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別れる者と異世界の小さな旅
30
:
レオン
:2006/09/21(木) 17:07:37 ID:X3oxlF8g
「ルー、ちょっと来て」
皆が休憩している時、フレイムはリウを宿から少し離れたところに連れて来た。
木が生い茂っていて、人が来る事など無いように静かな場所。
「・・・何だ?」
何時に無く急いでいる様子のフレイムに、リウは訝しげに尋ねる。
フレイムは、真剣な表情で口を開く。
「あんま言いたくないんだけど、ルーには聞いといて欲しかったんだ」
誰にも言わないでね、と声を潜めて付け足す。
深刻な話のようだったので、リウも真剣な表情になる。
「・・・あたし達から見た“敵”が、あたしの知り合いだって事は知ってるよね?」
リウは小さく頷く。
――知っていたのか。
リウは、まだ誰にも言われていないはずなのに、いつの間にか知っていたフレイムに驚く。
「あたしは、多分あっちの人達を殺せない」
リウはやはりか、と言う顔をする。
――馴染みの仲間を殺す事は、フレイムには出来ない。
その事を、リウはフレイム自身よりも良く分かっていた。
性格が全然違う二人だが、仲が良いのだ。
まだ短い付き合いだが、互いの事を良く知り、話し合う良い仲間となっていた。
「・・・だから、あたしは、この戦いが終わったら――・・・」
その言葉は、途中で途切れた。
だが、その先の言葉が何か、リウは痛いほどよく分かっていた。
「あちら側に付く、か・・・」
少し悲しげに呟かれたその言葉は、ただむなしく消えた。
「・・・・・・ごめん。あたしは、ルーを裏切る事になる」
触れれば壊れてしまいそうな、切ない声。
それでいてはっきりと、決意を秘めた声。
リウは分かっていた。
彼女が他の世界の人間である以上、ずっと共にはいられないのだ。
リウは、戸惑いがちに口を開く。
「・・・一つ、誓ってくれるか?」
フレイムは、僅かに頷いた。
リウは、それを確認して話を続ける。
「・・・たとえ敵になったとしても、ずっと友で在る様に」
そう言って差し出されたのは、六本のナイフ。
薄い、透き通った蒼の宝石の刀身。
それは、木漏れ日を浴びてきらきらと輝いた。
リウは、それをフレイムに手渡す。
「誓いの証だ」
フレイムは、そのナイフを受け取った。
ありがとう。
言葉にされる事は無かったが、フレイムの口は確かにこう呟いた。
フレイムは微笑むと、自身の首に下がっているペンダントを取る。
銀で、十字架をモチーフにして作られたそれの中心では、紅い小さな宝石が輝いている。
それをリウに渡して、拳を突き出す。
「あたしからも誓い! ・・・互いを忘れないで居る様に」
リウも静かに微笑むと、互いに強く拳をぶつけ合った。
風は、彼女等の髪を、木々の葉を揺らした。
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