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持ち帰ったキャラで雑談 その二

355憐哀編sideイサ、7:2008/07/08(火) 21:55:36

 一日目 PM 23:00

 結局、今夜は家に帰ることはなくなった。
 すると浮上してくるのが、寝床の確保だ。
 着の身着のままで飛び出した状態に近い春原に、まさかホテル代を払う余裕などなく。
 脳裏を「野宿」という言葉がかすめる。
 野宿。言葉でかけば一言だが、そこに込められた意味は凄絶だ。
 まず場所がない。公園のベンチで寝るなどと言えば簡単だが、
容易に人目につくところでは補導される可能性がある。
 そして何より問題なのが寒さだ。
 ちょっと動き回る程度ならわからないが、真冬の寒さはそれ自体が凶器となる。
 比喩でも冗談でもなく、都会の街並みの一角で凍死することも考えられる。
 ベッドで寝ることを当然とする人種が、にわか覚悟で耐えられるようなものではないのだ。
 ――というわけで。
「ま、やっぱこれしかないっしょ」
 手軽に入れ、環境もそれなり。何より価格が良心的。
 そんな夢のようなホテル――もとい、ネットカフェに二人は訪れていた。
 ここならその気になれば朝まででもいられる。無論こんな生活を長期間続けるなど不可能だが、
それでも一夜の雫を避けるのには問題ない。
 春原は一人ネットに興じていた。
 というのは、イサがネットのやり方をわからないと言ったからだ。
 教えることは出来る。
 だが、何となくそんな会話をすることにも躊躇いが生じていた。
 気持ちの齟齬、とでも言えばいいのだろうか。
 特に腹を立てているわけでもないのに、さっきまでのような普通の会話が出来ない。
 わざわざペア席をとったのだが、これではあまり意味がなかった。
 匿名巨大掲示板を覗いては、そこに時折つまらないレスをつける時間。
 それを横からじっと見つめられているのを自覚しつつ、享受せざるをえない時間。

 そんな時間がどれだけ続いただろうか。
 とっくに日付は変わり、あたりは不気味なほど静まり返っている。
 何とはなしに、パソコンの時計を眺めた――午前二時。
 いわゆる草木も眠る丑三つ時だ。
 ――そういえばいわゆる妖怪が活発に動き始めるのもこの時間だったか。
 妖怪、などかつてなら一笑に付すおとぎ話に過ぎなかったが、
ここしばらくはそんな認識を変えざるをえないことが多すぎた。
 妖怪は、実在する。
 悪魔でさえ実在するのだから。

 ――とん、と。

 軽く肩を押された。
 誰かなど言うまでもない。ここには自分以外には彼女しかいない。
 何を、と言いかけた瞬間、

 それまで自分の頭のあった場所を、何かが凄まじい速度で貫いた。


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