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持ち帰ったキャラで雑談 その二

312恐怖:2008/05/26(月) 23:33:14

 独りであることを苦痛には感じない。
 この身が蓬莱人と化してから、それは常に自分の隣にあるものだ。
 とは言え、心地よいと感じるものでもない。
 隣に誰がいようが。
 隣に誰もいまいが。
 人としてあるべきところから欠落したモノが埋まるわけではないのだから。

「あ……! お前は……」
 すぐ近くでそんな声が聞こえるまで気がつかなかった。
 眠っていた、というわけではないのだが、意識が飛んでいたようだ。
 寝転がった体勢のまま首だけ動かす。
 猫が立っていた。否。
 猫のような人間のような姿をした、つまりはどちらでもないモノがいた。
「……式の式か」
 欠伸を噛み殺す。
 妹紅の関心対象の中にこの少女はいない。
 いようがいまいがどうでもいい。空気よりも無価値な存在。
「こ、この前はよくも藍様をいじめたな!」
 思わず鼻で笑う――実に滑稽な話だ。
 あの時の式との争いに決着がつくことはなかった。
 力で妹紅の方が勝っていたのは事実だ。何度となく藍を地に沈めた。
 それでも、妹紅は三度『殺された』。
 蓬莱人とは言え、身体的スペックは人間のそれと変わらない。
 不死身であることを除けば、妖怪の式であるという藍とは比べるべくもなかった。

 ――その死闘を、こともあろうに『苛める』などという単語で表すとは!

「失せなさい。今は弾幕ごっこに付き合う気にはならない」
「藍様は私のご主人様だ! その誇り高い式として、ここですごすご逃げたりするもんか!」
 ……またか。
 藍といいこの猫といい、誇り誇りと大層な言葉を持ち出すものだ。
「忠言は耳に逆らうとは言うが……さて!」
 瞬間的に体を跳ね上げる。
 その突然の動きに緊張が爆発したのか、少女は本人でさえ意識しきれぬまま
取り出したスペルカードを掲げていた。

 ――鬼神「鳴動持国天」

 最初はこのまま退散するつもりだった。
 約束というほどではないが、藍に対して「式には手を出さない」と告げている。
 それに弱者の蹂躙は妹紅の望むところではない。
 ――だが、彼女の放つ弾幕を見て気分が変わった。
 藍の主人がどれほどの力を持つのかは知らないが、その式の式でさえ
これほどの力を持つと言うのは面白い。
 妹紅は認識を改めた――少女は、いや『橙』は敵だ。
 口元に凶悪な笑みを浮かべ、スペルカードを掲げる。
「――括目しなさい。これが紅蓮の弾幕というものよ」

 ――不滅「フェニックスの尾」

 勝負は一瞬だった。
 橙は体のあちこちを焦がして地面に伸びている。
 これでも加減はしている。先にしかけてきたのは少女の方とは言え、
一方的な力を振るうことになど価値はない。
 力の誇示など、それこそ空しいだけだ。 
「さて、この式が目を覚まさないうちに……」

 ぞくりと。

 全身が放つ絶叫に、妹紅は一瞬我を忘れた。
 永い生において似たような感覚を味わったことがある。
 それはまだ人だった頃の名残り。
 もはや死とは無縁の身でありながら、身体が未だ記憶する「終わり」に恐怖する感触――
 意志とは無関係に体が動いた。
 逃げろ、と。
 ここから一刻も早く立ち去れ、と。
 それに屈辱を覚えられるほど、今の妹紅に余裕はない――

 そこに残されたのは『二人』。
 式の式と。
 ――人に在らざる『現象』のみ。


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