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持ち帰ったキャラで雑談 その二

326安寧:2008/06/01(日) 22:39:40
 我知らず、月を見上げていた。
 望を一夜巡った十六夜の頃。
 冴々と、満ちぬ金色が空を灼く。
 その不完全さが、あたかも今の自分をも映しているようで。
 目を逸らしたいと思いながら、目を離すことが出来ない。
 慣れた手つきで懐から直方体の物体を取り出す。
 軽く手を振る。
 ふいにその手が凄まじい勢いで燃え上がった。
 だが当の本人は気にも留めず、もう片方の手だけで箱から器用に一本だけ
煙草を取り出し口にくわえると、おもむろに燃えた手に押し当てた。
 紫煙をくゆらせる。
 深夜の神社は、神聖と言うよりも荘厳な感じがした。
 そんな境内の真ん中に腰掛けても、咎める者はいない。
 独りだ。
 ぼんやりと、どこかに置き忘れた心を探す気力もなく。
 煙草の灰が落ちることにさえ関心を持たずに、やや肌寒い夜気に包まれる。
 ふいに顔を俯かせる。
 と、煙草の煙が目に入った。
「……つっ」
 目をこする。突き刺さるような痛みに、目頭が熱くなった。
 涙がこぼれる。
 そして――止まらない。
 感傷だ、と思う。
 打ちひしがれた時ほど、独りの重みがのしかかる。
 それが孤独なのだということを、痛いほどに知っている。
 ――蓬莱の宿命は、すなわち孤独という地獄を背負うことに他ならない。
 人と交わることは許されず。
 人ならざるものとして生きるには、人の心が邪魔をする。
 何者にもなれない、不完全な存在。
 そんなものはこの永い生の中で何度となく味わったというのに。
 腕をもがれる痛みには慣れても、胸が潰れる痛みには慣れられない。
「………………ぐや」
 何かを言いかけ、やめる。 
 それは自分という存在の全否定に繋がる気がした。
 ――そう、憎しみだけあればいい。
 今、私が存在してしまっているのは誰のせいだ?
 決して赦されてはならない生の出来損ないを生み出した大罪人は誰だ?
 そうだ、怒れ。
 憎め。

「……ああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!」

 そう。それだけでいい。
 忘れよう。
 人としての感傷など蓬莱人には毒でしかない。
 怯えも、迷いも、苦しみも。
 すべては人が背負う業。

 ――滅びぬ身には、尽きぬ煙を生む炎こそが相応しい。


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