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持ち帰ったキャラで雑談 その二

570心太:2012/04/30(月) 20:34:44 ID:Msuf7ve60
 ある日のことです。
 その日の夕食には、心太が添え物として並んでいました。
 いえ、某るろうに剣客の子供の頃の名前ではないです。『ところてん』です。
 つるつるっとしていて、三杯酢をかけて食べるとすごく美味しいあれのことです。
 とにかくあれを食べている時に、
「…………東風谷さん」
 ふいに西園さんがこちらを向いてぽつりと声をかけてきました。
 食事中に彼女が突然話しかけてくるなんてそうそうないので、私はちょっとびっくりしながら「どうかしました、西園さん?」と問いかけました。
 ちなみに彼女の左隣では地獄烏がゆでたまごを両手で掴んでがじがじと噛んでいます。すごく満ち足りた顔をしながら食べているのでおそらくご満悦なんだと思いますが、あれって共食いにはならないんでしょうか。
 ともかく、問いかけられた西園さんはしばらくじっとこちらを見つめてから、
「……心太を凍らせたことは、おありですか?」
 そう言いました。
 私は首を傾げました。質問の内容に、というより、このタイミングで何故それを質問してくるのかがわかりませんでした。
 ちなみに彼女の右隣では女僧侶が「らめええええ、こんな太いの入れたらこわれりゅうううう!!」と無表情で叫びながらバナナをくわえています。あ、顔を真っ赤にした天人に緋想の剣で殴られました。
「ありま、せんけど」
 私の答えに、またしばらく西園さんはじっとこちらを見たまま黙り込みました。
 ちなみに私の左隣では黒髪のちっちゃな女の子が手で心太を掴もうとして力を入れすぎて握りつぶしています。「おー」と言いながら目をまんまるにしていますが、心太もはやぐちゃぐちゃでほとんど原型を留めていません。
「心太って、ほとんど水分で出来ていますよね」
 またぽつりと、西園さんが語り始めます。
「ええ」
「だから、凍らせてしまうと心太を構成する水分も凍ってしまうんです」
「そう……でしょうね」
「水分が凍ると、どうなりますか?」
「……膨張しますね」
「そう、膨張するんです」
 つ、と冷や汗が流れました。あれ、なんだろうこの汗。
「膨張した水分は、心太の組織を破壊してしまいます。そのため、一度凍らせた後に解凍しても、心太はもう元には戻りません」
「………………」
「人間に例えると、内臓が一気に膨張して破裂したような感じでしょうか」
 かたんっ、とどこかで箸が落ちる音がしました。
 見ると、テーブルの一番端にいた機械好きの少女が顔を真っ青にして心太を凝視しています。
「解凍した後の心太はぺらぺらで、中の水分はすべて流れ落ち、わずかに残った組織の残骸が死に絶えたミミズのように……」
 そこまで言ってから、
「心太、美味しいですね」
 つるつる、と西園さんが心太を口に含みました。


 結局、その日の夕食では心太が大量に余ってしまいました。


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