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お題でマイナーカプを語るスレ

268名前が無い程度の能力:2013/08/12(月) 18:04:28 ID:VIpHO29Q0
>>257 咲フラ

レミリアお嬢様が風邪を召された。鬼の霍乱とは将にこの事だ。
お嬢様が弱っている今こそ千載一遇のチャンス。これを契機に淡白になった主従関係を見直してもらわなければ!
その為には多少は鬱陶しがられてもお世話を焼いてアッピールしなければなるまい。最近は自立心が芽生え、私のお世話が拒まれるのだ。
私、紅魔館のメイド長を務める十六夜咲夜は燃えていた。部下の妖精やホフゴブリンが引くくらい燃えていた。
正直、朝食のミルク粥を「あーん」って食べさせただけでもうあまりの可愛さに胸が張り裂けそうだった。
雨に打たれた仔犬みたいな表情で、深紅の瞳も熱っぽく潤んで、汗をかいているせいでいつもより濃厚な匂いが漂って…
とにかく今のお嬢様の姿は庇護欲というか母性本能をピンポイントでくすぐるのだ。
お嬢様は朝食とお薬を召し上がられて、今はお休みになられている頃だ。汗を大量にかいたままでは病状が悪化してしまう。
私はしっかり乾かしたタオルと熱めの蒸しタオル、それにリンゴと下ろし金を携えてお嬢様の部屋を訪ねた。
コンッコンッ―――
規則正しく2回ノックした後、わたくしは返事を待たず扉を開けて入室した。お嬢様は眠っていると予想していたからだ。
だが、部屋に入って正面のキングサイズのベッドの傍らには、見慣れた鮮やかな羽が静かに佇んでいた。
「お見舞いですか、妹様?」
私はタオルやリンゴを乗せた盆をテーブルの上に置きながら、妹君のフランドールお嬢様に声をかけた。
「んっ……別に、ただ様子を見にきただけ」
お見舞いと言う単語がお気に召さなかったのか、妹様は不機嫌そうにツンッとそっぽを向いてしまう。
お嬢様は思ったほど汗をかかれてはいないようだ。私は踵を返して出ていこうとする妹様を呼び止めた。
「リンゴでも召し上がりませんか? お嬢様はしばらくお目覚めにならないでしょうから……」
「………ぅん」
小さく頷いて妹様は近くの椅子へ腰掛けた。私は得物のナイフを取り出すと、リンゴを素早く八等分に切り分けた。
「ウサギとアルマジロ、どっちがいいですか?」
「アルマジロなんて出来るんだ……」
私の一芸に少し目を丸くして妹様はアルマジロをリクエストした。アルマジロの形に皮を剥いたリンゴを手渡す。
しばらくは私も妹様も黙っていた。妹様がシャリシャリとリンゴを咀嚼する音と、お嬢様の寝息だけがお部屋に響いている。
「ねぇ、咲夜……お姉様の具合良くなる?」
ポツリと呟いた妹様の質問に、私は一瞬雷に撃たれたような感覚に陥った。思わずお嬢様の顔面に濡れタオルを落とす所だった。
狂気と破壊能力によって幾世紀も地下へ軟禁されていた妹様。そんな妹様がお嬢様の容態を心配なさっている。
「えぇ、ただの夏風邪ですよ。一晩お休みになれば元気になりますわ」
「そう、良かった……」
そう言って微笑むと妹様はパタパタと足早に部屋を出ていかれた。その横顔に、かつての頽廃的な情緒不安定さは見受けられない。
私の知らない所で妹様も成長されていた。思えば、霊夢や魔理沙が異変解決で乗り込んできて以来、妹様にも数人の来訪者がある。
魔理沙はいつも妹様と遊んでいくし、こいし様やぬえ様は私が気付かぬ間に妹様の部屋へ闖入していて友達になっている。
「ふふっ、きっともっと素敵な館になるわね……」
蒸しタオルでお嬢様の身体を拭く準備をしながら、私はこの館の未来を思い巡らして静かに笑った。【FIN】


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