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持ち帰ったキャラで雑談 その二

383歌・中:2008/08/21(木) 21:53:37
 大きな瞳が代理人を覗き込んでいる。
 そこに湛えられる光は、驚きと――好奇心か。
「青いのー」
 ぴっ、と代理人を指さして、
「いなかったー、いるー、なんでー?」
「陳腐な表現で申し訳ないけど、私はどこにでもいるの。文字通りにね」
 主語の存在しないアスミの問いかけを、どうやら代理人は理解しているらしい。
「どこにでもいるー、たくさんー?」
「もちろん私は一人だけよ。ダメージを受けると増殖するスキルなら随時募集中」
「たくさんー、ここにもたくさんー、あっちにもたくさんー」
 言って、代理人を指し示した紅葉のような手のひらを、虚空に向ける。
 虚空。言葉の通り、そこには何もない。何も、だ。
「……そう。見えるのね、アスミは」
 わずかに代理人が眉を落としたように見えたのは、果たして錯覚か。
「たくさんいるー、みんなさみしー、いっしょに歌うー」
 くるくると回り始めるアスミ。
 そんな奇行は今に始まったわけではなく、むしろいつも通りなので、
当然のように代理人は気に留めない。
「そうね。貴女の歌はそのためにあるんだもの」
 もっとも、代理人の場合気に留めるものが存在するのかどうか。
「歌ってバイバイー」
「そうやって『彼』ともお別れをしたの?」
 ぴたりと。
 発条の切れた人形のように動きを止めたその体は、首だけを代理人に向けていた。
「お別れ?」
「そう、お別れ。もう会えないことを告げること」
 首を傾げる。理解できないというジェスチャー。
 アスミに限って、惚けるなどという選択肢はない。
 知らないと言えばそれは彼女の知らないことであり、
理解できないと振る舞いで示せばそれは彼女には理解できないことなのだ。
「してないよ?」
「そう」
 故に、していないと言うのなら、していない。
 だがそれに続いた言葉は、代理人の予想を超えていた。

「ここに、いるから」


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