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持ち帰ったキャラで雑談 その二

572名無しさん:2012/08/21(火) 18:06:49 ID:Y8ST66t.0
背中に走った鈍い痛みにヤラは思わず呻き声を上げた。
サイレンや人々のざわめきが嫌に大きく聞こえる。辺りも驚くほど暗い。
「なんだ、生きてたのか半人前」
低い男の声に慌てて体を起こしかけて、体を突き抜ける痛みにうめき声を上げ、再び地面に倒れ伏した。
「こっぴどくやられたな」
まるでからかうかのような声色をヤラに投げかけながら、男は路地の方へと視線を戻した。
なんとか上半身を起こして視線を向けると、これでもかと集まった警官と鑑識とおぼしき者達が
せわしなく路地を行き来する様がそこにあった。
「お前が解体した死体は欠損が酷くない場所を繋げておいた。
相変わらず解体が好きなようだな、いっそ肉屋にでもなったらどうだ?」
どこか馬鹿にするような様子に余計な事をするなと鋭い視線を投げつけるも、男はくくっと笑うだけだった。
この男が脅しに怯む事も相手にする事もないのはヤラ自身が十分承知していた。
「…何も出来なかった」
相手に一太刀も浴びせる事がないまま、無残に負けた。
この男がこの場に現れなかったら、彼女は間違いなく命を落としていただろう。
「次は殺す」
怒りと苛立ちに顔を歪めるヤラに気付いたのか、男がつまらなさそうに鼻を鳴らした。
「諦めろ、お前には無理だ」
「必ず、殺してやる」
全く聞くそぶりを見せない彼女に男は呆れたように頭を振り、路地の闇へと姿を消していった。
「必ず、必ず…殺してやる」
路地の向こうでは、相変わらず大勢の野次馬で溢れかえっていた。


人混みに紛れながら、黄色いテープで仕切られた路地へ目をやる。
相変わらず大勢の警官―鑑識も居るだろうが、区別が付かなかった―達が犯人逮捕のために情報を探す姿が見えた。
(見つかる訳がない)
徒労に終わるであろう彼らの苦労を胸中で嘲る。
犯人はそもそも人ではない…もっとも彼らはそうだと知らない訳だが、
仮に何か証拠が挙がるとしてもそれらが彼らを犯人へと導く事はないだろう。
まるで遠い昔に狂気に駆られた人間が紡ぎ出したおとぎ話が現実となった様な、そんな気味の悪い事件として
人々の記憶から姿を消す事になるだろう。
(実際オカルト系団体が彼らの奉る神の仕業だとか騒いでいるらしいからね)
街頭で神による粛正が近いと語る男の横を通り過ぎながら、当てもなく歩みを進める。
「お前らが語る神なんて、いやしない」
ぽつりとこぼれ落ちた呟きは雑踏に紛れ、誰の耳にも届くことはなかった。


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