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音楽指定で即興するけどお題ある?

1二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/02(日) 21:09:34 ID:1fTvy9iE
基本産業
・曲指定
・即興
・参加自由(書くのも題目出すのも)

アドバイス産業
・ネタ曲は作りにくいぞ、まともな曲のがいいかも
・みんな知ってる曲のが面白いかな?(ラジオ使えれば良いんだけど携帯組もいるしね)
・再生できるなら視覚エフェクトもヒントになるぞ

176二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/04(火) 22:05:48 ID:FXomhXe6
>>175
すまーん素でわからんのよ(;´Д`)
正式表記だと参考もひっかからないからねぇ……orz

177二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/04(火) 22:08:42 ID:FXomhXe6
OK湘南乃風ね。
……しかし聞いたことがないorz

178隣りの名無しさん:2006/07/04(火) 22:13:01 ID:K3KoU0fI
正直スマン刈田orz

漢字がわからんのよorz

179二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/04(火) 22:14:18 ID:FXomhXe6
巡恋歌だから、じゅんれんか じゃね?

180隣りの名無しさん:2006/07/04(火) 22:22:05 ID:CMMrzGRE
>>174
どう見ても歴史です と思ったらなるほどダスキン
熱かったぜ

181二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/04(火) 22:33:31 ID:FXomhXe6
>>180
あれは強烈だったんだ(;´Д`)
丁度動画コンテの勉強してた時だったからねぇw

182隣りの名無しさん:2006/07/05(水) 00:03:30 ID:WSDTojmE
ならばこれならわかるだろう!!!!



っ粉雪

183二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/05(水) 00:08:48 ID:OxxMUovU
>>182
うぬぬぬぬぬ……
実はじっくり聴いたことナスorz
となーいぬぅぅぅぅorz洗脳された

184隣りの名無しさん:2006/07/05(水) 00:16:16 ID:i.AFgSLY
太陽族より「戦友」

185二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/05(水) 00:30:53 ID:OxxMUovU
>>184
ひーわっかんねぇだぁorz

試聴しようとしたらメインマシンが凍ったよorz

186二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/05(水) 00:33:38 ID:OxxMUovU
色々調子悪いんで寝ますorz
スメンナサイ
候補はいつでも受け付けるので列挙して置いてくれると助かる

187隣りの名無しさん:2006/07/05(水) 11:57:53 ID:r.RqSVwY
っさくら(ケツメイシ)

188HERO-Mr.Children:2006/07/05(水) 14:21:58 ID:bDHhRUrU
「ねぇ」
隣にいる彼女に聞く。
内容はなんてこともない、どうでもいいような話。
「何?」
笑いながら僕に聞く。
「例えばさ……例えだよ?」
しつこいようだが念を押す。
「誰か一人の命と引き替えに世界を救えるとしたら……君ならどうする?」
本当になんてこともない、どうでもいいような話。
彼女は答えてくれるだろうか?
「私なら……世界を救うわね」
「そぅ……」
意見が僕とは違った。
僕なら……世界は救えない。
誰かが名乗り出るのを待つだけだ。
なぜなら、両親や親友。そして、彼女。
僕の愛する人たちが、僕を臆病者に変えてしまったのだから……。

小さな頃に見たヒーロー物の番組。
その真似をして、世界を救えるかなと僕は思っていた。
そのヒーローみたいに、憧れたいなんて思っちゃいない。
世界を救いたかった。ただそれだけ。
でも、世界を救うからヒーローだなんて、僕は思わない。
何かを救うから、ヒーローなんだ。
だから……僕は……。
彼女だけのヒーローでありたい。ずっと。
彼女が苦しんでたら……悩んでたら……。
僕は彼女に救いの手を差し伸べる。
彼女だけのヒーローでありたいから。

189HERO-Mr.Children:2006/07/05(水) 14:25:17 ID:xyJHNJ7c
一番だけです
俺の好きな曲でなんとなくイメージが浮かんだので書いてみました
ソノマンマトカイワナイデ…
では、スレ汚し失礼しましたノシ

190隣りの名無しさん:2006/07/05(水) 18:36:05 ID:I4IVSCZo
っコンドルは飛んで行く

191二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/05(水) 20:01:27 ID:OxxMUovU
>>187
midiがあったのでやってみるわー

>>190
和訳歌詞無かったので意訳なら、次にやるね

では――開始

192二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/05(水) 20:02:58 ID:OxxMUovU
音と歌詞あるってことで、ここにあるものは何とかやれそう
http://www.hi-ho.ne.jp/momose/mount_midi.htm

193二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/05(水) 21:02:46 ID:OxxMUovU
♪さくら 注意:ちょいと別世界。

柔らかい。そうだ。
突き刺す寒さも、凍える時間もなくて。
柔らかい空気と、流れる時が春に有る。
凍った思い出を溶かして。
新しい何かが、音を立てて氷を割る。
芽吹いた柔らかいこれから。
柔らかな、君と。
あの……。

ああ、春だ。
(前奏終わり)
白い雪。
暖かい雪。
雪でない雪。
降り積もる桜。

約束の歌を思い出してハミングしながら、帰ってくる君を待ちに。
あの場所まで、歌を思い出しながら歩く。
握りしめた右手は、ポケットに。
もう、それが暑く感じるくらいの。
春だ。
(あの頃のままで まで)
「また、ここで」
そう言った君の約束は、春の空気の匂いが髪にまとわりついていた。
だから、思い出す。
あの約束と歌。
行こう。
(あの頃のままで まで)
春の風。
柔らかい。
春は楽しい。
何かが始まる。
春は止まれない。
約束があるからだ。
春は待ち遠しかった。
心が優しくなれるから。
(ひゅるりら まで)

194二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/05(水) 21:03:17 ID:OxxMUovU
思い出はたくさん。
散る桜にそれを思い出しながら歩く。

綺麗な桜が散って、夕方の二人を明るくした。
君を彩って、俺を熱くさせて。
(あの頃また気になる まで)
毎年、約束までは君が居なくて虚しい。
約束の時間までをはやらせる、桜。
(違うのは君が居ないだけ まで)
長い黒髪、白い桜。
ざわつく風と二人の動き。
音のない、勝手なワルツ。
(また騒いだり まで)
――10年後はどうなってるかな。
  ――変わらないと良いね。
――変わるさ、良い意味で。
  ――変えるんだね。
あの笑顔。眩しそうな、俺にとっても眩しい笑顔。
(輝いた証だ まで)
  ――また、ね。
――ああ、まただ。
  ――約束。
――約束。
子供じみた指切り。
(変わらぬままで まで)
――毎年の更新だ。
  ――契約じゃないよー。
――またのご利用を。
  ――あははっ。
冗談すら大事な約束。
(交わしたね まで)
思い出す。
  ――いつも、ここで。
――いつも、ならいいんだけどな。
  ――贅沢だねー。ふふっ。
(君呼び起こす まで)

195二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/05(水) 21:03:50 ID:OxxMUovU
春の小道、俺は往く。

君の顔を思い出し。空を見上げ。

春の公園、俺は通る。

あの約束の場所を横目に見て、近づく事を実感して。
(記憶舞い戻る まで)
  ――じゃあ、また来年。散り初めに。
――この丘で。
  ――桜の下で。
思い出し。
(誘われ まで)
――やっぱ今日から、居ないか。
桜がひとひら、手を逃げる。
(花びら まで)
あの日の景色と違う丘。
――もうガキじゃないって事か。
(解らなかったが まで)
また今年も、春風が桜を散らす。
上の桜も、見下ろす桜も。
暖かな雪を春に彩り。

光景だけは、いつも通り。
(香る風)

196二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/05(水) 21:04:56 ID:OxxMUovU
  ――春は大好き。
――だな。
  ――君に会えるからだよ?
――ストレートに言うな、お前。
  ――嫌なの?
――そんなわけ無いけどさ。
(あの日に戻れる まで)
  ――おきろー。
――やだよ。
  ――だーめ。
(どこかへ まで)
目を開ければ、桜。
ほおに張り付いて、また飛んでいった。
(語らない まで)
  ――おきなさい、ね?
空耳まで、俺を前に進ませようとする。
(今はもう まで)

197二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/05(水) 21:05:27 ID:OxxMUovU
あの歌を歌う。
完全に思い出した歌を。
君が一緒に歌う。
春風が代わりに。

強くて、柔らかくて。
ざわつく歌。
(あの頃のままで まで)
花の香。
柔らかく。

ほおをな出る風がくすぐったい。
風がそっと。

あの日見た夕日が、同じように沈んでいく。
彩る桜は、まだ白い。
(あの頃のままで まで)
ああ、風が歌う。
俺も歌う。

出会いの歌。

別れの歌。

巡る歌。

握りっぱなしの右手が、震えた。
(ひゅるりら まで)
花びら、落ちる。
花びら、散る。

君の思い出、降ってくる。
君の思い出、風にながれる。
(そばにいる まで)

198二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/05(水) 21:05:57 ID:OxxMUovU
歌が思い出す、あの日のこと。
歌が思い出す、何年ものこと。

風が思い出す、柔らかさを。
風が思い出す、暖かさを。

俺が思い出す。
大事なことを、大事な人を。
(二人約束した あの頃のままで まで)
ああ、風が強くなってきた。
それでも冬みたいにはならない。
優しく。
すがすがしく。
切なく。
ざわつかせる。
春の風。

風。

風の歌を一緒に歌い。
(ひゅるりら まで)

199二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/05(水) 21:06:27 ID:OxxMUovU
  ――よくできました。
――いたのか。
  ――もう、一人でも上手いね。
――やっぱり足りないな。
  ――ふふっ。なら……
――ん。
  ――足していって?
――ああ。

  ――思い出、いっぱい。
――足りないところまで、足していくぞ?
  ――ずるいんだー。
――いいじゃないかよ。
  ――ふふっ。駄目とは言ってないよ?

――ほら、行くぞ。
  ――うん、お願いね。
――風が丁度良い。
  ――ちょっと強いよー。
――贅沢め。

握り続けた右手を、そっと離す。

君が、風に乗る。
さらさらと、君の姿が風に乗る。

約束、果たした。

君よ。

君の灰よ。

俺は歌う。
風は、いつまでも一緒に歌う。


春――。
芽吹きの春。

出会いと、別れの春。

200二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/05(水) 21:07:33 ID:OxxMUovU
*終わり 61分orz
midiだけだったから苦戦したわけじゃないぞ
コンテっぽく書くのがスキなので、ここまで情報のしっかり入ったラップにはカットバックやりたくなっちゃってw
こりゃぁ、変な世界だわw

201二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/05(水) 21:15:52 ID:OxxMUovU
♪コンドルは飛んで行く

長い声。
呼び声。
叫び声。

コンドルの声。

まるで空中に縫い止められたかのように、それは羽根を広げ、風に身を任せる。
雲一つ無い空。
それは青一面の国を主のように。

私は見上げた。
そいつを。
羨ましいとは少し思った。
飛べる、自由だ。
自由が欲しい訳じゃなくて、どこまでもいけそうな可能性に。

空を、くつろぐようなコンドルを、見上げ。

音は風と、鳴き声だけで。

生きているのは私とあいつだけの。
狭い世界。

広くて、狭い世界。

202二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/05(水) 21:16:55 ID:OxxMUovU
不意にそいつが動き出す。
獲物なんだろうか。
私と、そいつだけの世界が急速に、
他を足していく。

それに追い立てられるかのように、走る。
ああ、そうだった。
先へ行かなきゃ。

だれもいないここに、沢山の人や物を彩るために。

*おわり 短くてゴメスorz 8分 もうちょいいけたかorz

203二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/05(水) 21:19:55 ID:OxxMUovU
ようつべにさくらがあった件
今更遅いよorz
http://www.youtube.com/watch?v=ULbYPpcoXCs&search=%E3%82%B1%E3%83%84%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%82%B7

204隣りの名無しさん:2006/07/05(水) 21:28:34 ID:i.AFgSLY
だが>>193-199はいいと思った
原曲知らないんだけどな

つonokenより『探し物』
ttp://www.muzie.co.jp/cgi-bin/artist.cgi?id=a001564

205二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/05(水) 21:36:03 ID:OxxMUovU
>>204
thx!
onokenキタワァ
未だにLATAIAはきいてるぜw
では、開始――

206二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/05(水) 21:50:02 ID:OxxMUovU
♪探し物 注意:わー電波

さがしものを、しています。
だいじなものを、さがしています。

みつかりません。
さがしているものが、わからないから。

ね、ね。
わたしらしい、ものをしりませんか?

それはちっちゃくて、
こわれやすいけど、
きれいなものだった、はずなんです。

みつからないと、かなしいの。

みつからないと、くるしいの。

なんだかわからないのに、くるしいの。

おねがい、おしえて。

おしえて――ください。

207二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/05(水) 21:50:33 ID:OxxMUovU
いきなりの問いかけに、僕は息を呑んだ。
古くさい街並み、気が付けばここにいた。
何も言えず。だけど。

しらないんですね。
まいごさんなの?

――わからない。

わからないの?

――うん。

良く分からないけど、この子についていくように。
古い、でも汚くない。
懐かしい、
この街を彷徨った。
白く、朝靄のかかった街を。
眠って、二人しか動かない街を。

わたし、なにがほしいんだろう。

――僕も解らない。僕は何が欲しいのかな。
相変わらず声は出ない。

わかんないよ、わたしおとなじゃないもん。

208二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/05(水) 21:51:04 ID:OxxMUovU
歩きながら、終わらない質問。
歩いて、止まって。
思い出し。
思い出せず。
考え。
思いつかず。

思わず、足を止めた。
あの公園……。

何かが氷解して、走った。
そこへ、そこへ。

209二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/05(水) 21:51:34 ID:OxxMUovU
どうしたの?

――思い出せそうなんだ!

そう、覚えている。

ああ、ここかぁ。

――うん。

わたしも、さがしてるもの、みつけた!

――うん!

ふたりで、あのベンチへ。
座って、気づく。

210二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/05(水) 21:52:23 ID:OxxMUovU
おかえり。

――ただいま。

小さな手を握って。
笑顔が、涙で歪む……。

ありがとう。
――ありがとう。
おかえり。
――ただいま。

ベッドから半身を持ち上げた僕は。
涙をこぼしながら眠る、君に。

ただいま、と。

*終わり 幻想+ノスタルジィ もすこし掘り下げたかったような、そうでないような……うーん 14分

211二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/05(水) 22:19:56 ID:OxxMUovU
こんな感じの曲ないかなとか、そういう曖昧な指定でもOK
探して、やってみる(難度高そうだが

212隣りの名無しさん:2006/07/05(水) 22:56:34 ID:i.AFgSLY
よく判らないが無事で良かった

つMintJamより『Crying Moon』
ttp://www.muzie.co.jp/cgi-bin/artist.cgi?id=a011858

213二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/05(水) 23:22:00 ID:OxxMUovU
>>212
ぬおーむーじーがなんかおもひorz
もうしばし準備を(;´Д`)人

214二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/05(水) 23:26:23 ID:OxxMUovU
やっとDLオワタorz
さーがんばろ……

215隣りの名無しさん:2006/07/05(水) 23:28:11 ID:i.AFgSLY
若槻!
高槻!
天気予報ー!

216二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/06(木) 00:12:08 ID:FVwzcm2g
♪Crying Moon

叫ぶのは誰だろう。泣いているのは誰だろう。

自分の器を抜けた、自分じゃない何か。

取り戻したいのは時間だろうか。
思い出を探っても、何も出てこない。

今を亡くし、重ねた日々を嘘としても。
まだ、戻ってこないものがある。
(答えは否 まで)
居ない? 嘘だ。
嘘だ
嘘だ
嘘だ

嘘だ!

叫ぶ。吠える。
でも、何も変わりはしない。
(荒しつくしていく〜 まで)
瞳を伝うのは、冷たい物だけ。
暖かい何かは、いつまでも来ない。
冷たい物を出しては、それに凍えさせられ。
体が凍って、空気も凍って、伝わる物がなにもない。
(かえりはしない まで)
凍った世界は、全部が凍っているのに。
何故、何故。
君だけが凍っていない。
君の彫像だけ、無いんだ?
君は、どこで凍っている?
僕の世界には居ないのか?
(叶わず まで)

217二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/06(木) 00:13:12 ID:FVwzcm2g
誘われるがまま、皆の言う現実を歩いている。
僕からしたら、夢だと思いたい道。
どこにあるのか解らない。
氷の世界で、また君を捜す。
(幸せは何処に まで)
心は凍っている。
溢れてくる悲しみを止めるため。
喜びも一緒に葬った。
それでいい。
それでいいんだ。
(逃がさない まで)
もう、今なんか要らないから。
昔をやり直したくて。
やり直す方法など無くて。
(間奏終わり)
昔の僕を思い出し。
過去を殺してしまえばいいのにと思う。
殺したい過去を背負っている、僕は、
誰だ?
(止めさすのに まで)
心を殺したのに、何かが外側だけを溶かして。
いつでも、いつでも。
涙が止まらず。
氷を半端に溶かすのは――君の思い出で。
だれもいない氷の上、僕は意味もなく彷徨う。
(教えて まで)

218二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/06(木) 00:13:42 ID:FVwzcm2g
さわれない。
見えないから。幻しか。
吹雪なのか。氷なのか。
――現実なのかも。
(間奏終わり)
どうしようもない事がある。
それが、僕を凍らせる。
時間は止まる、歯車が凍っているから。
前には進められない。
後ろにすら。
(戻りはしない まで)
涙が溢れて。氷の上を、ゆっくりと固まっていく。
涙が水に、水は氷に。
その間に、心をわずかに溶かすぬくもり。
思い出があって。
触ろうとしても触れない。
その無力が。さらに涙をこぼす。

体は要らない、思い出に生きられるなら。
もし、時間を取り戻せるなら。
今の――僕の夢での体は――要らない。
ここで死んでも、そっちで生きたい……。
君の居る、そっちへ……。

*終わり 45分 大苦戦orz

219隣りの名無しさん:2006/07/06(木) 00:34:36 ID:kv5SX4lc
GJです!!
昔の自分を殺したい…すっごく良く分かります。
やってしまったことは、泣いても悔いても、もう取り返しようがないんですよね…

ではリクエストを。
また東方系の曲ですみません、本当なら耳コピを探すべきなんですが…
これだけは原曲で聞いてもらいたいんです。

シンデレラケージ 〜 Kagome-Kagome
http://054.info/054_53914.zip.html

飛び切りかっこいいのをお願いします。

220二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/06(木) 00:41:12 ID:FVwzcm2g
>>219
DL確認ッ
では、いきまっせ――

221隣りの名無しさん:2006/07/06(木) 00:42:02 ID:76/guoD2
シンデレラケージktkr

222二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/06(木) 01:02:49 ID:FVwzcm2g
♪シンデレラケージ 〜 Kagome-Kagome

かごめ――かごめ

いつ――いつ

言葉が繋がる。
繋がった言葉は、籠。
その中は、戦場。

戦歌士というのがいる。
歌で戦う、解りやすい。
音が波、波は波動、波動は力。
風が荒ぶる。力の風が。
音が震える。力の音が。
視線が――。
お互いを繋ぐ。

223二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/06(木) 01:03:23 ID:FVwzcm2g
一人、赤いブレザーの女が歌い。

追いかけ輪唱するは、青のワンピースを着た女。
戦うのは歌の力。

かぁごめ かごめ

後ろの正面――

文字通り、後ろへ。
片手で腹を押さえ、もう片手はのど元へ。
視線は前へ、体は前屈みに。

残像が後ろへ。

「だぁれッ!」
青の残像が背後へ、同時に赤は一礼、スカートの裾をつまみ。
消える。

「ああ、心地よい」
「ええ、最高の戦い(gig)になりそう」
強き瞳に強き笑み、互いの全力を。
「「さぁ――聴けッ! 戦の歌、力の歌を!」」

224二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/06(木) 01:03:56 ID:FVwzcm2g
歌は多重、歌は全て。戦歌士の歌は声を、越える。
あらゆる音をもって。
手持ちのアンプ――楽器と増幅、両方をまかなう――がうなり。
うなりは歌へ。楽器の歌へ。

「楽しいわ」
檻を作った赤が、檻を力に。
範囲の攻撃を。
「一番、燃える――」
追いかける青が、追従の速度を力に。
残像の攻撃を。

檻が槍に。
速度が己に。
槍の周囲を無数の影が避け。
影の追走を、檻を利用した回避が受け取り。
「「合照」」
手合わせ、そして力を照らす。
己と相手、全てが称賛に値するとき、それを発する。
認めた相手と最後まで、その合図だ。

225二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/06(木) 01:05:54 ID:FVwzcm2g
かぁごめかごめ――赤は踊る。檻を槍に、槍と剣で、円の舞。
                    かぁごめかごめ――青は奔る。残像を力に、己と影で、線の舞。
つるとかめがすべった――力を放つ。青へ向け、囲うように。
                    つるとかめがすべった――力を放つ。赤へ向け、貫くように。
うしろのしょうめん――力を曲げる。背後から正面へ。
                    うしろのしょうめん――力を曲げる。一点から包囲へ。
             だぁ……れ――位置を交換した。力がお互いを貫く。貫くのは過去の相手。

「「最高――」」
陶酔と戦意、称賛に値する相手が互いに時間を一旦止め、言葉を交わす。
アドレナリンの溢れた脳が、短時間の賞賛を1時間にも、1日にも感じさせ。
わずかな休憩が全てをグリーンのコンディションへ持っていく。

止まった戦いはオベーションを求め、まだまだ止まらず。
時間は瞬間へ。
空間は点に。
全てが短く。
だが正確にかみ合う。

226二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/06(木) 01:07:04 ID:FVwzcm2g
終わらぬ舞は、終える者が居ない。
全力は全力が受け止め。
だが、戦う二人は思っている。

願わくば、この陶酔が永遠であるよう。
二人の強く、汗にまみれた笑みがそれを交換した。
「「ああ、永遠が欲しい」」
命でもない、勝利でもない。
これが続けばいい。
それだけが、戦う――歌う――二人の望み。

*終わり 21分かー なんか変なテンションねw

227隣りの名無しさん:2006/07/06(木) 01:21:12 ID:kv5SX4lc
GJ!!
スピード感があっていい感じでした!!

別の人が書いた歌詞ですが、こんなのもあります。
http://uploaderlink.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/512kb/src/up12755.txt.html

228二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/06(木) 01:24:15 ID:FVwzcm2g
>>227
thx!
あー……シンデレラ要素使ってないなぁorz
勢いだと速度は出るけどミスが多くなるかも

229二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/07(金) 23:27:42 ID:BysMInv.
注文は随時受けてるよー

今日はちょいと、同人の方やっとりますので遅くなるかもしれず……

230隣りの名無しさん:2006/07/08(土) 10:01:42 ID:CS/jj74o
つ『子午線の祀り』

231二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/08(土) 20:08:28 ID:L2SAyuHY
>>230
子午線の祀りって色々あるよー(;´Д`)
どれだろ……

232隣りの名無しさん:2006/07/08(土) 20:51:20 ID:CS/jj74o
あら それは失礼した
聖剣伝説2ので願う

233二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/08(土) 21:17:03 ID:L2SAyuHY
うし、なんとかmid発見
やってみんべ

234隣りの名無しさん:2006/07/08(土) 21:17:37 ID:WNAnDohU
っ花京院のテーマ

235二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/08(土) 21:29:06 ID:L2SAyuHY
>>234
曲がみつからぬ……

236二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/08(土) 21:37:30 ID:L2SAyuHY
♪子午線の祀り

――でかい!
第一声にしては、情けない。
そのくらい、奴はでかかったんだからしょうがない。
上空を仮初めの翼で見下ろし。
でかかった。

丸い世界を両断してしまうのではないかというくらい、
そのくらい、あの龍はでかかった。

――圧倒的な!
とにかく追いつかねばならぬ。
追いすがり、振り切られ。

不意の安堵。
そう、安堵してしまった。
その後ろから――。
――もうかよ!?
あいつはこの世を一週してきたんだ。
速すぎる……!

237二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/08(土) 21:38:00 ID:L2SAyuHY
焦りを一つ呑み、次の一週を待ち――。
近寄る。
――もうすこしだ、びびるまえに……!
しがみつく!

竜頭。
そこにあるのは財宝らしい。
今更思い出した冒険の理由を噛みしめ。
鱗を一つ、また一つ。
強烈な風が体を熱くする。
摩擦を感じているくらい、速いんだ。

リングの竜、ウロボロス。
そのなれの果て――聖化したから語弊はある――は圧倒的だ。

だけど――やってやれない事はない!
進む。進む。
何かを、求めるために。

238二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/08(土) 21:38:48 ID:L2SAyuHY
――何のためかは、見てから考える!

巨大な物体の回転はいつでも同じ。
しがみつく者を振り落とす、悪魔のような速度。

――ああくそ。空が綺麗だ。

こんな大いなる存在の上では、どうしても恐怖より。
不思議な間隔だ。

――さぁ、勝負と行こうか、大将。

*うーん、なんか聖剣ってよりワンダっぽいぞw 20分ちょい
余談:リーフセイバー使わなかった俺に一言

239隣りの名無しさん:2006/07/08(土) 21:57:52 ID:CS/jj74o
これは確かにワンダだww
すまない、リクエストしといてなんだが自分ではやってないんだ…

240二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/08(土) 22:01:58 ID:L2SAyuHY
>>239
ちょwwwwwwwwww
ゲームやってる癖に派手にやっちまったと思った、うんw

241隣りの名無しさん:2006/07/08(土) 22:13:31 ID:ifPn4kVM
花京院のテーマ自己消化

それは夜空にバラ撒かれたエメラルドのしぶきように
キラキラと輝き、夜空に消える。

彼の魂は夜空にバラ撒かれたエメラルドのしぶきように。
一瞬、キラキラと輝き、そして消える。
彼のたった一度の輝ける時は、死の間際に。
輝き、消える。
夜空にバラ撒かれたエメラルドのしぶきように。

彼はエメラルド
緑色の輝きを

彼はエメラルド
緑色に、力強く光る。
彼はエメラルドのしぶきのように。
たった一瞬、輝いて消える。

242隣りの名無しさん:2006/07/08(土) 22:14:34 ID:mVzy5XFU
花京院のテーマwwwwww自分でみてきめぇwwww


先生…文章力が欲しいですorz

243二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/08(土) 22:15:13 ID:L2SAyuHY
>>242
乙!
そして努力……じゃないな。
なんでもいいから積み重ねると色々身に付くよw

244隣りの名無しさん:2006/07/09(日) 17:45:20 ID:tWX3srLU
っ『ひょっこりひょうたん島』

245二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/09(日) 20:18:57 ID:Gv51/mDU
>>244
んー、すまぬ
露骨に『ひょうたん島』であるわけで、書きようがないんだ。
ある意味同人二次創作みたいなもんじゃん?
解らないから思いつきでやろうにもお、ひょうたん島って書かれたらどうしようもないorz

246隣りの名無しさん:2006/07/09(日) 20:23:45 ID:tWX3srLU
そっか すまなんだ
じゃあ およげ!たいやき君 も駄目か……

カービィの「グリーングリーン」は如何

247二郎剤 ◆h4drqLskp.:2006/07/09(日) 20:55:51 ID:Gv51/mDU
>>246
グリーングリーンズ、かな(検索したらそう出た)
あんまりにいい感じのアレンジをきいてたら遅くなったorz

やってみるぜー

248保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:14:11 ID:T8QZhQM6
ども。
7/8〜7/9にかけてVIPでスレ立ててやってみた、

『中年で離婚して年金半分持ってかれたけど質問 は受け付けない。 』

はここに投下することでそのまとめとさせていただきます。

ちなみに、曲をモチーフにしている事もここで明らかします。曲は

男の子|YURIA

です。では投下↓

249保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:15:02 ID:T8QZhQM6

田園風景である。田園風景である。
見渡す限り田園である。両側が田園である。見渡す限りの。

田園風景である。田園風景である。
いい天気である。晴れ晴れしているのである。季節は夏。

田園風景である。田園風景である。
綺麗である。見渡す限りの緑。時々カカシとか居たりして。

田園風景である。田園風景である。
その水田に息づくバッタ、タニシ、ボウフラまで。生命の力が静かに横たわるような。

田園風景である。田園風景である。
電車が走っている。その田んぼの真ん中を。線路が延びている。緑の先へ。

その一両編成の箱の中で。
箱であるはずなのに、とても開放的で明るくて。
まるで風そのものに運ばれるように静かな静かな、けれど時速80kmのなかで。
綺麗な綺麗な空気の中で。
流れる大気に夏の暑さが心地よくて。
光が満ちていて。午前で。
箱の中はまるで空洞で。
つり革に意味はなくて。
両側に対面した座席があって。
さっき止まった駅で紛れ込んだトンボが、羽を休めていて。




彼は首をくくろうか、腹を刺そうか、毒を飲もうかを考えていた。



-middle age no.1-

250保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:15:36 ID:T8QZhQM6
そんな人生で何度訪れるとも知れない貴重な貴重な一瞬をそんな事を考えて過ごすのは流石にもったいない気がしたが、さりとてこの状況……地方、それもド田舎への左遷とすべてを失った状況を化合すればなるほど、これは天国への……。今、言い得て名見つけたぜ、まさしく、

グリーンマイル

だと言えなくも無い。解るか?田んぼのグリーンと(ry

そんな事を考え、座席にみっともなく恥じる事もなく醜態を晒すように寄りかかり、意識も定かではないまま清涼な空気を煤煙に変える中年男。

ニヤニヤと、不意に思いついた親父ギャグに一人で笑みを浮かべ、数瞬後に自己嫌悪し、死にたい係数を上げている彼は。

名を 臼井 秀寿(ウスイ ヒデヒサ) と言う。

恐ろしく捻りの無いまったく一般的な名前なのは仕様です。
彼は職業を『配管工型公務員』と言う、市役所は水道局勤務の自称・水周りのおまわりさん。
地域住民からはクラシアンもどきとして通っている。
長らくその町には保守整備のできる業者がおらず。
官から民へのこの時代に、いまだ彼のような存在が許されていた。
その範囲は上水を中心に下水に及び。
下水道整備の際にも引っ張り出されるほど、街の配水において把握している情報で右に出るものは居ない専門職に近いベテランだった。
彼のダウジングは車道近くでも狂わない。
水漏れを、その水溜りの形状からどこが悪いのかを見抜いてしまう経験豊富。
気さくではあるがどうにも人付き合いが苦手なシャイな言動から、実に老人に好かれている男だった。
反面、新人の受けは悪かった。とはいえ、それは彼の指導技能に問題があったからで、もちろん恨みを買うような人物では……あったかもしれない。
彼は、空気を読めない男とでも言おうか。
どことなく、いいや違う。
普段の仕事振りからして、ワンマンなところがあった。
もっともそれは彼が悪いと言うには少々酷な話で。
既に息絶えたかのように見えた年功序列制度がいまだ不確定ながら機能する市の行政の波の中。
実の能力の高い彼を一兵卒として野放しにする事をよしとしなかった上司が、果たしてどれだけその先を見据えた判断だったのかは疑うだけ無駄なことではあるが、退職の際に彼にその座を譲ったのだった。
すなわち、課長である。
課長。
部下を持つもの。
それは言っては何だが、当然のように見えて、大きな間違いだった。
彼は特殊だった。
特殊ゆえに、特例を意識しなければならなかった。
だがされなかった。
彼は人を動かす術を知らない。人の上に立って先導する者ではない。
ただ壊れた水道管があれば良い。

徐々にだが、彼は無能とみなされるようになった。

251保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:16:09 ID:T8QZhQM6
それはある意味では正しい。
だがある意味では間違いだ。
特化した才能のみでは社会を生きるものとして資質に欠く。
さらに言うなら彼自身の責任がここで発生する。
努力しなかったのだ。
立場に相応しい者としての努力を。
自分が求めるもの、組織の求めるもの、行政の求めるもの、民意の求めるもの。
その中で彼は、いつしか社会不適合に近い扱いを受けるようになっていった。

しかし彼は気にしなかった。
名目だけの部下も、役職も。
自分は自分の仕事をすれば良い。
彼にはその信念があった。
そして、事実彼はその給料に見合う働きを存分に果たしていた。

クラシアンが彼を誘いに来たりもしたが、彼はそれを跳ね付けたことがある。
水道トラブル8000円。
馬鹿馬鹿しい値段だったからだ。
信念はただその言葉にあるだけでは成り立たない。
実行する上でのマニュアルが伴わなければ意味が無い。
彼はそのガイドラインに、「できるだけ安価で良いサービスを心がけること」を加える人格者だった。
だから彼は、次第にその存在を理解はされずとも受け入れはされるようになっていった。


そして、彼は今、中年である。


そして今、死にたがっている。

この事実は誰に知られたものではないだろう。
だが知ったものが居るなら。
彼のことを。
どう思うだろうか。


神が居るなら、なぜこんな。

しかしそんな悲嘆は意味を持たない。本人以外には。
なぜなら神は、居ないからだ。

252保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:17:19 ID:T8QZhQM6
_________________________________________________________

かたたん、かたたん。かたたん、かたたん。
ゆりかごのように、一定した震動と小気味のいい音だけが聞こえる。

かたたん、かたたん。かたたん、かたたん。
意識は保っているが、どこと無い遊離感。座席の感触、車内の光量、大気の温度、湿度…完璧。

かたたん、かたたん。かたたん、かたたん。
意識の試しに指先を動かそうとしてみる。が……この感覚を手放したくないからやめる。

かたたん、かたたん。かたたん、かたたん。
リラックスしている。これから向う先を考えないように勤める。そうすれば今だけは、楽で居られるから。

かたたん、かたたん。かたたん、かたたん。
だけど……ああ。ダメだな。だけど……ああ。いいよな。

その一両編成の箱の中で。
陽だまりとまどろみの箱の中で。
これから修羅場に向う男は。
数日悩み続けた結果としての疲労と不眠の果てに。
今やっとしばしの安寧……
かりそめの安らぎを得ていた。
自ら向う以上逃げ場はなく。
望んで立つものに一切の同情もなく。
「清算」に向う彼に一切の餞も要らず。
不意に訪れたこの空間はまさしくゾーンで。
であれば、誰しも受くることの是非を問われず。




しかしその先にあるものは結局、変わるはずもないのだった。



-middle age No.2-

253保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:18:00 ID:T8QZhQM6
晴れた日の車内はぽかぽかして気持ちが良い。
端的に言い表せばこうなる。まったくただこれだけの事。しかし、それだけの事。
あるーはれーたひーのことー。
さて、そんななかどこかへ向っているらしい彼は。

その名を 長崎 康治(ナガサキ コウジ) という。

これまた捻りも何も無いが、それはおいおい明らかにならない理由によるものであり、まったくどうでもいい事に間違いは無いので割愛。愛なんて無いけど。

彼は人間のクズである。
具体的に言うとギャンブル狂のヒモである。
さらに悪い事に、取り付かれた女は馬鹿だった。
そして彼は、駄目なダメ人間だった。

出会いはまったくささやかなものだった。
競馬場だった。彼はその日、初めて競馬場に行った。
目的はたいしたものではない。ただ馬が見たい、と唐突に思った。
その日の前の晩、たまたまバイト先で出張から帰った店長が持ち帰った土産の馬刺しを食べた。
少々戸惑ったが、筋が強い事と馬である事を忘れれば、臭みも無くなんとも美味いものであった。
彼は、いわゆるフリーターだった。しかも、童貞だった。その上、三十に手が届く年齢だった。
それだけだったらまだ良い。
悪いのは、彼が怠け者であった事と、自分から事態を変えようとしないうちに自然とベッタリ張り付き乾いてしまったペンキのような、彼自身の『凝り固まった』色……いつまでたっても変化を起こせないような、それでも時間が過ぎていく、まさしく駄目人間の……停滞した色を、洗う事も出来ずに放置していた点だった。
それでもまだ駄目人間ではないかもしれない。
しかし彼は、矮小な人間でもあった。
『自分がよければそれで良い』人間だった。そして彼は、人の傷みが解らない男だった。

生きてゆくうえでの武器も無く。
道の歩き方も知らず。

そんな、『仕事の仕方もよく知らない』彼はその日競馬場に来たのは、ガキのような部分を多く残した彼の、『どうせ馬だろ。馬に群がる連中を端で見て笑ってやろう』位の気持ちであったことは、なるほど今となっては記録が無いから解らないがありそうな理屈ではある。

254保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:18:51 ID:T8QZhQM6
そして、出会った。
馬券の買い方も、競馬新聞の見方も解らず、それでいて見栄っ張りかつ自堕落な彼は、解りもしない新聞をさも分析するような目で眺め、それでいてその見方を『自分から解ろう』ともしなかった。
格好だけつけて、周りの人間を根拠も無く内心で見下す。

それでも、彼が自身の内でそう思っているだけなら、別に構わない。
実害が無いなら問題ない。彼から誰かに関わる様なことはしないし、関わろうとするものもいない。
だから、このときはまだ、彼はダメ人間だったがダメなダメ人間ではなかった。ダメじゃないダメ人間でもなかったが。

だいたいに、人をダメ人間と言う型に嵌めて考える事自体ナンセンスなのだが、ここでは便宜上使用している。それは彼の思考に準拠してお送りするからに他ならない。


べ、別に俺(著者)がダメ人間だもの、だからじゃないんだからねっ!本当にそれだけなんだからッ!


馬券の買い方も解らず、見たかった『馬』も見えず、いい加減飽きてきた彼に、ある女性が近づいてきた。

かつ、かつ、かつ、かつ。

異例の事態である。異例の事態である。彼は混乱しつつも、雑多なロビーの中で響くハイヒールの音が妙に耳に届いた。
内心バクバクながらも、気がつかないふりをして新聞を読むフリをする彼。中身の無い行動だと、彼は気がついていない。しかし、一般的な振る舞いだともいえた。

「あなた。もしかして初めて?」

それがその女の第一声だった。

女の口調は高飛車なものだった。自信に溢れたものだった。
そして、彼には、逆らいづらい威圧を伴って聞こえた。

「お姉さんが、教えてあげましょうか。」

お姉さん。
確かに年上だろうが、彼にしたって既に三十を超えている。
本人は気がついていないが、全身から発散される『オドオドキョドキョド』オーラは彼からあるべき年季……歳相応の備えるべき示威姿勢が無かった。
ヨレヨレの安いシャツに破けたズボンを穿いていてもジェームズボンドはジェームズボンドだし、堀江貴文は逮捕されてもホリエモンだったし、小泉純一郎はスーツを脱いだらただのセグウェイに乗ったおっさんだし、杉村太蔵は議員をやめてもムカつくと思う。
そういう、個人性から見られるようになる初見の印象、それが彼の場合、不審人物と言うのは言い過ぎだがしかし、キョドッた青年、の、それであったのだ。

ゆえに、紺のスーツを着込んだ彼女と、彼が対比されたとき、自然とお姉さん、といった属性が発生してしまう。
そしてお姉さんは品定めするような目で彼を見て、こういった。

「解らないなら教えてあげましょうか?今なら、か・く・や・す、で。」

金を取ると言う行為をさもサービスするような「か・く・や・す」と言う一文字づつ区切ったお馬鹿なセリフを堂々と吐く。実に、彼を舐めていた。しかし彼はそれにいらだつ事はなく、その女性に羨望を抱いてしまっていた。

傍目で見れば、どちらも。
馬鹿であった。

255保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:20:15 ID:T8QZhQM6
その後の顛末についても追わねばなるまい。なぜならそこからが本題だからだ。

彼はその女性のテキ屋的指摘に沿って馬券を購入。
なぜか………それは神のいたずら心か。あるいは悪魔の誘いだったのか。
ビギナーズラックで大勝。
女はそれにいい気になった。
彼もその「漠然とした大金」に興奮していた。
実際のところ、ちょっと大きな買い物が出来るかもしれない、程度の金額だったのだが、熱に浮かされたような彼らにはそれで十分だった。

二人で街を歩いた。
彼には初めての体験で、自然に動悸が起きたほどで。
デパートに行った。
駅前を散策した。
彼女がブランド物のスカーフを欲しがったので購入した。
それ以外に金の使い道が思い浮かばなかった。

そして、その日も終わりに近づいたとき。
彼女はさも当然のような風を装って、彼に酒をおごるように要求。
半分以上彼女の金であるといえる状況だったし、彼はもちろんそれを快諾。

そうして、夜の街へ消えていった。

女は酒を飲みながら、実際のところ何も考えていない彼の不思議なまなざし。
何を見ているのか解らないその視線の先にあるものを、自分だけに定めたいと考えてしまった。

どこか、運命じみたものを感じてしまう。

そんなありもしないものを感じてしまう時点でおかしいと気がつかない彼女は、やはり格好に似つかわしくない、『中身は少女ともいえない未熟な女』であった。
久々に奢りで飲んだ酒。ほろ酔い絶頂、気分は上々。
彼もまた、その時間を楽しんでいた。普段の彼なら怖くなってすぐ逃げ出すような、初めての体験尽くしだったが、不意に懐に入った大金が彼を増長させていた。

そして、店を出たとき。

256保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:20:45 ID:T8QZhQM6
雨が降っていた。
傘は無かった。
いや、あった。
一本だけ。
彼が、家を出る際に、子離れが出来ないこれもまた愚かな母親に、持たされたものだった。
そして彼は、それを彼女に渡そうとした。

これが、決定的だった。

女は彼を離すべきではないと考えた。
今日のような日が続くと考えてしまった。
愚かにも運命と言うものを感じてしまった。
それが、凋落の始まりであると言う客観的に明確な事実を無視して。

彼女はその傘と一緒に男の手をとり。

「家に来ない……?」

上気した頬と、酒に酔った頼りない、さっきまでのお姉さん振りから離れたたどたどしい口調と。
アルコールによって赤くなった、彼には泣いている様にさえ見えた瞳。

麻痺した思考で、彼は頷くしか出来なかった。

扇情的な年上の女。
半ば奪われるように。

その日の終電を最後に、彼は長年パラサイトを続けた家を出た。


そして現在。

かたたん。かたたん。
かたたん。かたたん。

昔を思い出しながら、彼は。
決めるべき覚悟を探し続けていた。

257保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:21:34 ID:T8QZhQM6

_________________________________________________________

思い出したら腹が立つ事がある。
やめようやめようと思っても思い出してしまうこと。
俺をこんな、自殺を考えるまでに追い詰めた原因。
もちろんそんな事を考えるのは俺の責任だ。
自身に発生する事態を誰かのせいにして逃れるほど落ちぶれてはいない。
ただ、どうしてもぶん殴りたい奴がいる。
それは矛盾する事だろうか。

そこまで考えてしまったらもうアウト。
ひたすらに不愉快になる記憶を思い起こす以外に道はなくなる。

強制再生。
それは彼が、課長になって間もないころから始まった。




「渡瀬 市子(ワタラセ イチコ)です!本日からこちらで業務に当たらせていただきます!よろしくご指導のほどお願いします!」

ぱちぱちぱち。

まばらな拍手。
それもそうだ。人が少ない。しかし歓迎する笑顔があった。
課に新たな人員が加わった。
それも、若い娘だった。
どれくらい若いといって、高卒採用枠の一人である。
ピチピチと言う奴だ。だが、ギャルと言うにはちょっと違う。っていうかどっちも死語だね。
そして、その娘の教育を受け持ったのが臼井だった。

なんと言うか、いちいち元気な娘だった。
なんに関してもやる気があるのは結構だが、彼としてはやり辛いと思うところも無くは無かった。
新人に昼飯をおごる、それくらいは彼でも思いつく社交辞令で、実行できなくも無かったが、自然と同席する事になると会話に詰まる。仕事の話であればいくらでも出来たがこの娘、なんとも仕事の覚えが悪く、しかし言うことは一字一句完璧に記憶していると言う彼にとっては嫌がらせにしかならないやり辛いに極まる娘だった。
実技に関してはほとんどからっきしであるのに、頭ばかりがでかくなってゆく。
ただ黙って練習する場面も何度か会ったが、自分がどれ見てたやろうと思って赴くととたんに集中力を切らしてマシンガンのように話しだす。

なんなんだろうなぁこの娘は。

258保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:22:05 ID:T8QZhQM6
彼は一応既婚者である。
しかし、女性と言うものに関してはほとんど知らず、また良いイメージも無かった。
人間として人を見る目が性別で人を見る目よりもはるかに重んじられる彼の価値観の上で彼女はなるほど悪い人間ではない。
彼の嫁は彼を金づるだとしか見ていなかった。なんて嫁だww
彼はそれをどうとも思っていなかった。
ただ帰れば、冷めてはいても飯はある。家は綺麗にされていたし、酒もあった。彼が好きなスナックやおつまみもしっかり補充されていた。
風呂を沸かしてくれ、といえば沸かしてくれるし、クリーニングを頼めば出してくれる。

ただし、それ以上の会話はなく。
肉体関係も、最初の一年以降は見られなかった。

そんなものだと、思っていた。
当然子供もおらず。
自身から身の上を公開する理由がない彼のこと、独身であると信じているものさえいた。
それも、多く。

「愛情?なにそれ。」

嫁はよく男を連れ込んでいた。
彼はそれを知りつつ、なるほどこういう女なんだな、と理解し受け入れた。男としての所有欲などなかった。ただ、家の嫁は男好きなんだなぁ、位に考えていた。

それは期待していないがゆえの諦観とも違う、馬鹿馬鹿しい勘違いにも似た。
どっちにせよ、婚姻関係のあるハウスシェア契約のような。
そんな彼の女性遍歴は枯れ切っていた。
子種まで枯れたわけではなかったが、しかし発散する必要もなかった。

壊れた水道管こそその人生のすべてだったのかもしれない。

259保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:22:39 ID:T8QZhQM6
そんな彼を慕うものがいた。
その多くは町に住む弱者、老人や子供であったが、そのすべては感謝であった。
そんな彼を嫌うものがいた。
総合的に見ればひどい事だ、彼を好いて、思慕を寄せる女性に端を発するその憎悪は。

思い出す。
冷たい声。
愚鈍と彼を罵る声だ。

「いつまでいるんです?」

馬鹿にしたような。若い声だった。

「会社はあなたの預かり所じゃないんです。さっさと帰ったらどうですか。」

こいつは知っていて言っている。基本的に人に不干渉の彼には、嫌味を言うヤツの気持ちが理解できなかった。

「ああ、まだ書類仕事が終わらないんでしたね。すいません。でもちょっと遅すぎやしませんか?それもう三日前のヤツでしょう。」

ニヤニヤと言ういやな笑い方。まるで俺を見下ろし、食い物にするような。掃き捨てるような。

「まぁ、あなたじゃ単純な書類仕事も時間かけなきゃ出来ませんよね。でもそんなことで、そのイスに座ってて恥ずかしくないんですか?」

うるさいな。いまやってるだろ、邪魔しないでくれよ。そう思っても口には出せない。
なんと言ったら良いのか解らない。

「あ、時間かけてるんですからそれなりのもの出してくださいよ。こっちの作業も停滞しちゃうんですから。」

「もし書式や数値にミスがあったらどこかに飛ばしちゃいますよ?」

まるで笑うように言う。からからと。

「ちょうど知り合いのところに技師を二、三人欲しがってるところがありましてねー。」

じゃ、よろしく〜とか言う事を言いながら出て行った。
いつもこんな感じで彼に攻撃を仕掛けてくる男がいた。

260保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:23:12 ID:T8QZhQM6
名を、荻野 健三郎(オギノ ケンザブロウ)

渡瀬がらみで、彼に突っかかるようになった、人事課に勤める出世頭である。
仕組みは単純にして明快。

渡瀬は臼井に恋心を抱いているという事実。
荻野が渡瀬を気にかけているという事実。
臼井は萎びた中年で既婚であると言う事実。
渡瀬は若く、将来もあり狙うものは多い事実。
荻野は以前から臼井を嫌っていたという事実。
渡瀬はなお怯まずアピールを続けている事実。

以上から導かれる、現状の解釈は一つ。

…………………
しかし、臼井はそれで渡瀬をも邪険にする男ではなかった。
それゆえか、日に日にエスカレートしてゆき。

ある日は。

「先輩、今晩はお暇ですかー?よろしければ焼き鳥の美味い店がぁあああ!!?」
どさどさどさ。
「臼井さん明日までこの図面仕上げておいてくださいお願いしますねもし出来なかったら左遷。」
「………都市計画の担当は俺じゃないだろ……」
「水道局で一番詳しいのはあなたです。やらないなら左遷。」
「わかった……」
「あの、手伝いましょうかぁああああああああ!!?」

帰り支度の済んだ渡瀬を引っぱって強引に出入り口に向う荻野。

「あなたは今週残業してはいけません。労働基準法最近うるさいですからね。」
「せんぱーい!すいませーーーちょっひっぱんないでよっ!?」
「いいから帰る。電車でちゃいますよ。僕も一緒の方向ですから痴漢避けに同乗しましょう。」

261保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:23:52 ID:T8QZhQM6
またある日は。

「せんぱーい。その作業着汚れてませんかー?」
「ん……ああ。今日はクリーニングされたのが無かったから昨日のままだ。そろそろ着替えたい。」
「んー、ちょっと匂っちゃうかもですねー。男臭さがww私は一向に構いませんけどー。」
「すまん。」
「いえいえ、ほんとに気にしてませんからー。あ、そうだ、よければこのポプリを胸ポケットに入れるといいですよー。」
「……香草?巾着の中に入ってるのか。」
「えへへー。最近凝ってるんです。じゃあ先輩にはウッディな香りのうわぁああああああ!!?」
「とーう!!ファブリーズ光線!しゅわっしゅわー!」

いきなり現れた荻野がファブリーズを容赦なく吹き付けてきやがった。

「やめっ…!口に入るっ……」
「植物性ですから安心です。悪霊も退散します。よかったですね。」
「よくないですよー!失礼じゃないですか!」
「さてポプリを渡すと言う行為の方がより私の行為の本質を果たしている……君の言う『失礼』の度合いを増していると思うのだがどうかね。」
「私が言ってるのは、人に向けて撃っちゃいけませんってことでっ」
「なんにせよこれで解決です。私は仕事にもどります。ほらほらあなたもさっさと仕事に就いた就いた!」

な事があったりした。

確執。

一見日常に見えるところに潜む悪意。
それが、たまらなく怖ろしかった。
表層上明るく振舞っても、どす黒い感情に根を持つ行為。

――――――いつか、本気で来る。

その時に、俺はどうするべきだろうか。
いやな人間関係だった。
煩わしかった。
でも解決策が浮かばなかった。

中年は、そして、それ以上考え悩む事をやめた。
そんな事を……いい年して女に端を発する争いなど、したくはなかった。

だが、荻野は違ったのだった。
それが明らかになるのは、それから三ヵ月後の事。

262保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:24:50 ID:T8QZhQM6
その年一番の大型台風が襲来。
後に激甚災害に指定される台風二十七号は南西から北上、日本海に入り、京都府から近畿地方へ。日本海をなぞるように北上を続け。
彼らの町も、大きな被害を受けた。

公務員は災害時、義務として召集を受ける。
自宅が停電し、浸水し、まだ幼い子供と妻を残してでも、行かねばならないときがある。
それが公務員の公務員たる所以。公僕の勤め。
何かと罵られる事が多い役所の人間だが、内実はみな必死なのだ。
そして上水道の保守管理において重要なポジションを占める彼は、ことさら事態の把握と収集、指揮を受け持たなければならず。
雨の中、彼は浸水しプラグがイカレて使い物にならなくなった車を捨て、徒歩で局に向っていた。

その、さなか。

「………!?」

黄色い合羽を着込んだ彼は振り返る。
轟々と風がなり、いまだ冠水を続ける路面。
倒れた樹木に引き裂かれた電線がバチバチと火花を立てる。
リアルにこういう状況は発生する。それも簡単に。

そんな中、彼は。

「……子供の声。」

何かを聞いた。声を聞いた。
泣き叫ぶ子供の声を聞いた。雨と風の中聞こえた。

ばしゃばしゃと水を掻き分け。
ごうごうとなる風の中、右往左往ながら。
何度も耳を澄ませ、徐々にその声がどこから発せられるものなのかの見当を付け。
そうやってたどり着いた先に。

「………っ!バカがっ…!」

263保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:25:29 ID:T8QZhQM6
ペンギンを模した合羽を羽織った少女が、冠水した濁流が流れる橋の中央に、取り残されていた。
既に橋は欄干まで濁流に飲まれており。

なんだよもうこのドラマティックはよぉ。

泣きそうになりながらそれでも必死に方策をさがす。なにか、なにか、ロープのようなものは。

どどどっ……!

「………ダム」

……ぉおん…

僅かに聞こえたのは、放水を知らせる警報音。
マズイ。
じきに大量の濁流が、今現在の水位をはるかに上回る濁流が押し寄せる。
既にこのザマだと言うのにっ……!
だから追加のダム建設をしておけと言ったんだ!
公共事業削減とか脱ダムだか調子のいいことぬかしやがって。
だいたいにこの河川にしたってこのザマじゃあないか!
河川拡張を進言したのは俺だけじゃない!
なんにも解っちゃあいない!非常時に起こる市民生活を真剣に考えようともしない!
その結果がこれか!くそっくそッくそッくそッ!クソッタレがぁッ!!!

彼は一頻り頭の中で毒吐くと、覚悟を決めたように。

書類鞄を近くの電柱にくくりつけ、水の抵抗を抑えるべく合羽を脱ぎ捨て。
欄干に飛びつき、濁流の中を一歩一歩、足をすくわれないように進んでいった。

助けない訳にはいかなかった。

264保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:26:10 ID:T8QZhQM6
途中、流されてきた枝やゴミにぶつかり、いくつもの傷ができる。
傷は即座に泥水で洗われ、細かな石や砂が余計に傷をえぐった。
だが、欄干につかまり、縁石に乗っかった少女が耐えられる範囲の水流である。
ゆっくり行けば、到達できる。
しかし余裕が無いことも確かだった。

あの放水警報は一番山奥にあるダムのものだ。
それが放水を開始したとなると、それ以前に山中に分散して設けられた水門はとっくに開かれている。その影響か、彼が渡るその間にもどんどん水位は増していた。

彼は頭の中で考える。考え続ける。
今のところ大丈夫だ。速く動けるうちに動いた方がいい。
すぐに自由に身動きが取れなくなる。まして帰りは少女を連れて、だ。

ざば、ざばざばざばざば

急ぐ。急ぐ。水位を跳ね除け、少女の下へ。
あと…5,4,3,2、…到達。
この時点で、はじめは脛までしかなかった水は既に彼の膝に到達していた。

「大丈夫か!?動けるか!?怪我してないか!?」

まくし立てるように話しかける。
少女は生命の恐怖に晒されたためか、喋る事は難しそうだったが、しかししっかりと頷いて見せ。

「じゃあ……そうだな。」

既に少女を歩かせるには、危険な水位だった。

「おぶさって、背中に。ほら。」

そう言って身をかがめる。しかし、少女は何かを…抱きかかえているために、腕を伸ばす事が出来ないようだった。

「どうしたの、早く。」

急かす。急かす。焦る。焦る焦る焦る。
焦燥のあまり覗き込むと、そこには。

「……猫。」

子猫だった。まだ目も開かない子猫だった。少女はその子猫を抱えていた。
そして、離そうとしなかった。
まさか、猫を捨てなさい。なんて。

言える筈が無い。

265保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:27:03 ID:T8QZhQM6
「……ええいっ」

彼もまた急いでいた。
少女に何事かを言う前に、自分が動いて事態を動かすのが一番手っ取り早い。

「……っ!?」

少女が突然持ち上げられて目を見張る。
彼は片腕で少女を抱えあげ、もう片手で傾き始めた古い古い欄干に捕まり、濁流を進み始めた。
実際、状況は逼迫していた。
水圧は容赦なくまして、彼の歩を襲った。
これ以上…腰に達すれば確実に身動きは取れなくなる。
既に大腿に近い。今現在も無理やり動いている、といった感じで。橋を抜けれ幾分高い建物もある。
通常、橋は沈下しないように若干高い位置に作られるものであるがここは違った。
そもそもこれほどの水流を予期した造りになっていない。
橋を渡ってすぐに登りの階段があるほどだ。
その階段のほう……恐らく、こっち側にきたら登庁は難しくなるであろう方へ進んでいた。
だが背に腹は変えられず。
確実に助けられるのであれば。
その一心だった。

266保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:27:53 ID:T8QZhQM6
ごごごごご……

水位は増す。いい加減やばい。
しかし。

階段まであと……少し。
眼鏡に水滴が付着しすぎてもはや前は見えなかった。
ただただ進んだ。
そして。

がつん。

靴の先が何かに当たった。
それは。

「…きたっ」

石段。
足を掛ける。
一瞬足を浮かせる、『すり足』を離れるこの瞬間がいちばん危ない。
気を抜かず。
持ち上げた。

ぐぐぐいっ!!!

ちょっと浮かせた途端足を攫われる。

しかし、うまく欄干に当たってバランスを確保。
そして歩を進める。一歩、二歩。
三歩、四歩。
五段目あたりまで来て、ようやく余裕が出てきた。
六段、七段……。
八段。

「………っはぁっ…!!」

ざばっ

少女を、下ろす。
既に数センチと言う水嵩しかなかった。
どうにか……なった。

どどどどどどどどどっ………

振り向くと、先ほどまでいた地点は、既に欄干まで水没していた。
危なかった。
危うく死者を出すところだった。

しかし……

「これじゃあ間に合わんな………」

少女を放っておく訳にも行かない。近くの交番に駆け込むしかない。電話は通っているだろうか。
少女をうかがうと、猫の様子を気にしていた。
タオルに包まった子猫。
小さな小さな。
豪雨に晒されながらも、少女が必死に守った。
そう。
今現在の時刻は、実に午前六時である。子供が出歩いていい状況でも時間でもない。
大方、端の下で飼っていた子猫の様子でも見にきたのだろう。

みゃあ。

「…っ」

突然鳴いた子猫。
その一声で、彼も、少女も、腰が砕けるほどの安堵に襲われた。

267保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:29:02 ID:T8QZhQM6
その後、最寄の派出所に少女を保護してもらい、それから自分はしばしの休憩をとり、携帯を借りて局に連絡を入れようとするも、非常事態につき回線が込み合い不能。
さらに悪い事に固定電話もアウト。このままではライフラインが麻痺しかねない。最悪の場合は、だが。どうにかすぐにでも出頭しなければなら無い。

濡れた服を乾かす暇もなく、コーヒーだけもらうとすぐに出ようとした、そのシャツの端を。

「……」

少女が掴んでいた。
その背後には、乾いたタオル包まった子猫。もう、心配は無い。

「濡れるから……」

そう言って。
差し出したのは。

「ありがとう、借りて行くね。」

がらにも無く、まったく似合わないセリフを吐いて。
少女が差し出した黄色いハンカチを受けとった。

巡査が合羽を持ってきてくれた。彼はここで待機。他のメンツは各々パトロールに出ていて、非常用ボートに空きは無いと言う。

なんとしても一刻も早く、仕事に、義務を果たしに行かねばならない。

豪雨のなか、再び行軍を開始した。

268保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:29:36 ID:T8QZhQM6
この三日後、彼は。

業務不履行。
公務への信頼の損失。
ライフライン復旧の著しい損害。
公務運営障害。

一般服務事項において著しく自覚を欠く行動により、多大な延害を招いたとして。
地方公務員法に基づき、減給と停職処分を受ける事になった。

それでもかなり手加減……いや、相殺した結果だったのだろう。

しかし、現実はそう簡単ではなかった。
事実、大量の供給を必要とする機関……おもに病院などでは、満足な水道設備が確保できずにやむなく重篤患者を危険性の高いことであるのに他の病院に移送するなど、はるかに多くの命を危険に晒す結果を招いていた訳で。

しかし。
最後に下された処分は。
荻野がいつものニヤニヤした笑いとは違う無表情で告げた、宣告。



「あなたはもう信用できません。」

「どこか遠いところへ行って下さい。」

「僕の知り合いがちょうど技師を欲しがってまして……」

そこから先は正式な辞令で知った。



まともに聞けやしなかった。

『あなたはもう信用できません』

それは何よりも、どんなことよりも辛い。
仕事人としてのアイデンティティを破壊するに十分な一言だった。

269保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:30:33 ID:T8QZhQM6
_________________________________________________________


彼女との生活は恐らく、俺の人生の中でもっとも楽しかったときだろう。
それは間違いない。
だけどそれと同時に、もっとも俺が下衆だったときでもあったのだと思う。
それは、ほぼ確実に。
彼女と言う犠牲の上の生活。
フェアじゃない関係。なにかがおかしかった。
俺は自分が楽をしたいがためだけに彼女を食いつぶし、彼女はそれさえ受け入れた。
そしてその終焉は。




俺の最低かつ最悪かつ彼女が最高に不幸になる選択で、幕を閉じた。

270保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:32:15 ID:T8QZhQM6
彼女との生活が始まった。
彼は家に帰ろうとしたが、どうにも彼女は俺を受け入れる姿勢を見せていた。
彼はその日から、徐々にだがギャンブルに溺れるようになっていった。
それを誘導したのはいったいなんなのだろう。
彼女だろうか。
彼女は確かに彼に賭け事を教えた。
しかしそこから先はやはり彼の行動である事は疑いようも無く。
ぼろくそに負けて無一文になって、アパートに帰れば彼女が迎えてくれて戦果を聞いてくる。
彼はまだその時には、彼女の事を少し上に見ており。
どうにか取り繕おうとして、彼女が教えた方法にいろいろ意見を付けてみたりもしたけれど、結局は机上の空論かただのレトリック以下のごまかしにもならない具にも突かない事しか言えていなかった。
彼は彼女にもらった金で、ただ遊び歩くだけの日々をはじめつつあった。
ヒモである。
それも、かなり特殊な。

彼女の仕事は詳しく聞いた事は無いが税理士か何かの類だと言う。
そう、それすら知らない。知らなかった。
彼女と話す時間は楽しかったし、こんな馬鹿な生活でも彼女は楽しいといって笑っていた。
それに関して考えることもせず、ただ合わせて。
飯を食い風呂に入り時には彼女を抱き。
いいや、抱かれ。
自分はいったいなんなんだろうなぁ、と漠然とした問いすら、彼女は許してくれなかった。
異常な関係。
彼の思考は麻痺していた。
酒とギャンブルと容易に手に入る金に。

271保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:32:45 ID:T8QZhQM6
その実を知る事になるのは、四ヶ月ほど経ってからだった。
実にその間、そのような生活を。
季節の移り変わりを肌で感じながら、そんな生活を続けていたのだ。
そんな中で。
とてもとても緩やかで気がつかないほどの変化が起こっていた。

彼は、彼女から日々貰う金に不服を感じ始めていた。
それはひとえに彼女の信頼。


『あなたならできる』

『運命が味方してると思うし』

『私は好きよ?』

『ねぇ……しない?』

『明日はきっと、当りが来るから』


今冷静に考えればまったくナニソレといわざるを得ないセリフの数々はしかし確実に俺を洗脳していた。

俺じゃあ

俺でも

俺だったら

俺にしか

俺なら

俺が


大金を当てて見せる。
そう意気込んでも、うまくは行かない日々。
彼はその原因を元手の少なさにつけるようになっていた。
彼女が渡す毎日の金の少なさに。
俺はまったく正常な判断能力を失っていたとしか考えられない。

相して彼は、徐々に闇金に手を出すようになっていった。

272保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:33:19 ID:T8QZhQM6
『あれは、怖い。
ざぶざぶと金が手に入ってしまう。
いくらでも、言うだけ金が手に入ってしまう。
街金は利用できなかった。
どこに行ってもそれなりの審査基準は定めてあり、それに完璧にシカトされるような人間であった。
しかし闇金は俺にどんどん金を与えた。
これがまた、俺が何かをしでかす人間である事を示唆しているようで。

俺は有頂天になっていた。

頭のどこかが有頂天の状態になると、そうでは無いと解っていてもどんどんそれは広がってゆく。
幻想に理性が食い殺されてゆく。
あまりに脆い精神構造。
金は、それ程に、恐ろしい。』

彼の負債は増えて言ったが、それでも手元にある金と見比べて、
問題ない、問題ないと見える破滅を別世界のものと断定していた。

『なぜなら俺は何かをしでかす男だから。』

一山当てる男だから。
彼女がそう言っているし、手元にある金もそれを示している。

しかし、いつまで経ってもその時はこなかった。
来るわけは無い。圧倒的に無い。しかし、それが解らない。

そしてその日。

彼は運命を目の当たりにした。
彼女と出会って五ヶ月目のその日。

彼はその日、競馬場に居た。

いつもの雑踏。いつもの新聞。
いつもの座席。いつものアナウンス。
唯一つ違っていたのは。

その日、彼は全勝を続けていた。

確率論から言ってありえない話ではない。
毎日のように賭け事を続ける彼である。
ありえない実験環境がありえない結果を招く。
それは当然の事だとも言えた。

しかし、それはやはり………

273保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:33:51 ID:T8QZhQM6
そして、次のレースが近づいたとき、彼は感じた。

びびびっ。
と来た。

この雑踏。
この新聞。
この馬。
今日最後のレース。

湿った空気。
どこそこから聞こえる、ぼそぼそとした雨を気に掛ける声。
その日着ていた服。
その前日食べたのは、やはり。

馬刺しだった。

ああ。

運命とは。

こういうことか!

彼はいきなり飛び出した。
ものすごい興奮に襲われていた。
この気を逃してはならない。
散々待っていた運命がやってきた。
今しかない。今しかない。今しかない。
駆ける。
その先。

一駅分ほど走ってたどり着いたのは。

彼がここ最近利用している、闇金業者の事務所だった。

がたん!
扉を勢いよく開こうとする。
しかし突っかかって開かない。
それもそうだ。
ガラス張りのオフィスには電気がついていなかった。
真っ暗な待合室が見える。

しかしここで諦めない。もう時間が無い。

274保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:35:42 ID:T8QZhQM6
彼は思いきって裏側に回った。
この事務所の二階部分。
そこに、『店長室』がある。
何度か立ち寄った。
気さくなで小洒落たサングラスの兄さんがここを仕切っていた。

かんかんかんかんっ

安っぽい非常扉を登る。
そして、

がたんっ

開いたッ!!

彼はその足ですぐに事務所内に侵入し、そして。

「すいません、誰かいませ っぶっ!!?」

その鼻っ柱に、裏拳が入った。

のけぞる。そして、その彼を強引に持ち上げるのは。

「なんだてめぇ……?」

柄の悪い大男だった。この人も何度か見たことがある。
こちらの顔は覚えてくれていないのだろうか。

「すっ、すいません…でっあのっ」

どもる。
うまく喋れない。

それもそうだろう。
チキンなのだ。
根本的に。

「ん〜〜〜〜?あれ〜〜〜〜?」

その時。
すっ呆けたような、陽気な声が。
しかし解る者には解る、剣呑な感情を含んだ声が。

「おや。長崎さんじゃないですか。」

「あ、ど、っ…どうもっ…」

どさっ、っと。
大男が床に放るように下ろす。

「どうしたんですか?今日は。臨時休業って張り紙だしてたはずなんですがねぇー?」

「あっ、そのっ……えっ………」

しっかりしろ、しっかりしろ、もう時間がない、もう時間がない。
いまだ、今こそ、俺が、俺が声を挙げるときっ!!!


そして、地獄が。



「お金貸してくださいっ!!!!」



初めて出した大声から、始まった。

275保冷剤 ◆xl4B3i0CLs:2006/07/09(日) 21:36:23 ID:T8QZhQM6
そして。

「ほぉほぉ。へぇー、それは興味深いですねぇ。」
「いえ、ウチところでは一度に三十万までって決めてあるんですがね。」
「じゃあ特別に、特別ですよ?おいくらでしたっけ?……いいでしょう、お貸ししますよ。」
「今晩にはご返却願えるんですよね?でしたら当方としても歓迎です。」
「では今晩、お伺いしますね。行ってらっしゃい。」

こうして。
臨時休業となった事務所の二階から、サングラスをかけた男……
池田 耕太(イケダ コウタ)は、走り競馬場に向う愚かな男の背中を見送った。

「……いいんですか?」

「いーんじゃないのー?」

「あれの話を信用した訳ではないのでしょう。……まさか。」

「……親父だっておんなじ方法で押し上がったんだ。うまく行くとは思ってねーけどなんかの足しにはなるっしょ。」

「……俺にはマイナスが勝ちすぎているようにしか思えませんが。」

「ま、いざとなったら。」

がらがらっ。

池田が自分の事務机をあける。
二重底の引き出しをボールペンの芯で持ち上げると。

「こいつで片ァつけるさ。」

暗いので良く見えないが、それはかの有名な。
雑な鋼材、ガンブルーがむき出しの拳銃。グリップに星マークが見えるからトカレフだろう。

窓の外。
暗雲が忍び寄っていた。


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