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音楽指定で即興するけどお題ある?

287保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:46:16 ID:T8QZhQM6
FMJはおっさんの脇腹を貫通し、さらにいくつかの肉を殺ぎ取っていった。
脆い。筋肉も細胞も、脆い。
恐らく他の臓器…小腸大腸はもちろん、あるいは肝臓も。
中国北方工業工司製。鉛を軟鉄で被甲し、鍍金したFMJ.
貫通力が高く、しかし今だばだばと血が噴出しているのは肝動脈を傷つけることができたからだろうか。
長くは持たないだろう。
しかし、おっさんはまだ動けていた。こちらを振り向こうとしたその状態から、自身の身に起こった事態を一瞬で整理し、背後の暗殺者(そんな高級なものじゃないけど)から生還するべく、取った行動は。

きちんっ

びぃぃぃいいいいいいいーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!

おっさんが抜いたのは、小中学生も持っている程度の品物ではあったが、実に侮れない音域を備えた防犯ブザーだった。助けを呼ぶには効果的だ。ちなみに携帯に付いたミッフィーのストラップがそれだった。似合わねぇなぁ。

そしてそれは、チキンな長崎の恐怖心を大きく揺さぶるものだった。

――だぁん

抵抗…は、したものの、後はくず折れるだけと言うほど出血を被ったおっさんに向け、さらに残りの一発を撃ち込む。
膝をついたおっさんの脳が吹き飛ぶのが見えた。

――死んだ。

撃った。殺した。死んだ。吹き飛んだ。殺した。殺した。殺した。殺した。
怒涛のように押し寄せる思考を無理やり押さえつけ、とにかく逃げると言う最大目標を実行。
言われたとおりに、その場に銃を放棄して。

長崎は裸足のまま、雨の中を。
犯行から、警報音から、現場から、自分を追い立てるあらゆるものから、逃げ出して、走った。

288保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:47:55 ID:T8QZhQM6
――その後。
あっけなく、逃げも隠れも出来ぬまま、長崎は容疑者として手配される事になる。
まったくの偶然に、長崎は県警が彼女のアパートを押さえ、長崎を待ち受けている事を発見。
その情報源は捜査ではなく、垂れ込み。
匿名の情報により、華東会に借りた借金のカタに暗殺の依頼を受けた長崎が、同・華東会日本関東支部後見人、馬 正角(マー チョング)を殺害した事がほぼ断定される。

目撃証言等にあわせて、朝方帰宅した同居人、

最上 みちる 

の任意同行により得た情報、すなわち犯行当夜、夜も遅いと言うのにサングラスをかけた893風の男が現れ、

『イ尓好ー!あw背drftgyふじこlp;@:「」...........』

と中国語らしい言葉でまくし立て、それを理解できない風でいると、やや重苦しそうに、日本語で

『どうも夜分遅く申し訳ありません。長崎さんはご在宅でしょうか。』

と言いだした。まだ帰ってきていないと答えると、

『あーそうでしょうね、実は長崎さん事故に遭ってしまわれまして……実は少々危ないかもしれません。至急病院のほうまで来ていただけますか?』

あわてた彼女はすぐに支度を整え、その男の用意したタクシーに乗り込んだ。
そして男は、

『自分は長崎さんのご両親の方にも行かなければなりません、先に行っててください』

と言って、彼女を乗せたタクシーは発進した。
その後、彼女は県内で一番大きい病院に運ばれ、そこで受付に長崎はどこにいる、と問うも、
そのような患者は来ていない、もし担ぎ込まれた重篤患者だと言うのなら、名前を確認できていないものがいる。
ERはその角を曲がった奥だ、必要が無ければ立ち入らないで欲しい、座って待ってろ。
と言われ。

そうして彼女は明け方までそこで待ち続けた。
祈り続けた。
しかし、午前五時。
緊急処置を必要とする最後の一人まで見送ったところで、彼女はそこに長崎がいない事を知る。
ケツの穴に悪ふざけでゆでたまごを突っ込み抜けなくなり、やむなく通報し処置を受けたバカな宴会大学生を見送りながら、彼女は思案した。
その場で受付に頼んで、県内と隣接する件の病院にも問い合わせたが、長崎はどこにもいなかった。
これは明らかに。
なんらかの思惑による彼女の誘導であったと考えるべきで。

どうして先に私の所にこれたのだろう?

彼の所在としては正しい。しかし彼は今現在住所不定だ。あくまで居候、ヒモでしかない。それを彼が誰に公表したと言うことは無い。いまだに彼女は契約上一人暮らしなのだ。そのアパートに、長崎を求めて人が来た。実家よりも先に。

そもそも、彼はなぜ最初に広東語だったのか、が引っかかった。それも警察に報告した。

彼女は話しながら、見えぬ長崎を求めていた。
彼に速く伝えたい事があった。

彼はどこにいるの?
彼は無事なの?
なぜ警察がこんな事を聞ききにくるの?
彼に、

なにがあったの?

289保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:48:27 ID:T8QZhQM6
その問いには、その時点で警察関係者は答えを持ち合わせていなかった。
しかし証言から類推。
既に概要は見えていた。

――内部抗争。その引き金である。
そしてそれを裏付ける証拠が出てきた。

彼女の許可を得た上での家宅捜索……の、ようなもの。立会いの上で、同居人と言う不特定な人間の痕跡、足跡を洗う。
そして出てきた。

長崎が華東会に多大な借金を作っていたこと。
その催促を受けていたこと。
そして訪れたと言う中国人らしき男。若かったと言う。

華東会はここ十年ほどでこの辺一帯に大きな力を持つようになった中華系マフィアである。
近年の捜査でどうやら内部に亀裂……旧体制派と新体制派……初期においてこの街で地元ヤクザと抗争を繰り広げ、鉄板事業で手堅くシェアを確立した旧体制派と、この一年くらいで流入してきた本国の幹部、呉 化竜(ウー ホンロン)を中心とする、闇金、ワンクリック、不法請求、クラッキングを含めた情報搾取、その他インテリ層的活動で一気に規模を拡大させている新体制派。呉は、瀋陽は東北大学の出でなるほどコネばかりが目立つが、それだけに止まらない優秀な人材である事は明らかだった。
その新体制派だが、その急進力ゆえに旧体制派をまとめて失業させる脅威を持っていた。当然これに反発するも、この不景気である。早々使える奴ばかりでもなく、結局後見人と新幹部との間で緊張関係が続いている。

さらによくない事に、彼らには共通の敵がいなかった。

現在ちまちまと闇金や献金で繋いでいる地元ヤクザもいるにはいるが、それは既に威厳を失い、限られた枠の中での活動を余儀なくされている。
まぁ、そんな状況を許している警察の肩身が一番狭いんだけどね。

そして今回の後見人殺害である。
反発した歴戦の兵が一体どういう行動に出るのか。
実行犯には死と言う制裁を。
差し向けたものにはやはり死の制裁を。

昨晩の殺害現場。地元警察が到着するのと、風俗店店主の通報により駆けつけた華東海構成員到着はほぼ同時だった。
現場を保存する間もなく、急をつけてきた若い巡査二人は五人の実戦経験を持つ構成員と小競り合いを起こし、公務執行妨害でこの五名を確保、この巡査二名が軽症。
なにせタイミングが悪かった。この一件により華東会は警察を寄せ付けなくなっている。

しかし華東会の手は長い。
一見して中国製だと解るトカレフ、華東会が十年前から使用している7.62mm×25、軟鉄合金被甲=フルメタルジャケット。明らかな内部犯の示唆。それを補いあう証拠群。

これはもう決定的かも解らんね。
ただ、決定的過ぎる、と言うのもあるが。

290保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:49:41 ID:T8QZhQM6
そして、その間にも長崎は逃走を続け。

この事態を牽引した池田自身、長崎の意外なしぶとさに感心していたりした。
ちなみに、華東会は独自のルートで警察内部の情報をゲットしており、使われたトカレフの情報はもちろんのこと、長崎の名前、顔写真、住所までが明らかになっていた。

そして警察はそれを見越して長崎の実家に護衛を配置。
何とか華東会の手がかかる前に保護する事に成功。
この情報により華東会は池田を捕らえてから黒幕を明らかにしようと言う姿勢を明らかにし、明確な行動をはじめたが、すぐに不審に気が付く。
すなわち、長崎の居候していたと言うアパート、長崎自身。
彼ら自身がいくら洗っても、長崎らしき人間が自分たちから金を借りていった履歴は見つからなかった。
ただ不幸なのは、ここでも派閥間情報伝達の不十分があり、新体制の呉は正式な『長崎など知らない』、と言う声明を出すものの、結局はいたずらに不信を招くだけに終わってしまった。

つまりは。

池田……地元ヤクザは若頭による、漁夫の利作戦は、着実に進行していたのであった。
そのためにわざわざフットボールアワーの石尾のマネまでしたのだ。

約束どおり、池田は借用書を破棄し、手動による操作ではあったが借金を『チャラ』にした。
ついで、警察もガードをつけていた最上に生活の保障すべく、ド田舎のセーフハウスをあてがう。
なんて言うことは無い。
彼女の実家のほうから彼女を誘わせた。
長崎の名を使い、最上の両親に金をつかませ、こちらに都合の良い事実を教え、最上みちるを隔離する。捜査からも、抗争からも。これは池田にとっても重要な作戦の一部分だった。ぼろが出るとしたら、二番目にはこの女だ。
はたして最上は命の危険を伴う生活から離れる事を決意。
それは同時に。

長崎の帰りを待つ事をやめると言う、彼女にとっても苦渋の多い選択でもあったのだった。

そして一番厄介なのは。
長崎自身。
――逃亡生活は、そろそろ佳境に入りつつある。

池田は当初、長崎はすぐに警察に捕まるものだと考えていた。
そうなれば警察は己から抗争をあおるような真似はできないわけで、長崎の証言もしばらくの間は封殺される事は目に見えている。そうなれば再び池田が第二、第三の小細工を仕掛ける。
三年……いや二年。
それで、伸びた池田たちで完全に押さえ込める規模まで華東会支部を弱体化させる。
その思惑を達成するには、ここでくじかれるわけには行かないのだった。

291保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:51:29 ID:T8QZhQM6
だから。

事件発生から二週間後、池田が長崎に金を貸していた事務所を、念のため畳んで移ろうと言う引越し作業中。
拳にバンテージを巻き、フードを目深に被り、ジャージに薄いスニーカー。
そんな、時折シャドウボクシングを交えながら走ってくる男が、そのままいとも当然のような足取り、小走りのまま池田の事務所に飛び込んで。

池田はダンボールを抱え、悪い事に背後を晒していた。
その背中。
やはり脇腹を目指して、凶刃が迫った。

「んもーだから何もするなっていったのにさぁ。」

げしっ。

あっけなかった。

池田強かったです。

ナイフごと後方に吹っ飛ばされた。

「あんた……っ」

長崎が転がった姿勢のままうめくように。

「俺の安全も保障するって言ったろぉっ!?」

その叫びにもまったく動じず。

「言ってねーよ。」

まるでここに来る事まで予期していたように。

「んでもまぁ、しっかりここまで来てくれたことだし?なかなか努力してるじゃねーの。」

飄々として言った。

「あんた俺と彼女の安全を保障するって言っただろぉ!?」

292保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:52:40 ID:T8QZhQM6
自暴自棄。絶望。それが今の長崎の行動力の源だったりした。
でもなきゃここまで来れやしない。

「言ってないよ。あ、でも女のほうは多分大丈夫だ。安心して良い。」

「俺はっ!?」

「知らね。あ、でも早く警察に捕まった方がいいよ。中国人に捕まったら殺されるよ?」

「なんでこんなっ」

「そりゃあんたの責任だろ。議論の必要も無い。」

「俺はそうすりゃ良いんだよ!?」

「知らねーよwww自分で考えれやww」

突き放した発言。
それもそうだ。
彼を助けるものは居ない。
居ない。
いや。
居る。

「彼女は…彼女はどこにいるんだ。」

結局そこかよ……

「それは教えられねぇなぁ。だってそこにお前が言ったら俺が約束した『安全』がなくなっちまう。」

やきもき。
どうすれば良いのか。
考える。
愚鈍な思考。
どうしても前提が間違っている。
だから解らない。

そして池田はどうでも良かった。

「あんたが捕まればいいんじゃねーの?」

293保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:53:24 ID:T8QZhQM6
あっさり答えを出す。

「それ…はっ…」

「あんたがそこでお縄にかかるって言うなら、教えてやっても良いぜ。」

「……でもそれ」

「もう一つ条件があるけどね。……なに。まだ自分の身だけが大事かよあんたは。」

「そんなのっ」

当たり前じゃないか。

「でもあんた。既にあんた一人の身じゃないだろ。…あー。知らないんだったな。」

池田はどうでも良かった。

「あの女妊娠してたぜ。あんたの子だろ?」

「……!」

「まーそんな訳だ。そうだそうだ、良いこと思いついたぜ。

 俺はあんたに今の彼女の現住所を教えても良い。ただし条件がある。
 その後、この街に戻って警察に出頭する事。
 その際、こちらの言ったとおりに証言すればいい。まぁそこまでいくとボロがでかねないからなー…
 まぁ最悪、無言を貫くだけでも良い。そうすれば最後にあの女に会わせてやっても良い。どうだ?」

「でもっ」

「解ってねぇなぁ。」

一拍おいて。

「もうあんたはお終いなんだよ。約束どおり、『二人』の身の安全は保証する。あんたが捕まる事でそれは確定する。
多分ムショ暮らしもそんなに悪いもんじゃないだろー?それでやり直せばいいじゃないか。
何年かかるかは知らんけどな。それにあの女も――まぁいいや。で、どうする。」

「あ……」

「どうする」

どうする。
その言葉だけがぐるぐるとまわった。
長崎はここにいたりようやく、自分の愚かさと矮小さを痛感し。
そもそも身を満たしていた絶望とあいまって。
明示された僅かな希望。

「……教えてくれ。」


そして。

294保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:54:21 ID:T8QZhQM6
_________________________________________________________


「なるほどねぇー。」
臼井が興味もなさそうに呟く。
「ええ……もう、自分には彼女しかいないんです。だから、こうしてこの電車に乗って。」
「なるほどねぇー…げぇえっぷ。」

ビール臭いガスを噴きながら、なんかもうこいつ最悪じゃねぇ?www的な座り方をした中年が、幾分若い男の向かいに座っていた。

ただの同乗者。
それだけだった。
だが臼井は何の気なしに、同じく辛気臭い顔をしながら転寝するこいつに酒を勧めてみた。
それが、以上の身の上話である。

「もし彼女にまで見放されたら、自分にはもう生きる意味はありません…」

「生きる意味ねぇー。そんなの、果たしてどこまであるもんかねー……」
臼井自身、生きる意味を持っていた男ではあったが、それは先に失ってしまっている。
嫁はもともと愛情などない冷め切った関係だった事もあり、彼から手切れ金(使い方間違ってないか?)をふんだくってどこかへ行ってしまった。大方、男のところだろう。別に良い。

年金も半分持っていかれた。
少々不服ではあったものの、確かに持っていかれる理由としては正しい。
彼は実際あの嫁に随分助けられていたと言っても良い。
ただ、言うなれば家政婦と言って良いような関係にそこまで払う義理があるかといえばそれは不明だが。
しかし、争う気も無かった。
どうでも良かった。

295保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:55:03 ID:T8QZhQM6
必死に働いてきて、その結果がこれか。
そういった諦観が今、臼井を支配していた。

対して。

今までだめ人間やってきたツケがここに来た。
だがしかし、やり直しが効くものであると言う希望が、長崎を動かしていた。

「自分が言ってもしかたないですけど。」

随分しおらしくなった、歳相応の発言力をようやく獲得した長崎は言う。

「諦めなきゃ、きっと良いことがありますよ。まじめにやってきたあなたです。……

『まじめに生きてれば、きっと神様も助けれくれる』

自分はそう思っています。」

それは、誰の言葉だったか。

296保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:55:57 ID:T8QZhQM6
臼井は鼻を一つ鳴らしただけで。
具にもつかない意見だと振り切って見せた。

神、天使、悪魔、 奇跡。

魔法、呪、運命、 奇跡。


そんなもの。


「ゲームのやりすぎだ。」


臼井は缶に口をつけながら。

「良い歳してガキみてぇな事いってんなよ…全部自分の招いた結果で、自分のもんなんだよ…」

それでもどこかで望んでしまう。自身のその弱さを断ち切るように。

「神様とか。どうせお前も無宗教だろ。いつまでも現実にてめぇの幻想重ねてちゃダメだぜ。」

なじるような物言いだったが、長崎はそれを受け止めていた。
そして臼井自身。
どこかで、そういったものを信じたいくらいに、もう、なんにも無いのである。

電車は走り続ける。
目的地は否応に近づく。
臼井が先だった。

正直、億劫だったと言うのもある。
少しでもこの現実から離れたいと思っていたと言うのもある。
だからこんな下らない話をしていたのだ。
だが、受け入れなければならない。
それが、良くも悪くも中年の、臼井の覚悟。

297保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:59:12 ID:T8QZhQM6
「そろそろだなー。」

重い腰を上げ、さらに重い荷物を下ろす。

「そうですか。自分はまだまだ先です。」

「ん……。」

小銭入れを覗き込んだ臼井が唸る。
そうだった……売店でビール買った時に小銭を使い果たしていた。

乗車賃は1280円。

小銭入れの中には、775円。

「……十円あるか?」

「いいですよ。」

長崎にちょっとのためしで聞いてみる。
それは少し、心を許した、袖触れ合う中だからこその、臼井の提案。

銅の硬貨を一枚受け取る。千円札と小銭を手のひらに握りしめ、存在に意味のなかったつり革に手を掛け、徐々に迫ってくる新しい土地の駅を望む。

ああ……あそこか。

小銭入れをポケットに突っ込むと、何かに当たった。

それを取り出してみる。
それは。



「……なぁ、いいものやろうか。」

298保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 22:00:14 ID:T8QZhQM6
黄色いハンカチだった。
いつか少女に借りたもの。
返す宛てもないからもらったと言う事にしていた。

彼を、ここに連れて来た、原因。

それを差し出す。

「……十円の礼にしちゃあ、出来すぎてませんか?」

勘ぐる長崎だったが、その口調は笑っていて。

「ほんとに偶然なんだがなぁー。」

臼井も笑っていた。
笑いながら。

原因と結果。
その中で、少しでも自分の行動に自信を持つために持ち歩いていた黄色いハンカチ。
それを長崎に、バトンタッチした。

「ありがとうございます。」

と、長崎が言うのと、電車が速度を相殺し、回生ブレーキもその動きを止め。
アナウンスも無く、その駅で止まった車両から、臼井はきつく照りつける日差しの中、降り立った。
涼しかった車内から、焼けたコンクリートの上に。
輻射熱。一気に肌から噴出す中年汗。

「じゃぁな。」

「はい。お話できてよかったです。」

臼井を降ろし、長崎を乗せた車両がゆっくりと動き出し、そして消えていった。
緑の中に、埋没するように。

ただ黙って。しかし。

うまく行くと良いな。

そう思いながら、見送った。

299保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 22:01:08 ID:T8QZhQM6
「……こりゃ、暑い……」

それはこれからの生活すべてへの不安だった。
白いものが出てきた頭皮に照りつける太陽。
ふと見上げると、田舎だからだろうか。やたらに元気な太陽。
目に強烈な光。やや視界が白くなる。

その背後から


「お待ちしておりましたぁ―――っ!」

「……ッ!?」

やたらに元気な声。
この日差しの下でもまったく衰えないエネルギー。
それを彼は知っている。

「庁舎の掃除と整理はもう済んでますよー!今日から二人で頑張りましょー!」

「………あぁ?」

渡瀬 市子、だった。

「……なんでお前がここに居るんだ。」

それは当然の問い。
そして、少々はにかむように、その少女といっても通じそうな女は。

「お兄ちゃん……じゃなかった、荻野さんに頼んで、私も異動にしてもらったんです。」

「…はぁ?」

「いろいろ積もる話はありますけど……あなたを、追ってきたんです。」

300保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 22:02:25 ID:T8QZhQM6
――要約。
聞く話によると。

荻野は渡瀬の親戚…従兄に当たる存在で。
同じ『会社』に就職した、幼い頃から妹同然に過ごしてきた渡瀬の事をよくよく面倒見てきたのだと言う。
それは今なお変わらず。
ただ、中年に思いを寄せるその妹を何度か止めようとはしたものの、ここ最近ではすっかり諦めモードに入っていて。
どうにか臼井自身を相応しい男と変化させるべく画策していたのは良いが。
結局、この男はこの男で出来上がっているのであった。
そしてその変化は、渡瀬の望むところでもなく。

「荻野さんは私を気遣ってくれていたんです。本当に、それだけ。あなたに対しても厳しくなってしまった事、時にストレスをぶつけてしまった事を詫びていました。」

それに関して、臼井としてはそれ以上に思うことは無い。だが?

「……俺のここへの異動は。」

「それは、本当に、仕事としての決断でした。私も少し動揺してかなり厳しく問い詰めちゃいましたけど、これは本当みたいです。……実際、あなたの行動は必ずしもこの結果に結びつかないものではないと解っています。」

「それで…あいつはお前…」

「私が頼んできたんです。お一人じゃ辛いでしょうと思いまして。」

「それにしたって随分急な話じゃないか。」

「ええ。ですから、急に支度して、急に異動したんです。」

そういって。
いつも見ていた、満面の笑みを。

どこに居ようと変わらないそれを、渡瀬は浮かべていた。

301保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 22:03:09 ID:T8QZhQM6
――なんだよ。


臼井は考える。

そして周囲を見渡す。

『あなたはもう信用できません。』

それは果たして、荻野の本音であった事も確かだっただろう。
しかしそれは、彼のすべてを否定する言葉ではないことも確かで。

なるほど?

清涼な風。
溢れる緑。
セミの声。
人も、空気も、以前居た場所とは違う。

一からやり直すには……丁度良い場所かもしれないな。

荻野め。

粋な事をしやがる。

「……それじゃあ。」

「はい!」

「新しい仕事場に案内してくれるか。」

「はい。…頑張りましょう!」

こいつの元気も揃えば、なんでもできそうな気がした。

302保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 22:04:55 ID:T8QZhQM6
神が居るのなら、それは誰だかは解らない。
だが、今、臼井に希望と新しい人生を与える、助けてくれた存在が居るとしたら。

それは、荻野であったと言う事になる。
天使はあの銀縁メガネの嫌味男か……

だがしかし。
何もかもが。

「悪くない。」

臼井はそう、本気で思っていた。



-middle age No.1-

303保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 22:06:35 ID:T8QZhQM6

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長崎は期せずして訪れた『声に出して話す機会』を得て、ようやく事実関係と自身の心の整理をつけるにいたろうとしていた。
しかし、結局重要なのは度胸、覚悟、勇気。
そういったものであり、しかしてそれらを捻出するのは十分な『考える時間」である事は確かであった。

「……すぅ」

空気を胸いっぱいに溜め込む。
動悸が明らかになる。
緊張していた。

彼女には予め、連絡をつけている。
駅で待っていてもらえるように。
ほんのそれだけ。
その場でUターンし、少しだけの猶予を持って、警察へ出頭。
そう考えていて、それ以外の選択肢を捨てた。

――それが一番。

責任と言うもの。
それにようやく手を掛けた。
あのおっさんのことを考える。
まだ良く、解らない。
けれど取り返しの付かない事ならば、清算も出来ないのであれば。
ひたすらに抱えていくしかない。
どんなに申し訳なく思っても、それは故人。

酷いようだけど、整理をつけてしまう。

304保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 22:07:46 ID:T8QZhQM6
ただ、もしも。

彼女が自分を拒絶したら。

十分に考えられる事ではあった。
今に至ってようやく心を入れ替える事に成功した彼ではあったが、それが信用に足るものなのかは明らかではない。
だから、もし、そうなったら。

生きる意味はない。
ただ彼女のためだけに。
それしか今の彼にはないのだ。
本当に矮小で技能もない彼ではあったが身を粉にして女子供一人どうにか手助けしてやれないわけではなく。
そこに起因する覚悟、それによりこうして希望を得て動く彼から、すべてを取り去ってしまうイベント。

それが彼女の拒絶と言う、非常に危なっかしいものなのである。

なんと言うべきだろうか。
なんと言おうか。

そう考える間に、瞬く間と時は過ぎ。

夕暮れが近づく時刻に、ようやく彼は目的の場所に着こうとしていた。

「……はぁ。」

溜め込んだ空気を吐く。

「……やべぇ、死にそうだ…」

正直な感想だった。

ぷしゅーーーーっ………

終点。後は引き返すだけ。しばし運転手も休息を取る。その時間。

かつ。

降りた。

305保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 22:08:20 ID:T8QZhQM6
ひぐらしの鳴く中。
赤く赤く染まった世界で。

彼女は、待ってくれていた。

「……ごめん。」

「……」

「俺が馬鹿だった。本当に申し訳ない。」

「……」

「これから俺は出頭する。出てくるまで、どれくらい時間がかかるか解らない。」

「……」

ただ無言を貫く彼女。
しかし、無表情には程遠く。
その顔を正面に見ながら、続けた。
言うべきことがある。

「また、ここに来る。」

「いつになるかは解らないけど、また来る。」

「もしその時俺を受け入れる気があったら…」

そう言って差し出したのが、あの黄色いハンカチだった。
それだけで、何をして欲しいかが通じてしまう。

そろそろ、電車が出る時間となった。

彼女はただ静止していた。
何も言わず、しかしその目は明らかに。

「最後に。」

電車の扉が開く。発射前。ほんの数瞬。

「楽しかったよ。ありがとう。

 今まで見てきたおっきな夢は、俺には叶えられない。
 だけど、またあなたと一緒に生活できれば、どれはどんな夢より幸せな現実になると思う。
 だから、俺は絶対また来るから。幸せにしたいと思ってるから。

凄く苦労かけてしまう俺を、どうか…許して欲しい。」

306保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 22:09:23 ID:T8QZhQM6
それだけ。
それだけを言って。
長崎は電車に舞い戻り。

扉は閉じ、箱は反対方向にゆっくりと進み始めた。

その中で。
遠ざかってゆく女を見ながら。
彼は心に溢れるものが、目から流れるのを感じていた。

いやまったく。
泣いてる女を見て感無量に浸る男である。

あらゆるしがらみがプラスに働く状況だといえた。

必ず帰る、必ず幸せにする。
だから今は。

歳相応の年季をようやく手に入れた男は、そうやって夜の帳が下りる方向に、消えていった。

-middle age No.2-

307保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 22:09:57 ID:T8QZhQM6
長々と続いたけど

以上ッ!

308二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/09(日) 22:10:53 ID:Gv51/mDU
乙ッ!
頑張ったなって感じ……。
最近長文してねぇなぁ俺orz

 さー俺も投下するぞーッ!

309二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/09(日) 22:11:26 ID:Gv51/mDU
♪Green greens 注意:アレンジのイメージ強め(;´∀`)
アレンジソースはここ http://sbfr.nothing.sh/special/0006_kirby/

森の砦は、子供の砦――。
大人には入れない、お菓子の家。

実際そうはいってないんだけどさ。
何が悲しくて大人まで守る砦になっちゃったのやら。
ま、ヒーローは一人じゃないみたいだし、大丈夫かー!

この森は、変だった。
子供だけが空を泳ぐ。滑る。
なんでだろう。
とにかく、村を守る。
家が無くても人がいれば、勝ち。
また作れるモノはおいといて、さあ――。
機械国家とやらと勝負しましょ!

310保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 22:11:58 ID:T8QZhQM6
YURIAの男の子って言うよりEaglesのHotel californiaの方が似合うような内容になっちゃったけど

知らん。

311二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/09(日) 22:11:58 ID:Gv51/mDU
弓をつがえ、森を滑る。
木漏れ日が気持ちいい。
速いし、隠れる場所もいっぱい。
森が守ってくれるし、今のところ勢力差はトントンってとこ?
「そっちいったぞー!」
「あいよーっ!」
弓をすぐ、森が教えてくれる方向に向けて。
「てぇい!」
戦車に突き刺さった矢は、いきなり急成長!
大きな木になる!
もちろん戦車は押しつぶされて。
はい出た兵隊さんにいがぐりが落ちた。
「わーお、徹底的ぃ」

森が約束してくれた。
がんばったらその木でまた家を建てればいいって。
頑張ろう!
森のために、みんなのために!
さーあたしは頑張るぞ!
森よ、応援よろしくッ!
「ほーら、いがぐりに当たりたいのはだぁれかなー!」
滑って踊り、森を通る風があたしを冷やしてくれた。
冷静になる前に、踊って返す。
行っちゃうぞー!

312二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/09(日) 22:12:30 ID:Gv51/mDU
良く分からない。
僕には解っていない。
森が言うには、子供の想像力らしいけど。
想像力なら物書きの先生とか、いっぱいあるのに。
先生が言うには、自由だから。
知らないことが逆に力となっている、難しいなぁ。
僕は半端に知っているから力が弱いのかも。
その代わり、知ろうとする力を武器に。
――あ。
「エイミー、そっち2つ」
「はぁい!」
司令官ってわけ。
みんなの力を手伝う。
自由を手伝うのは、ちょっとだけ何かを知っている僕さ!
みんなより、知ることを強くした、僕のね!
さあ、声を聴かせてくれ、森よ!

鳥が僕の周りを囲んだ。
「伝達、よろしくね」
流石に前線までは届かないから、メッセンジャーに頼んで。
「頑張って!」
さえずりを返事に、鳥が飛ぶ!
僕も前に出よう……!
空を滑り、木をぬって。
もっと伝わる場所へ。
知ることを、
伝えることを!

313二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/09(日) 22:13:01 ID:Gv51/mDU
森のカバーを抜け、空に出た。
私は弓じゃなかった。
私だけ、なんか似合わない武器(なのかな?)だった。
森の上を滑っているのは最高だけど……あー、これ使うのぉ……?
しくしく……。
森と、アルの言う場所へ――。
滑って、回って。
ああ、なんか緊張してるのに楽しんでるなぁ私……。
――そこへ、まっすぐ。いっかいで。
うんっ!
声を頼り、そこへ私の獲物を大きく振りかぶり――。

「どっせぇ――――いッ!」
飛ばす。
ああ、はしたない声。
投げてすぐ、大後悔して。
「なんで病弱な私が丸太なの――っ?!」
心の強さって言われたけど。
とほほ。
あああ、あんなに砂煙あげちゃって……。
「鳥さんごめーん!」
いいよ、って。
私の周りをくるくる。
あううう、……っと!
うなだれる私に丸太が返ってきた。慌ててキャッチして、一息。
「はふー……」
ショックだよー……丸太女とか言われるし……。

314二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/09(日) 22:13:36 ID:Gv51/mDU
「どけどけーい!」
木刀で、風を切る。
風が森をざわつかせ。
木の実や枝が落ちていく。
それが全部、誘われるように切り裂いた先へ飛んでいき!
直にぶったたいても良し、
森の弾丸に任せるも良し、
ああ、この木刀はすげぇや!
さあ、森よ。
俺の武器をお誘いに。
みんなで守ろうぜ!

「っと! あぶね!」
栗鼠の鳴き声、緊急回避の合図。
「サンキュッ!」
落ちたどんぐりを1つ放ってやって。
「次も頼むぜ!」
尻尾を振って応援する栗鼠を後目、一気に突っ走る。
抉られた地面に木刀をこすり。
そうするとあっという間に若芽が生える。
森を生き返らせながら、俺は奔る。
滑る!

315二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/09(日) 22:14:08 ID:Gv51/mDU
滑る勇者は子供の勇者。
色々知ってはいないけれど。
それが夢を強くする。
大人に見えない夢を持って、大人の知ってる限界越えて、
今はそれを現実に。

      森は――。
村は――。
       僕たちが――。
  あたしたちが――。

  ――守るッ!

さあ行こう。
夢を力に、無知を原動力に。
大事な者を守るために!

*27分+リファイン10分前後。ああ、アレンジ最高w
なんかSTG作りたくなるノリでやってみた。

316二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/09(日) 22:42:21 ID:Gv51/mDU
カービィのアレンジしてる人が神すぎて想像がとまらんwwwwwwwww
2発目いくかもwwwwww

317二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/09(日) 22:59:55 ID:Gv51/mDU
♪green green's happy http://fz.bms.ms/#5 より

魔女の箒は、不思議の箒。
じゃあ、これはなんだろ?

止まらないの。
どうしよ。
変な箒。機械の箒。
遊びで乗ったら、止まらない。
「ぎゃ――っ!」
断末魔が空に。
あー私の人生ここで終わり?
って勝手に死んだことにしたら危ないじゃないかー!

止まらない、止まらない。
勝手に飛び回る箒。
公園は、公園はやめぇぇぇぇぇぇ!
木が、木がぁぁぁぁ!
必死に避けつつ、落ちかかり。
「って落ちればいいんじゃないの?」
……速いし高い。
うわぁぁぁ。

318二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/09(日) 23:00:54 ID:Gv51/mDU
空が流れ、緑が流れ。
マンションを壁扱いして上っていく。
うーん、そらは気持ちいいけど、止まってくれたり自由だったりの話だね……。
うーわ、どうしようどうしようー!
壁をかけおわった箒はそのまま。
「ああああああああ空はこれ以上上は嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
と思ったら宙返りした。
「ひーん! さっか……さっかさまぁぁぁぁぁっ?!」

誰か助けてくんないかなー?!
逆さまで木を抜けるのって怖すぎるーっ!
うあわーッ!

『そこの飛行物体! とまりなさーい!』
ああああ、警察まで来たって!
『ノーヘルはやめなさーい!』
「そこーッ!?」
うわーどうしよ。
この歳で警察沙汰とか洒落になんないよー!

319二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/09(日) 23:01:35 ID:Gv51/mDU
とかおもってたら加速した。
「あわーッ!」
一回転してくれて、ようやく正しい座り方になって。
あ――。
海にでた。

でも。
「とっまんな――――――――いぃぃぃ!!」

飛ぶ飛ぶ。
止まらない箒。
あー……今止まっても。
「う――――――み――――――ッ!」
ああああ。

*17分。 もっと速く書けるよな俺orz

320二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/09(日) 23:03:23 ID:Gv51/mDU
てなわけで
基本:ハイスピード
1:ファンタジー
2:サイバー+ポップ
のカービィ2本立てでした。

オリジナル? ……アレ?(;´Д`)

321隣りの名無しさん:2006/07/10(月) 01:58:51 ID:vmUyMWiA
GJです!!
明るく楽しげ、軽快さがあっていい感じでした!

最近スピード感溢れる曲が多かったので、こんなのはどうでしょう。
ヤミと帽子と本の旅人サウンドトラックより
夢影深遠
http://054.info/054_54513.zip.html
なお、造語なので正確な歌詞はないそうです。

322隣りの名無しさん:2006/07/10(月) 02:11:01 ID:vmUyMWiA
すみません忘れてました。パスは『とな板』です。

323二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/10(月) 02:21:58 ID:KYEAnbgE
あい、把握ー やってみますよ

324二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/10(月) 02:22:28 ID:KYEAnbgE
って、あれ
ライセンス言われた(;´Д`)アレマ

325隣りの名無しさん:2006/07/10(月) 05:27:26 ID:vmUyMWiA
ごめんなさい、間違えてwmaであげてしまいました…
http://054.info/054_54561.zip.html
mp3にしたので今度は大丈夫かと…

326二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/10(月) 20:29:21 ID:KYEAnbgE
>>325
遅くなってすんませ、やってみまー

327二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/10(月) 21:07:08 ID:KYEAnbgE
♪夢影深遠

夜はお嫌い?
夜が怖いの?

洋館で灯りも無いんだから、幽霊だと思った?
それとも――、
そう聞かれて、幽霊じゃないと思った?

怖いんだね、怖いのね。

かわいそ。
かわいそ。

328二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/10(月) 21:07:41 ID:KYEAnbgE
月夜の洋館、白い影が。
白い娘が、ゆっくりと。
相手の居ないワルツなのか、手は虚空を掴み。
視線は唯一の観客を見ずに。

静謐な空気の中、娘の息づかいだけ。
時折、ステップ。

真夜中だというのにカラスの声。
そして、影。

どっちでも、好きな方で。
関係ないし。
気にしないし。

どっちでも、どっちでも。

かちり、かちり。音がする。
何かも解らないが。
メトロノームのように。
ワルツを助ける、そんな音。

でも――。

怖くないよ?
ほら。

329二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/10(月) 21:08:11 ID:KYEAnbgE
踊りをやめた、白の娘。
少しずつその白を強める。
ドームの天井が、花咲くように広がって。
月の真下、銀に輝く白かった影。
見上げた娘は目をつぶり。
いつまでも、両手を広げ、揺れていた。

さ――。
一緒に、ね。

踊らなきゃ、

帰してあげないよ?

ぎこちない踊りと、慣れた踊り。
少年少女の奇妙なワルツ。

別の世界が開きそうな、そんな舞。
星と月が見守って。
それでも、なにか、おかしい夜。

わかるよ。
もすこし、がんばってね。

男の子は、リードしなきゃ――ね。

少しずつ、少しずつ。

330二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/10(月) 21:08:42 ID:KYEAnbgE
何かが変わる。
ワルツも変わる。
ゆっくり、正しく。
美しく。

何か、何か、変わってく。

そうよ、ほら。
1・2・3……。

変でしょ?
でも、
綺麗でしょ?

月夜に人影、二人分。
踊りが線から、円になる。

まわる、まわる、淀みなく。

月夜のワルツが、美しく。
月夜のワルツが、奇妙に。
まわる、まわる、まわる。

331二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/10(月) 21:09:13 ID:KYEAnbgE
これで、おわり。

踊り、覚えちゃったね?

……いらっしゃい。

*終わり ループ処理に困ったわい。
げ、27分orz

うーん、しかし、変わった世界がいい感じに作れる音だなー

332隣りの名無しさん:2006/07/10(月) 22:07:34 ID:Trgn7q6k
GJでした!!!
幻想的な感じで、引き込まれるようで。
二人の踊っているのが、自然と浮かんでくる感じがしました。

同サントラ内でも、この曲は特に不思議な感じのする曲なんです。
他の曲はある程度テーマがはっきりしているのですが、この曲だけはどうも掴み所が無くて。
で、二郎さんならどうだろうと思ってお願いしたのです。
綺麗な世界を、ありがとうございました。

333二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/10(月) 22:26:50 ID:KYEAnbgE
>>332
いやいや、有りがたいー
色んな世界が作れる感じがしたー。
また箒で魔女のパーティとかそういうノリが第一案だったんだけど、箒は前にやったので却下とw

実に、ああ童話だーって感じのいい曲っすね、うん。

334隣りの名無しさん:2006/07/11(火) 17:47:31 ID:m2WlDJzg
G-DARIUSの『ADAM』は如何に

335二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/11(火) 19:54:45 ID:y/qBTSRg
>>334
ォーウイェ やってみるぜぇ

336二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/11(火) 20:15:15 ID:y/qBTSRg
♪ADAM 注意:電波つゆだく!

「いらっしゃい」
金属塊で出来た崖の縁、女が立つ。
「また……君か?」
いつもの、夢とは違う良く分からない世界。
男は時折ここに連れてこられていた。

崖の先、広がる夕焼けを巨大な鉄塊が、下から上へ。
まるで跳ねる魚のような。
敵意のミサイルのような。

幾重にもフラッシュバックが男を襲う。
笑う女。
目をつぶり、何かをささやく女。

「なんなんだよ、ここは……っ!」
女の見透かすような、見下すような視線が男を射抜く。
「私のイマジネイション、言うなれば」

「脳内って奴かな?」

向き直った表情は良く読めず、夕日の影になっているためだ。
両手を浅く広げたシルエットの背後、鉄塊が再び二つ三つと空へ打ち上げられていく。

「あなたは、私が生み出した者。ううん……」

337二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/11(火) 20:15:49 ID:y/qBTSRg
「物、ね」
――何を言っている?
――何を伝えている?
――俺は俺だろう?
――俺が産物だと?

鉄塊が歌う。
体に似合わず繊細な声が響く。

338二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/11(火) 20:16:19 ID:y/qBTSRg
「もっと苦悩しなさい」
影が笑った、と思う。
「もっと暴れなさい」
影が目を閉じた、と思う。
「さあ、さあ私を」
影が両手を広げた、と思う。
「満足させてよ」
影が舌なめずりした、と思う。
「逃げられぬ」
影の瞳が大きくなった、と思う。
「あなたは」
影がゆっくり近づいてきた、と思う。
「私の物」
影と手を取り合ってしまった、と思う。
「あは」
影――。

339二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/11(火) 20:16:54 ID:y/qBTSRg
踊らされている?
騙されている?
信じている?
疑っている?
理解している?
解ってしまった?

解らない。
解らない。
解らない。

ただ、居るべきでない気がした。
ただ、ここにしか居られない気がした。

相反する感情がない交ぜになって。
その最中も鉄塊は空を目指し、打ち上げられ。

最初の一つが地に墜ちる。
海だった。
逆流の滝。
降り注ぐ、
塩の雨。

滝、
雨、
幾重にも繰り返される。

夕日に虹が生まれ。
気づけば二人は解けあって。

340二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/11(火) 20:18:35 ID:y/qBTSRg
「解った」
「何が?」
「俺は君のイマジネイションから生まれた」
「ええ」
「だが、君は俺のイマジネイションから生まれた」
「――ええ」
「戻れば、いいんだな?」
「ええ、たまには帰ってきなさい?」

ハジメハヒトツ
ヒトツハハジメ

オワリモヒトツ
ソシテ、マタハジマリ
クリカエス
クリカエス

フリダシニモドル

――有るべきでなく、有るべき。
――居るべきでなく、居るべき。

341二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/11(火) 20:19:07 ID:y/qBTSRg
誰の物か、解らない。
そんな世界が、ほどけていく。

――さあ、いこう?
消えゆく二人が見上げる先。
最後の鉄塊が空を往く。



*おわり 19分。 うわーなんかνのラストみたいだな。
最初にこれ聴いたときは、興奮と、あと絶望感。何より、来ちゃいけなかったような気分になったな。
何せ初adamはμだったもんでねぇw
カメは鯨より安定しねぇや。Ver2は余計に(;´Д`)
どうしても、ダライアスには狂気の沙汰という物が見え隠れするね。
外伝の曲は脳科学とか、心理系の曲名だし、妄想が相手だったり……。
まともな戦闘シーンより、狂気の世界が先に浮かんでしまう。

342二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/11(火) 20:24:11 ID:y/qBTSRg
曲無い人へ

ライブ動画発見
http://www.youtube.com/watch?v=mog_1mDPXKc&search=adam%20darius

343隣りの名無しさん:2006/07/11(火) 21:07:21 ID:m2WlDJzg
お疲れす
前半の奇妙さは面白かったけど後半よくわかんねーwww
何か魂のルフラン思い出したよ
ダライアスの音楽は珍妙なのが多いけどそこが好きだな
ライブには向かん気がするけど……
何か見てるとアーケードとコンシューマで結構違うみたいね
Gも外伝もコンシューマしか知らねーや

というわけでダライアス外伝の『FAKE』はどうだろう

344二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/11(火) 21:12:56 ID:y/qBTSRg
>>343
FAKEか……良い思い出すくねぇなぁ……w

どうしてもダラ曲は電波はいるから注意してくれw
では、やってみよぉ

345二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/11(火) 21:13:54 ID:y/qBTSRg
早速
いーしーみーねー へぇへぇへぇ
を書きたくなった俺ガイル

346二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/11(火) 21:32:53 ID:y/qBTSRg
♪FAKE

綺麗な夜空だった。
――多分。

良く通る声だった。
――多分。

曖昧なのはわたしのせいじゃない。
虚像空間、いわゆる電脳世界のせいってわけだ。

上も下も無い空間で、寝そべっているだけなのに――上下も無いから語弊はあるかも――進んでいく道。
歌声を道しるべに、星の海を……んー。
漂流?

ぼんやりと眺めれば、歩くような速度で星が動いていく。
わたしが動いているから、だろう。
時折見える、映像のパネル。
それはわたしの過去を映し。
誰かの過去もときどき。

347二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/11(火) 21:33:23 ID:y/qBTSRg
夢を見ているような。
思い出をアルバムで見ているような。
曖昧になりつつ、瞼がおりる。

夢だといいな。
夢じゃないといいな。
夢と現実が曖昧になる。

FAKEの世界。
FAKEの感情。
FAKEの海。
FAKEのわたし。

上へ行くのか、下へいくのかも、わかってない。
ああ、気持ち悪い。
ああ、心地よい。

どっちも、正直な意見で。
どっちも、建前のような。

348二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/11(火) 21:33:54 ID:y/qBTSRg
変な世界、わたしのルーツを探す、データの旅。
どこまでも、それとも一瞬か。
わからない、わからない。

どこまでつづく、この夢のような時間。
どこまでつづく、この現実を離れた世界。

ああ、わたし。
やっぱり漂流してるのかな?

*20分 全上コースが俺のジャスティス
ちゃんっちゃんっちゃんちょんちょんちゃんちゃんいーしーみーねー
ちゃんっちゃんっちゃんちょんちょんちゃんちゃんちゃんっちょんっちゃんちょんちゃんちゃんっ
ちゃんっちゃんっちゃんちょんちょんちゃんちゃんいーしーみーねー
ちゃんっちゃんっちゃんちょんちょんちゃんちゃんたーんてーんとーん

とたてーーてとてとたてーーーててぃとぅとてーーたてぃたとたへーっへーっへーっ
とたてーーてとてとたてーーーててぃてとぅとてーーたてぃたとたへーっへーっへーっ

たんとたんとんたんてんとんたんたんたとんたんとんたんててぃんとぅん
てんてとてんとんてんてぃんとぅんてんてんてとてんとんたんててんてぃん

とぅーんとーんたーんたとぅーーーーーーん あおあおあおぉわー
とぅーんとーんたーんたとぅーーーーーーん あおあおあおぉわ

349二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/11(火) 21:36:01 ID:y/qBTSRg
うーんやっぱ電波はいるねこりゃ(;´Д`)
ダラの世界、やられるとどうしても変な方向に行くわ

未だに遊んでるけどさ。
タイタニックランス折るのも楽しいねぃ。
どんどん壊れた世界というか、曲やべぇよやっぱw

350二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/11(火) 21:38:01 ID:y/qBTSRg
げぇ! 書き忘れorz

俺は、
G:B.T.dutch、kimeraII
外伝:VISIONNERZ、SELF
が好きかなー。
両方ともゾーンセレクトはかなり好きw

351隣りの名無しさん:2006/09/03(日) 01:17:02 ID:l.HKjnf2
久しぶりに上昇…
いきなりですがまた東方曲ですみません。
サイト『白と黒の夢郷』様より【千年幻想郷 〜 History of the Moon】
個人的にかなり来ました管弦楽曲アレンジです。

352二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/09/03(日) 01:32:44 ID:QtFQGXZA
>>351
うす、やってみる

……と言いたい所なんだけど


羽 根 で 使 わ せ て 貰 う

353隣りの名無しさん:2006/09/03(日) 01:34:19 ID:l.HKjnf2
(;0w0)アレェ!?

354二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/09/03(日) 02:06:34 ID:QtFQGXZA
うん、やばいわ

7k文字14kbくらい目安に書きたいwwwwww

355二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/09/03(日) 16:42:46 ID:QtFQGXZA
上がった……。
スレに投げたらこっちにはり……とか長いので、羽根スレで俺ブログみてくらはい
出来ればスレの生で頼みたいけどねw

356隣りの名無しさん:2006/10/14(土) 23:19:51 ID:h.6OP6AQ
うお


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