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持ち帰ったキャラで雑談 その二

367憐哀編sideイサ、9:2008/07/26(土) 23:12:33

 二日目 PM 3:00

 どこをどう逃げたのかはわからない。
 気がつくとイサは人気のまったくない神社の傍らに独り腰を下ろしていた。
 心理的侵食は時を追うごとに加速していった。
 寒いとか、苦しいとか、そんな『前向き』な思考は微塵も働かず。
 ただただ心の中の空白を埋めるように、欠けたものを補うように、
頭を抱え無意識の独り言をつぶやきながら、精神の自壊を防いでいた。
 イサは恐れていた。
 死を宣告する砂時計の砂が少しずつ落ちていくのを、ただ眺めるだけの焦燥。
 それをはっきりと自覚した瞬間、かつてないほどの喪失感が胸を貫いたのだ。
 死ぬのが怖い。
 終わるのが怖い。
 しかしそれでも己の死を認めざるをえない、理不尽極まる現実。
 命を天秤にかけた壮絶な自己矛盾。
 それはイサ一人で抱えこむには重すぎた。
人の身に余る重圧に、心が圧搾機にかけられたように締め付けられていく。
 胸の内を吐瀉するように嘔吐いても、口からこぼれるのは濁った唾液だけ。
 沈澱していく。

 死にたくない。
 自分が死ぬくらいなら、周りのすべてを殺す。
 そう、殺せばいい。
 自分には力がある。
 少なくとも、身近な人間の首を掻き切ることが出来る程度の力は。
 それでもアレには敵わないだろう。
 だが、一糸を報いることは出来るかもしれない。
 ひょっとしたら、自分一人なら逃げきることくらいは――

 俄かに蘇った殺意を、もはや否定する余裕はイサにはなかった。
 ――タン、と。
 正面の松の木にナイフが突き立つ。
 一本。二本、三本と――淡々と、あたかも藁人形に五寸釘を打ち込むように増える本数。
 音が刻まれるほど、イサの顔から表情が消えていく。
『人間』としての仮面が剥がれたそこには、『悪魔』としての狂気が渦巻いていた。
 刻まれた本数が二十を超えたところで、ふと手の動きが止まった。
 ――微かな音。
 誰かが来たようだ。
 こんな時間に歩き回っている時点で、まともな人間ではない。
 いや、まともであるかどうかなどもはやどうでもいい。

 視界に入った瞬間、殺す。
 月の光を隠して伸びる影をイサは捉えた。

「……こんなとこに、いやがったのかよ」


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