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持ち帰ったキャラで雑談 その二

308憐哀編sideイサ、3:2008/05/18(日) 22:58:03
 物心ついた時には、イサの横には常に殺戮衝動が身を置いていた。

 イサの家系は代々優秀な魔法使いを輩出していた。
 特に女系はその力が強く、中には生きながら伝説となった者もいるという。
 しかし同時に、悪魔としては致命的とも言える欠点を抱えていた。
 穏やかなのだ。性格が。
 特に女系にはそれが顕著に現れる。
 山一つ消し飛ばす力を持っていながら、それを決して使おうとはしない。
 炎や水を自在に操って敵を屠るより、料理をしたり飲み水を調達することを好む。
 宝の持ち腐れだ。
 おまけに一族揃ってそんな有様なため、それを危惧する者はいても改める者はいない。

 そのため、イサという悪魔の誕生は一族から大いに歓迎された。

 生まれながらにして殺意を秘めたその瞳。
 この娘は将来優秀な魔法使いになるだろうと、一族の誰もが思った。

 ――しかしその期待は、2度の出来事の後に灰燼と消えた。

 最初はイサが640歳――人間年齢に換算して6歳ほどの頃だった。
 それはあまりにも致命的な出来事だった。
 イサは魔法が使えなかったのだ。
 一族なら親へのわずかな反抗心で炎を用いるほど慣れ親しんだ魔法を、
イサは一向に使おうとしなかった。
 何故かはわからない。
 だが、おそらくは一族が期待した衝動にこそ原因があるのだろうと思われた。
 一族の歴史の中で、魔法を使えない者はイサ一人。
 一族の歴史の中で、最も殺戮本能の強い者がイサ。
 つまりは、そういうことだ。 
 それでも悪魔として優秀であることに変わりはない。
 イサにかけられていた期待はこの一件でほぼなくなったが、それでもそのまま育てられた。
 二度目にして最後の転機は、その400年後に起こった。
 イサが、家族に手をかけたのだ。
 彼女にはやや年の離れた姉がいた。
 最初はただの姉妹ゲンカだったそれは、姉殺しの一歩手前まで加速した。
 年を経るごとに暴走の翳りを見せ出したイサの衝動は、もはや実の両親にさえ止められなかった。

 イサは捨てられた。

 実のところ、悪魔の中で同族殺しなどさして珍しくもない。
 親殺しをステータスとして見る者さえいる。
 それが悪魔というものだ。
 だが、穏やか過ぎたイサの家系では、家族に手をかけるという行為があまりにも異様に映った。
 家族としての愛情が消し飛ぶほどに。

 そうしてイサは独りになり、しばらくして盗賊ギルドに拾われた。


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