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持ち帰ったキャラで雑談 その二

305訃報・上:2008/05/17(土) 23:47:36
 そこに在れば、薄ら寒い怯えと共に誰もが思うだろう。
 ――ここはどこだ、と。
「これって…………」
 あたりは不気味な静寂に包まれている。
 道を歩く足音さえ聞こえない――それ以前に、人の姿がない。
 比喩などではなく、針を落とせばその音が聞こえるだろう。
 ――わずかに、一歩。
 ただそれだけで、人間達に置き去りにされた無機質の建造物だけを残し、生の気配はこの地から根絶された。
 それがどれほど異様なことか、二人は理解していた。
 と同時に、その意味も。
「……久しぶりね、『ここ』も」
 わずかに茶化すようなアーチェの口調も、緊張に歪む表情を崩すには至らない。
「久しい」という表現が正しいのか、実のところアーチェにもわからない。
 ただ、かつて同じような場所に踏み入れたことがあるという話だ。

 ――同じような場所。
 無限の可能性から堕とされた粗悪な世界。
 名もなき泡沫の、弾けるその一瞬前。
 ここは『生』という概念が劣化しているため、踏み込むことは出来ても生まれることはない。
 ここは『死』という概念が劣化しているため、どれだけ殺されても死ぬことはない。
 何もかもが不完全で、そして何物も完全ではいられない御伽の国。

 リディアはそこに足を踏み入れた瞬間から、無言で目を閉じていた。
 しかしそれもしばしの後にぽつりと、
「私達以外に、あと一人」
 魔力を『視る』リディアの言葉に誤りはない。
「アイツってこと?」
 首を横に振る。
「魔力の気配がするんだから、多分違うと思う」
 知らない間に魔法を身につけたりとかしてたら、話は別だけれど。
 そんなことを言外に言っている。
 しかし、それが有り得ないことを二人は理解していた。

 ここは「神」の領域なればこそ。
 ここで「神」の願いは叶わない。

 二人は、この世界に存在する最後の一人を探した。
 いや、探したという表現は適切ではない。
 ――探すまでもなく、すぐに遭遇したからだ。
 そこはまさしく、あの人間が住む場所に違いなかった。
 アーチェも度々訪れたことがある。見間違えるはずもない。
 
 その入口に、蒼い僧服を着た一人の女が立っていた。


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