の巫女は、幻想郷にとって無くてはならない人材。無闇に殺すなどもっての他である。
博麗の巫女を殺す事ができないがために、決闘儀式の手法まで
生み出されるほど博麗の巫女は守られた存在だったのだ。
オウルイマジンから向けられた殺意は、矢羽となってまっすぐ霊夢に突き進む。
明確な、嘘偽りの無い殺意に霊夢は一瞬慄くが、辛うじて矢羽を障壁で叩き落す。
以前過去に飛んでモールイマジンと対峙した時に、イマジンの恐ろしさは理解していたつもりだった。
だが、一度や二度戦っただけでは頭ではまだしも心で理解するのは難しい。
それが、勝手の違う相手となれば尚更の事。
「……一応忠告しておくわ。私を殺したら、あんたもただじゃすまないわよ。
この幻想郷で長生きしたかったら、変な真似は今すぐやめなさい」
霊夢の言っている事は、幻想郷において何一つ間違っていない。
良太郎とモモタロスも、霊夢が幻想郷で大事な役割にいるというのは
昨夜酒の席でだが聞き、良太郎もモモタロスも自分なりにではあるが理解しているつもりである。
しかし、オウルイマジンは違う。理解していないのではない。理解する気がさらさら無いのだ。
適当に願いを叶える。邪魔なものは全て壊す。過去へ飛ぶ。過去を壊す。邪魔なものは全て壊す。
それがイマジンの基本的な行動原理。この邪魔なものの範疇に霊夢が入ってしまった。
それだけだ。それだけでイマジンには十分過ぎるほどの霊夢を殺す理由がある。
「お前が何を言っているのかさっぱり理解できんな。
お前が邪魔ならば潰す。壊す。消す。殺す。それだけだ……潰れろ!」
「危ない、霊夢さん下がって!」
「……くっ!
(……こいつ、本気で私を殺すつもりなの? 昨日のモグラや蔦の意魔人も、本当に私を……!?)」
210
:
俺参上第七話後編−1(6/10)
◆cedHmDsvEg
:2011/03/24(木) 22:42:35 ID:IfDfZDkY0
ポーズでもなんでもない、イマジンから発せられる殺意。
幻想郷に住む宵闇の妖怪が人を食うとのたまうのとは全く違う。
普段の異変でもそう体感した事の無い威圧感。
霊夢の忠告も、幻想郷の掟も、イマジンの前には砂利程度の価値しかなかった。
幻想郷の妖怪は、博麗の巫女を殺せない。そんなルールは、イマジンには無い。
霊夢の眼に恐怖の色が映ったと見るやオウルイマジンはペン型の剣を手に突撃してくる。
しかし、霊夢に恐怖を与えても、良太郎とモモタロスには一切効果が無く。
それどころか、彼らの怒りを買っている。ペン型の剣は、炎のようなモモタロスの剣
――モモタロスォードに遮られて霊夢自身どころか結界にさえ届いていない。
直後、モモタロスの蹴りがオウルイマジンの鳩尾に突き刺さり、そのまま相手を仰け反らせる。
「ぐぬっ……何故貴様はこうも我々の邪魔ばかりするのだ!」
「へっ、簡単だ! てめぇらが気に入らねぇから邪魔するんだよ! 良太郎、ボロ服女連れて離れろ!」
「わかった! 霊夢さん、こっちに!」
モモタロスの作った隙は、体制を立て直すのには十分だった。
イマジンとの思想の差異に混乱した霊夢を落ち着かせるためにも
一度霊夢を安全な場所に下げさせる必要があった。しかし、数歩程度下がっただけで
一向に霊夢はそれ以上引き下がるそぶりを見せない。
「待って。良太郎さん、意魔人っていつもあんな感じなの?」
「うん。昨日話したと思うけど、過去も、現在も、未来も全部めちゃくちゃにするのが
僕達が戦うイマジンなんだ。あいつらはそのためには何だってやる。
霊夢さんがどんな異変解決を体験してきたのか僕は知らないけど、イマジンの異変を
解決するつもりなら、すごく危険で怖い事だって事だけは覚えておいてほしい。
僕も、電王になってからももうダメかも……って思ったことが何度かあるしね。
なりたての頃なんてよく気絶してたし」
霊夢は、どこかでまだイマジンはいつも相手にしている妖怪の延長線上の存在だと思っていた。
しかし、たった今その決定的な違いを思い知らされたのだ。
良太郎やモモタロスがいなければ大変なことになっていただろう。
「ええい、どけアホイマジンめ! 巫女を潰せんではないか!」
「おい良太郎、何やってるんだ! 早くボロ服女を安全なところまで連れて……」
思い違いをしていたのは、霊夢だけではなかった。モモタロスも、あるいは良太郎も
幻想郷に住む巫女を、自分たちの世界にいる「振りだけの」巫女だと
思っていた部分は、少なからずあったのだろう。博麗の巫女、あるいは博麗霊夢個人としてか。
モモタロスと良太郎の、彼女に対する認識を改める必要が、この直後に起きることとなる。
211
:
俺参上第七話後編−1(7/10)
◆cedHmDsvEg
:2011/03/24(木) 22:44:41 ID:IfDfZDkY0
「冗談言わないで頂戴モモタロス! 私はね、博麗の巫女なのよ。
外の世界のだろうと何だろうと、妖怪に舐められたままで引き下がれるもんですか!」
奥歯を食いしばり、恐怖を払いのけ霊夢はオウルイマジンに向けて啖呵を切る。
普段は博麗の巫女としての自覚などどこ吹く風とばかりの生活を送っている彼女だが
神社を危険に晒し、幻想郷に相応しくないほどの暴れ方をするオウルイマジンを前にすれば
いくら暢気な彼女とて黙って見過ごすことは出来なかった。
放置しておけば単純に自分の生活や生命が危ないという理由もあるだろうが。
「ごめんモモタロス、こういう事みたい」
「はぁ!? ……ああもう、どいつもこいつも言い出したら聞かねぇな!」
良太郎とモモタロスも、相手が時間を破壊するイマジンならば戦う理由は十分すぎるほどにある。
見ず知らずの場所で自分達に縁のある者が暴れているのだ。止めないわけにもいかない。
「……君が巫女さんとして戦わなきゃいけないのはわかるけど
イマジンは本当に危険なんだ。僕達でフォローはするけど、危なくなったら絶対に逃げて」
「……大丈夫。避けるのとかは得意ですから、その辺は心配しないで。それに……
そこのお面つけた白い鳥! あんたが何しでかしたのか
その体に思いっきり叩き込んでやらないと気がすまないわ!」
「良太郎納得させるだけの事はあるってか、あるいは頑固モン同士意気投合しやがったか……
ま、どっちでもいいけどよ。良太郎、こりゃ俺達も負けてられねぇぞ! 変身だ!!」
モモタロスはモモタロスで、ある意味良太郎を髣髴とさせるような頑固さを見せている
霊夢に対する評価を改め自身をさらに奮い立たせていた。
いよいよここからが見せ場とばかりに、良太郎に変身を促す。
「うん、行くよモモタロス……変身!!」
SWORD FORM
それに応える様に、いつの間にか良太郎に巻きついていたデンオウベルトのバックルに
良太郎の右手に握られたライダーパスがかざされる。
モモタロスの体は光となって良太郎の体へと吸い込まれていき
良太郎が纏うのは黒いライダースーツのようなオーラスキン。
そして、中央に線路の入った白いフルフェイスヘルメット。そこに装着される赤いオーラアーマー。
フルフェイスヘルメットの上に線路を走るようにモモタロスが憑依した証である
赤い桃型の電仮面が現れ、顔の前に来た途端、割れる。
桃太郎の誕生を象るように、両腕を広げ、電王・ソードフォームが参上した。
212
:
俺参上第七話後編−1(8/10)
◆cedHmDsvEg
:2011/03/24(木) 22:47:05 ID:IfDfZDkY0
口上「俺参上」
『俺、参上!!』
「……やっぱそれはやるのね。けれど、そういうのも悪くないかもって思えてきたわ!」
再び幻想郷に参上した電王に、霊夢は賛辞を送る。
妖怪退治の寓話の主人公のような単純明快さ。
自身も妖怪退治の寓話の主人公とも言える存在だけに
霊夢は電王の行為を自身と照らし合わせ首を傾げもするし、肯定もする。
今は電王のこのあり方を肯定し、自身も奮い立っている。
電王はデンガッシャーを、霊夢は大幣をその手に携え、イマジンとの戦いに備える。
『へっ。ならやってみるか? 言っとくがな、ちょっとやそっとの名乗り上げじゃ
最初からクライマックスにはなれねぇぜ?』
「決闘儀式には口上も悪くないかもって思っただけよ。今度いいのを考えておこうかしら」
『考えるのはいいけどよ、良太郎にだけは相談すんなよ? へんてこなのになるのが落ちだからな?』
(……モモタロスだって人の事言えないじゃないか。そんなことより来るよ!)
行動権はモモタロスに譲っていても意識ははっきりと残っている良太郎が
電王の内側からモモタロスに不平を向け、同時にオウルイマジンの襲撃を報せる。
だが二人はそんな事は了承済みとばかりに、降り注ぐ矢羽を電王はデンガッシャーで
叩き落しながら、霊夢は普段の弾幕ごっこのノリで避けている。
『心配しなさんな良太郎! 空でも飛ばれねぇ限り、こんなフクロウ野郎に遅れをとったりしねぇよ!』
「仮に飛ばれても、私が一発で撃ち落してやるから大丈夫ですよ……こんな風にね!」
「フン、貴様のようなガキに何が……ぐっ!? 貴様何を……」
霊夢の投げた札は、的確にオウルイマジンに張り付き、霊撃を与えていた。
オウルイマジンも剥がそうともがくが、剥がしてどうこうなるものでもない。
それ以前に、そう簡単に剥がれない。アイビーイマジンにも通用した「特別製の札」。
「意魔人バスター」とか「意魔人ブレイカー」とかそんな名前だろう。
(動きが鈍った、今だ!)
『俺にもやらせろ、てぇりゃああああっ!!』
その特別製の札はオウルイマジンの動きを鈍らせ、そこに電王のデンガッシャー・ソードモードの
赤い刃が入る。イマジンを相手にするまで、他の誰かと共闘などした事の無い霊夢だが
意外にもモモタロスとの連携がうまくいっている。いや、うまくいっているように見えるだけだろうか。
互いに好き勝手やった結果がうまく噛み合っただけに過ぎないだろう。
213
:
俺参上第七話後編−1(9/10)
◆cedHmDsvEg
:2011/03/24(木) 22:49:17 ID:IfDfZDkY0
「お、おのれ……!!」
『なぁ、気に入らねぇ奴にはどうするか知ってるか?』
「どうしたの急に? そんなの決まってるじゃない」
んだよ!!
こうする
のよ!!
追い打ちをかけるように、電王と霊夢の蹴りが同時にオウルイマジンに入る。
電王はともかく、霊夢の蹴りはいくら霊夢に体術の心得があるといっても少女の蹴りである。
それを感じさせないのは、彼女の霊力の賜物と不思議なくらいに電王と合っている呼吸であった。
二対一ということもあり、勝負は圧倒的に電王と霊夢が優勢である。
「ちっ、電王はともかく巫女のクソガキがここまでやってくれるとはな!
ここは一度退散させてもらおう!」
(まずい、逃げられる!)
電王はともかく、霊夢の善戦。これはオウルイマジンにも想定外だったらしく、空へと逃げようとする。
空へ逃げれば接近戦主体の今の電王相手ならば振り切るのも容易い。
そうはさせまいと、電王は一気に勝負に出た。パスをバックルにかざし、必殺技の発動準備に入る。
FULL CHARGE
飛剣「俺の必殺技パート2」
『逃がすかよ! 俺の必殺技、パート2……そりゃああああっ!!
……くっ、このっ! 届かねぇっ!! 逃げんなこのフクロウ野郎!!』
「馬鹿め。せいぜい地べたで吠えているんだな……む? 巫女がいない、だと?」
実際、モモタロス・電王ソードフォームは少し距離の離れた相手こそ必殺技でカバーできるが
元々空の相手は不得手である。少し高度をとられるだけでも、このように必殺技が宙を切ることになる。
電王本人の装備には対空装備もあるのだが、今は使えない。
空を飛ばれては、今の電王ではお手上げ状態である。
しかし、今や空はイマジンだけのものではない。否、過去も現在も未来も
空はイマジンのものではない。その証拠に、電王の隣にいたはずの少女はいなくなっている。
214
:
俺参上第七話後編−1(10/10)
◆cedHmDsvEg
:2011/03/24(木) 22:56:22 ID:IfDfZDkY0
「あんたが理解しようがしまいがどっちでもいいけど、幻想郷で一番大事なことを教えてあげるわ!」
「何っ、電王ではなく貴様が飛んだだと!? おのれ、巫女が飛ぶなど戯言ではなかったのか!」
息をするように、霊夢は宙へと浮かび、そのままオウルイマジンの目の前の高さまで上がる。
その右手には霊札ではない、ただの紙――スペルカード。
しかし今から繰り出されるものは、ただの紙ではない。
元来は遊びのためのものだが、今はそうも言っていられない。
霊符「夢想封印」
「貴様何を……ぐおおおおおっ!?」
色鮮やかに輝く光の珠が、霊夢の周りを舞い、オウルイマジンを巻き込む。
矢羽で応戦するも、矢羽は全て光の珠に飲み込まれていく。
電王の必殺技に比べれば、力強さよりも美しさの方が断然強調されている。
元来、美しさを競うスペルカードルールのための技であったから。
殺傷力を付加しているため、本来の夢想封印とは若干異なっているかもしれないが
オウルイマジンは、己が愚弄した幻想郷の掟に敗れ、地に伏したのだ。
「……空を飛べる程度でいい気になるな。冥界にまで行けたら覚えておきなさい」
『けっ、俺がかっこよく倒すつもりだったのによ。おまけに派手な攻撃までしやがって。
……本当、何者なんだよあのボロっちい巫女さんの服着たガキはよ』
(まぁ確かに、普通の人は何の道具も使わないで空は飛ばないしね……)
感想を述べる電王を尻目に、霊夢は難なく着地する。その視線の先には、電王がいる。
何を語るでもなく互いに歩み寄り、霊夢は思い切り手を上げ、電王をやや軽めに手を上げる。
互いの手のひらが触れ、小気味良い音が響き渡る。
215
:
◆cedHmDsvEg
:2011/03/24(木) 23:12:10 ID:IfDfZDkY0
今回は以上です。
前回から相当間が空いてしまいましたが、また不定期に投下させていただく所存であります。
心待ちにしていた方、いらっしゃいましたらお待たせして申し訳ありませんでした。
216
:
名前が無い程度の能力
:2011/03/25(金) 12:49:01 ID:yP4dGa2Y0
おかえりなさい! あいかわらず面白かったです!!
217
:
名前が無い程度の能力
:2011/03/26(土) 04:15:12 ID:Mo.jTNBQ0
>口上「俺参上」
ディケイドでは何の役にも立たないカードだったけど
スペルカードルールでは役に立つのだろうか、これ
どういう弾幕になるのか見当がつかねぇw
218
:
名前が無い程度の能力
:2011/03/29(火) 14:57:47 ID:ybqqso0A0
______1505年
最強のアサシン"エツィオ・アウディトーレ"は
宿敵"チェーザレ・ボルジア"が今現在スペインに居ることを知り、
スペイン行きの船に乗るため、そして旧友"レオナルド・ダ・ヴィンチ"と再会するために、
船でローマに向かっていた。
しかし途中で嵐にあい、不幸なことに船が転覆してしまう。
時は変わり、
その頃幻想郷では新たな勢力の妖怪が出現。
だが幻想郷の住人は"その妖怪および幹部には攻撃出来ない"という謎の暗示にかかり、
いつの間にか幻想郷は数箇所と人間の里を残して新勢力の支配下に置かれてしまった。
そして気が付くとエツィオは見知らぬ洋館のベットに寝かされていた。
そしてエツィオは一人のアサシンとして、幻想郷に平和を取り戻す為、
決して語られることの無い御伽の国の戦いに身を投じるのであった。
物語が進んでいくうちにエツィオは、その新しい勢力が拡大した裏には
人類の知能を超越した様々な能力を持つ、"特殊なエデンの果実"が関わっていることを知る……。
ってネタ、需要皆無
そもそもアサクリを知ってる人がいるかどうか
219
:
◆cedHmDsvEg
:2011/04/11(月) 01:31:03 ID:2bdQVyfM0
>>218
潜入弾幕アクションとな
調理法によっては実に興味深いものになるかも
……ごめんなさいアサクリはわからないのでggりました
第七話後編パート2、投下します。
・この作品は「東方Project」と「仮面ライダー電王」の二次創作作品です。
・この作品には二次設定・独自設定が含まれております。
・この作品には戦闘シーンや暴力的なシーンが含まれております。
・この作品は「東方Project」及び「仮面ライダー電王」の原作及び他の二次創作作品とは一切関係ありません。
220
:
俺参上第七話後編−2(1/12)
◆cedHmDsvEg
:2011/04/11(月) 01:44:23 ID:2bdQVyfM0
光の珠に飲み込まれ、時の砂へとオウルイマジンは還っていく……はずだった。
光の珠が消えた後、オウルイマジンはまだそこにいた。
まるで糸の切れた人形のようにうなだれながら、その体を砂嵐のノイズのようにかき消しながら。
(……ま、まさか! まずいモモタロス、あのイマジン、暴走する!!)
『何ぃ!? おいボロ服女、今度はマジでやべぇ、今からデンライナー呼ぶからとっとと乗りやがれ!』
「ちょっと、私に指図しないでよ……って何じゃありゃぁ!?」
そこにいたのは、オウルイマジン「だったもの」。その大きさは優に10倍はある。
鳥のような、虫のような異形。イマジンも大概な外見だったが
「それ」はさらに形容しがたい外見を誇っていた。
鳥の羽と蝙蝠の羽で形成された左右非対称な翼。蜂のような下半身に、虫とも、鳥とも言えぬ頭。
イマジンは契約した人間のイメージでその体と一部の能力を形成する。
その彼らの源とも言えるイメージが許容量を超えるダメージによって暴走した姿――ギガンデス。
鳥や羽虫など天空に住まうもののイメージをでたらめにつぎ込んだ
旧約聖書に描かれたとされる「ジズ」が最もその姿形に近いであろう。
一度死して人格等を失い、より凶悪な力と姿を得て生まれ変わる。それがイメージの暴走。
もはや、イマジンの使命も何もあったものではない。そこにあるのはただの破壊衝動。
かつての契約者だろうと何だろうと、目の前の全てを焼き尽くすために
ただひたすらに攻撃を繰り返す。見た目こそ弾幕ごっこで用いられる攻撃に似ているが
美しさなどひとかけらも無い。ただ、相手を滅ぼすためだけの醜い攻撃でしかない。
「さすがにこれはきっついわね……萃香でもここまで手がつけられない状況にはならないわよ」
『だから言っただろうが、イマジンは危険な奴だって!』
(デンライナーが来たよ、霊夢さん、乗って!)
人の身で相手をするには、ギガンデスはあまりにも強大だった。
攻撃の影響で、既に周辺は穴だらけになっている。
電王も、霊夢も避けるだけで精一杯であった。
仮に反撃できたとしても、攻撃が通るかどうかは定かではない。
イマジン退治の専門家、電王が持つギガンデス対策の唯一の方法。
それこそが、彼らが今乗ってきた乗り物――デンライナーである。
「デンライナーでどうするつもりなの? まさか逃げるの!?」
『馬鹿言いなさんな、戦うに決まってんだろうが! 危ねぇから食堂車でじっとしてろ!』
221
:
俺参上第七話後編−2(2/12)
◆cedHmDsvEg
:2011/04/11(月) 01:47:46 ID:2bdQVyfM0
空に虹色の空間が現れ、その中から線路を生成しながらデンライナーが到着する。
ギガンデスの追撃をかわすように、二人はデンライナーに飛び込む。
デンライナー。時を越える列車であると同時に、暴走したイマジンへの抑止力も備え持った
戦闘列車でもある。到着したデンライナーは、先頭4両から後ろを切り離し
ギガンデスへ向けてその進路を切り替える。
そのデンライナーの操縦室。ここでは電王が既にギガンデスとの戦いの準備を完了していた。
デンライナーを操縦するのは操縦桿ではなく白い自動二輪車。マシンデンバード。
形状どおり、電王のバイクとしての運用も可能であるが
本来の用途は、こうしてデンライナーの操縦のために存在している。
もちろん見た目は通常のバイクである以上、二人乗りも一応可能だ。
『……で、何でてめぇがこっちに乗ってるんだよ』
「これって確かこういう乗り物でしょ? 違うの?」
ハンドルを握っている電王は良いとして、後ろに座っているのは霊夢。
デンライナーの戦闘において、デンライナーのスペック以外に重要視されるのは
ハンドルを握る側の操縦センスのみだ。
後ろに座っている霊夢はまさに「添えるだけ」の状態である。
『そういう事聞いてるんじゃねぇよ、大体てめぇがこっちにいたって何も意味ねぇだろうが!』
「いいじゃない。だったら私は楽させてもらうわ。それに、私がいればご利益が多分あるわよ。
あんたはともかく、良太郎さんにはちょうどいいんじゃない?」
(食堂車切り離しちゃったし、こうなったらこのまま乗ってもらおうよ)
ここで霊夢を降ろすわけにもいかない。降ろしたところでギガンデスの攻撃に晒されるだけだ。
食堂車まで戻るのも危険だ。乗客を戦闘に巻き込むなど以ての外である。
良太郎の許可もあり、霊夢を後ろに乗せたままギガンデスとの戦いに臨む事となった。
『ちっ、しゃあねぇな。おいボロ服女、しっかり捕まってろよ! ……ちっ、やりにくくて仕方ねぇぜ』
「振り落としたらただじゃ済まさないわよ?」
デンバードは固定されているため、振り落とされたところで
余程打ち所が悪くない限り、致命傷には至らない。
しかし、だからといって振り落としていい理由になどならない。
モモタロスにしてみれば、後ろに十代半ばの少女が乗っているという事自体が
やりにくくて仕方が無い。いい迷惑である。
222
:
俺参上第七話後編−2(3/12)
◆cedHmDsvEg
:2011/04/11(月) 01:51:28 ID:2bdQVyfM0
『いいから黙ってつかまってろ! 行くぜ行くぜ行くぜ!!』
「ちょっ、いきなり飛ばさないでよ!」
電王は、デンバードのアクセルを思いっきり回す。勢いよくチェーンと後輪が回り
それと同時に前方に写る画面の動きも加速する。
目標は暴れまわるギガンデス。アクセルを全開にして間もなく捉える事に成功する。
捉えた後はどうするか。まさか体当たりをするわけにもいかない。
「それで、武器はあるの?」
『へへっ、でかいのぶちかますからまぁ見てな!』
電王がパスを差し込んだスロットの隣にあるボタンを押す。すると、操縦席の後方から
何かが動く音が響き渡る。後部車両が変形しているのだ。
2両目。犬の頭部を模した音波砲発射装置「ドギーバーク」。
3両目。球状の爆弾を投擲する「モンキーボマー」。
4両目。鳥形の小型誘導ミサイル「バーディーミサイル」。
そして、先頭車両の上部に設置されている「ゴウカノン」。
デンライナーの標準武装として、1〜4両目にそれぞれ搭載されている。
程なくして、ギガンデスとデンライナーの撃ち合いが始まる。
それぞれ、その巨体に似合わぬスピーディーな動きで互いの砲撃を弾幕で相殺している。
幻想郷において、この光景を傍から見れば、スケールの大きい弾幕ごっこだろう。
だが、当事者――少なくとも電王の側は遊びではない。
ポーズだけは、あたかも遊びでやっているように見えたとしても。
幻想郷で偶に起こる異変と違い、時間を破壊するイマジンとの戦いは
「絶対に勝たなくてはならない」戦いなのだ。電王の敗北は、時の運行が破壊されることを意味する。
そうなれば、いくら全てを受け入れる幻想郷とてどうなるかわかったものではない。
「うっわー……それにしても派手ねぇ。あ、右から来るわよ! 次は左! その次は下!
あーもう! 相手は目の前にいるんだからちゃんと当てなさいよ!」
『いちいちうるせぇ! しかしこの野郎、妙にすばしっこいぜ。攻撃が全然あたらねぇ』
(前に戦った時よりも強くなってる、油断しないでモモタロス!)
223
:
俺参上第七話後編−2(4/12)
◆cedHmDsvEg
:2011/04/11(月) 01:55:57 ID:2bdQVyfM0
いつもなら、既にデンライナーがギガンデスを撃ち落とし、決着がついているはずだった。
だが、今回のギガンデス。妙にすばしっこい。デンライナーの攻撃をことごとくかわしているのだ。
デンライナーと対峙出来るほどの巨体のどこに、こんな小回りが利く機動性があるのだろう。
負けじとデンライナーも、冒険映画にでも出てきそうな鉱山のトロッコのような動きで応戦するが
今度はギガンデスの攻撃を防ぐのに手一杯になってしまう。
押されてるとまでは言えないが、優勢でも無かった。弾幕戦。これはもはやごっこなどではない。
互いに本気の弾幕戦。霊夢らが普段やっているごっこからは流儀に反するが
霊夢にとってこの状況を黙って見るのは少々、じれったい物があった。
霊夢が望んだのか、あるいは偶然か。それを覆すものが現れる。
鬼神「ミッシングパープルパワー」
突如現れた巨大な影。それは昨夜、共に酒と拳を交わした、幻想郷の小さな百鬼夜行、伊吹萃香。
この乱入には、電王はおろか、霊夢も驚いていた。
いくら萃香が神出鬼没とはいえ、あまりにも不意打ちが過ぎる。
「派手に暴れてるねぇ。けどさ、この下には大事な大事なものがあるんだ。
そろそろ喧嘩はおしまいにしようか!」
『おめぇ……小玉西瓜じゃねぇか! どうしてここにいるんだよ!?』
(モモタロス、ここ昨日の幻想郷だから、いたっておかしくないよ……)
「萃香!? こうなったら、動きを止めてもらいましょ! 良太郎さん、萃香に呼びかけて!」
そう。モモタロスと萃香が拳を交わしたのは2008年10月6日。
今デンライナーでギガンデスと戦っているのは2008年10月5日。
たった1日。1日前の、モモタロスと拳を交わす前の萃香が、出没率の高い博麗神社にいた所で
何の不思議があるだろうか。ふと、デンライナーからデンバードが外に出る。
電王と、霊夢を乗せたまま。萃香に協力を仰ぎ、呼びかけるために。
『よう小玉西瓜! っつっても、昨日のだから俺とは初対面か……あーっめんどくせぇ!
おい事情説明はおめぇがやれ!』
「ちょっと、丸投げしないでよモモタロス。それより萃香、あっちの羽生えてるやつの動きを止めて!」
「んー、元々そのつもりだったからいいけどさ、霊夢そんなとこで何してるの?
新手の妖怪退治? その前にいるいけ好かない奴は……まぁどうでもいいや」
電王に変身した事で、モモタロスの鬼らしさは失せ、萃香にとっては全くの未知の存在となっていた。
それどころか、モモタロスは元来桃太郎の鬼をモチーフとしており、電王に変身したときは
鬼のイメージより桃太郎のイメージが先行する。萃香にとっては、あまり面白くない相手である。
電王の存在に不平はあるが、神社をギガンデスに壊されるわけには行かない。
224
:
俺参上第七話後編−2(5/12)
◆cedHmDsvEg
:2011/04/11(月) 01:58:19 ID:2bdQVyfM0
『動きを止めるだけでいいからな! 後は俺らがぶっ放すから
おめぇも撃たれないように離れとけよ!』
「むっ。何かあんたにだけは命令されたくない気がする、何でか知らないけどさ。
ま、こいつは暴れ甲斐がありそうだし、いらいらするのはこいつにぶつけるとしようか!」
「んな事言ってる場合じゃないでしょ! あんたも神社壊さないでよね!」
萃香の投げた鎖が、ギガンデスを捕らえる。
その隙をついて、デンライナーはデンバードを格納し、再発進する。
捕まったギガンデスは、萃香もろとも空高く飛び上がろうとする。それを食い止めるべく
萃香の鎖を握る手に力が込められ、踏ん張る足はさらに地面にめり込んでいく。
「こいつ、見たこと無い奴だけど結構強い力だねぇ! でも力比べなら負けないよ!」
『……なぁ良太郎、小玉西瓜って、あんなに可愛げのない奴だったっけ?』
(電王の格好が桃太郎だからじゃないかな?
彼女、鬼だって言ってたから桃太郎は嫌いなんだよ……多分)
「良太郎さん、ちょっと離れるわ。萃香のアレも、そう長くは持たないから早く倒さないと」
ふと、デンバードの後ろから霊夢が離れる。床に足を下ろせばさっきから酷く揺れている操縦席。
あっという間に転んでしまうだろう。そのため、宙に浮かんだまま霊夢は後部車両の方角を向き
陰陽球をかざしながら何かを唱えている。
『おい、酔ったのか? 吐くなら外で吐けよ』
「んな訳ないでしょ。ちょっと試してみたいことがあるの」
(試したいこと?)
飛び上がろうとしながらも、ギガンデスの攻撃はやまない。
萃香を狙う攻撃はデンライナーの砲撃で相殺し、こちらに向かってる来る攻撃は
急ハンドルでの回避。当然、思いっきり傾く操縦席。
「ちょっと! あんまり揺らさないでよ!」
『うるせぇ、文句言うな!』
文句を言いながらも、霊夢は呪文のようなものを唱え終える。
それと同時に、かざしていた陰陽球が青白い輝きを発し始める。
その輝きに合わせ、デンライナーも青白く輝く。
225
:
俺参上第七話後編−2(6/12)
◆cedHmDsvEg
:2011/04/11(月) 02:02:24 ID:2bdQVyfM0
「終わったわよ。ちょっと『願掛け』してみたわ、試しにもう一度その武器のボタン押してみて」
『「願掛け」だぁ? おめぇ、そんなことのためにわざわざ……』
(モモタロス、いいから試してみて)
呆れながらも、良太郎に促され電王は再びデンバードのボタンを押す。
再び砲撃を開始するデンライナー。
だが、そこから繰り出される攻撃は今までのものとは違っていた。
その攻撃には、萃香も見覚えがあった。
「あれは……霊夢の弾幕? でもなんであの蛇から?」
『な、なんだぁ!? デンライナーからわけのわからねぇものが飛び出してるぞ!
大丈夫なんだろうなおい!?』
「うっさいわね、ちょっと落ち着きなさいよ。悪いもんじゃないから大丈夫よ」
(お札が鳥になったり、あの跳ねてるのは……陰陽球?)
2両目。音波ではなく結界が展開され相手の動きを封じる、犬吠「狛犬陣」。
3両目。空中を跳ねる陰陽球型爆弾、猿珠「陰陽猿爆弾」。
4両目。相手を追尾する鳥に変化する札、雉札「バーディーアミュレット」。
そして、先頭車両に装備されているゴウカノンに加え、霊砲「夢想電砲」。
武装コンセプトは変わっていないが、それぞれの武装に霊夢の得物の意匠が付け加えられている。
デンライナーの白い車体にも、窓の部分を中心に赤いラインが走る。
ラインには霊夢の巫女装束同様の白い模様が入っている。
「基本的な部分は変わってないはずよ。さ、ぶちかましてやりなさい!」
変化したデンライナーは、一斉砲撃の体制に入る。
頃合を見計らったように、萃香の巨大化も切れる。
いくら疎と密を操るとは言っても、でたらめな質量変化を行えば、それなりにばてる。
「霊夢、今度は随分と派手な方法で妖怪退治するんだねぇ……
ま、アレくらいやらないと退治できないのかな? ……あれ? さっき霊夢神社にいたよね?
何であっちに……ま、いいか。ちょっと寝ようかな……ふぁ」
仰向けになった萃香の目には、見慣れた霊夢の攻撃を繰り出す
見慣れた柄の見慣れない巨大な蛇が、見慣れない巨大な鳥のような、虫のような
蝙蝠のような怪物を撃退している光景であった。
その光景を最後に、萃香の目は閉ざされた。体を大の字にして眠ってしまっている。
226
:
俺参上第七話後編−2(7/12)
◆cedHmDsvEg
:2011/04/11(月) 02:05:47 ID:2bdQVyfM0
『へっ……何だか分からねぇがクライマックスだ!』
(うん。モモタロス、霊夢さん、行くよ!!)
斉射「巫女と桃太郎〜Double Action〜」
霊夢の手元に、デザインの変わったデンライナーによる砲撃が行われている絵柄の紙が
突如現れる。遊びでない弾幕戦ではあるが、スペルカードルールとしての体裁として
この攻撃の宣言であるスペルカードが霊夢の手元に今、存在する。
最も、これがギガンデス以外に使われることは恐らく無いだろうが。
ともかく、攻撃の宣言は行われた。ギガンデスの攻撃をぎりぎりのところでかわしながら
デンライナーからの猛攻撃が開始される。それは、霊夢の使用可能な弾幕を
ごちゃ混ぜにしたような攻撃。陰陽球が飛び跳ねたかと思えば、相手を追尾する札が飛び交い
針の如きゴウカノンの砲撃に相手の動きを制限する結界。
そして色鮮やかに輝き変則的な動きをする光弾。
その威力はギガンデスをあっという間に沈黙させるほど凄まじい物であった。
デンライナーの火力に、誘導や捕縛など霊夢の技の特性をそっくりそのまま乗せたのだから。
だが、弾幕ごっこの美しさで言えばどうだろうか。
まとまりの無い攻撃は、見た目のインパクトこそあれど、あまり美しいとは言い難い。
『なぁ、もうちょっとマシな攻撃パターンは無かったのかよ。
あんなダサいの、出来れば使いたくねぇんだがな』
「ちょっと腹の立つ言い方だけど同意見ね。今の攻撃は無いわ、無い。
やった私が言うんだから間違いないわ」
(えー、僕はいいと思うけどなぁ……あ、モモタロス。ちょっといいかな?)
このごちゃ混ぜ感に、霊夢とモモタロスは互いの意見に賛同し、良太郎は反対に評価していた。
ただし、彼の美的センスは一般とは少々、あるいはかなりかけ離れているが。
モモタロスという存在が、彼のセンスを物語っている。
『へいへい。じゃ、電車止めるぜ。ところで、デンライナー元に戻るんだろうな?
あれだけ派手に変わるのなんて初めてだからよ、俺らはともかく
オーナーのおっさんが何て言うかよ……』
「それなら大丈夫よ。多分もう元に戻ってるはずだから……外みたいにね」
与太話もそこそこに、モモタロスは良太郎の言わんとする事を理解したのか
デンライナーを食堂車と合流させ停車させるべく運転を再開する。
同時に、ギガンデスによって破壊された風景は、破壊される前の元の姿へと戻っていく。
博麗神社の境内も例外ではなく、その限られたスペースにうまく停車されたデンライナー。
そこに、男が良太郎によって運び込まれてくる。
オウルイマジンと契約していた、外の世界から迷い込んだ男だ。
227
:
俺参上第七話後編−2(8/12)
◆cedHmDsvEg
:2011/04/11(月) 02:08:55 ID:2bdQVyfM0
「……ほんと、おめぇもよく飽きずにこういうことやるよな」
「いいじゃない別に。良太郎、ターミナルまでならその人乗せてもいいってオーナーが言ってたわ」
「よかった。後でオーナーにお礼いっとかないとね」
本来ならば、博麗神社から帰ることができたはずの男。だが、それが帰ることができないでいた。
限定的ではあるが、良太郎らは男が帰る手助けをしようとしていたのだ。
食堂車に運び終え、後は男をターミナルまで輸送した後に元の時間……
……とは言えわずか1日後だが。そこに戻るだけである。
「そういえば霊夢さん、幻想郷から帰るのには霊夢さんがいないと無理なんだよね?」
「え? ええ、そのはずなんですけど……この人は帰り損ねたみたいですね。
たまにあるんですよ。結界に悪さする妖怪がいたりしますので」
実際のところ、結界に悪さ――細工を加えるのはその妖怪もだが霊夢本人が行う事もある。
しかし、今回は霊夢が必要以上に結界に手を加えるメリットが何も無い。
真面目に博麗の巫女としての職務を全うしたはずなのに、男は帰還することが叶わなかった。
そのためにこうしてデンライナーで輸送する羽目になってしまっているのだ。
「霊夢君、念のため断っておきますが……デンライナーの運行と
今回の博麗大結界の誤作動は、何ら相互関係は……あ〜り〜ま〜せ〜ん、よ?」
「だ、大丈夫ですよ。べ、別にオーナーさん退治しようだなんて思ってませんから……」
オーナーがいつものように旗の立ったチャーハンと格闘しながら、霊夢に断りを入れている。
当の霊夢はやはり異変の元凶として退治するつもりだったのだろうか
口では否定しているが微かに冷や汗をかいている。
そんな霊夢を見たオーナーは「勝負ならチャーハン対決で」とリクエストまでしている。
霊夢と勝負することは吝かでは無いらしい。その霊夢の側が乗り気ではなくなっているが。
「あ、オーナー。今こうして普通に良太郎ちゃん達乗せてますけど……
やる事って結局何だったんですか?」
「それでしたら良太郎君が手伝ってくれましたよ。今回は、ですけどね」
「えっ? それってまさか今回みたいな人をターミナルに……」
228
:
俺参上第七話後編−2(9/12)
◆cedHmDsvEg
:2011/04/11(月) 02:13:03 ID:2bdQVyfM0
ふと、ナオミが思い出したようにオーナーに尋ねる。
そもそもデンライナーが何故幻想郷を走っているのか。
やることがあると言った筈なのに、今は普通にモモタロスがコーヒーを飲み
良太郎とハナがいて、オーナーがチャーハンと格闘している。
幻想郷からの乗客として霊夢と契約者の男が乗っている。
この二名と、ハナの身長を除けば良太郎が電王として戦い始めたころの
デンライナーの車内とそう大差無い。
オーナーがデンライナーを幻想郷に走らせる。その目的は、オーナーの口から
明言されることは無かったが、ハナの予想通り幻想郷に迷い込んだ人間を
デンライナーを使い送り返す、というものであった。
「……一応、依頼主の方からは内密に。と言われていますのでこの件はひ・み・つ、ですよ?」
(なるほど。それであの狐がデンライナーにいたのね)
霊夢は既に依頼主が誰であるか見当はついたらしく、お茶を飲みながら一息ついている。
自身にもさっぱりわからない結界の異常。何とも無いとのたまっても
その実お茶でも飲まないとやっていられない。今の彼女にとって、一杯のお茶は
この上ない清涼剤といえる。その際、しきりにナオミにコーヒーを勧められたが
モモタロスが飲んでいるものが本人の弁とは裏腹にとても美味しそうには見えなかった事と
魔理沙曰く「相当まずい」事から未だに敬遠している。
霊夢はお茶を満足げに飲んでいるが、ナオミは正直不服そうな顔をしていた。
その霊夢に出される予定だったコーヒーは、何故か良太郎のカップに入っている。
良太郎もナオミコーヒーが好きか嫌いかで言えば、あまり口に合わないのだが
そこは長い間デンライナーに乗っているせいか、耐性がついている。
コーヒーを飲みながら、良太郎は霊夢に質問を投げかける。
「霊夢さん、そういえば言ってたよね。幻想郷には外の世界の人が迷い込んでくることがある、って。
それって結構頻繁に起こることなの?」
「本来はあまり無いらしいんですけど、最近はどうも頻発してるらしくって……
巷じゃ『外来人異変』なんて言われる位には多いですね……勝手に異変にすんなっつーの」
霊夢の証言通りならば、他にも大多数の人間が幻想郷に自分の意思と関係なく
迷い込んでいることになる。今デンライナーに乗せた契約者の男。
彼のような者が他にも多くいるのだろうか。自分も含めれば、既に二人になる。
デンライナーで自分の意思でやって来たモモタロスらとは違う。
気づけば見知らぬ場所で、帰る手段も確立されていない。これは確かに、救助せねばなるまい。
ウラタロスらの発見もせねばならないというのに、意外な状況が発覚した。
この現状に良太郎も表情を硬くする。
「じゃあ、今はイマジンも来てますから『イマジン異変』ですね!」
「だから勝手に異変にすんなっつーの!」
「『イマジン異変』……あながち、間違いではないかもしれませんよ?」
229
:
俺参上第七話後編−2(10/12)
◆cedHmDsvEg
:2011/04/11(月) 02:15:47 ID:2bdQVyfM0
ナオミの何気ない一言に霊夢は思わず突っ込むが、オーナーはナオミの意見に感心していた。
まるで、結界の異常にもイマジンが絡んでいるかもしれないといったニュアンスである。
「オーナー、それどういう意味ですか? まさかイマジンが幻想郷に迷い込んだ人を
帰れなくしているとか……」
「現時点では、それについてはまだ何とも言えませんねぇ」
「でも実際騒ぎ起こしてるから、やっぱり異変は異変ね……本当、勘弁して欲しいわ」
オーナーの推理は、見事に当たっていた。幻想郷に迷い込んだのは、人間だけではない。
幻想郷に入ってきてから契約を果たしたイマジンを、良太郎が見たのはこれで2件目だ。
朱鷺色の羽を持つ妖怪の少女、幻想郷に迷い込んだ男。
いずれも契約を果たし、過去に飛んでいる。たった2件でも、わずかな時間での遭遇となれば
次があるのは想像に難くない。まして、既に実体化し活動していたイマジンもいた。
イマジンが幻想郷に古来からいる物の怪の類であれば、異変にはならなかっただろう。
しかしイマジンは、本来幻想郷にはいるはずのない物の怪の類である。
それが大なり小なり事件を起こせば、異変ともなる。
「大丈夫だよ。イマジンの事なら、僕らも出来る限りで手伝うから」
「ま、俺達に任せておけってこった。何なら、ボロ屋で昼寝しててもいいんだ……
って痛ぇよハナクソ女!」
「一言余計なのよバカモモ! 霊夢さん、私達にとってもイマジンは無視できない存在ですし
イマジン絡みの異変なら私達にも手伝わせてください」
普段、霊夢は異変解決に際して誰かの力を借りることは基本的に無い。
今回も、出来るならば一人で解決するつもりだったのだ。だがそれは不可能であるかもしれない。
かつて、永夜異変とよばれる異変が起きた際にも一人の力ではどうにもならなかった。
その時と同様に、他者の力を借りる事になるだろう。
知己の妖怪ではなく、外来人の青年と少女、そして外の世界の妖怪とも呼べる者達の力を。
「……そうね。じゃあ、イマジン絡みの異変はよろしくお願いするわ」
「うん、こっちこそよろしくね」
良太郎が差し出した手に、霊夢が手を重ね、その上にハナが手を重ねる。
あと一人、モモタロスがおずおずと左手で頭をかきながら、右手をその上に重ねる。
「さ、イマジンの異変を解決して、ウラ達も早く見つけましょ!」
「「「「おーっ!」」」」
230
:
俺参上第七話後編−2(11/12)
◆cedHmDsvEg
:2011/04/11(月) 02:19:32 ID:2bdQVyfM0
ハナの号令で、一斉に掛け声を上げる。
チーム・デンライナーwith博麗の巫女、結成の瞬間である。
その光景にナオミは感激しながらも、思い出したようにマイクを手に取り
チャイムを鳴らしアナウンスを行う。
「まもなく、デンライナーは時の列車ターミナルに到着します。
お降りの方は、お忘れ物の無いようにお願いします!」
アナウンスが響き、デンライナーはターミナルに到着する。
他の車両に乗っている乗客と、良太郎が連れてきた契約者の男が下車していく。
その後まもなく、デンライナーはターミナルを後にした。
オーナーもナオミも、今回はターミナルに用事が無いのか降りるそぶりは見せなかった。
ナオミのアナウンスと共に、再び発車するデンライナー。
仲間のイマジンが少ない以外は、普段のデンライナーとさほど変わらない光景。
程なくして元の時間に到着し、降りようとする良太郎達。
早朝から一波乱ありはしたものの、ようやく今日の本来の目的に向けて動くことができる。
「良太郎君。先ほど話したとおり、幻想郷から帰れない人達については我々で何とかします。
今回のようにイマジンがらみとなれば、協力してもらう事もあるかもしれませんが……
当面、ケータロスとウラタロス君達の捜索に専念して下さい。
そ〜れ〜と。デンバードも自由に使ってもらって結構です。皆さん霊夢君と違って飛べませんし、ね」
「おっさん、デンバード無しだとデンライナー動かねぇだろうが……まさか」
モモタロスの懸念に、オーナーはステッキを左右に振る。違う、と言いたいらしい。
状況が読めない良太郎と霊夢に、ハナが解説する。
「前、デンバードが無い時にオーナーが人力でデンライナーを動かしたのよ。
霊夢さんはともかく、あの時良太郎はいなかったんだっけ」
「嘘っ!? こんなおっきい乗り物を人力で!?」
「お、オーナーならやりかねない……ね。あの人デンライナーと同じスピードで走れるらしいし」
信じられないと言った様子の霊夢と、その光景を見たことが無いにもかかわらず
ありありと想像できてしまった良太郎。さらに良太郎のオーナーに関する
武勇伝(?)も耳にしたことで、霊夢のオーナーに対する警戒心がさらに増してしまうことになった。
「おっと。霊夢君の目線も怖くなってることですし、そろそろデンライナー出しますよ?」
(ぎくっ)
「あ……そうですね。それじゃオーナー、今度はウラタロス達を連れて帰ってきます」
「じゃあまたな、おっさん!」
231
:
俺参上第七話後編−2(12/12)
◆cedHmDsvEg
:2011/04/11(月) 02:25:38 ID:2bdQVyfM0
オーナーとナオミに見送られ、4人はデンライナーを後にする。
ふと、霊夢はオーナーのありえない身体能力と胡散臭さ、どこからどこまでわかっているのか
まるで見等のつかない態度から、よく知る妖怪を想起せずにはいられなかった。
(わけのわからない程度の能力を持っている輩って、どこにでもいるものね。
良太郎さん達の事を踏まえれば、確かに退治すべきはあの人じゃないわね)
デンライナーの扉を開けた先は、博麗神社。先日同様、拝殿が出口になっていたのだ。
太陽の高さから見て、デンライナーに乗ってからそれほど時間は経っていないように見える。
しかし、発つ時にはいなかったはずの人物が、境内で霊夢らを待っているように
佇んでいたのだった。その目は、少々赤い。
「あら魔理沙じゃない、あんた何しに来たの? ……目、赤いわよ」
「……ああ、何でもない。何でもないんだぜ」
チチチチチチ・・・チッ・・・チッ・・・チッ・・・
232
:
◆cedHmDsvEg
:2011/04/11(月) 02:27:52 ID:2bdQVyfM0
次回予告
昨日と今日。イマジンは同時に暴れていた。
初めてイマジンと真っ向から対峙する普通の魔法使い。
幻想郷にとって普通の魔法使いに、普通ではない想像の魔人は退治できるのか。
いや、巫女も電王もいない。やらなければならないのだ。
「私がお前らを退治してやるぜ」
「お前は俺達に潰されるよ!」
少女の決意は涙と、戦士を呼ぶ。
それは電王ではない、また別の戦士。
幻想郷に最も近く、そして幻想郷でさえあってはならない戦士。
「な、何でお前がここにいるんだよ!?」
幻想郷に呼ばれたのか、迷い込んだのか。あるいは意図的に入り込んだのか。
「気がついたらここにいたんだ。俺、何もわからないって気がする」
「君は、記憶喪失だとでも言うのか?」
(記憶喪失……? にしては彼、おかしいわね……)
緑色の戦士は、再びそのかけがえの無いものを代償に戦うのだろうか。
「……最初に言っておく」
次回 東方俺参上 第八話
零符「ゼロからはじまるミステリー」
233
:
◆cedHmDsvEg
:2011/04/11(月) 02:41:41 ID:2bdQVyfM0
以上、話が進んでない気がしますが第七話でした。
等身大戦も大変なのに電車戦書こうとするから遅くなりました。
でもまた電車出ます。だって電王ですもの。
MOVIE大戦2010やらレッツゴーやら見終えた後だとライダーに限らず
ヒーローは幻想郷には似合わないのかもしれない、とも思いますが
東方俺参上は可能な限り続けていく所存です。
>>216
ありがとうございます、俺得話なのにそう言って頂けるのは非常に嬉しいです。
>>217
桃が走ってきてパカって割れるようなそんな弾幕、かと。
そういえばどっかの天人さんは桃は弾幕には使ってなかったような。割れてないし。
234
:
名前が無い程度の能力
:2011/04/13(水) 19:48:40 ID:VpfjvDVo0
>ヒーローは幻想郷には似合わない
少なくとも第二次月面戦争に駆り出そうとしたら
結末の如何に関らずゆかりんが倒されるオチになるわな
紫「月面侵略します^^」
ヒーロー「侵略活動はゆ”る”さ”ん”!!」
紫「月面いってきます^^」
依姫「おのれ私達の土地を荒らす侵略者!」
ヒーロー「なんだって!それは本当かい!?」
紫「月(ry」
若本「ゴートゥーヘル!」
235
:
◆cedHmDsvEg
:2011/04/20(水) 01:56:30 ID:kEzV9Rag0
・この作品は「東方Project」と「仮面ライダー電王」の二次創作作品です。
・この作品には二次設定・独自設定が含まれております。
・この作品には戦闘シーンや暴力的なシーンが含まれております。
・この作品は「東方Project」及び「仮面ライダー電王」の原作及び他の二次創作作品とは一切関係ありません。
・この作品には「仮面ライダー電王」のTV本編ネタバレ要素が大いに含まれています New!!
以上抵抗のある方は恐れ入りますがトリップをNGに指定してくださいませ。
07:58
東方俺参上
我が郡隊は百鬼夜行!
236
:
俺参上第八話前編(1/12)
◆cedHmDsvEg
:2011/04/20(水) 02:00:34 ID:kEzV9Rag0
時の列車デンライナー
次の駅は過去か、未来か、幻想か
東方俺参上 第八話
零符「ゼロからはじまるミステリー」
2008年10月6日(第百二十三季九)。
霊夢、ハナ、良太郎、モモタロスがイマジンを追って過去に飛び、博麗神社は閑散としていた。
ほんの数刻前の出来事である。それと入れ違いになるように、光の三妖精が恐る恐る
そして魔理沙が大胆に境内へとやってくる。主を失い、もぬけの殻となった神社の境内へ。
魔理沙の声は境内に響き渡る。もぬけの殻の境内に。
「おーい霊夢ー、今日は良太郎を里へ連れて行くんだったよなー? 遊びに来たぜー?
……まだ寝てるのか? いないなら勝手に上がっちゃうぜー?」
(……返事、無いね)
(良太郎さんもいないみたいだし、こりゃとんだ無駄足ね……)
この霧雨魔理沙と呼ばれる少女、巷では泥棒少女と呼ばれるほどに手癖が悪いことで有名である。
しかしこそこそとした泥棒はしておらず、堂々と盗みに入るのが彼女の流儀であった。
曰く「自分が死ぬまで借りる、死んだら返す」らしいが、盗んでいることに変わりは無い。
それ位、空き巣も堂々と行うのだ。そんな今や空き巣の格好の標的ともいえる博麗神社で
それは起きていた。
「……ん? な、なんだありゃ!? 妖精の悪戯か何かか!?」
(サニー、あんた何かしたの?)
(してないわよ? そりゃ石段消えたら面白そうとは思ったことあるけどさー……)
ふと、背中のほうから感じる違和感に魔理沙が振り返ると、その光景は普段神社から眺める
光景とは明らかに違っていた。鳥居から続く石段は、そこから先がごっそりなくなっていたのだ。
過去……と言ってもたった一日前に飛んだイマジンの影響だ。
そしてその上空には、鳥とも蝙蝠とも虫ともつかない巨大な怪物が
砂を撒き散らしながら飛び回っている。
237
:
俺参上第八話前編(2/12)
◆cedHmDsvEg
:2011/04/20(水) 02:05:42 ID:kEzV9Rag0
「あ……あんな怪物、初めて見たぜ……!」
魔理沙は、霊夢と違い妖怪退治を生業としているわけではない。
それ故に、妖怪や怪物に対する知識も霊夢ほど持っているわけではない。
否、もし持っていたとしても、その異様な姿は幻想郷のどこにもいない。誰の記憶にも無い
砂から生まれた怪物の成れの果て。その異様な姿に目を奪われ、魔理沙は後ろに現れた
「それ」に全く気づかなかった。気づけなかったのだ。
唯一気付いたスターも、「それ」がいる場所の異質さから、足がすくんでしまっている。
(……スター?)
(……ね、ねぇ。私今ものすごーくいやな予感しかしないんだけど……
私の目には何かいっぱいいるのが見えるのよ……地面の下に。モグラにしては大きすぎる。
巫女も良太郎さんもそんなとこにいるわけ無いじゃない。って言う事は、つまり……)
――じゃあ、お前もあの怪物の仲間にしてやるよ!
魔理沙の背後から振り下ろされる爪。しかしそれは、あまりにも殺気を立てすぎていた。
武術の心得など聞きかじり程度にあるか無いかの魔理沙にさえ、気付かれるほどに。
爪が振り下ろされた場所には、空気しかなかった。
精々、飛びのいた魔理沙に風圧で攻撃の威力を物語る程度だ。
「な、何だよお前! 不意打ちは弾幕ごっこじゃ反則だぜ!?」
不意打ち。それは弾幕ごっこにおいて厳重に禁止されている行為。
魔理沙は弾幕ごっこで数多くの妖怪と戦い、勝利できる程度の実力を持っている。
それは、ルールの上においての勝利。
実力には違いないが、ルールが無ければその実力は微塵も発揮されない。
今魔理沙が対峙している相手は、そのルールの外にいる相手だ。
「弾幕ごっこ? 何だよそれ?」
「ごっこ遊びは家へ帰ってやってろよ!」
次々と地面を突き破り現れるモグラの怪物、モールイマジン。
その数、地上に現れただけでおよそ三体。
魔理沙も過去の寒い春に飛んだ際、デンライナーの中から遠目に見た怪物。
弾幕ごっこを知らないどころか、ルールに従おうともしないイマジンの尖兵。
238
:
俺参上第八話前編(3/12)
◆cedHmDsvEg
:2011/04/20(水) 02:08:03 ID:kEzV9Rag0
「そうか、お前らイマジンだな? せっかくだから教えてやるぜ、弾幕ごっこってのはな……」
魔理沙は人と妖怪が肩を並べて暮らすことができる
幻想郷を、スペルカードルールを気に入っている。
知らないのならば教えてやればいい。たとえ相手がイマジンでも。
不意打ちの件をさらりと流し、魔理沙はイマジンに弾幕ごっこのレクチャーを試みた。
しかし、侵略者が何故侵略する相手の条件に従わなければならないのだろうか。
魔理沙には互角の条件で精一杯戦える素敵なルールでも
イマジンにはただの面白くない縛りでしかない。
そして、その縛りを楽しむ余裕はこのモールイマジン軍団には無かったのだ。
「うるさいよ!」
「誰が教えてくれって言ったよ!?」
「うざいよ、潰すよ!?」
もはや、モールイマジンらには魔理沙はただの邪魔者にしか見えていない。
邪魔者。それはすなわち、イマジンにしてみれば排除すべき存在。
方法は問わず。モールイマジンには、魔理沙がどうなろうが知ったことではない。
手っ取り早く黙らせるためにも、暴力と言う手段に訴えたのだ。
「な、何すんだよ……!?」
「俺らに意見するからそういう目に遭うんだよ! いやなら黙ってみてろよ!」
「今からこの神社潰すよ! 邪魔したけりゃすればいいよ!」
「どうせお前にゃ出来ないよ!」
魔理沙を突き飛ばし、神社を壊そうとするモールイマジン軍団。
魔理沙も、ここがどういう場所でどれだけ大事なものかは知っている。
それ故に、壊させるわけにはいかないのだ。相手が話し合いに応じなくとも、止めなければならない。
「言ったな……! だったら私がお前らを退治してやるぜ。
私は良太郎や霊夢と違ってそれ専門じゃないから手加減とか出来ないぜ?」
「面白い冗談だよ!」
「でもその冗談の続きは無いよ!」
「電王でも巫女でもないお前に俺達は倒せないよ、お前は俺達に潰されるよ!」
モールイマジン軍団は左腕のドリルや斧、十字爪等を輝かせ
魔理沙はスカートからミニ八卦炉を取り出す。
互いに睨み合うその光景を、やはりと言うかなんと言うか、逃げるタイミングを失った三妖精が
本殿の影から見守っている。悉くイマジンに縁のある妖精たちであった。
239
:
俺参上第八話前編(4/12)
◆cedHmDsvEg
:2011/04/20(水) 02:11:57 ID:kEzV9Rag0
(まだいくらか地面の下にいるみたいね、このままじゃ私達も巻き込まれるわよ)
(もう巻き込まれてるわよ……)
(まだ良太郎さんに意魔人退治をお願いしてないじゃない。
それともルナの言ってた奴ってあいつら?)
サニーの問いに、ルナは首を横に振る。
ルナの言うイマジン――オウルイマジンは、既にここにはいない。
そのイマジンは、既に良太郎と霊夢が退治に向かっているが、彼女らは知る由も無い。
そんな彼女らの思いを他所に、魔理沙とモールイマジン軍団の戦いは始まっていた。
霊夢以上に小柄な体格を活かした魔理沙の立ち回りに、モールイマジンは終始振り回されている。
魔理沙は魔法が使えるだけの普通の人間であり、霊夢の結界や電王のオーラアーマーなど
イマジンの攻撃に対する防御手段に乏しい。精々弾幕で相手を寄せ付けないようにしたり
攻撃があたらない様な立ち回りをすることしかできない。あるいは、攻撃される前に倒すか。
魔理沙は霊夢と違い、妖怪退治に際し謂れのある道具や術を使うわけではない。
単純に、派手で威力が高そうな弾幕を用いて弾幕ごっこのルールの上で
勝利を収める姿勢を取っていた。では、イマジン相手ならばどうするか。
霊夢は普段の札を対イマジン用に祈祷し直して新たな武器として扱い
電王はフリーエネルギーによる武器と、同じイマジンの力を使う。
どちらも、今の魔理沙には真似ができない。
モモタロスが憑いていれば、話は変わったのかもしれないのだが。
「さっきからチカチカしてうざいよ!」
「無駄な抵抗はやめろよ!」
モールイマジンにしてみれば、魔理沙の攻撃――弾幕はただ眩しい光に加え
音と少々の熱を帯びたレーザーポインターのようなものだった。
おびただしい量の星型のそれは、何度も何度もモールイマジンに付きまとい
彼らにとっては不愉快極まりなかった。
これが弾幕ごっこのルールならば、もう魔理沙は勝っていてもおかしくなかった。
しかし、突きつけられた現実は非情である。それがたとえ夢のような世界、幻想郷だったとしても。
モールイマジンの一体が、魔理沙めがけて回転しながら飛び込み、竜巻となって突っ込んだのだ。
「うあああああっ!?」
モールイマジンのそれは竜巻の風に加え、本体の爪やドリル等の凶器による攻撃が加わる。
風圧自体は烏天狗・射命丸文の起こす竜巻よりは弱いが
モールイマジンの本命は両腕の爪やドリル等の凶器である。巻き込まれれば、怪我ではすまない。
それはモールイマジンの攻撃が着弾した場所を見れば一目瞭然であった。
地面に穴が開いていたのだ。こんなものを生身の人間が食らえばどうなるか。
間一髪、魔理沙は竜巻を避ける事ができたが、これではかするのさえ危険だろう。
240
:
俺参上第八話前編(5/12)
◆cedHmDsvEg
:2011/04/20(水) 02:17:05 ID:kEzV9Rag0
「……ご生憎さま。攻撃を避けるのなんていつもやってる事だからさ。
その程度じゃ私は倒せないぜ?」
「その割にはお前震えてるよ? びびってるの丸わかりだよ!」
「ならお前をバラバラにするまで続けるよ!」
「まずそうなミンチの出来上がりだよ!」
言うや否や、再びモールイマジンは魔理沙めがけて竜巻攻撃を繰り返す。
初めは難なくかわしていた魔理沙だったが、次第にモールイマジンの側も攻撃の角度を変えたり
複数がかりで攻撃を始めたりと、じわじわと追い詰めていく。
箒で空を飛ぼうにも、十分な高さまで上昇する前に的になってしまう。
そしてついに、魔理沙は神社の拝殿まで追い詰められてしまっていた。
「!?……ほんと、遊び心ってのがわからねぇなお前ら」
「そんなもんしらねぇよ!」
「俺達はここをつぶせればいいんだよ!」
「今ならお前まだ助かるよ! 逃げればいいんだよ! 逃げれればよ!」
言葉とは裏腹に、魔理沙に狙いを絞るモールイマジン。魔理沙ごと神社を破壊するつもりらしい。
そんなモールイマジン軍団を、魔理沙は奥歯をカチカチ鳴らし、肩で息をしながら
怒りと悲しみの入り混じった表情で見やる。
彼女がよく知っている幻想郷の妖怪らしさが、少なくとも目の前の彼らには全く無いのだ。
昨夜酒を飲み交わしたモモタロスと、本当に同じイマジンなのだろうかと言う位、無い。
しかし魔理沙は知る由も無かった。モモタロス以下良太郎の仲間のイマジンが例外で
彼らこそがイマジンの本性であると。どこか抜けていても、やる事なす事は極悪である。
「……ちぇっ。モモタロスみたいに、いい奴だと思ってたのによ……!」
知らなかったとはいえ、勝手に期待し、勝手に失望している。
イマジンに言わせればずいぶんと勝手な言い種だろうが
魔理沙にしてみれば、芽生えた憧れがあっさりと打ち砕かれたのだ。
良太郎とモモタロスの関係。それはある種、魔理沙の理想とするものでもあったから。
もはや、互いに加減する理由などどこにも無い。モールイマジンが化けた竜巻は
真っ直ぐに魔理沙を捉え、対する魔理沙は腹を据え微動だにせずミニ八卦炉を構えている。
単純な火力では霊夢の持つあらゆる技を上回り
もしかすると電王の技にも匹敵するかもしれない威力を秘めた、魔理沙の最大の武器。
241
:
俺参上第八話前編(6/12)
◆cedHmDsvEg
:2011/04/20(水) 02:19:25 ID:kEzV9Rag0
失恋「やけっぱちのマスタースパーク」
「ばっ……かやろぉぉぉぉぉっ!!」
霧雨魔理沙の代名詞ともいえるスペルカード。ただ一直線。
しかし最大限に輝き、見るものを圧倒する、まさに彼女らしい恋の符。
モールイマジンの竜巻にも、決して力負けすることなく、それどころか押し返した上に
攻撃を仕掛けたモールイマジンを打ち倒している。魔理沙の恋の力が、イマジンに勝ったのだ。
「こ、こんなガキのどぐぉぉぉぉぉぉっ!?」
「なんていりょぐぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「お、俺たちがぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
しかし、今放たれたのは恋は恋でも、失恋に近いものがあったのかもしれない。
それ故か、加減も、使いやすさも何もかもかなぐり捨て
感情のままにぶっ放した純粋で、かつ邪道のマスタースパーク。
「……せっかく幻想郷くんだりまで来て、何やってるんだよ。
お前ら、妖精以上の馬鹿だぜ。救いようの無い、馬鹿だぜ……!」
帽子に隠れて見えないが、魔理沙の表情は普段の底抜けに明るいものとは
程遠いものになっている風にも取れる。帽子に隠れた顔には、微かに光るものがあったから。
こんなのは、弾幕ごっこではない。幻想郷に、こんなものは似合わない。
精一杯戦い、勝っても負けても笑い飛ばし、酒を飲み交わす。
それが幻想郷の決闘儀式だったはずだ。
それなのにこれは何だ。勝ったのに、何も嬉しくない。
負けた方は、もうここに存在するかどうかさえ怪しい。
おおよそ幻想郷らしくない、外の世界の醜い争いが、そこにあった。
幻想郷の決闘儀式に慣れ親しんだ魔理沙には、衝撃の大きい結末であった。
しかし、魔理沙に感傷に浸っている暇は無かった。後ろから、悲鳴が木霊する。
掌で顔を拭い、直後に平手で叩く。まだイマジンはいるのだ。
気を取り直し、魔理沙は悲鳴のした方向へと走っていった。
(……まだ、いるのかよ。霊夢も、紫も、何やってるんだよ……
こんな奴ら野放しにするなんて、らしくないぜ……!
良太郎、モモタロス……いるんなら助けてくれよ。私達の幻想郷を、助けてくれよ!)
242
:
俺参上第八話前編(7/12)
◆cedHmDsvEg
:2011/04/20(水) 02:24:41 ID:kEzV9Rag0
同じく衝撃を受けているものがいた。既にイマジンとの戦いは目撃している光の三妖精。
彼女らも初めは衝撃を受けたが、やはり妖精と人間の感性の違いゆえか
今の魔理沙のような衝撃を受けてはいない。
彼女らは精神的なものに加え、物理的に衝撃を受けていたのだ。それももっと単純なレベルで。
「で、毎度毎度こうなっちゃうわけだけど」
「ルナ……いくら毎度のこととはいえ開き直らないでよ……今の状態本当にやばいってば」
「ご、ごめんなさいごめんなさい! 何でもしますから許してください!」
「さっきからお前らうるさいよ。この神社潰せって声が聞こえるから潰すんだよ。
お前らもうるさいからついでに潰してやるよ」
魔理沙が蹴散らしたモールイマジンの他に、地下にいたモールイマジンが一体、地上に現れていた。
地上に現れた先に、運悪く三妖精がいたのだ。
暴力的な衝動の強いイマジン、こうなればやる事はひとつである。
幻想郷には妖精に対する扱いのひとつとして、確かに八つ当たりを推奨している書物もある。
知ってか知らずか、イマジンがやろうとしている事はまさにそれである。
人間相手でさえ、鬱憤晴らしで酷い目に遭うというのにイマジンが相手だとどうなってしまうのか。
あまりの恐怖に、抵抗しようという気さえ起きない。
「そ、そんな声私達にはきこえませーん!!」
「お願いだから酷い事しないでーっ!!」
「た、助けてーっ!!」
何とついてない日が続くのだろう。別段悪戯を仕掛けたわけでもない。本当に何もやっていない。
それなのに攻撃される。人間による仕返しならば、普段仕掛けた悪戯の報復もあるので
程度にもよるが自業自得な節も存在する。
しかし、今あるのは謂れの無い理不尽な暴力。
何も知らずに幻想郷に迷い込んだ外の世界の人間が抱く感情にも近い。
そうした恐怖を払う存在。幻想郷で言うなれば博麗の巫女。外の世界で言うなれば、ヒーロー。
「くそっ、お前らいい加減にしろ……よ?」
その暴虐ぶりに、魔理沙も思わず恐怖をかなぐり捨てて飛び出しそうになる。
しかし、その行動は後ろから響く音に阻止される。
幻想郷では、滅多に聞くことの無い音である。
音に気をとられ、魔理沙は飛び出すタイミングを見失ってしまう。
魔理沙の足を止めた音は、次第に神社へと近づいてきていた。
243
:
俺参上第八話前編(8/12)
◆cedHmDsvEg
:2011/04/20(水) 02:26:47 ID:kEzV9Rag0
「な、何? この音……河童の渓谷からたまに聞こえる音に似てるけど……」
未知の怪物が入り込んだとき、ヒーローもまた入り込んでいたのだ。
幻想郷に似つかわしくないエンジンの駆動音を響かせながら
土煙を巻き上げてそれは神社の境内に突っ込んできた。
魔理沙の前を横切り、三妖精とイマジンの間に割り込んだ駆動音――マシンゼロホーン。
それには緑色の鎧を纏い同じく緑色の二頭の牛を象った仮面をつけた男が跨っていた。
かつて遠目に見た電王とは、どこか似通っていて、全く別の者。その名は――ゼロノス。
「ぜ、ゼロノス!? 何でお前がここにいるんだよ!?」
「……おかげさまでな」
「な、何なんだあいつ……イマジン、じゃないよな……?」
様々な感情を含ませ、それでいて静かにイマジンの質問に答えるゼロノス。
サニーとスターはゼロノスが立ちはだかった隙に隠れ
モールイマジンに抱えられたルナは、半泣きでゼロノスを見つめている。
魔理沙も、またも見知らぬ存在に少々、戸惑いの表情を浮かべている。
「サニー、もしかしてこの人も良太郎さんの仲間かも。似てるところあるし」
「それならきっと私達の味方だよ! よーしっ、がんばれーっ!」
さっきまで怯えていたサニーは、電王――実際にはゼロノスだが。の登場に
すっかり気を良くし、応援を始めている。
それに応えるようにゼロノスは彼女らに背を向けたまま、手を挙げる。
視線はモールイマジンを捉えたまま、微動だにしていない。
口上「最初に言っておく2007」
「最初に言っておく。俺はかーなーり、強い」
244
:
俺参上第八話前編(9/12)
◆cedHmDsvEg
:2011/04/20(水) 02:29:40 ID:kEzV9Rag0
「言ってくれるよ。ゼロノス一人で何ができるよ!」
ゼロノスの口上。その内容はどこか子供の喧嘩っぽいが
声は大人の男性らしく、落ち着きがありそれが却って言葉に説得力を持たせていた。
モールイマジンの側も、貧弱な妖精よりも手ごたえのある獲物――ゼロノスを見つけたことで
その攻撃性をより増していた。それどころか、ちらほらと増援が地下から出現している。
ルナを抱えていたモールイマジンも、もうルナには興味ないとばかりにルナを乱暴に放り投げる。
「その前に、その子を離せ」
「ああ、こんな奴もうどうでもいいよ! ゼロノスを潰すよ!」
「え?」
悲鳴をあげる間もなく、ルナの小さな体は無造作に宙を舞う。
咄嗟の事に、飛んで逃げるという行動に移ることができない。
しかし珍しく運がよかったのか、放り投げた方向は魔理沙が走って間に合う距離だった。
妖精なので放っておいても怪我ですむ。もし打ち所が悪くても、せいぜい一回休みだ。
「「ルナ!」」
「あぶない!」
それでも、魔理沙は気づけば全速力で走っていた。ルナを抱えていた。
一瞬の出来事だったが当のルナも他の二人も呆気にとられていた。
全力で走った魔理沙自身も、ルナを助けて数秒、自分が何をしたのか理解していなかった。
そんな魔理沙の正気は、地下から這い出てきたモールイマジンの攻撃がゼロノスの妨害により
宙をかすめ、地面に突き刺さった衝撃で戻ることとなる。
この場は危険である。捕まった妖精は助かった。後やることは一つ。
「緑色のやつ! こいつは大丈夫だ! だから……お願いだ、そいつら退治してくれ!
私達の世界を……助けてくれ!!」
魔理沙の叫びに、ゼロノスは黙って頷く。言葉は無かったが、力強い頷きに魔理沙も安心したのか
笑みを浮かべながらルナを連れてゼロノスやモールイマジンから離れる。
直後、モールイマジンがゼロノスに飛び掛るが難なくそれを蹴り飛ばし
腰に提げていた二つのもの――ゼロガッシャーを組み立てていた。
今ゼロノスが構えているのはボウガンモード。光弾を発射するゼロノスの射撃武器。
連射は可能だが、流石に弾幕を張るほどの速射性は無い。
その光景は、魔理沙には物珍しい以上に衝撃的な内容であった。以前イマジンと戦った際には
モモタロスに憑依されており記憶が無く、過去に飛んだ際にはデンライナーから外に出ていない。
魔理沙自身の意思で、間近で見るのはこれが初めてになる。
245
:
俺参上第八話前編(10/12)
◆cedHmDsvEg
:2011/04/20(水) 02:31:56 ID:kEzV9Rag0
(あれが、スペルカードルールじゃないマジの戦い……
妖怪連中はともかく霊夢もあれ経験したことあんのかな……
あんなのを、私は相手にしてたのか……)
次々とモールイマジンを撃退していくゼロノス。そのボウガン捌きは、それ自体が
スペルカードルールで用いられる弾幕であるかのような美しささえ醸し出していた。
弾幕としての美しさではなく、武芸としての美しさ。軽快な動きでモールイマジンを翻弄しながら
的確にゼロガッシャーで射抜いていく。弾幕とは違うが、これはこれで美しさを競う競技ならば
高評価であろう。戦闘センスは素人以下の良太郎や、かっこよく戦うと言っても
その実喧嘩殺法なモモタロスとは近接武器と射撃武器という得物の差もあってか
一線を画していた。
ゼロノスとモールイマジンの戦いは、意外とあっけなく終わった。
この後に控えている不意打ちを含めても。
(奴は地下にまでは気づいてない、このまま後ろを取って潰してやるよ!)
「あっ! 後ろ、あぶない!」
「!?」
不意に、スターが叫ぶ。スターの目に映っていた地下のモールイマジンが
背後からゼロノスを襲おうとしていたのだ。
間一髪、スターのアドバイスで相手の攻撃を事前に察知できたゼロノス。
ゼロガッシャーに、ベルトに刺さっていた変身用のカード――ゼロノスカードを挿す。
FULL CHARGE
弩符「グランドストライク」
地上に飛び出そうとするモールイマジンめがけ、ゼロノスはゼロガッシャーの引鉄を引く。
ゼロガッシャーから放たれた緑色の「A」字型の光が、地面ごとモールイマジンを貫き
爆発とともにイマジンは時の砂に還る。
「くそぉ……ゼロノスがいるなんて……聞いて……無かった……よ!」
スターの目にも、もうイマジンは映らない。いるのは、妖精が自分を含め三人、少女が一人。
そして成人男性位の大きさの何者かが一人。
ルナも魔理沙の傍から離れ、サニーやスターと互いの無事を喜んでいた。
ゼロノスは無事を確認すると、ゼロガッシャーを腰に戻し魔理沙の下へと歩み寄る。
246
:
俺参上第八話前編(11/12)
◆cedHmDsvEg
:2011/04/20(水) 02:35:08 ID:kEzV9Rag0
「……よく持ちこたえてくれた。イマジンの相手などというとんでもない役目を負わせてしまい
申し訳なく思う。私がもう少し早く来ることが出来ればよかったのだが」
ゼロガッシャーを腰に戻し、魔理沙に対し頭を下げるゼロノス。
しかし神社と4人の少女を守った功績は、4人一様に賞賛していた。
「私達はあんたのおかげで助かったんだ、頭あげてくれよ。でもって礼を言わせて欲しいぜ」
「そうだよ! 巫女はともかく良太郎さんがいないからどうなるかと思ったわ!」
「そうそう、やはり巫女じゃないヒーローは格が違うわね! 妖精だって助けてくれるし!」
「良太郎さんといい、イマジンと戦ってる人は優しい人が多いのかな?」
ゼロノスに対する賞賛の言葉。しかしそこにはゼロノスに変身している者にとっては
聞き覚えのある名前が挙がっていた。
――良太郎。
もし、この名前の意味するものが「野上良太郎」であるのなら。
何故その名前を幻想郷の妖精が知っているのか。
その答えは、今のゼロノスにはとてもわからなかった。
ゼロノスにとって、良太郎はイマジン以上に幻想郷にいる事が不自然な存在だったのだ。
微かな不安を覚えながら、ゼロノスは乗ってきたマシンゼロホーンに跨り
少女らを背に走り去ろうとする。
引き止める声が無ければ、そのまま走り去っていただろう。
「待ってくれよ! お前も、電王でいいのか? 私が見たのとはベルトとかちょっと違うみたいだけど」
「電王、か。その名前をここで聞いたのは彼女以来だな。そうだな、名乗るとするなら……」
――ゼロノス。そう名乗り、緑色の鎧の男は跨った乗り物を走らせる。
手を挙げて、少女の声援に応えながら。
「ありがとなゼロノス! 私は魔理沙、霧雨魔理沙だぜ!」
「「「ありがとうございました!」」」
あっという間にゼロノスは遠く、小さくなってしまった。
自分たちを助けてくれた恩人に、声は届いたのだろうか。
ともあれ、博麗神社を襲った悪意はひとまず去った。
ゼロノスも去り、いつの間にやら鳥居から続く石段も元通りになり
空を飛んでいた巨大な怪物も消えている。
さっきまでイマジンが暴れていたとは思えない博麗神社がそこにあった。
その光景に魔理沙は安堵したのか、へたり込み涙を浮かべてしまう。
すぐ傍に三妖精がいるにもかかわらず。
247
:
俺参上第八話前編(12/12)
◆cedHmDsvEg
:2011/04/20(水) 02:37:23 ID:kEzV9Rag0
「よかった……ちゃんと幻想郷を守ってくれる奴がいたんだ……よかった……
……あいつらにも、酒飲ませてやりたかったな……なぁ、霊夢……
神社ぶっ壊したあいつだって、最後はちゃんと締められたのにな……なんでだろうな……」
その魔理沙の姿は、いつもの気丈で飄々とした姿とはあまりにもかけ離れていた。
その変わり様には三妖精もかける言葉を失い、ただ黙って見ているしかなかった。
博麗神社自体は、ついこの間地震で倒壊していた。
神社が壊れるくらいならば、魔理沙もここまで感極まりはしなかっただろう。
彼女が感極まった理由。それは、幻想郷というものに対し明確な敵意を持ち
幻想郷の象徴たる博麗神社を攻めてきた存在がいた事と
彼女の知る者以外にそれを守ってくれた存在がいた事。
外の世界にある子供向けの英雄譚ではいつもの光景なのだが
今の彼女にはそれがとても心強く思えたのだ。
自分たちが暮らしているルールではどうにもならない輩から、自分たちを守ってくれる存在。
ある意味では魔理沙のよく知る少女が、それを担っている。
だが魔理沙は霊夢に対し、英雄としてではなく友人として接している。
とても、英雄譚に出てくる英雄と同列に看做す事は出来なかった。
たとえ実力の違いをある程度理解し、博麗の巫女がどういう存在か頭ではわかっていたとしても。
(でも、霊夢だって良太郎と一緒にイマジン退治してるじゃないか。
私だけ、こんなとこでへたり込んでるわけにはいかないよな、やっぱ)
それ故に。自然と零れていた涙をまた拭い、石畳に手をついて立ち上がり
膝辺りの白くなったスカートから砂埃を払い落とす。
ふと。後ろにあった拝殿の扉が開き、霊夢と良太郎、モモタロス、そしてハナが帰ってきた。
「あっ、巫女が帰ってきたわ!」
「そ、それじゃ私達はこの辺で!」
「おじゃましましたー!」
「あ……何しにきてたんだろ、あいつら」
霊夢の姿を見るや否や、三妖精はあわてて逃げ帰ってしまっている。
良太郎へイマジン退治の依頼をするのも忘れて。
最も、彼女達が退治して欲しいと願っていたイマジンは、既に彼らによって退治されていたのだが。
「あら魔理沙じゃない、あんた何しに来たの? ……どしたの、目赤いわよ?」
「……私は何でもない。何でもないんだ。
なぁ霊夢。また、いつものように弾幕ごっこやら宴会やらやろうな……」
248
:
◆cedHmDsvEg
:2011/04/20(水) 03:04:00 ID:kEzV9Rag0
以上第八話前編でした。
突っ込まれる前に今回の話の部分について。
セルフでQ&Aやるのってどうなんだろう……
Q:魔理沙は旧作でスペカルール以外で戦っていたはずでは?
A:今作の舞台の幻想郷は、原作とは若干歴史が異なってます。
その一つが旧作設定。一応神社の裏の池にはあの亀がいますが。
魔理沙も旧作の戦いには参加してますが、今作ではその記憶はありません。
Q:やけっぱちのマスパ?
A:効能は読んで字のごとくです。スペカの概念が無い電王関係者以外にも
東方キャラにもこんな感じで今作オリジナルのスペカが極稀に出てきたりします。
ファイナルとか実りやすいのとかあるからいいかなー、と。要は悪ノリ、不具合あればやめます。
最も、今回のこれは永久封印モノでしょうけど。メルトダウンってなんだろうな。
Q:敵イマジンはルール無視してるのに何でスペカ宣言してるの?
A:「最低限の命名決闘儀式の体裁かな。ルール無視に対してルール無視で返したら
取り返しのつかないことになりそうだし。結局、イマジンは倒しちゃってるから
ルール無視はルール無視かもしれないけどね。女の子の遊びらしいけど
この異変が解決したら帰る前に僕も一度遊びでやってみたいな。命名なら自信あるよ」
by良太郎
249
:
名前が無い程度の能力
:2011/04/20(水) 16:12:52 ID:1YbR3PP60
GJ! 目には目を歯には歯を、ルール無視の奴等に愛の掟で戦う戦士なわけですね。わかります。
>何でスペカ宣言
本当にどうしようもないときに駆けつけてくれるヒーローって、
どうしてこんなにカッコイイんだろう。感極まるわ。
250
:
名前が無い程度の能力
:2011/04/20(水) 18:58:52 ID:1gb3espYO
いつも(というか今朝から)楽しみにさせてもらってます。
セルフQ&Aも非常に分かりやすい。
こんなの作中で作者が突っ込むものに比べたら何ともないですよ。
こういう良作を見たら書く意欲が沸いて来ます。
251
:
◆cedHmDsvEg
:2011/04/30(土) 03:30:35 ID:ramnd1Ig0
第八話中編近日投下予定です。
今回即興で幕間とセルフQ&Aの追記を投下します。
東方俺参上 第7.8話
活字「とある天狗の号外新聞(ドキュメント)」
2008年10月6日(第百二十三季九)。
妖怪の山にある天狗の集落。ここでは天狗が自分たちの社会を形成し
日々を程ほどに刺激を求めて生活している。
かつて鬼という上位の存在が同じ山にいたのだが、今や鬼は山にはいない。
そんな目の上のたんこぶが取れた天狗達であるが、今度は神が山にやって来た。
一悶着ありながらも、今では友好な関係を築き上げるに至っている。
2007年、年を空けて間もなくの出来事であった。
そんな天狗の社会であるが、その件以外については何も変わらぬ日々を迎えている。
簡素な作りの事務所で、記事を書き上げ写真を現像している烏天狗――射命丸文もその一人。
まだ太陽は顔を出さない時間であり、先ほどまで宴会に参加していた彼女は
まさに寝る間も惜しんで新聞作りに精を出していたのだ。
「いやあ、まさかあんな方々が幻想入りするとは。しかしあの赤鬼もどき
私が話に聞いていた意魔人とは違うような印象だったけど……」
文は以前、巷を騒がす噂の妖怪、という触れ込みでイマジンについて
慧音にインタビューをしていた。
慧音も歴史編索を能力とするハクタクの性質上、イマジンについて少々知っている程度
だったのだがそもそも幻想郷に存在するはずが無いイマジンを少しでも知っているという事で
彼女に接触を試みたのだ。その時に聞いた話と、赤鬼もどき
――モモタロスは、あまりにも印象が違いすぎた。
「あの青年のイメージであの姿になった……
となると、やはり外の世界に鬼はいるんですかねぇ?」
文には、どうしても引っかかる部分があったのだ。
幻想郷において一部を除き幻となったはずの鬼。
それをどうして、妖怪になど全く縁の無いはずの外来人の青年がイメージできるのか。
「これは、色々と話を聞いてみなければなりませんね」
格好の取材対象を見つけ躍起になる文。机の上に置かれている文々。新聞の見出しには
小さな鬼の少女と赤鬼が殴りあう写真が掲載されている。
252
:
◆cedHmDsvEg
:2011/04/30(土) 03:33:39 ID:ramnd1Ig0
「幻想郷に、鬼? 参上?」
突如現れた赤鬼のような姿の妖怪。名をモモタロスといい、外の世界の妖怪らしい。
自称意魔人との事であるが以前伺った特徴
(先日掲載分「謎の妖怪『意魔人(いまじん)』の秘密に迫る! 上白沢慧音独占インタビュー!」を参照されたし)
とは、同行していた契約者と思しき外来人の青年――野上良太郎(19)と
互いに同意の上で行動を共にしていたり、過去へ飛ぼうともしない上に
全く契約と関係ないと思われる喧嘩を始めるなど少々異なる部分もあった。
それ以上に興味深いのは、外来人である野上氏の想像から
何故鬼の姿が生まれるのか、という点である。
幻想郷において鬼は希少なものとなって久しいが、その鬼の行く先を考えさせられる
例になったのではないだろうか。外の世界からやって来た鬼の姿の妖怪が
幻想郷で何をするのか、当新聞では可能な限り彼に接触を試みようと思う。
「連続妖精通り魔事件、収束か」
先日幻想郷を騒がせた、妖精ばかりを狙った通り魔事件は
先日昼過ぎを境にぴたりと発生しなくなった。
犯人が飽きただけとも考えられるので、引き続き魔法の森付近の妖精は
単独行動を控え、見慣れない妖怪や巫女には十分な注意が必要だろう。
「さて、と。今日は寝ますかね……明日の取材も楽しみで……
ふふふ、寝る前からわくわくして眠れないわ」
寝支度を整え、布団にもぐる文の枕元。そこに大事そうに置かれた、商売道具ともいえる
文化帳にはまだ新聞記事にされていない出来事も多く記されている。
窓から風が流れ込み、そのページがめくられる。
山に金色の熊が現れた
↑どうやら既に山頂の神社に向かったらしい。神様と意気投合したとかしなかったとか
人里の近辺で緑色の牛頭の謎の存在が出没する
↑ワーハクタクの見間違い? だが満月以外にも目撃情報あり。
紅魔館でダンスユニット結成?
↑妖精がほとんどだが、中心にいたのは紫色の怖い顔をした悪魔らしい。
紅魔館にそんな妖怪はいなかったはずでは?
253
:
◆cedHmDsvEg
:2011/04/30(土) 04:03:36 ID:ramnd1Ig0
以上、西瓜VS桃の宴会後の文の動向でした。それにしても文はいつ寝てるのだろう。
やはり朝なのだろうか。朝だと新聞配るのに不具合が……無いだろうな、幻想郷だし。
とりあえず徹夜かまして新聞作ってさぁ寝るぞ、って形にはしましたが。
投下時間的に別に作者メタではありません、ええありませんとも。
>>249
今回のゼロノスにはそういったあからさまなヒーロー属性を持たせてあります。
中身は……この作品では既に幻想入りしてるあの人です。なので口調も本作オリジナル。
口上スペカも当然本作オリジナル。若き日を思い出して戦っていたのかもしれません。
色々パラドックスしそうですけど。
>ルール無視の奴等に愛の掟で戦う戦士
タイガーマスク? キン肉マン? 聞いたことあるフレーズなのですが。
>>250
そう言って頂けると幸いです。基本的に本編は両原作らしくギャグを入れても
真面目に進めたいので本文中でネタには走っても作者突っ込みは入れない方向です。
その分、〆の挨拶レスでは突っ込みますが。セルフQ&Aもその発想の産物です。
是非
>>250
さんの作品も見せてください。元ネタ? 知らなくても調べるくらいはしますので
「大丈夫だ、問題ない」
なにやら好評のようで調子に乗って今回も載せます>セルフQ&A
Q:守矢組が妖怪の山にやって来た時期って違わない?
A:風神録は東方原作同様2007年秋の出来事、しかし今作で守矢組がやってきたのは年明け直後。
その間守矢組は妖怪の山で地盤固めをしてました。
電王原作を知っている方にはピンと来る幻想入りの方法かもしれません。
でもネタバレは勘弁な!
Q:歴史編索とイマジンがどう関係あるの?
A:イマジンは自分の都合のいいように過去を変える未来の精神体です。
それは幻想郷でも変わらず、正しく歴史編索を行いたい慧音にとって、まさに忌むべき存在です。
慧音以外で幻想郷でイマジンを知っているのは紫ですが、インタビューしようにも捕まりませんでした。
Q:紫色の怖い顔をした悪魔
A:答えは聞いてない!
254
:
q
:2011/04/30(土) 04:38:46 ID:5SCLH1fw0
井上 あみ紗 1
303 25303 井上 あゆみ 1
304 25304 井上 ありす 1
305 25305 井上 えり子 1
306 25306 井上 くるみ 1
307 25307 井上 こころ 1
308 25308 井上 すず 1
309 25309 井上 すずか 1
310 25310 井上 ちはる 1
311 25311 井上 ちひろ
255
:
名前が無い程度の能力
:2011/04/30(土) 08:02:33 ID:fJy9HWxM0
>>253
ルール無視の云々はビーファイター主題歌の歌詞です。
256
:
◆cedHmDsvEg
:2011/05/01(日) 21:54:35 ID:YbwRdTGw0
>>255
ビーファイターでしたか
そもそも特撮系のクロスしてるのに
そっちを思い浮かべないってどうなんだ、自分……
ともかく教えてくださってありがとうございます
オーズのR映司っぷりに驚きつつも第八話中編投下します
以下抵抗のある方は恐れ入りますがトリップをNGに指定してくださいませ。
・この作品は「東方Project」と「仮面ライダー電王」の二次創作作品です。
・この作品には二次設定・独自設定が含まれております。
・この作品には戦闘シーンや暴力的なシーンが含まれております。
・この作品は「東方Project」及び「仮面ライダー電王」の原作及び他の二次創作作品とは一切関係ありません。
・この作品には「仮面ライダー電王」のネタバレ要素が大いに含まれています New!!
257
:
俺参上第八話中編(1/13)
◆cedHmDsvEg
:2011/05/01(日) 21:57:14 ID:YbwRdTGw0
「あら魔理沙じゃない、あんた何しに来たの? ……どしたの、目赤いわよ?」
「……私は何でもない。何でもないんだ。
なぁ霊夢。また、いつものように弾幕ごっこやら宴会やらやろうな……」
あまりにも突拍子も無い事を言い出す魔理沙に、霊夢も訝しむ。
確かに魔理沙の目は赤く、まるでさっきまで泣いていたようにさえ見える。
「どうしたのよ萃香みたいな事言い出したりして。宴会なんて昨夜やったばかりじゃない。
……私の留守中に、妙な奴らでも来たのね? 例えばそう、イマジンとか」
「ええっ!? ま、魔理沙さん、大丈夫!?」
何時もと変わらない楽園の巫女に、普通の魔法使いは安堵する。
たった今まで、おおよそ幻想郷にはふさわしくない戦いを体験していたのだから。
それでも無事でいられたのは、何だかんだで鍛えられた戦闘センスと
途中からやって来たゼロノスのお陰だろう。
しかし、イマジンが来たという事は命の危険に晒された事でもある。
その事にハナは驚きを隠せない。
「あ、ああ。何とかな。そういや、何かでっかいのも飛んでたようななかったような……
まぁいいや。今いないって事は私の見間違いだろうな」
「私らもさっき過去までイマジン退治に行って来たところよ。
でっかくなって、こっちも大変だったんだから。
まさか、こっちにも出てくるなんて思いもしなかったけど。
神社壊そうとしたって事は、あいつら私に用があるのかしらね」
魔理沙は今さっきの現在で。霊夢は一日前の過去で。それぞれイマジンと戦っていた。
その一部始終を聞いた良太郎は、イマジンが思いのほか活動的になっていることに不安を覚える。
(僕達が過去に飛んだのに合わせて攻撃してきたのかな……まさかね。
もしそうだとしたら、イマジンは僕みたいに迷い込んだわけじゃない。
目的があってここに来たことになる。そうでなければ、こんな統率の取れた動きをするはずが無い)
以前、過去に飛んだイマジンを追って行った直後、現在にイマジンが現れたという
二段構えの攻撃を受けたことがある。
些細な部分は異なるが、今回の流れはそれに近いものがあった。
「そうだ良太郎、ちょっと聞きたいことがあるんだが、いいか?」
258
:
俺参上第八話中編(2/13)
◆cedHmDsvEg
:2011/05/01(日) 22:00:02 ID:YbwRdTGw0
「何?」
魔理沙が尋ねようとした内容。それは先程共にイマジンと戦った戦士、ゼロノスについて。
細部は異なれど、使った道具や目的は、良太郎の電王と酷似していた。
魔理沙は、良太郎ならばゼロノスについて何か知ってるのではないかと思ったのだ。
その予想は、的中していた。聞けば、良太郎の答えられる範囲での答えは返ってきただろう。
ゼロノスは、かつて良太郎がイマジンと戦った際、一緒に戦った仲間なのだから。
しかし、魔理沙がその答えを聞くことは無かった。
――あれ? 私、何を聞こうと思ったんだっけかな?
ああそうだ、ゼ……あれ? 何だっけ? 出てこないや。私もとうとう呆けたか?
「……や、なんでもないぜ。聞こうと思ったんだが、忘れちまった」
「おいおい、そんな魔法使いの婆さんみたいな格好してるからボケちまったんじゃねぇのか?」
ついさっきまで、魔理沙は確かに良太郎にゼロノスについて聞こうと考えていた。
だが、その聞く事を忘れてしまった。正確には聞く事をでは無い。
聞く内容、ゼロノスについてをきれいさっぱり忘れてしまっていた。
今魔理沙の頭の中には、ゼロノスという名前のイマジンと戦う
電王とは別の仮面の戦士は存在していない。
頭の中に存在していないものを、聞くことはできない。
そんな魔理沙に対するモモタロスの茶々に対し、ハナの制裁がモモタロスの鳩尾に入る。
二つに折れてしまっているモモタロスを尻目に、ハナは一つの疑問を抱く。
「そういえば魔理沙さん、イマジンが出たとき……まさか一人で戦ったの?」
「いやいや、いくら魔理沙さんでもそれは無いぜ。結構数もいたし
私一人でどうにかできる数じゃなかった。
だから他に誰か戦ってたはずなんだが……忘れちまった。
……あ、あれ? 何でだろうな、これってすっごく忘れちゃいけない事な気がするのに
思い出せないぜ……」
いくら魔理沙に妖怪退治の心得があるといっても、イマジンの集団を
それも一人で相手にできるとはハナには考えられなかった。
何者かの協力があったはずなのだが、当の魔理沙は忘れてしまっている。
そんな相手を忘れるほど、魔理沙がそこまで薄情で無い事は霊夢が知っている。
つまり、魔理沙の「忘れた」には何かしらの抜け落ちた点が存在していたのだ。
魔理沙自身、忘れているのはおかしいと思っているのだが
頭の中に何も出てこないのでは思い出しようが無い。
259
:
俺参上第八話中編(3/13)
◆cedHmDsvEg
:2011/05/01(日) 22:02:31 ID:YbwRdTGw0
「……それは今は置いておきなさいよ。それより、早いところ良太郎さん達を里まで連れて行くわよ。
ただでさえイマジンのせいで時間食っちゃってるんだし」
良太郎らが里へ行く理由。それはイマジンについて知っている幻想郷の住人に会うため。
彼女は、里にいるらしい。もうひとつは未だ連絡がつかないウラタロスら
仲間のイマジンの手がかり探し。人間の里とはいえ友好的な妖怪もちらほらとやってきており
人間と妖怪双方の情報源を確保できるのだ。しかし、博麗神社から人間の里までは
少々距離がある。のんびり移動していたら里に着く頃には日が傾いているかもしれない。
「……そうだな。早いとこ行っちまおうぜ。
けど私はちょっと他に用のある場所があるから途中までな」
「そんなついでで案内するくらいなら最初からク……じゃなかった、私が一人で案内するわよ。
異変は異変だし、私が動いたほうが都合がいいわ」
「けどよボロ服女、おめぇ家空けていいのかよ?
マリモが言ってたみてぇに、イマジン来たらどうすんだよ?」
途中までの案内を買って出た魔理沙と違い、霊夢は最初から最後までの案内を買って出る。
しかし霊夢は神社を留守にすることで、再びイマジンに神社を襲撃されないかという
不安がついて回る。魔理沙が案内した所までで霊夢と交代しようにも
その交代待ちは時間のロスになってしまうだろう。
「それなら心配ないわ。心強い留守番係が今来たから」
そこにいたのは、昨夜モモタロスと大乱闘を繰り広げた小さな百鬼夜行、伊吹萃香。
彼女は朝っぱらから霊夢と一杯交わそうと神社にやってきたのだが、事もあろうにその霊夢に
留守番を押し付けられてしまっていた。
「むぅ、せっかく霊夢と一杯やれると思ったのに今日も留守番扱いはひどくない?」
「よぅ、小玉西瓜じゃねぇか。おめぇもそんなボロっちい服着てどうしたんだよ?」
(って言うか、鬼って朝っぱらからお酒飲むんだ……)
萃香の格好は、昨日の服装とは打って変わり、霊夢の巫女装束と全く同じものであった。
普段は萃香の方が小さいので、サイズは流石に違うようではあるが。
260
:
俺参上第八話中編(4/13)
◆cedHmDsvEg
:2011/05/01(日) 22:05:22 ID:YbwRdTGw0
「やぁお兄さんにお嬢ちゃんにオニタロス、幻想郷の朝はどうだい?」
「あんまり満喫できなかったかな……井戸に落っこちちゃったしね」
「それより萃香、さっき神社にイマジンが出て大変だったんだぜ?
お前一体そのときどこにいたんだよ? またあいつの所にでもいたのか?」
萃香は昨夜と変わらぬ調子である。神社は彼女にとって根城とまでは言わないにしても
重要な拠点である。
「そりゃ災難だったねぇ……話には聞いてたけど、運が悪いのは本当みたいだね。
それと、私が神社に来たのはついさっきだよ。私ゃオニタロスみたく
意魔人の居場所とかわからないからね」
(やっぱモモの嗅覚はイマジン探すのには便利よねぇ)
いくら萃香がモモタロスに勝てる程度の力があるとはいえ
イマジンの居場所を探す程度の能力には特化していない。
疎の力を駆使すれば、イマジンを探すのには便利かもしれないが
事前にわからなければ手が遅れる。
そういう意味では、モモタロスの嗅覚は事情も分かり
かつ即座に反応できる点で優れているといえる。
「そうだオニタロス。昨夜の約束、忘れるんじゃないよ。霊夢はこの留守番の御代として
今度宴会をやること。いいね?」
「だからその名前じゃねえっつってんだろうが。ま、何とか工面しといてやらぁ。
でもって、今度は俺が勝つからな?」
「ま、しょうがないわね。その代わり片付け終わるまでが宴会よ。
それじゃ萃香、私は良太郎さんを里まで送るから留守番お願いね」
「あ、待ってくれよ。私も途中までついていくぜ!」
萃香に見送られ、人里へと向かう5人。明確な意思を持ち巫女が神社を離れ、行動を開始した。
幻想郷に古くから住む者はこれだけで異変解決と同義と見るだろう。
しかし、当の巫女にはそんな考えは無かった。
――この異変、ちょっと長引きそうね。
お茶請けのお菓子、何種類も用意しなきゃいけないほどには。
261
:
俺参上第八話中編(5/13)
◆cedHmDsvEg
:2011/05/01(日) 22:09:44 ID:YbwRdTGw0
――――
そして早速異変解決は長引いていた。朝と昼の間頃に出発したはずの霊夢らは
太陽が頂点に差し掛かる辺りになってもまだ里についていなかった。
理由は簡単で、移動速度の遅さ。理由の一つとなっているハナも申し訳なさでいっぱいになり
霊夢に頭を下げる。
「……そういや霊夢。良太郎とモモタロスはどうしたんだ?」
「え? あんた乗せてないの? 私はハナちゃん乗せてるからいくらなんでもこれ以上は無理よ」
「ごめんなさい霊夢さん、なんだか荷物になっちゃったみたいで……」
普通に空を飛べる霊夢や魔理沙、走れば相当なスピードを出せるであろうモモタロスはともかく
良太郎とハナはそうした身体能力自体は普通の人間である。
霊夢に乗せてもらっているハナはいいとして、良太郎となるとそうはいかない。
良太郎も成人間近男性の平均よりは体重は少ない方なのだが
霊夢の背中に乗せるとなると少々負担が大きい。まして既にハナをおぶっている。
その上に良太郎など、そもそもおぶうスペースが無い。
となると、何とか乗れそうな魔理沙の箒に乗せるほうが理にはかなっているのだが。
「いや、乗せてないぜ? モモタロスの奴『俺が良太郎に憑いてひとっ走りすれば大丈夫だろ』
って言うからさ。無理に乗ってもらわなくてもいいかな、って」
「あのねぇ……良太郎さん達地上にいるのよ、私達は空の上。下はちょうど森で
そうそう上空なんて見えないし、これじゃ案内の意味が無いじゃない」
「……ったく、あのバカモモ。何意地張ってるんだか。それに良太郎の体だって持たないわよ。
ほんと、二人とも重ね重ねごめんなさい」
そう。モモタロスに憑依してもらい、全速力で走ったとしても良太郎の体が持たないのだ。
負担を軽減するためにモモタロスが良太郎を担いで移動したら、その分足は遅くなるので
それこそいつ里に着くのかわからない。そして、下が森ということは当然道に迷う
というアクシデントも発生する。
『おーいマリモ、ボロ服女、どっちだ!?』
「あっちか……おーいモモタロス、そこ動くなよー! 動くと撃つぜー?」
「はあーぁ。言わんこっちゃ無い……」
262
:
俺参上第八話中編(6/13)
◆cedHmDsvEg
:2011/05/01(日) 22:12:16 ID:YbwRdTGw0
早速、各々の足の速さや移動手段でスピードに差が出てしまっていた。
本来使えるルートは、霊夢ら「飛べる人達」を前提としたものである。
当然通常飛べない良太郎、ハナ、モモタロスには適用されない。
ハナを霊夢の背に乗せ、モモタロスは良太郎に憑依して出発することになったのだが……
それがこのざまである。
「ごめんね、足引っ張っちゃって……」
「それはいいけどよ。やっぱ予定通り良太郎は私の箒に乗ればいいんじゃないか?
そうすりゃみんな飛べるぜ」
「そうね。私でも良太郎さんはちょっと無理でもハナちゃんなら背負えるし。
良太郎さん、魔理沙に乗せてもらいなさいな」
『じゃ、俺は良太郎から離れるぜ』
魔理沙の提案は尤もである。だが、モモタロスがぐずったのである。
適当な理由をつけて魔理沙の箒に乗るのを嫌がっていたのだ。
良太郎から離れようとするモモタロスを、ハナが一喝して止める。
「何やってるの、あんたも乗る!」
『そ、そうは言うがよ。大体マリモ、お前だって俺ら乗っけたらバランス取れないんじゃねぇのかよ?』
「それなら心配ないぜ。良太郎、一つ確認したいんだがモモタロスに憑依されたからって
別にその分重くなるわけじゃないんだろ?」
「それは大丈夫だと思うけど」
イマジンに憑依されたことによる憑依者の体重の増加は通常、起こらない。
となると、M良太郎の状態で乗せたほうが魔理沙の重量的負担は少なくなる。
「なら大丈夫だ。箒にちゃんと捕まってくれれば大丈夫だと思うぜ」
「そうそう、早く乗りなさい。高所恐怖症じゃあるまいし。
そうでなくても私達が飛べないせいで足引っ張ってるのよ?」
(モモタロス、ここは乗せてもらおうよ)
『……わ、わーったよ!』
渋々、M良太郎が魔理沙の後ろに跨る。バイクには乗ったことのあるM良太郎だが
さすがに箒を乗り回したことは無い。
箒はモモタロスにとって振り回すものであり、乗るものではない。振り回すものでもないのだが。
格好としては先程デンライナーでギガンデスを倒したときを想起させる形だ。
操縦は魔理沙、デンバードの代わりに箒。少女の箒の後ろに青年が跨るという
いささかシュールな光景になっていた。
263
:
俺参上第八話中編(7/13)
◆cedHmDsvEg
:2011/05/01(日) 22:14:13 ID:YbwRdTGw0
「じゃ、しっかり掴まれよ?……あんまり変なとこ触っちゃやだぜ?」
『馬鹿言ってねぇで飛ぶならさっさとしやがれ!』
「さ、私達も行きましょ」
少女の後ろに、箒にしがみついているM良太郎を魔理沙がからかった後
改めて霊夢も背中にハナを背負い空から人里へ向けて行く事になった。
が。
『うわあああああ!? お、おいマリモ、高い! 高いっつーの!』
「しゃべんなよモモタロス、舌噛むしよく聞こえないぜ」
「魔理沙ー、あんまりアクロバット飛行しちゃだめよー?
良太郎さんもモモタロスも飛ぶの慣れてなさそうだし」
「……あの、私もこうして飛ぶのなんて初めてなんですけど」
モモタロスは箒に跨ったことがなければこうした形で空を飛んだことも無い。
デンライナーの変化といい、慣れない事に対しては結構うろたえる性質の持ち主でもあったのだ。
これが地上ならば転げまわるだけでいいのだが今は空中。落ちればただではすまない。
後ろでイマジンの力で暴れられては、さしもの魔理沙でも操縦感覚がおかしくなる。
『ま、マリモ! しっかり操縦しろってんだよ!』
「も、モモタロス、暴れるなっ! 本当に落ちちまうぜ!」
(モモタロス、落ち着いて! お、落ちる! 落ちるってば!)
箒の操縦を握る魔理沙だが、後ろで自身以上の力で暴れられては制御も利かなくなる。
既に魔理沙はM良太郎を乗せたまま、あらぬ方向へ不規則な軌道で動き始めている。
こうなれば、落ちないものも落ちる。
(およぉぉぉぉぉぉ!?)
『あぁぁぁぁれぇぇぇぇぇ!!』
「今度は私もかよぉぉぉぉぉ!!」
それは既に、ものが飛ぶという軌道ではなくなっていた。急上昇、急降下、錐揉みなんでもござれ。
まだ森は抜けていない。このままではまた森に落ちてしまう。
やむなく、霊夢がスペルカード発動の体勢に入る。
264
:
俺参上第八話中編(8/13)
◆cedHmDsvEg
:2011/05/01(日) 22:17:47 ID:YbwRdTGw0
「こうなったら仕方ないわね。弾幕で軌道を無理やり変えてやるわ!
魔理沙、良太郎さん、痛みは一瞬よ!」
「ええっ!?」
結界「拡散結界」
霊夢から放たれた結界は、暴走する魔理沙の箒を押し出すように展開される。
クッションにはなりえなかったが、森に墜落するのだけは避けられた。
しかし地上に思いっきりたたき付けられる形となるため、今度はクッションとなる木が無い。
弾幕結界の衝撃で魔理沙の箒にしがみついているM良太郎から、モモタロスが剥がれ落ちる。
そのまま、モモタロスだけ先に地上に落ちてしまっていた。
モモタロスは体を擦りながらふと上空を見上げると、未だ制御を失っている魔理沙の箒がある。
しかも墜落コースだ。
「いつつ……あのボロ服女、後で覚えてろよ……あン?いや、こりゃかえって好都合かもな。
おーいマリモ、最悪俺に向かって突っ込んで来い、いいな!?」
「わ、わかった! 遠慮はしないぜモモタロス、でもいつぞやみたいなのは勘弁だぜ?
もう私はまずいコーヒーなんて飲みたくないからな!」
体をさすりながら、モモタロスは墜落しようとしている魔理沙の箒を見上げる。
イマジンの力で振り回されその後霊夢の弾幕で吹き飛ばされているので
もはや魔理沙自身の力だけでは制御できなくなっている。
せいぜい、どこに墜落するかを選ぶことができれば御の字である。
ならば、モモタロスに受け止めさせる。激突の衝撃で、モモタロスが
魔理沙に誤って憑依してしまった例があるため、迂闊なことはできない。
チャンスは一回。モモタロスが魔理沙をうまく止めることができれば大成功。
箒は、何とかその軌道をモモタロスの方角に向けることができた。
それ自体が弾丸のような勢いで突っ込む魔理沙の箒。魔理沙のスペルカードに似た技はあるが
今はただの事故なのでスペルカード宣言どころではない。
ただ、最悪モモタロスに激突したときの威力は同等だろう。
「へっ、酒よりかはうまいんだがなアレ。さぁて……今だマリモ、良太郎! 手ぇ離せ!!」
モモタロスが取った体勢の立て直しの方法。それは、箒を掴むのではなく
魔理沙と良太郎を抱える形で箒から離れさせる方法。
二人に怪我は無いが、魔理沙の箒は奥の木に激突してしまっている。
恐らく、あの木にいた妖精は気絶しているだろう。一回休みという程ではないが。
265
:
俺参上第八話中編(9/13)
◆cedHmDsvEg
:2011/05/01(日) 22:20:13 ID:YbwRdTGw0
「……ふーぅ、何とかうまくいったな。二人とも怪我ねぇか?」
「ああ、っていいたいとこだが、背中が痛いぜ。
良太郎は大丈夫なのか? 私は背中に目は無いから見えん」
下手をすればモモタロスのラリアットが魔理沙に炸裂していた状態であったが
それだけは運良く避けることができた。だが、運良く避けられたのは魔理沙だけであった。
後ろの良太郎は、そのまま魔理沙に激突する形になってしまっていたのだ。
「ん……? お、おい良太郎!? 大丈夫か、しっかりしろ!!」
「だ、大丈夫だよモモタロス。それよりみんな怪我は無い?」
「あんまり魔理沙さんをなめちゃ駄目だぜ良太郎? なんたって私はイマジンを……
……って、これ良太郎に自慢してもしょうがないよな。ま、とにかく私は大丈夫だ」
遅れてくること数刻、原因の数割を生み出したであろう巫女が少女を背負い空からやってくる。
ドヤ顔で弾幕をお見舞いした霊夢は、悪びれる様子も無く魔理沙達の容態を心配している。
モモタロスも表情こそあまり変わらないが、相当頭にきている様子である。
元はといえばモモタロスが暴れたからこうなったのだが、お互い自分のことは棚に上げている。
「魔理沙、良太郎さん、大丈夫?」
「モモタロスのおかげでな。っつーか、誰のせいだ、誰の」
「はぁ。元はといえばモモ、あんたが暴れるから悪いんでしょうが」
「へーへーすんませんでしたハナクソ女さんにボロ服女さん」
今すぐにでもハナ・霊夢とモモタロスの殴り合いの喧嘩に発展しそうだが
普段でもモモタロスはハナに対し分が悪いのに、その上霊夢まで加わっている。
モモタロスの負けは確定的だが、モモタロスの側に魔理沙が加わり
また話がややこしくなっている。
そんな険悪ムードを吹き飛ばすかのように、良太郎が突然声を上げる。
「ちょっとみんな、喧嘩してる場合じゃないでしょ。それより、あそこにお店があるんだけど……
霊夢さんか魔理沙さん、何のお店か知らない?」
「ん? お、ちょうどよかったぜ! ここが私の目的地『香霖堂』だ!」
そこには、おおよそ周囲から浮いている一軒の店があった。
店の表にはあらゆる物が雑然と並べられており、下手をすればごみ屋敷と見紛うほどである。
その雑然としたごみ――売り物らしき物の中には、良太郎の見た事のある物もあった。
幻想郷の中でも一際珍しいものを並べている小道具屋。それがこの『香霖堂』である。
266
:
俺参上第八話中編(10/13)
◆cedHmDsvEg
:2011/05/01(日) 22:22:44 ID:YbwRdTGw0
その店先には、一人の少女がいた。人間には無い羽根を持った彼女は
本を携えて店先に佇んでいる。先日、アイビーイマジンと契約し
良太郎らに救われた妖怪の少女である。
「あ。君は確か……」
「はて。どこかでお会いしましたっけ? それはそうと、このお店の店主は今留守だそうですよ?」
見れば、確かに店の入り口には張り紙がしてある。
とても販売業を生業としているとは思えない、味気の無い事務的な文章でそれは記されていた。
――商品入荷のため、本日休業 〜香霖堂店主 森近霖之助〜
「何だ、香霖は留守か。なぁ、何処行ったかは知らないか?」
「昨日から無縁塚の方へ行ったそうですけど。
今日も無駄足か、ここで本を読むのが好きなんですけどね……」
「珍しいわね。もう秋のお彼岸は過ぎたってのに。霖之助さんの事だから
お彼岸の時に行ってきたはずなんだけど」
無縁塚。死後、縁故のある者に供養されぬ者達が眠るとされる場所。
幻想郷において、それは外の世界からの来客とほぼ同義である。
それ故に、外の世界と引き合う事が稀にあり、幻想郷にとって珍しい道具が落ちている事も
少なくは無い。香霖堂の商品には、無縁塚由来も少なくは無い。
「ま、今日の夜までには戻ってくるだろうな。今日、人里で天体観測会があるんだ。
香霖もそれを楽しみにしてたからな。だから私はちょっとこの辺で待たせてもらおうことにするぜ」
「ああ、そういや今日って言ってたわね。けど悪いけど私はパスね。
いくら留守番置いてるとはいっても夜に神社は空けたくないし」
最近行われているらしい人里の天体観測会。星に興味のある者は人妖問わず参加者を募るうちに
いつの間にやら小さな宴会程度の規模になったといわれている。
霖之助や魔理沙も例外ではなく、それを楽しみにしていたのだ。
「へぇ、そんなのやってるんだ。幻想郷はよく星が見えるから、姉さんに見せたら喜ぶかな」
「……色々な意味でお勧めしないわね、私は」
267
:
俺参上第八話中編(11/13)
◆cedHmDsvEg
:2011/05/01(日) 22:24:43 ID:YbwRdTGw0
良太郎の姉・野上愛理もまた、星に想いを馳せる女性である。
天文学者である婚約者の影響で、星にまつわる本を集めた喫茶店を開く程度には
興味を抱いている。そんな彼女が、もし幻想郷の夜の星空を見ることがあれば
思うところの一つや二つはあるだろう。しかし幻想郷はただの人間にとっては
優しくない場所でもある。こんな所にでも来なければ、いまや満天の星空は
眺めることができないのだ。
「良太郎の姉さんか。やっぱ電王なのか?」
「いや、さすがにそれは無いよ」
電王である良太郎の肉親という事は、姉もまた電王なのだろうか、と魔理沙は考える。
しかし電王はそう簡単になれるものではない。良太郎が電王になったのは
あくまで不運と偶然と不運が重なったに過ぎないのだ。
良太郎はそんな魔理沙の質問に苦笑しつつ即答で否定するが
その後の言葉は飲み込んでいる。
――電王じゃないけど。前の僕の、電王の戦いの中ではとても重要な位置にいた。
と。
「まぁ、今良太郎さんのお姉さんの事について話してる場合じゃないわよね。
香霖堂まで来たって事は、里はここからそう遠くないわ。早いところ行きましょ。
ここからはそれほど入り組んだ道もないし、私についてきさえすれば迷うことは無いわ」
「おっと。それじゃ私はここまでだ……そうだ良太郎。前に言ってたケータロス
ってやつの事については私から香霖に聞いておくぜ。
あいつは道具に関しては詳しいからな。じゃ、気をつけて行ってこいよ」
「うん、魔理沙さんも気をつけてね」
「じゃあな、マリモ!」
危うく、良太郎の姉の事についてあれこれ話しそうになる流れを変えるべく、霊夢が先陣を切る。
ここから人里は、それほど距離は離れていない。
しかし、足の一つでもあった魔理沙はここで人里行きのグループから離脱する。
霖之助に用事がある以外にも、人里に行きたがらない様子がちらほらと見え隠れしているが
それは霊夢以外の面子には察することはできなかったし、今はそれを言及する時でもない。
魔理沙と別れ、霊夢の案内の下良太郎、モモタロス、ハナは再び人里への道を進み始める。
268
:
俺参上第八話中編(12/13)
◆cedHmDsvEg
:2011/05/01(日) 22:26:42 ID:YbwRdTGw0
「ボロ服女、こっから先は入り組んだ道は無いんだな? だったら良太郎、デンバードで行こうぜ」
「初めからそれ使いなさいよ……ってわけにも行かないか。今まで森越えだったものね。
あれ、障害物の多いところを走るのには向いてなさそうだし」
モモタロスが良太郎に憑依しなおし、デンライナーのパスをかざす。
どこからとも無く、エンジンの音を響かせてそれは到着した。
マシンデンバード。デンライナーの操縦桿にして、電王の専用バイクである。
ひとりでに走るデンバードに、霊夢は驚きを隠せない。すかさずハナに突っ込まれるが
バイクという乗り物をよく知らない霊夢には無理からぬことであった。
『ところでボロ服女。おめぇ、デンバードより早く飛べるか?』
「何だか馬鹿にされてる気もするけど。ま、やってみないことにはわからないわね。
何なら競争でもする?」
マシンデンバード。通常走行時でさえも時速360kmを誇る電王のバイク。
対する霊夢は空を飛べるとはいえ、高速飛行に特化しているわけでもない。
せいぜい、走るよりは早く動ける程度だ。
『言っとくが俺は、バイクの操縦でも最初からクライマックスだからな? ハナクソ女、後ろに乗れ!』
「いいわ。外の世界のバイクって乗り物が、どの程度か見せてもらおうかしら」
そんな両者の競争の結果は、火を見るより明らかであった。
あっという間にM良太郎の操縦するデンバードは、後ろにハナを乗せたまま
霊夢の前から走り去ってしまったのだ。
「ちょ、ちょっと! 私より先に行ってどうするのよ!
こら、そっちじゃないわよ、待ちなさいってば!!
……あーもう、外の世界の乗り物って幻想郷の妖怪以上に化け物ばっかね!
あんなのが幻想郷で一杯走ろうものならとんでもないことになるわよ……」
結局、一行が人里に着いたのは既に太陽の光は西日になろうかというような時間であった。
高速で空を飛ぶ天狗はいても、高速で地上を走るモノは珍しい幻想郷において
デンバードは新聞記事になったとか、ならなかったとか。
269
:
俺参上第八話中編(13/13)
◆cedHmDsvEg
:2011/05/01(日) 22:30:09 ID:YbwRdTGw0
――――
人里への入り口。太陽が最も高くなるであろう時間にゼロノスはそこにいた。
マシンゼロホーンから降り、バックルに刺さっていたカードを抜く。
緑色の、光り輝く切符のようなオーラとともにゼロノスの姿は
寺子屋で天文学について教えている桜井へと姿を変える。
抜き取ったカードは、粒子化して消えてしまっていた。
(これは……また怒られるな)
里に入ろうとする桜井を、門番を勤める里の男が止める。
「すみません。この辺りでは見かけた記憶がありませんが、外の世界の方ですか?」
確かに桜井は外の世界の人間である。だが、門番に出入りを止められるような人間でもない。
今年からではあるが寺子屋の新しい先生として、里に住んでいるのだ。
そんな人間が、出入りを止められるわけが無い。
人間の里は、外の世界の街に比べれば当然、狭い。
古くからある田舎社会が、そのまま残っているような社会である。
そんな社会で、寺子屋の新しい先生ともなれば、里において知らない人間などまずいない。
まして、つい二、三日前に来たわけでもない。呼び止められる理由は二つある。
一つは、門番自身が里にとって新入りであること。そしてもう一つは――
「待て待て、その殿方は私の知己だ。通してやってくれ」
「あ、これは失礼しました」
寺子屋で歴史を教えており、寺子屋を立ち上げた第一人者である上白沢慧音。
彼女の口添えにより、桜井は無事里へと入ることができた。
門番も、初めは納得していなかったようだが
慧音の知己であることもあり、無碍にはできぬとして、桜井を通すことにした。
しかし、慧音の表情は極めて厳しい。今日の授業は終わったのか
桜井を自宅に招きいれ、一室に通す。
互いに向かい合うように、畳の上に並べられた座布団へと腰を下ろす。
270
:
◆cedHmDsvEg
:2011/05/01(日) 23:08:09 ID:YbwRdTGw0
というわけで八話中編でした。
先日載せ忘れた件も含めセルフQ&Aを載せておきます
Q:意魔人?
A:イマジンです。イマジネーションの魔人、ということで。
イマジネーションは想像、の意味ですが「想魔人」でイマジンと読ますのはちと無理があるので
イマジンの願いの解釈並に強引な解釈をして「意」の字をあてました。
ちなみにイマジンを知ってる人は基本カタカナ呼び、幻想郷でイマジン(モモ達以外)に
あまり縁の無い人達は基本漢字呼び、としてあります。
Q:森越えしてた理由
A:博麗神社〜人里の場合ですと、今作限定の地理ですが
人里←→香霖堂←→魔法の森←→博麗神社
となってます。当然別ルートもありますが、今作ではこれが一番近道という設定です。
でも当然飛べるからこその近道であり、飛べない人達には……そしてこのざまである。
Q:朱鷺子が良太郎を忘れてる不具合
A:仕様です。契約完了時、基本的に契約者は意識が朦朧としています。
記憶を介してイマジンを過去に飛ばす、飛ばれるのは
契約者に心的ダメージが大きいようですし。妖怪の場合後遺症が出てもおかしくないレベル。
つまり一連の事件は夢だと思っており、元々良太郎との面識が無い場合
良太郎との面識は無いも同然です。精々「夢の中に出てきたよくわからない人間」です。
Q:霊夢が朱鷺子をボコらなかった理由
A:ボコる以上に急いでました。なので、人里についた直後
遅くなる原因を作ったモモタロスは霊夢にお仕置きされてます。
271
:
名前が無い程度の能力
:2011/05/15(日) 01:25:11 ID:cyAFqNb20
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