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お題でマイナーカプを語るスレ

270名前が無い程度の能力:2013/08/18(日) 13:46:22 ID:9oCDzPIs0
>>261 めーレミ

ガラガラガラガラ―――
紅魔館の庭園は薔薇の盛りを過ぎて、青々と茂る葉っぱだけの地味な風景だ。そんな庭園を一台の台車が通って行く。
無論、全自動なんて便利な機能や魔法は付いていない古めかしい木造の台車には、押す者が必要である。
台車にはみ出るくらいの白いシートに包まれた大きな荷物の影に隠れて、赤髪の少女がのんびりと押していた。
台車に乗せているとはいえ重さ数百㌔㌘はあろう荷物を軽々と押している少女の名は紅美鈴。この館の門番である。
美鈴はやがて庭にある掘立小屋の前で台車を停めると、さっと襟元を正して手櫛で髪を整えた。
コンッコンッ――
「お嬢様、紅美鈴ただいま戻りました」
「……入りなさい」
チョコレート色の扉をノックして美鈴が名乗ると、部屋の中から凛然とした声が返ってきた。
美鈴はその声に従い、扉を開けて台車を部屋に搬入する。後ろ手に扉を閉めると、そこは天井の高い飼育小屋だった。
美鈴に返事をしたのは無論この飼育小屋の主ではない。その飼い主・レミリア嬢である。
一方の部屋の主はチュパカブラという吸血獣。美鈴が運んできた荷物を見るや否や、嬉しそうに飛び跳ねた。
「くすっ、この子ったらさっきまで大人しかったのに、ご飯が来たら急に元気になったわ」
「誰しもお腹が空いていれば大人しくなりますよ……よいっしょっと!」
チュパカブラの行動にレミリアは可笑しそうに表情を綻ばせた。美鈴が台車のシートを外すと、巨大な水牛が姿を現した。
美鈴が仕留めてきた水牛に、チュパカブラは勢い良く牙を突き刺して血を吸い始めた。
その様子をレミリアと美鈴は静かに眺めている。ふと、レミリアが昔を懐かしむような口調で語り始めた。
「ふふっ、この館も随分と住人が増えたわね。思い出すわ、貴女がやって来た頃のこと……」
「食いっぱぐれた野良妖怪でしたからね。青二才で、雇っていただいてからも随分と反逆しました」
「咲夜が来るまでは貴女がメイド長だった。お料理とお茶を淹れるのは上手かったけど、それ以外は全然ダメだったわね」
「たはは…それは手厳しい」
レミリアの辛辣な評価に美鈴は苦笑いを浮かべた。チュパカブラは満腹なのか、水牛から離れてレミリアの足元で蹲っている。
しゃがみ込んでレミリアはチュパカブラの頭をそっと撫でる。美鈴は血抜きされた水牛の片付けに取り掛かっていた。
「ふふっ、可愛い。ねぇ、今度は湖にネッシーでも飼わない? きっともっと楽しくなるわ」
「ははは、それはまた豪気な話ですね。紅魔館はちょとした大家族ってとこでしょうか」
「えぇ、フランやパチェや咲夜や小悪魔、妖精メイドもホフゴブリンもツパイも、そして貴女も大事な家族よ。だから…」

―――これからもよろしくね、美鈴。

「はっ、はいっ!」
そう言って微笑むレミリアを、美鈴は一瞬目を見開いて驚いた表情を浮かべ、しかしすぐ直立不動で敬礼した。
美鈴にとってレミリアからの労いの言葉は久しぶりだった。それだけに青天の霹靂のようなレミリアの言葉に美鈴は感極まった。
「(嗚呼、この方の下に居て良かった。この方が主人で本当に良かった。)」
美鈴はそう思い、いっそう業務に励む事を心に誓った。珍しく昼寝をしない美鈴を咲夜が不気味がったのは翌日の話である。【終】


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