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持ち帰ったキャラで雑談 その二
342
:
スノハラクエスト 〜そして伝説へ(ニート的な意味で)
:2008/06/15(日) 08:52:26
一日目 PM 20:30
「さて、そろそろ帰るか」
春原がそう言った瞬間、イサの体がびくりと跳ね上がった。
信じられないことを聞いたとでも言うように。
あるいは、唐突に夢から覚めたかのように。
「……帰る?」
もちろん、春原の言葉に他意などはなかった。
始まりがあれば必ず終わりがある。それだけのことだ。
デートの終了を男の方から告げるのは、無粋と言えなくもない。
だが元を正せば、そもそも春原にはこれがデートという意識さえもなく。
イサのわがままに付き合うのもこれで終わりという、そんな最後通牒の響きくらいは含まれていたかもしれない。
故に、春原にはわからない。
何故、イサがそんな表情をするのか。
――まるで、裏切られたとでも言いたげな。
口火を切った春原の方が、逆に言葉に詰まった。
夜を彩るかすかなイルミネーションが、イサの顔を半ば隠して浮かび上がらせる。
「……こに?」
「え?」
「……ボクは、どこに帰ればいいの?」
そのあまりに強い虚無の響きに、春原の頬がひきつった。
「どこって……」
何故か春原にはわかった。
このイサは説得しなければならない、と。
それによって何かが得られるという確信ではなく。
そうしなければ何かが失われるという危機感で。
「家に帰るに、決まってんだろ」
「……家?」
鼻で笑う。
「あそこは家なんかじゃない。監獄だよ」
もはやそこにいるのは春原の知るイサではなかった。
その年相応の体躯と微塵もあっていない諦観のまなざしで、
「ボクはあいつに囚われてるにすぎない」
「……あいつ?」
そこには明らかに特定の誰かを示す意味合いがこめられていたが、
少なくとも春原には悪意を持ってイサと接している人物に心当たりなどなかった。
イサの声にはますます強い諦観が混じり、もはや声とさえ思えなくなってきていた。
「ボクにはわかる、わかってしまった。
この『世界』はもうあいつの手の中にある」
「おい、イサ……」
「あいつに壊されるのは仕方がない。だってあいつは『世界』そのものなんだから。
だからボクは、そうなる前に思い出がほしかった」
何かを言い返すには、春原は無力だった。
ただ、イサには何か絶望を抱かずにいられないものがあり。
いつか来る――と信じている――破滅の前に、思い出を求めていたことは理解した。
それ故の――デート。
と、イサが突然顔をあげた。満面の笑みを浮かべて。
だが、春原の目にはそれがどうしても痛々しく映ってしまう。
イサはその目尻にわずかに外灯を反射させる光を浮かべ、言った。
「ねぇ、ヨーヘー。ボクと一緒に、逃げてくれないかな!」
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