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持ち帰ったキャラで雑談 その二

356憐哀編sideイサ、8:2008/07/08(火) 22:22:29
 音は後から伝わってきた。
 個室を仕切るドア。
 片田舎の駅前通りを見渡せる5階の窓。
 それらをわずかに瞼を一度動かした瞬間にすべてぶち抜いていったそれは、
残像の尾だけを残して夜の世界に消えていった。
「……なっ!?」
 一拍遅れて春原が声をあげた時には、イサはすでに彼を庇うように前に出ていた。
 そして、第二撃。
 理不尽極まる暴力の顕現を、今度こそイサは視認した。
 それは『棒』だった。
 太さ二センチほどの円柱状のそれが、コマ送りのようにこちらに飛んでくる。
 避けることは出来ない。避ければ後ろの春原の頭が確実に吹き飛ぶ。
 他の選択肢を考えるには与えられた時間はあまりにも短過ぎ、
イサは自分でも無自覚の領域でその棒を掴もうとしていた。
 指がそれに触れた瞬間、焼けるような激痛が背筋を抜けていった。
 そしてそれでも止まらず、勢いの殺しきれなかった衝撃が眉間を直撃した。
 暗転する世界。

 意識が覚醒する。
 即座に状況を把握。どうやら気絶したのは数秒ほどだったようだ。
 イサを抱きかかえるようにしていた春原の手を振り払い、イサは周囲の敵意を探る。
 しかし、ここにはすでにその残滓さえも残っていなかった。
 逃げた――わけがない。
 むしろ見逃してもらったようなものだ。
 あるいは、泳がされているだけか。
 なんにせよ脅威はもう感じられない。
「……ヨーヘー、ありがと」
「いや、んなことはいいんだよ。……手、大丈夫か?」
 手? と思ってみれば、棒を受け止めた左手から煙が上がっていた。
 焼けるような痛みは、どうやらそのまま焼ける痛みだったらしい。
 摩擦熱で手のひらが黒こげになっていた。
「ん。こんなの大したことないんじゃないかな!」
「嘘つけよ。煙出るとか明らかに変だろうが」
 確かに大丈夫ではなかったが、指摘されたところで傷が治るわけではない。
 適当に春原をあしらうようにして、背中を伝う冷たい汗に気づかれないように努める。

 間違いない。
 これはアイツの仕業だった。
 とうとう、直接的手段によるイサの排除が始まったのだ。


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