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持ち帰ったキャラで雑談 その二

419妖怪よりも怖いもの:2008/11/05(水) 08:41:09
獣を散らしたそこは酷い有り様だった。
人の残骸があちこちに転がり、蒸せかえる様な鉄の臭いが辺りに漂っていた。
その内の一人は人間の世界を、とあの通りで叫んでいた者だった。
里の周辺で弱い妖怪だけを倒し、増長した彼等が吸血鬼の館へ出向いたと聞いたのは、ほんの少し前。
(辿り着けさえもしなかった、か)
彼等を殺したのは、彼等と同じ人間だった。
野党だの山賊だのと呼ばれる者達は妖怪達を倒すだけ支度しかしていなかった彼等へ襲いかかり―
(破魔符なんぞ人間には効果ないからな)
格好の獲物、というわけだった。


遺体を回収し、里へ届けた。
血に釣られた獣に喰い散らかされたモノもあったが、おおむね五体満足だった。
遺体を渡して、里長の家を出た所で男に呼び止められる。
問われたのはいつもの言葉。
―妖怪にやられたのか?
首を横に振る。人と獣に彼等は殺されたのだと。
男は自分も人間の世界をと理想を唱えている事を言った。
そうして理想を語る男に問いかける。
人の世となれば、こういう事が多くなる。妖怪の恐怖より隣人に殺されるかもしれない恐怖に脅かされる日々。
そうなった時、世界を変えたお前達はどうするつもりかと問う。
男は何も答えなかった。予想はしていたが。
結局この男も日々の不満を誰かにぶつけたいだけであったのか。
惰性で最もらしい事を言う者とつるみ、正義に酔いしれては過ちから目をそらす。
小さく息をつけば、男がうつむいたまま問いかける。
なら、どうすればいいのかと。
そんなこと自分で考えろと返して、途方にくれる男に背を向けた。


里の外れまで歩いて、腰巾着から取り出した煙管に煙草を詰める。
火をつけ吸えば、いつもの味。だがそれも今日のドロシーにはやたらに不味く感じた。


もうすぐ冬が来る


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