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持ち帰ったキャラで雑談 その二

344感触・上:2008/06/15(日) 21:44:09
 梅雨の合間に照りつける貴重な陽光に、わずかに濡れた木々が歓喜の声を上げる。
「草だー。花だー」
 歓声なのか客観的事実を述べているだけなのかよくわからない声をあげながら、くるくると回る薔薇色のスカート。
 近場の野原を訪れるだけであれだけはしゃげる感性には羨ましさを覚えなくもない。
 さて、私は一体いつの間に失ってしまったのか――もはや判然としない。
「ちぇええええん、しょーぶだー」
「言ったな赤いの! この前の分も合わせてお返ししてやるからね!」
 最近よくじゃれあっている二人が、時も場所も関係なしに騒ぎ出す。
 それを少し離れたところから陶酔の眼差しで見つめる保護者二人。
 好意的に解釈すれば娘を見守る微笑ましい光景だが、
如何せんどう好意的に見ても「娘を見守る」にしては危なすぎる。
 ――その光景は温かくあると同時にどこか廃絶的で。
 だからと言うわけではなかったが、何とはなしに心は冷めていた。
「……混ざらないの?」
 背筋が震えた。
 心を見透かされたかと思った。
『彼女』ならば、そのくらいやってもおかしくはない。
 胸中の動揺を押し隠し、にこやかな笑みを浮かべた『演技』を使う。
 体調が優れないといったニュアンスを返したところ、彼女は平然とした顔で、
「あの日?」
 ――とんでもない恥知らずだ。
 いや、そもそも恥などという感情を持ち合わせていないのだろう。
 私も相当擦り切れているとは思うが、これ程ではない。
 これを人として分類することは、人間に対する冒涜だ。
「……何か用?」
 声音を変える。いや正確に言えば、本来のそれに戻す。
 他に誰か聞く者がいるのならばともかく、これを相手に演じる価値はなかった。
「いえ、別に」
 突然の変貌にも彼女はまるで動じた様子はない。
「ただ少し聞いてみたいと思っただけ」
「…………?」

「『殺される』って、どういう感触?」

 そこには揶揄も皮肉も含まれてはいない。
 本当に、ただ純粋に疑問に思っているだけなのだろう。
 いやそれさえも定かではない。
「聞くためだけに聞いている」と言われても、彼女が言うなら信じる。


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