したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

持ち帰ったキャラで雑談 その二

374浮薄:2008/08/02(土) 09:53:39
「それは難しい質問ね。というよりも、答えなど最初から無きに等しい」
 全裸にシーツ一枚をまとった恰好で、相変わらず無感動の光を虚空に向ける。
「価値を見出すのは主観に過ぎない。
 なら、生と死、共に価値があるともないとも言える。
 ――私? 本気で聞いてるのならこれ以上ないほどに滑稽よ?
 主観の排除こそが私に求められた唯一のパーソナリティなのだから」
「むー……ご主人さま、誰とお話してるんですか?」
「……ゆうべはおたのしみでしたね」
「いえ何もしてませんけど。あとご主人さまの恰好は暑くて寝苦しかったからとか、
誰にともなくフォローした方がいいですか?」
「別に寝苦しくはなかったけれど」
「そういうことにしておいてください」
 きっぱりと断じるアイリ。
「それより。今、何か話してませんでした?」
 きょろきょろとあたりを見回すが、自分達以外に目を覚ましているものはいないようだ。
 アイリを除けば、代理人は一人起きていたことになる。
「――諦観と、あとはわずかな動揺とかしら」
「……はぁ」
 代理人でも寝ぼけることがあるのか、とアイリは漠然と納得。
「人の生と死に対する尊厳意識は、詰まるところ「個」の尊重と同等よ。
 面白いのは、人以外の動物は生に対する強い執着を見せる一方で、死に対しての
反応が人とは比較にならないほど淡泊であるということ」
 と、代理人は少しも面白くなさそうな顔で、
「その理屈は単純。動物は「個」以上に「種」を尊重するから。
 一個体が理不尽な死に至っても、種が存続できればそれでいい。
 人は自我を強く持ちすぎたが故に、「個」を妄信するようになってしまったのね」
 そして、
「だからこそ、私は今ここにいる」
「……どういう意味ですか?」
 話が飛躍しすぎていてアイリには理解できない。
 理解しようとしている時点で、アイリも寝ぼけているのかもしれない。
 つ、と代理人はアイリを見遣り、
「お前は、私が死んだら悲しい?」
「悲しいに…決まってるじゃないですか」
「そう。『決まってる』と思えることが、『人の型』におさまる要素のひとつ。
 逆に言えば、死の尊厳への浮薄さが『人の型』におさまることを否定する。
 ――普通であることって、一体どれだけ大変なのかしらね」
 アイリは驚愕に目を剥いた。

 代理人が泣いていた。

「私は肯定も否定もしないし、それは『彼』も同じ。
 ただ、それでもこう言うのでしょうね――否定しなくても、悼むことは出来ると」
「ご主人さま……」
 何故、泣くのかと。
 何が悲しいのかと。
 ――そう問うには、代理人の瞳はあまりにも普段通りで。
「こういう理もあるということよ」
 それはアイリへの応えか。
 あるいはただの独白か。
「さて、寝ましょうか」
 我に返った時には、代理人の頬には涙の跡もなかった。
 それこそ寝ぼけたアイリの錯覚だったのかもしれない。
「こっちへいらっしゃい、アイリ」
「いえ、遠慮します」
 最後にはっきりと理解できた一言を、アイリは全力で断った。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板