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のこのお部屋。第58回。

133名無しさん♪:2008/05/04(日) 02:45:53
電車の入口のすぐ近くに空いている席があったから、
私はそこへそっと私のお道具を置いて、スカアトのひだをちょっと直して、
そうして坐ろうとしたら、眼鏡の男の人が、
ちゃんと私のお道具をどけて席に腰かけてしまった。
「あの、そこは私、見つけた席ですの」
と言ったら、男は苦笑して平気で新聞を読み出した。
よく考えてみると、どっちが図々しいのかわからない。
こっちの方が図々しいのかも知れない。
仕方なく、アンブレラとお道具を、網棚に乗せ、
私は吊り革にぶらさがって、いつもの通り、雑誌を読もうと、
パラパラ片手でペエジを繰っているうちに、ひょんな事を思った。

自分から、本を読むということを取ってしまったら、この経験の無い私は、
泣きべそをかくことだろう。それほど私は、本に書かれてある事に頼っている。
一つの本を読んでは、パッとその本に夢中になり、信頼し、同化し、共鳴し、
それに生活をくっつけてみるのだ。また、他の本を読むと、たちまち、
クルッとかわって、すましている。
人のものを盗んで来て自分のものにちゃんと作り直す才能は、
そのずるさは、これは私の唯一の特技だ。本当に、このずるさ、
いんちきには厭になる。毎日毎日、失敗に失敗を重ねて、
あか恥ばかりかいていたら、少しは重厚になるかも知れない。
けれども、そのような失敗にさえ、なんとか理窟をこじつけて、
上手につくろい、ちゃんとしたような理論を編み出し、
苦肉の芝居なんか得々(とくとく)とやりそうだ。


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